4-24 熱性けいれん

緊急

4-24熱性けいれん

病態・根拠
このページの目次14項目

1発熱に伴う発作を、病態から読み分ける(2026-10-02追補)

発熱があっても、すべて熱性けいれんではない

熱性けいれんは、年齢による脳の発作の起こりやすさに発熱が重なったときに生じる発作で、中枢神経感染、明らかな代謝異常、過去の無熱性発作などで説明されるものは区別する。乳幼児期に多いのは脳の発達と遺伝的素因が関わるためで、「熱が高かったから」という一つの説明だけでは不十分である。発熱の原因と、発作後の回復を別々に診察する。[1]

単純型・複雑型は発作の特徴を記述する分類であり、複雑型という名称だけで脳障害やてんかんを確定するものではない。一方、焦点性、長い持続、同じ発熱機会での反復は、急性病変や将来の発作リスクを検討する手がかりになる。分類に用いる15分と、発作を止めるために動く5分を混同しない。呼吸循環の異常、持続時間不明の発作では、分類が決まるまで治療を待たない。[2]

年齢と既往に合うかを確認する

通常の年齢帯から外れる児、発熱より先に発作があった児、無熱時にも同様の出来事がある児は、熱性けいれん以外の診断を見直す。生後6か月未満では低血糖、電解質異常、中枢神経感染、代謝疾患などを優先する。年長児で反復する有熱時発作、発達の停滞、異なる型の発作が加わる場合は、てんかん症候群を含めて専門評価を計画する。[1]

回復を追うことが鑑別検査になる

発作後の眠気はありうるが、刺激への反応、視線、左右の動き、普段のやり取りが戻る方向に進んでいるかを繰り返し確認する。薬剤の鎮静作用だけで回復不良を説明しない。発作後の意識低下が持続・悪化する、瞳孔異常、新たな麻痺、繰り返す発作があれば、脳炎・急性脳症や重積を疑う。いったん改善してから再び悪化する二相性の脳症もあり、初日の回復や画像が正常であったことだけでは否定できない。[2][3]

髄膜刺激徴候は乳児では明瞭でない。発熱、哺乳低下、不機嫌、意識異常、紫斑、大泉門膨隆などを合わせて評価する。髄液検査は感染を疑うときに検討するが、新規巣症状・瞳孔異常・重度/進行する意識低下、呼吸循環不安定では保留する。検査待ちで安定化、抗菌薬、緊急相談を遅らせない。[2][4]

検査と予防薬が必要な理由を説明できるようにする

典型的な発作が短時間で終了し、完全に回復した児では、頭部CT・MRIや脳波を一律に行わない。画像で偶発所見が見つかっても、救急対応を変えるとは限らないからである。焦点症状、発作後麻痺、発達の遅れ、遷延・反復、回復不良がある場合には個別に画像・脳波を考える。当院で夜間に必要な画像を実施できなければ、検査可能な施設への相談につなぐ。[2]

解熱薬は不快感や飲水のつらさを和らげる目的で用い、次の発熱時の発作予防を保証するものとして説明しない。ジアゼパム坐剤の間欠予防は、本文の適応条件と院内方針に沿って選択する。眠気・ふらつきと呼吸状態の観察、他の鎮静薬との重なりを含めて家族に伝え、すべての児へ一律に処方しない。[1][5]

フォローで見るもの

再診では発熱源、再発の時刻と型、完全に普段へ戻ったか、哺乳・尿量を確認する。多くの児は良好に経過するが、単純型の一般的な見通しを、長時間発作や発達背景が異なる児へそのまま広げない。反復する焦点発作、無熱性発作、発達の停滞や退行、日常の短い反応停止が加われば、小児神経の評価を組む。家族には安全な体位、口へ物を入れないこと、時間を測ること、5分以上・反復して覚めない・呼吸異常の救急要請を具体的に渡す。[1][2]

追補の一次資料

2一目でわかるフロー

受診(発熱+けいれん様エピソード)
  → まず定義に合うか確認(6か月〜60か月・38℃以上・中枢神経感染症/代謝異常/てんかん既往なし)
  → レッドフラグ評価(髄膜刺激徴候・意識回復不良・けいれん遷延など該当あれば即・上位/紹介)
  → 単純型/複雑型/熱性けいれん重積状態の判定
  → 検査(要る/要らない)
  → 治療(発作時対応・必要なら予防投与の適応判断)
  → 再診・帰宅指導・紹介基準

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3レッドフラグ(見逃し厳禁)

  • 髄膜刺激徴候: 項部硬直、Kernig徴候・Brudzinski徴候、乳児では大泉門膨隆
  • ⚠ 乳児・低年齢児では髄膜刺激徴候が乏しい/欠如することが多く、陰性であっても細菌性髄膜炎の除外根拠にはならない。全身状態(活気・哺乳・機嫌・意識の質)を優先して評価する(小児髄膜炎における身体所見の限界に関する一般的知見)
  • 意識回復不良: 発作後も呼びかけに反応しない・視線が合わない・もうろう状態が遷延 → 髄膜脳炎など中枢神経感染症を疑い救急対応
  • けいれん遷延・けいれん重積状態: 5分以上発作が持続 → 薬物治療(頓挫)の開始を考慮すべき重積状態。30分以上持続、または意識が戻らないまま発作を反復する場合は長期後遺症のリスクにも注意が必要な重積状態
  • 複雑型熱性けいれん(詳細は2.): 焦点性所見(左右非対称、意識障害のみ等)、15分以上の発作、24時間以内の複数回反復
  • 初発が低月齢: 生後6か月未満での初発発作は定義上の熱性けいれんに当てはまらず、髄膜炎・代謝異常・てんかん等の除外診断を優先
  • 発作後の麻痺症状(Todd麻痺)・左右差
  • 繰り返す嘔吐、点状出血・紫斑(髄膜炎菌血症等の敗血症徴候を示唆)
  • てんかんの既往、先天性代謝異常の既往(これらがあれば定義上「熱性けいれん」から除外し別途精査)

4重症度・病型の判定

熱性けいれんの定義(GL2023): 主として生後6か月〜60か月(5歳)までに起こる、通常38℃以上の発熱に伴う発作性疾患で、髄膜炎などの中枢神経感染症、先天性代謝異常、その他の明らかな発作の原因がなく、てんかんの既往がないもの。

  • 単純型熱性けいれん: 発作様式がけいれん性(全身性)、15分以内に自然頓挫、24時間以内に発作は1回のみ
  • 複雑型熱性けいれん: 以下のいずれかを満たす場合
  • 発作様式がけいれん以外(焦点性所見、意識障害のみ等、左右非対称)
  • 15分以上持続する発作
  • 24時間以内に複数回発作を反復
  • 熱性けいれん重積状態: 発作が5分以上持続 → 治療介入(頓挫)を考慮すべき状態。30分以上持続、あるいは意識が回復しないまま反復する場合は長期予後にも留意すべき状態として区別

5検査

  • 必要:
  • 髄膜刺激徴候(項部硬直・大泉門膨隆等)や意識障害遷延など細菌性髄膜炎・脳炎を積極的に疑う所見がある場合の髄液検査・血液検査(CQ1-1, 1-2)
  • 焦点性所見や遷延性発作を伴う場合の頭部画像検査(CT/MRI)の考慮(CQ1-3)
  • 複雑型で脳波検査を考慮する場合は発作後7日以降の実施が望ましい(発作直後は非特異的異常が出やすく予測精度が落ちるため、CQ3-3)
  • ⚠ 5分以上遷延する発作、特にベンゾジアゼピン反応不良例では血糖測定(簡易測定可)を必須項目とする。低血糖はそれ自体が痙攣の原因・増悪因子となりうる可逆的病態であり、見落とすと薬物治療を重ねても発作が止まらない事態になりかねない(小児けいれん重積状態の初期対応における一般原則)
  • 不要・過剰になりがち:
  • 単純型で意識清明に回復した初回発作に対する、ルーチンの髄液検査・血液検査・頭部画像検査(CQ1-1, 1-2, 1-3)
  • 熱性けいれん既往児へのルーチン脳波検査(てんかん発症やけいれん再発の予測能は不確実、CQ3-1)

6治療

  • 第一選択:
  • 発作時対応: 気道確保・体位(側臥位)確保・発作時間の計測を最優先。多くは5分以内に自然頓挫する
  • 5分以上発作が持続する場合は治療介入(頓挫)を考慮。病院外ではミダゾラム口腔用液(ブコラム等)、医療機関では静注薬(ジアゼパム・ミダゾラム・ロラゼパムのいずれか)で発作を止める、あるいは静注が可能な施設へ搬送する
  • ⚠ ベンゾジアゼピン系薬剤(坐剤・口腔用液・静注薬いずれも)投与時・投与後はSpO2・呼吸状態を持続的にモニタリングし、酸素・吸引・バッグバルブマスクなど気道管理の準備を整えた上で投与する。院外投与(ブコラム等)後に院内でさらに投与する場合は呼吸抑制の累積リスクに特に注意する(重積状態管理の一般原則)
  • ⚠ ブコラム(ミダゾラム口腔用液)の位置づけに関する留保: 添付文書上の効能・効果は「てんかん重積状態」であり、日本小児神経学会の追加情報は「発作予防効果を期待する薬剤ではなく、てんかんや熱性けいれんというだけの理由で本剤を安易に処方すべきではない」と明記している。個々の患者で重積発作を繰り返す等、処方の必要性を専門医・主治医が個別に判断した上で家庭常備する場合にのみ選択肢となる(PMDA添付文書・学会追加情報「小児けいれん重積治療ガイドライン2017追加情報:ミダゾラム口腔用液(ブコラム®)について」で確認)
  • 予防投与(発熱時ジアゼパム坐剤)の適応: 単純型へのルーチン投与はGL上推奨されない。適応となるのは、①15分以上の遷延性発作の既往がある、または②次の6項目(i. 焦点発作または24時間以内の反復発作、ii. 熱性けいれん前からの神経学的異常・発達遅滞、iii. 熱性けいれん/てんかんの家族歴、iv. 初回発作が生後12か月未満、v. 発熱後1時間未満での発作、vi. 発作時体温38℃未満)のうち2つ以上を満たす熱性けいれんが2回以上発生している場合(CQ4-1)。※単純な「再発予測因子(家族歴・1歳未満発症・発熱後1時間以内・発作時体温39℃以下)」は5.再診セクションの再発率説明用の一般論であり、予防投与適応の判定基準としては用いない
  • 用量の考え方(一般論・体重換算): ジアゼパム坐剤 0.4〜0.5mg/kg/回(1回最大10mg)を目安に、発熱(目安37.5℃前後)に気づいた時点で速やかに1回目を挿入し、38℃以上の発熱が8時間後も続く場合に限り2回目を追加して終了する、という二相性投与が一般的な考え方。1日総量は1mg/kgを超えない(添付文書上の日量上限)。※個別の処方量・回数は添付文書・院内採用規格・診察所見に基づき医師が決定。本ファイルには患者個別値は記載しない
  • 第二選択・無効時:
  • 遷延性発作を繰り返す例、ジアゼパム坐剤による予防でもコントロール困難な例では、抗てんかん薬の内服は原則として推奨されないが、頻回の重積を繰り返す等の特殊例では専門医判断のもとで考慮されうる(CQ5-1)
  • ⚠ 急性期エスカレーション基準: ベンゾジアゼピン系薬剤を規定回数(施設プロトコルに従い通常1〜2回)投与しても発作が終息しない場合は、直ちに二次治療薬(ホスフェニトイン・フェノバルビタール・レベチラセタム等の静注抗てんかん薬)投与が可能な高次医療機関へ搬送する。愛育病院での実際の搬送先・院内採用薬・二次治療薬の可否は6.院内ローカルルールの確認と合わせて確定する
  • 上記に該当する場合、または診断・治療方針に迷う場合は小児神経専門医への紹介を検討
  • やってはいけない/非推奨:
  • 単純型に対するルーチンのジアゼパム坐剤予防投与(過鎮静・傾眠により、髄膜炎・脳炎による意識障害の遷延を見逃すリスクがあるため)
  • 解熱薬をけいれん再発の予防目的で投与すること(発作予防効果・発作頻度増加のいずれについても医学的根拠なし、CQ6-1)。ただし発熱による苦痛緩和目的での解熱薬使用自体は問題ない

7再診・帰宅指導・保護者説明

  • 再受診すべきサイン(保護者に伝える):
  • けいれんが5分以上続く、または止まらない → ためらわず救急要請(119番)
  • けいれんが止まった後も呼びかけに反応しない・視線が合わない・ぐったりしている(意識回復不良)
  • 24時間以内にけいれんを繰り返す
  • 首が硬い、大泉門が膨らんでいる、繰り返す嘔吐
  • 発作後に手足の動きに左右差・麻痺が残る
  • 発作中にやってはいけないこと(保護者に伝える):
  • 口の中に指や物(箸・タオル等)を入れない、無理に体を押さえつけない
  • 意識がはっきり戻るまで飲食物や薬(解熱薬含む)を与えない
  • 側臥位を保ち、周囲の危険物を除け、発作の様子と持続時間を記録する
  • 経過の見通し:
  • 多くは5分以内に自然に治まり、その後もうろうとした状態を経て徐々に意識が清明に回復する
  • 再発率: 全体ではおよそ3人に1人(約30%程度)が再発する。再発予測因子(家族歴・1歳未満発症・発熱後1時間以内の発作・発作時体温39℃以下)がない場合は約15%程度とより低い
  • てんかん移行: 熱性けいれんを経験した児の9割以上はてんかんを発症しない
  • 予防接種: 熱性けいれんの既往があっても、十分な説明と同意のもとですべての予防接種を接種してよい(CQ8-1)。接種後発熱時の対応(ジアゼパム予防投与中であれば継続方針)は個別に説明
  • 紹介・入院の閾値:
  • 複雑型熱性けいれん、熱性けいれん重積状態(特に30分以上/意識回復不良を伴う反復)
  • 髄膜炎・脳炎を疑う所見がある場合(即日紹介・搬送)
  • 初発が生後6か月未満などの非典型例
  • 短期間に重積を繰り返す例、抗てんかん薬導入の判断が必要な例
  • 保護者の不安が強く外来管理が困難な場合

8出典

決定=上記のうちCQ4-1(予防投与適応の6項目・2回以上要件)・CQ4-2(用量0.4〜0.5mg/kg・最大10mg)は確認済み(2026-09-26、日本小児神経学会公式サイトのPDF全文照合+書籍2点で独立確認)。日本小児神経学会公式サイトのPDF原文(GL2023原本58〜65ページ)をClaudeが全文取得・照合し、一字一句の一致を確認した。加えて『小児てんかんの最新医療』p.220、『熱性けいれん診療ガイドライン2015版』p.21の独立した書籍出典でも同一数値・要件が確認できている。診断と治療社刊行の原著(ISBN 9784787825643)現物との目視突合は未確認のまま。

※ 点数・GLは改定される。運用前に最新版を確認。

9臨床医が迷う場面

10短い単純型を1回起こした児に、次の発熱に備えてジアゼパムを出す?

初回の短い単純型だけを理由に一律処方はしない。発作の長さ・焦点性・反復、発達歴などから本文の予防適応を確認する。適応がある場合も、再発を減らす利益と眠気・ふらつき、呼吸抑制や感染性の意識障害を見分けにくくする不利益を説明し、家庭での観察・救急要請の手順を一緒に決める。

出典:熱性けいれん診療ガイドライン2023:ジアゼパム坐剤

11解熱薬を定時に使えば予防薬の代わりになる?

ならない。別の発熱機会での熱性けいれん再発を、解熱薬で防げる根拠はない。苦痛を和らげ飲水しやすくする目的で使う。同じ発熱中の反復についての研究結果と、次の発熱時の再発予防は分けて説明する。熱が再上昇すること自体を恐れ、解熱薬を過量・頻回に使わせない。

出典:熱性けいれん診療ガイドライン2023:解熱薬

12予防坐剤を使ったのに発作が起きたら、追加して待ってよい?

発作の持続時間、呼吸と反応を先に確認する。5分以上持続する、反復して意識が戻らない、呼吸が悪い場合は救急要請・重積対応へ進む。予防坐剤は速やかな発作停止を保証しない。前回の薬名・量・時刻を搬送先に伝え、家庭で予定外の追加を重ねない。

出典:熱性けいれん診療ガイドライン2023:初期対応 / 熱性けいれん診療ガイドライン2023:ジアゼパム坐剤

13解熱後も眠い児を、坐剤の副作用として帰してよい?

薬の眠気だけで説明せず、呼びかけへの反応、呼吸、左右差、発熱源を再評価する。意識が改善しない・悪化する、反復発作や髄膜刺激所見がある場合は中枢神経感染症・急性脳症を考える。当院の当直帯に画像が撮れなくても、必要な上位施設への相談を遅らせない。

出典:熱性けいれん診療ガイドライン2023:初期対応 / 熱性けいれん診療ガイドライン2023:ジアゼパム坐剤

14予防坐剤を何歳まで続ける?再処方時に何を確認する?

発作がなくても自動更新せず、最終発作日・発作型・現在の年齢・副作用を確認する。ガイドラインは最終発作から1〜2年、または4〜5歳までを見直しの目安としているが、明確な期間の根拠はない。無熱性発作、年長期の反復、発達の退行があれば、予防処方の延長より診断再評価・小児神経紹介を優先する。

出典:熱性けいれん診療ガイドライン2023:ジアゼパム坐剤

一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。

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