5-6 急性胃腸炎と脱水評価

緊急

5-6急性胃腸炎と脱水評価

嘔吐・下痢・脱水
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30

日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。

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このページの目次11項目

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1ポイント

判断の流れ

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胃腸炎と脱水で危険な原因を先に確認し経口補水を始める判断図
循環不全は直ちに蘇生・搬送相談。胆汁性嘔吐や腹膜刺激などの危険所見も先に評価し、経口補水中は循環・尿量を再評価する。RCH 胃腸炎を参照。
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2鑑別のながれ

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3脱水重症度(乳児は基準が異なる)

軽症年長児3〜5%・乳児5%経口補水療法(ORT)第一選択
中等症年長児6〜9%・乳児10%少量頻回のORTを継続。改善なければ点滴を検討
重症年長児10%以上・乳児15%経静脈輸液。入院(9%超・ショック/プレショック徴候があれば%を待たず優先)
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4計算・スコア

判定

脱水の簡易評価(外来4項目)

該当0項目: この簡易評価では5%以上の脱水は示唆されない(臨床像で再評価)

体重減少率9%超、またはショック/プレショック徴候があればこの評価に依らず重度脱水として経静脈輸液を優先(本シート§4参照)。

いつ使う

外来での急性胃腸炎などの脱水程度の当たり付け。4項目中2項目以上の該当で体重の5%以上の脱水が示唆される(厚生労働省 抗微生物薬適正使用の手引きの簡易評価)。

落とし穴
  • 2項目未満でも脱水は否定されない — 経口摂取・尿量・経過と合わせて判断する
  • 詳細な重症度分類はCDS(4項目0〜8点: 軽度1〜4点/中等症〜重症5〜8点、小児急性胃腸炎診療GL2017)を併用
次の一手

評価結果に応じて経口補水療法(ORT)または輸液へ(本シート§4と「脱水と水分補給」シート参照)。嘔吐でORTが進まない場合の制吐薬の考え方は詳細リファレンス参照。

出典

厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き」(4項目中2項目該当で体重5%以上の脱水が示唆)/日本小児救急医学会「小児急性胃腸炎診療ガイドライン2017」/Friedman JN, et al. J Pediatr 2004(Clinical Dehydration Scale)。URLは本シート詳細リファレンスの出典参照。

スコア

CDS:小児の脱水評価

急性胃腸炎の生後1〜60か月を対象とする参考尺度です。開発研究は1〜36か月、後続検証は1か月〜5歳。年齢と全項目を入力するまで区分を確定しません。

全身状態
眼の陥凹
粘膜(口腔内など)
涙

合計 — / 8点

全項目を選択すると判定が出ます。

最大8点。点数を脱水率や輸液量へ自動換算しません。ショック、意識低下、循環不良が疑われる場合は採点より対応を優先します。0点だけで帰宅を決めません。既往の体重と現在の体重、摂取・喪失量、尿量なども確認します。

出典:SickKids:Clinical Dehydration Scaleの採点表 / Friedmanほか(2004):1〜36か月での尺度開発 / Goldmanほか(2008):1か月〜5歳での検証

計算

ORS補正量の目安(4時間)

kg

重症(頻脈・末梢冷感・傾眠〜意識障害・ショック徴候)は経静脈輸液を優先 — この計算の対象外(本シート参照)。

いつ使う

急性胃腸炎などの軽症〜中等症脱水の欠乏量補正。ORSが第一選択(軽症・中等症とも)。数値は体重減少%に対応する目安(乳児: 軽症5%=50mL/kg・中等症10%=100mL/kg/年長児: 軽症3%=30mL/kg・中等症5〜6%=50〜60mL/kg)。

落とし穴
  • 乳児と年長児で同じ「軽症」でも補正量が異なる(体液組成の差)
  • NICEは年齢・軽重を区分せず「臨床的脱水あり」で一律50mL/kg(4時間)+維持量の簡略設計 — どちらの設計で運用するかは施設判断
  • 高Na血症性脱水(易刺激性・筋緊張亢進・けいれん)は急速補正を避け別管理
次の一手

4時間補正後に再評価→是正されていれば通常の食事・水分へ。進まなければ点滴適応の判断へ(本シート§4)。

出典

小児急性胃腸炎診療ガイドライン2017/NICE NG29/MSD Manual Professional(年齢別区分・Finberg分類由来)。全出典URLは本シート詳細リファレンス参照。

計算

輸液維持量(Holliday-Segar)

kg

等張液を第一に考える。低張液は医原性低Naのリスク。新生児(生後28日未満)は対象外。個別処方ではない。

いつ使う

点滴が必要になった場合の維持輸液量。Holliday-Segar式は古典的な出発点(個別処方箋ではなく考え方の例示)。最初の10kgまで100mL/kg、次の10kg(11〜20kg分)+50mL/kg、20kgを超える分+20mL/kg。

落とし穴
  • これは量の出発点であり、個別の処方ではない
  • Holliday-Segar式は「量」の計算式であって輸液の種類を規定しない。従来セットで使われてきた低張液(1/3〜1/4生食相当)は、嘔吐・疼痛・脱水による非浸透圧性ADH分泌と重なると医原性低Na血症・けいれんのリスクを上げる
  • AAP 2018: 生後28日〜18歳で維持輸液を要する患者には等張液を第一選択
  • 現代は「Holliday-Segar算出量をそのまま入れる」運用ではない。国内総説も「Holliday-Segar式に基づく従来の低張液から、より制限した輸液量での等張液選択が主流になっている」としている。高ストレス下の小児では算出量の1/3〜1/2に制限する提案もある
  • この式には上限が組み込まれていない。体重が大きいほど式をそのまま延長すると非現実的な量になる。院内の上限を決めておくこと
  • 除外(適用範囲外): 神経外科疾患、先天性/後天性心疾患、肝疾患、悪性腫瘍、腎機能障害、尿崩症、大量の水様性下痢、重度熱傷、生後28日未満またはNICU、18歳超
  • K追加は排尿(尿量)を確認し、腎機能に問題がないことを確認したうえで
  • 新生児(生後28日未満)は対象外
次の一手

維持輸液が必要なら等張液を第一に考える。Kは尿量確認と腎機能OKのうえで追加。経口摂取が可能になれば経口へ。

出典

Holliday-Segar式/坂井 2025 日小児腎臓病学会誌/Feld et al. AAP 2018 Pediatrics。全出典URLは本シート詳細リファレンス参照。

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5検査

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6処置・処方例

Rp. 1経口補水液(OS-1など。Na 50mEq/L) 5mLから5分おき、嘔吐なければ漸増。目安は体重あたり50〜100mL/kgを2〜4時間で補正 経口
第一選択。母乳・ミルクは薄めず通常濃度で継続
  1. OS-1を小さじ1杯(5mL)ずつ、5分おきに口へ。シリンジやスプーンで
  2. 吐かなければ、少しずつ1回量を増やす
  3. 2〜4時間で合計 —〜— を目安に飲ませる
  4. 母乳・ミルクは薄めずに続ける。スポーツドリンク・ジュースで代用しない
Rp. 2経静脈輸液 ショック:生理食塩水20mL/kgを急速投与。ショックでない脱水:ソリタT1号10〜20mL/kg/時で2〜3時間(院内方針院内) 点滴
可能ならNaを確認。高Na血症が疑われれば急速補正しない(脳浮腫・けいれん)。改善したら早めにORTへ戻す
  1. ショック(CRT延長・頻脈・意識低下):生理食塩水 — を急速投与し、脈拍・CRT・意識・尿量で再評価。必要なら反復
  2. ショックでない中等症〜重症の脱水:ソリタT1号(開始液)を —〜—/時で2〜3時間(院内方針院内)。その後は経口補水か維持輸液へ
  3. ルートをとったら簡易血糖。低ければ10%ブドウ糖を —/時(5mg/kg/分)で始め、血糖を見て速度を調節(厚労省 重篤副作用対応マニュアル)
  4. 可能ならNaを測る
オンダンセトロンは経口補水が進まないときのみ医師が個別に判断し、電解質異常があればQT延長に注意する。 避けること・注意:止痢薬(ロペラミド等。特に血便・EHEC疑いでは使わない)、オンダンセトロンの安易な使用、軽症例への一律の抗菌薬・制吐薬。
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7帰宅・入院の目安

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8診療中の疑問と回答

1回吐いたら経口補水は失敗?すぐ点滴にする?
単発の嘔吐だけで失敗としない。少量を頻回に与え、飲めた量、嘔吐・下痢による損失、尿量、反応・循環を繰り返し評価する。口から必要量を保てず脱水が続くなら、経鼻胃管による補水も選択肢。経腸補水が不適切・不成功なら点滴へ進む。ショックや意識障害は最初から救急対応とする。
根拠:RCH Gastroenteritis:補水不応、鑑別、退院条件 / 厚生労働省:抗微生物薬適正使用の手引き第三版(急性下痢症)
吐き気止めを出せば飲めそう。オンダンセトロンを使う条件は?
当院は院内原則使用しない。海外では主に6か月以上で、嘔吐により経口補水が進まない児への補助手段として検討される。国内では胃腸炎への適応外使用なので、必要性と説明を含め医師が個別判断する。電解質異常、QT延長や併用薬を確認し、下痢が主体なら利益は小さい。嘔吐が止まっても外科疾患などの除外にはならない。
根拠:CPS:急性胃腸炎に対する経口オンダンセトロン(海外推奨) / PMDA:オンダンセトロン注射液「サンド」電子添文 / RCH Gastroenteritis:補水不応、鑑別、退院条件
採血や便検査を追加する境目は?
軽く、補水に反応する典型例では全例に採血・便検査を行わない。点滴が必要な脱水、意識変容、遷延・再受診、基礎疾患がある場合は血糖・電解質を含め評価する。血便、強い腹痛、高熱、免疫不全や渡航歴は細菌性腸炎などを考えて便検査を選ぶ。嘔吐だけが続く児では胃腸炎以外の診断を見直す。
根拠:RCH Gastroenteritis:補水不応、鑑別、退院条件 / 厚生労働省:抗微生物薬適正使用の手引き第三版(急性下痢症)
血便が出たら抗菌薬を始める?
血便だけで経験的に抗菌薬を開始しない。腸重積などの外科疾患と、腸管出血性大腸菌を含む感染症を分け、便培養等を採取する。重い全身症状、低月齢、免疫不全では入院・専門科相談を優先する。EHEC疑いでは抗菌薬の利益が確立していないため安易に処方せず、尿量・顔色・血小板や腎機能などHUSの兆候を追跡する。
根拠:厚生労働省:抗微生物薬適正使用の手引き第三版(急性下痢症)
下痢が残る間は絶食や薄いミルクにする?
補水が進み状態が改善したら年齢相応の食事へ戻す。母乳を継続し、ミルクを一律に薄めない。下痢が残るだけで絶食を続けず、飲水と尿量をみる。乳糖除去も一律には行わず、通常食再開後に便回数が増えるなど必要な場合に検討する。糖の多いジュース・スポーツ飲料を経口補水液の代わりにしない。
根拠:RCH Gastroenteritis:補水不応、鑑別、退院条件 / 厚生労働省:抗微生物薬適正使用の手引き第三版(急性下痢症)
点滴で元気になった。帰宅前に何を確認する?
点滴直後の見た目だけで決めず、嘔吐が減り、経口で水分を保て、脱水・循環所見が改善したことを確認する。家庭で続ける補水法と再受診先を共有する。再び飲めない、尿が減る、反応が鈍い、緑色の嘔吐、血便や局在する強い腹痛は早期再評価。低月齢や基礎疾患、家庭での観察困難なら入院の閾値を下げる。
根拠:RCH Gastroenteritis:補水不応、鑑別、退院条件
腸重積はエコーがないと除外できない?
当直帯はエコーで外せない。血便が出る前でも、間欠的な啼泣・不機嫌の波があればそれだけで疑って動く。
オンダンセトロンは使う?
当院は院内原則使わない。経口補水が進まないときのみ医師が個別に判断し、電解質異常があればQT延長に注意する。
5mL/5分ルールの根拠は?
一般臨床で使われる方法で、国内一次GL(厚労省手引き・JAID/JSC)に直接の記載は確認できていない。
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10家族への説明

回数より、少量でも飲めるか・おしっこが出るか・反応があるかを見てください。経口補水液をスプーン1杯から。母乳やミルクは薄めなくて大丈夫です。市販の下痢止めは使わないでください。

一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。

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