11-20 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)

緊急

11-20糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)

病態・根拠
このページの目次13項目

1病態・根拠(医師確認前の原稿)

小児DKAの病態を初期判断につなぐための学習用整理。当院は初期輸液とカリウム補正を開始して専門施設へ搬送する方針であり、この節だけで持続インスリン投与や輸液速度を決定しない。

2高血糖だけの病気ではない

医師確認前の学習用原稿。当院は初期輸液とカリウム補正を開始して専門施設へ搬送する方針であり、この節だけで持続インスリン投与や輸液速度を決定しない。

インスリン作用が不足すると、血糖の上昇とともに脂肪分解・ケトン体産生が進む。ケトン体による代謝性アシドーシス、浸透圧利尿による水分・電解質の喪失、循環血漿量の低下が重なった状態がDKAである。小児の1型糖尿病では発症時から絶対的インスリン欠乏となりうる。[1][2]

腹痛・嘔吐・深い呼吸は、それぞれ腹部疾患や呼吸器疾患に見えても、アシドーシスと脱水で説明できる。多飲・多尿・体重減少を短く聞き、血糖だけでなく血液ガスとケトン体を合わせて確認する。血糖が著しく高くないDKAもあるため、血糖値だけで除外しない。[1][2]

3小児の診断基準と読み違えやすい点

日本糖尿病学会の第20章は、高血糖、ケトーシス、アシドーシスを特徴として記載し、血糖250 mg/dL超、動脈血pH 7.30以下、HCO3⁻ 18 mEq/L以下を挙げる。一方、BSPED小児ガイドラインは血中β-ヒドロキシ酪酸3 mmol/L超と、pH 7.3未満またはHCO3⁻ 15 mmol/L未満を小児DKAの定義に用いる。両資料は血糖とHCO3⁻の記載が異なり、BSPEDはpHとHCO3⁻の関係を明示する。日本糖尿病学会の記述を機械的な「すべて必須」の判定式と解釈せず、境界例は専門施設と共有する。[1][2]

血中β-ヒドロキシ酪酸は診断後の推移を追うのに有用である。尿ケトンは代替の診断手段になるが、BSPEDは治療反応の監視には適さないとしている。血糖が下がってもケトーシスとアシドーシスが残ることがあり、「血糖が改善した=DKAが解消した」としない。[2]

インスリンを保留する低カリウム血症の閾値にも資料差がある。日本糖尿病学会の第20章は3.3 mEq/L未満、BSPED小児ガイドラインは3.0 mmol/L未満を挙げる。既存シートは前者を採用しているが、当院の小児用プロトコルとしての最終確認が必要である。[1][2]

4電解質と循環を同時に見る理由

浸透圧利尿と嘔吐で体内の水分・ナトリウム・カリウムが失われる。血清カリウム値は総体内量をそのまま表さず、インスリンとアシドーシスの改善でさらに低下しうる。インスリン開始前から電解質と尿量を把握し、低カリウム血症を伴う場合は投与順序を変える必要がある。[1][2]

脱水の補正とショックの蘇生を混同しない。BSPEDはショックでは少量ずつ輸液して毎回循環を再評価し、ショックでない児への初回輸液とは計算上の扱いを分ける。当院の搬送前対応は既存の院内方針に従い、意識・末梢循環・呼吸・尿量を反復して確認する。[2]

5脳障害を単純な「輸液過多」だけで説明しない

小児DKAでは治療前後に脳障害が起こりうる。BSPEDは脳浮腫の機序はなお十分に分かっておらず、特に年少児や糖尿病初発例で注意が必要としている。PECARNの小児ランダム化試験では、比較した輸液速度と食塩濃度の群間で神経学的転帰に有意差は認めなかった。したがって「速い輸液だけが脳浮腫の原因」と断定して、必要なショック治療を遅らせない。[2][3]

新たな頭痛、反復する嘔吐、意識の変化、徐脈、瞳孔異常などは連続して観察する。脳障害を疑えば画像を待たずに上級医と受入先へ直ちに連絡し、高張食塩水またはマンニトールによる緊急治療を院内手順・専門医指示で開始する。搬送だけを待つ状態にしない。薬剤の選択・用量は現場で原典と院内手順を照合する。[2]

6治療の順番が病態に対応する

循環を評価して輸液を開始し、カリウムを確認したうえで、インスリンは急速静注せず持続投与する。日本糖尿病学会は小児で初期ボーラスを行わず、十分な輸液後少なくとも1時間を置いて持続投与を開始すると記載する。インスリンを早く大量に入れることより、循環・電解質・ケトーシスを安全に改善することが目的である。[1]

当院は持続インスリン管理を院内で始めず搬送するとの既存決定がある。搬送時は初回の血糖、pH・HCO3⁻、ケトン体、カリウム、意識と循環所見、開始した輸液の量と時刻を一組で伝える。小児内分泌・集中治療を要する可能性を早期に相談する。

7出典・適用範囲

  1. 日本糖尿病学会.糖尿病診療ガイドライン2024 第20章。臨床像、診断と治療の記述を2026-10-01に原文確認。成人を含む章のため輸液量を小児へそのまま転用しない。
  2. British Society for Paediatric Endocrinology and Diabetes.Guideline for the Management of Children and Young People under the Age of 18 Years with Diabetic Ketoacidosis(2021、公開ページ更新2024-11-26)。小児の診断、輸液、モニタリング、脳障害の節を2026-10-01に確認。英国のガイドラインであり院内の薬剤採用・搬送体制を代替しない。
  3. Kuppermann N, et al. Clinical Trial of Fluid Infusion Rates for Pediatric Diabetic Ketoacidosis. N Engl J Med. 2018;378:2275–2287. 小児ランダム化試験の結果を2026-10-01に確認。比較した輸液条件外へ結果を広げない。

8重炭酸・リンの緊急例外

routine投与と緊急例外は区別する。生命危機の高K、pH < 6.9+心収縮障害の重炭酸、リン < 1 mg/dLの補正等は専門医と直ちに判断する。院内の実行薬・採用・調製・監視は未確定であり、この節で自動投与を指示しない。[4]

9小児の診断基準とHHSとの分岐

小児DKAは高血糖(200 mg/dL超)、ケトーシス、静脈血pH < 7.30またはHCO3⁻ < 18 mEq/Lの組合せで判断する。血糖250 mg/dL超という成人を含む資料の基準だけを使うと小児を見逃し得る。部分治療例などでは著明な高血糖がないDKAもある。pHが正常でケトンが乏しくても、著明な高血糖・高浸透圧・重い脱水や意識異常を伴うHHS、DKAとの混合病態は緊急管理が必要になる。専門外来の予約だけで対応を終了しない。[4]

  1. ISPAD.Clinical Practice Consensus Guidelines 2022: Diabetic ketoacidosis and hyperglycemic hyperosmolar state。小児の診断三徴、正常血糖DKA、HHSの分岐。既存の院内輸液・インスリン実施範囲を独断で変更する資料ではない。

10臨床医が迷う場面

11輸液で血糖が下がった。DKAは改善したと考えてよい?

血糖低下だけではケトアシドーシスの解消を示さない。意識、循環、pH・重炭酸、ケトン、Na・Kを経時的に評価する。血糖が下がっても必要な治療を続けられるよう糖の併用を検討するが、当院では持続インスリンを開始せず早期搬送の方針を守る。

出典:日本糖尿病学会 糖尿病GL2024第20章 / BSPED 小児DKA指針(海外)

12治療中に頭痛・嘔吐が増えた。胃腸炎の症状として待てる?

新しい頭痛、意識悪化、徐脈、呼吸変化はDKA関連脳障害を疑う。血糖と循環を再評価し、直ちに上級医・受入先へ連絡する。CT撮影や搬送の完了を待たず緊急治療の必要性を判断する。治療開始前の意識状態と変化を時刻付きで伝える。

出典:日本糖尿病学会 糖尿病GL2024第20章 / BSPED 小児DKA指針(海外)

13Kが正常なら、補充や監視は不要?

血清Kが正常でも総体内Kは不足していることがあり、治療に伴って急低下し得る。腎機能・尿量と心電図、反復採血で監視する。補充量・速度は小児の計画で管理し、成人の固定速度を使わない。低K時のインスリン開始・増量は本文の閾値と専門指示に従う。

出典:日本糖尿病学会 糖尿病GL2024第20章 / BSPED 小児DKA指針(海外)

一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。

スペースで絞り込み(例:夜尿症 休薬)↑↓ 移動 / Enter 開く