11-22白血病・悪性腫瘍を疑うとき
長引く発熱・蒼白・出血・骨痛・腫瘤
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次10項目
1ポイント
- 当直で診断をつける必要はない。「おかしい」と気づいて、血算を出して、送るだけ。
- 当直帯に末梢血液像(鏡検)は出ない。夜の仕事は芽球を探すことでなく、血算の3系統の数字と5つの鍵で朝まで待てるかを決めること。
- 帰さないという選択肢を使う。3系統のどれかが明らかにおかしければ、血液像を待つ形で院内に留める。夜に見えないことは帰す理由にならない。
- 白血病は小児がんで最多。ALLが約70%、AMLが約25%。日本ではALLが年間約500人、AMLが年間約180人診断される。
- 「かぜ」を繰り返す子の中に混じっている。①長引く/繰り返す発熱②蒼白③紫斑・出血④骨痛・歩かない⑤肝脾腫・リンパ節腫大のうち2つ以上で血算。
2鑑別のながれ
- 長引く発熱・蒼白・出血・骨痛→貧血・出血・感染・肝脾腫・骨痛。血算3系統のうち2つ以上異常→急性リンパ性白血病(ALL)・急性骨髄性白血病(AML)(持てない)
- 痛みのないリンパ節腫脹→原因不明の発熱・寝汗・体重減少→リンパ腫(気道・血管圧迫に注意。持てない)
- 朝の頭痛・嘔吐→失調・複視・斜頸・視野障害→脳腫瘍(画像が要る。持てない)
- 腹部腫瘤(乳幼児)→不機嫌、眼窩周囲の紫斑(raccoon eye)、歩かない→神経芽腫(強く触らない。持てない)
- 無症候性の腹部腫瘤→血尿、高血圧→腎芽腫(Wilms腫瘍)(強く触らない。持てない)
- 白色瞳孔・斜視→暗所でペンライトかフラッシュ写真で気づく→網膜芽細胞腫(眼科へ。持てない)
- 持続する骨痛・腫脹→夜間痛→骨肉腫・Ewing肉腫(X線。持てない)
- 発熱・咽頭痛・肝脾腫→異型リンパ球、一過性の血球減少→ウイルス感染(EBV・CMV等)。それでも芽球がないことを確かめる
- 弛張熱・サーモンピンク疹・関節炎→血小板は上がる→若年性特発性関節炎(全身型)。白血病と最も紛らわしい
- 夜間痛だが日中は元気→両側性、他覚所見なし、発熱なし→成長痛(片側・跛行・発熱・体重減少があれば成長痛としない)
- 白血球数が著明高値→呼吸困難・意識障害を伴う→過粘稠度症候群(持てない。輸液を開始して搬送)
- 高度の貧血(Hb低値)→頻脈・呼吸困難を伴う→輸血が要る(当院の輸血体制を確認して搬送)
- 血小板著減→頭痛・嘔吐・意識障害を伴う→頭蓋内出血(紫斑・出血斑)
- 部位不定の腫瘤→眼球突出、鼻閉・鼻出血→横紋筋肉腫(持てない)
3帰さない基準(血算3系統)
| 2つ以上が異常 | 血算3系統のうち2つ以上 | 鏡検を待たず動く。入院して翌朝の血液像につなぐか、その場で小児血液へ相談 |
|---|---|---|
| 2つ以上が減少 | 血算3系統のうち2つ以上 | 持てない。骨髄検査が要る |
| 芽球確認 | 末梢血の芽球・異常細胞フラグ | その日のうちに小児血液へ搬送。帰さない |
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4検査
- 血算(3系統):赤血球数・血小板数は減少していることが多いが、白血球数は増加〜減少までさまざま
- 末梢血液像(必須):芽球を見る。当直帯は出ない。夜は血算の数字で代替し、鏡検は翌朝に回す。その間、院内に留める
- LDH・尿酸:高値は血液悪性腫瘍・腫瘍崩壊のサイン
- K・P・Ca・Cr:腫瘍崩壊症候群(高K・高P・低Ca・Cr上昇)
- 凝固(PT/APTT/フィブリノゲン/D-dimer):DIC(特にAPL)。出血傾向+凝固異常は緊急
- 胸部X線:前縦隔腫瘤(T細胞性ALL・リンパ芽球性リンパ腫)。気道圧迫は緊急
- 腹部エコー:肝脾腫・腹部腫瘤・腎腫瘤。当直帯は当院で撮れない(読める人がいない)。触れた事実だけで小児血液・腫瘍へ相談し搬送する
- 骨髄検査:診断と病型分類に必要。小児では全身麻酔・鎮静下で実施する。当院では持てない
5対応の注意
避けること・注意:原因不明の発熱・関節痛・リンパ節腫大に診断がつく前にステロイドを出すこと、気道圧迫がある子への鎮静、腹部腫瘤の繰り返す強い触診。
↑ このページの入口へ6治療ワークフロー(当院でやること)
- バイタル。気道圧迫の兆候(起座呼吸・顔面のむくみ・頸静脈怒張)があれば仰臥位にしない
- 全身を見る:眼瞼結膜(蒼白)、皮膚(点状出血・紫斑)、口腔(歯肉腫脹・出血)、リンパ節(鎖骨上窩を必ず触る。腫大は原則すべて異常)、腹部(肝脾腫・腫瘤)、四肢(骨の圧痛)、眼(白色瞳孔)
- 血算+末梢血液像を必ずセットでオーダーする。血液像は翌朝にオーダーし、その間は帰さない
- LDH・尿酸・生化(K・P・Ca・Cr)・凝固を測る
- 化学療法中・免疫抑制中の発熱は、ANCを待たず主治医・血液腫瘍担当・上級医へ直ちに連絡し、搬送を並行調整する。初回抗菌薬の開始時点とレジメンをその電話で確認し、搬送待ちで治療を遅らせない。不安定なら蘇生と同時に緊急指示を受ける。
- 胸部X線(前縦隔腫瘤)。腹部腫瘤に触れたら、エコーを待たず(当直帯は撮れない)その事実だけで小児血液・腫瘍へ相談する
- 芽球があればその場で小児血液のある施設に電話する。帰さない
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- ステロイドを先に投与しない(白血病細胞を部分的に殺して診断を困難にする)
- 気道圧迫がある子に鎮静をかけない
- 腹部腫瘤を繰り返し強く触らない
7帰宅・入院の目安
- 帰宅単独の軽度貧血・血小板減少で他に所見なし。ただし末梢血液像を確認してから(当直帯は鏡検が出ないので、夜のうちに経過観察でよいと決めない)
- 入院3系統のうち2つ以上が明らかに異常:鏡検を待たずに入院し翌朝の血液像につなぐ
- 搬送・紹介末梢血に芽球:持てない。その日のうちに搬送、白血球数が著明高値(過粘稠度症候群)+呼吸困難・意識障害:持てない。輸液を開始して搬送、高度の貧血(Hb低値)+頻脈・呼吸困難:輸血が要る。当院の輸血体制を確認して搬送、2系統以上の血球減少:持てない、化学療法中・免疫抑制中の発熱は、ANCを待たず主治医・血液腫瘍担当・上級医へ直ちに連絡し、搬送を並行調整する。初回抗菌薬の開始時点とレジメンをその電話で確認し、搬送待ちで治療を遅らせない。不安定なら蘇生と同時に緊急指示を受ける。、前縦隔腫瘤・気道圧迫:持てない。座位・酸素・無鎮静で搬送、腫瘍崩壊症候群:輸液を開始して搬送、腹部腫瘤:当直帯は当院で撮れない(読める人がいない)。触れた事実だけで小児血液・腫瘍へ相談し搬送する、白色瞳孔:眼科へ紹介
8診療中の疑問と回答
- リンパ節腫脹と咳があり、横になると苦しい。鎮静してCT?
- 縦隔腫瘤による気道・循環圧迫を疑う。楽な体位を維持し、鎮静や全身麻酔で悪化する危険を考える。CTや生検のために安易に鎮静せず、麻酔科・小児腫瘍科・集中治療のある施設と直ちに検査と搬送を調整する。
根拠:RCH Oncological emergencies: Mediastinal mass - 腫瘍を疑う呼吸苦に、ステロイドを先に投与する?
- ステロイドは腫瘍の縮小で診断に影響し得るため、原則として腫瘍科と相談せず開始しない。ただし切迫する気道・循環障害では救命の対応が最優先となる。体位・酸素化を保ち、必要な緊急処置と診断確保の順序を専門チームと決める。
根拠:RCH Oncological emergencies: Mediastinal mass - 縦隔陰影があるが落ち着いている。後日紹介でよい?
- 無症状に見えても体位や処置で急変し得る。起坐呼吸、顔・頸部腫脹、失神、酸素化を評価して同日専門科に相談する。検査のために仰臥位を強制せず、診断確定までの観察場所と安全な搬送を決める。
根拠:RCH Oncological emergencies: Mediastinal mass
- 血算だけで白血病を疑える?
- 血算3系統(貧血・血小板減少・白血球異常)と5つの鍵(長引く発熱・蒼白・出血・骨痛・肝脾腫やリンパ節腫大)を組み合わせて判断する。2つ以上そろったら血算、1つでもおかしければ血算を出す。
- 化学療法中の子の発熱にはまず抗菌薬?
- ANCを待たず主治医施設と院内上級医へ即時連絡し、初回抗菌薬の開始時点・レジメンを確認。搬送調整と安定化を並行し、連絡や搬送待ちで治療を遅らせない。不安定例は蘇生と同時に緊急指示を受ける。連絡不能・搬送遅延は直ちにエスカレーションする。
- ステロイドを先に使っていい?
- 使わない。白血病細胞を部分的に殺して診断を困難にするため、血算と末梢血液像を先に出して専門施設に相談する。
- 腹部腫瘤を見つけたら?
- 当直帯はエコーが無い。硬い腹部腫瘤を触れた事実だけで小児血液・腫瘍へ相談し、画像待ちで搬送を遅らせない。繰り返し強く触らず、神経芽腫・腎芽腫等を考える。
10家族への説明
今日の検査では、ふつうのかぜでは説明がつかない所見があります。血液の病気を含めて、詳しく調べられる病院で確かめる必要があります。今すぐ悪いものと決まったわけではありませんが、この種類の病気は進みが速いことがあるので、確かめるのを遅らせないのが原則です。今日のうちに紹介先の病院に行っていただきます。血液の病気の場合、骨髄(骨の中で血液をつくる場所)を調べる検査が必要になりますが、子どもでは眠るお薬を使って行うので、起きたまま痛みに耐えるようなことはありません。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。