5-7炎症性腸疾患を疑うとき(潰瘍性大腸炎・クローン病)
疑って送る病気。劇症・穿孔・大量出血だけは今夜の話
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
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このページの目次9項目
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1ポイント
- 当直で診断する病気ではない。「疑って、送る」ための病気。ただし劇症・中毒性巨大結腸症・大量出血・穿孔は今夜の話。
- 小児IBDは成人と同じではない。潰瘍性大腸炎は短期間で全大腸炎型へ進展しやすく、重症化しやすい。
- クローン病は消化器症状で来ないことがある。体重増加不良・成長障害・不明熱・鉄欠乏性貧血が先行することがある。
- PUCAI(小児潰瘍性大腸炎活動指数)はその場で点数がつけられる。PUCAI 50以上の中等症は重症例と同じ扱い。
↑ このページの入口へ2鑑別のながれ
- 慢性下痢・体重減少→血液検査でIBDらしい所見があり、IBDと決めつけている→悪性リンパ腫を除外してから動く(白血病を疑うときへ)
- 免疫抑制療法を始める前→結核の評価をせずに開始しようとしている→腸結核をIBDとして治療開始しない。開始前に結核の評価
↑ このページの入口へ3計算・スコア
スコア
PUCAI(小児潰瘍性大腸炎活動指数)
↑ このページの入口へ4検査
- 成長曲線を描く(母子手帳・学校の記録)。身長・体重の評価には成長曲線が有用。
- PUCAIを計算する(既知UCでも初診でも)。数字で申し送れる。
- 採血:血算(貧血・血小板)、CRP、アルブミン、総蛋白、鉄・フェリチン、肝機能、電解質(赤沈は当直帯に出せない。翌朝提出)。
- 便培養・C. difficileトキシン(採取は今夜、提出・培養は翌朝):IBDと決める前に感染性腸炎を外す。
- 腹部X線(中毒性巨大結腸症・遊離ガス):夜間も撮れる・当直医が読む。腹部エコーは当直帯に当てられない。
- 肛門周囲を必ず見る(膿瘍・痔瘻・皮垂・深い裂肛)。
- 口腔内(アフタ)・皮膚(結節性紅斑・壊疽性膿皮症)・関節・眼を診る(腸管外合併症)。
↑ このページの入口へ5対応の注意
避けること・注意:診断がつく前にステロイドを始めない。止痢薬を出さない(中毒性巨大結腸症を誘発しうる)。
↑ このページの入口へ6帰宅・入院の目安
- 帰宅既知のIBDの軽度増悪:まず主治医に連絡。自己判断で薬を変えない
- 搬送・紹介初発のIBD疑い(全身状態良好):当院でスクリーニングして紹介。診断は専門施設、中毒性巨大結腸症・穿孔・大量出血:持てない、PUCAI 65〜85(重症)/PUCAI 50以上の中等症:持てない、6歳未満のIBD疑い(VEO-IBD):持てない、クローン病の肛門病変:持てない、免疫抑制療法中の発熱は治療内容・がん/移植歴・直近ANC・カテーテルを確認し、主治医・上級医へ速やかに連絡。FN疑い・不安定例は緊急経路へ進む。安定した既知IBDでも観察・搬送・抗菌薬を主治医との合意で決め、一律の翌朝待機や帰宅にしない。
↑ このページの入口へ7診療中の疑問と回答
- 下痢がなくても、成長不良と治らない鉄欠乏でIBDを疑う?
- 小児クローン病では成長障害、体重増加不良、不明熱や貧血が先行することがある。成長曲線、口腔アフタ、肛門病変、腹痛・便の変化を確認し、小児消化器へ相談する。鉄剤や栄養指導だけで長く追い、背景の腸炎を見逃さない。
根拠:日本小児栄養消化器肝臓学会 小児UC治療指針2019 / 日本小児栄養消化器肝臓学会 小児クローン病治療指針2019 - 既知IBDで血便が増えた。残っているステロイドを増やす?
- 活動性だけでなく感染、服薬状況、薬の副作用を評価する。腹部膨満、強い痛み、多量出血、全身状態不良は緊急相談の対象。主治医へ現在の薬、便回数・血液量、発熱、検査を伝え、患者や一般外来の自己判断で免疫抑制薬を増減しない。
根拠:日本小児栄養消化器肝臓学会 小児UC治療指針2019 / 日本小児栄養消化器肝臓学会 小児クローン病治療指針2019 - 症状が落ち着いたら、身長や思春期の評価は不要?
- 臨床症状だけで治療目標を満たしたとはいえない。身長・体重の成長曲線、二次性徴、栄養、貧血、学校生活を継続評価する。ステロイドの長期使用は成長にも影響するため寛解維持薬として漫然と続けず、専門医が病勢と治療負担を調整する。
根拠:日本小児栄養消化器肝臓学会 小児UC治療指針2019 / 日本小児栄養消化器肝臓学会 小児クローン病治療指針2019
- 紹介までの間に治療を始めてよいか?
- 始めない。診断がつく前にステロイドを開始しない。止痢薬も出さない(中毒性巨大結腸症を誘発しうる)。
- 免疫抑制療法を始める前に確認することは?
- ワクチン歴と麻疹・風疹・ムンプス・水痘の罹患歴を記録して紹介状に書く。生ワクチンは免疫抑制療法開始前に接種しておくことが望ましい。
- 6歳未満のIBDは通常のIBDと同じに扱ってよいか?
- 扱わない。超早期発症型IBD(VEO-IBD)として原発性免疫不全症等の単一遺伝子異常に伴う腸炎との鑑別を要し、小児IBDの診療経験のある施設に相談する。
- 免疫抑制療法中に発熱があったら?
- 免疫抑制療法中の発熱は治療内容・がん/移植歴・直近ANC・カテーテルを確認し、主治医・上級医へ速やかに連絡。FN疑い・不安定例は緊急経路へ進む。安定した既知IBDでも観察・搬送・抗菌薬を主治医との合意で決め、一律の翌朝待機や帰宅にしない。
↑ このページの入口へ9家族への説明
腸に慢性の炎症が起きる病気(炎症性腸疾患)の可能性を考えています。子どもの場合、大人と違って、お腹の症状よりも先に「体重が増えない」「身長が伸びない」「原因のわからない熱が続く」「貧血がなおらない」といった形で出ることがあります。診断には内視鏡の検査が要るので、専門の病院にお願いします。今日までの母子手帳と、学校の身体測定の記録を必ず持って行ってください。それまでの間、お腹がパンパンに張る、強い腹痛、高い熱、便に大量の血が混じる、ぐったりする、このどれかがあれば、時間を待たずに来てください。