11-20糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
高血糖・アシドーシス・意識障害
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次10項目
1ポイント
- 腹痛・嘔吐で来る。急性腹症と誤診されることもある。1型糖尿病の初発がDKAで来る。
- 多飲・多尿・体重減少+嘔吐を見たら血糖を測る。急性腹症として扱わない。
- 小児ではインスリンをボーラスで打たない。輸液を十分に行い、少なくとも1時間たってから持続投与を開始する。
- カリウムが3.3mEq/L未満ならインスリンを始めない・増やさない。先に補充する。血糖の低下は急がず、50〜75mg/dL/時を目安にする。
- 当院は院内輸液とカリウム補正のみ行い、インスリン持続静注は行わず速やかに搬送する。
判断の流れ
拡大して見る ↗2鑑別のながれ
- 腹痛・嘔吐→多飲多尿・体重減少・深い呼吸がある→DKA。血糖を測る
- 腹痛・嘔吐→上記がない→急性胃腸炎・急性腹症(虫垂炎など)
- 深い呼吸(Kussmaul様)→血液ガス正常→過換気症候群
- 意識障害→血糖・アシドーシスが顕著→DKA
- 高血糖→アシドーシスが軽くケトンが乏しい→高血糖高浸透圧症候群
3重症度(静脈血pH・HCO3⁻ mEq/L)
| 軽症 | 静脈血pH<7.30 または HCO3⁻<18 | 輸液とカリウム補正を開始し、受け入れ先に連絡する |
|---|---|---|
| 中等症 | 静脈血pH<7.20 または HCO3⁻<10 | 輸液とカリウム補正を開始し、受け入れ先に連絡する |
| 重症 | 静脈血pH<7.10 または HCO3⁻<5 | 輸液とカリウム補正を開始し、搬送を急ぐ |
→ 横にスクロールできます
4検査
- 血糖(最優先)
- 血液ガス(pH・HCO3⁻)
- 尿ケトン/血中β-ヒドロキシ酪酸(出なければ尿ケトンで代える)
- 電解質(カリウムを必ず)、腎機能、血算
- 感染の検索(誘因になる)
- 小児DKAの診断:血糖200mg/dL超・ケトーシス・静脈血pH<7.30またはHCO3⁻<18mEq/Lの3徴。血糖が著明でない例もある
- 正常血糖DKA:血糖250(または200)mg/dL以下でもDKAはありうる(SGLT2阻害薬使用中・妊娠中など)。血糖が高くないことを否定の根拠にしない
5処置・処方例
Rp. 1生理食塩水(初期輸液) 非ショック=10mL/kgを30分(脱水補正量から差し引く)+脱水量(軽症・中等症5%/重症10%)+維持量(Holliday-Segar式・体重上限75kg)を48時間で均等投与。ショック=10mL/kgを15分で開始し10mL/kgずつ反復、合計40mL/kgでイノトロープ検討 点滴
成人の「500〜1,000mL/時」を小児に当てはめない。意識・循環・電解質を反復評価し、循環不全を適切に治療する。ショックで合計40mL/kgに達しても改善しなければ上級医コール・搬送前倒し(下記「送る」参照)
- 非ショック:生理食塩水 —(10mL/kgを30分で投与。この分は脱水の補正量から差し引く)
- 非ショック:脱水量(軽症・中等症=体重の5%、重症=体重の10%と仮定)+維持量(Holliday-Segar式、体重の計算上限75kg)を48時間かけて均等に投与する
- ショック:生理食塩水 —(10mL/kgを15分で開始)。反応を見ながら10mL/kgずつ反復し、合計 —(40mL/kg)に達しても改善しなければイノトロープを検討し上級医コール・搬送を前倒しする
- 血糖が250〜300mg/dLになったらブドウ糖を含む低張電解質輸液へ切り替える
- 頭痛・嘔吐・意識悪化・徐脈などの脳障害徴候を観察。疑えば画像/搬送を待たず上級医・受入先と緊急治療を開始する
Rp. 2カリウム 輸液500mLにKCl 20mmol(濃度40mEq/L)を加えて補充。最大0.5mmol/kg/時を超えない。血清カリウムが3.3mEq/L未満ならインスリンを開始・増量しない 点滴に添加
成人の「20〜30mEq/時」を小児に当てはめない(院内方針院内)。40mEq/Lを超える濃度は中心静脈路が要る。高カリウム血症があれば排尿を確認するまで待つ。心電図でT波を見る
- KCL補正液(またはアスパラカリウム注射液、いずれも1mEq/mL)を点滴に混ぜる。原液のまま静注しない
- 輸液500mLにKCl 20mmol(40mEq/L)。速度は —/時(0.5mmol/kg/時)を超えない
- 心電図でT波をモニターする
当院ではインスリン持続静注を開始しない。輸液とカリウム補正のみ行い速やかに搬送する。以下は搬送先の治療内容を把握するための参考情報:インスリン持続静注は輸液を十分に行い少なくとも1時間たってから開始し、速効型インスリンを0.05〜0.1単位/kg/時を目安に持続静注する(小児ではボーラス投与は行わない。脳浮腫のリスク)。希釈の目安は速効型インスリン50単位を生理食塩水500mLに混注(0.1単位/mLとなる)し、体重×1mL/kg/時で流せば0.1単位/kg/時にあたる。血糖は50〜75mg/dL/時の速度で低下することが期待される。重炭酸・リンのroutine投与と緊急例外を区別する。生命危機の高K、極端な酸血症と心機能低下、重い低リンでは一律に禁止せず、適応・開始時点・院内実行薬を専門医へ直ちに確認する。 避けること・注意:小児へのインスリンボーラス、K3.3mEq/L未満でのインスリン開始・増量、血糖を急いで下げること。重炭酸・リンを自己判断でroutine投与しないが、緊急例外は専門医と直ちに判断する。
↑ このページの入口へ6帰宅・入院の目安
- 搬送・紹介初期輸液とカリウム補正は当院で開始する。送り先に着くまでの時間を無駄にしない、ショック輸液が合計40mL/kgに達しても改善しない:持てない。イノトロープを検討しつつ上級医コール・搬送を前倒し、脳障害を疑う頭痛・嘔吐・意識悪化・徐脈等:画像/搬送待ちで治療を遅らせず、上級医・受入先へ緊急連絡。高浸透圧療法は院内採用と専門医指示で実施し集中治療施設へ、意識障害・ショック:持てない。初期蘇生後に搬送、1型糖尿病の初発:当院は院内急性期の安定化まで。導入教育は専門施設、pH正常・ケトン軽度でもHHSや混合病態を除外できない。意識・循環・脱水・高浸透圧を評価し専門施設へ直ちに相談
7診療中の疑問と回答
- 輸液で血糖が下がった。DKAは改善したと考えてよい?
- 血糖低下だけではケトアシドーシスの解消を示さない。意識、循環、pH・重炭酸、ケトン、Na・Kを経時的に評価する。血糖が下がっても必要な治療を続けられるよう糖の併用を検討するが、当院では持続インスリンを開始せず早期搬送の方針を守る。
根拠:日本糖尿病学会 糖尿病GL2024第20章 / BSPED 小児DKA指針(海外) - 治療中に頭痛・嘔吐が増えた。胃腸炎の症状として待てる?
- 新しい頭痛、意識悪化、徐脈、呼吸変化はDKA関連脳障害を疑う。血糖と循環を再評価し、直ちに上級医・受入先へ連絡する。CT撮影や搬送の完了を待たず緊急治療の必要性を判断する。治療開始前の意識状態と変化を時刻付きで伝える。
根拠:日本糖尿病学会 糖尿病GL2024第20章 / BSPED 小児DKA指針(海外) - Kが正常なら、補充や監視は不要?
- 血清Kが正常でも総体内Kは不足していることがあり、治療に伴って急低下し得る。腎機能・尿量と心電図、反復採血で監視する。補充量・速度は小児の計画で管理し、成人の固定速度を使わない。低K時のインスリン開始・増量は本文の閾値と専門指示に従う。
根拠:日本糖尿病学会 糖尿病GL2024第20章 / BSPED 小児DKA指針(海外)
- 腹痛の子に糖尿病は考える?
- 考える。腹痛・嘔吐で来た子に多飲多尿・体重減少があれば血糖を測る。急性腹症として扱わない。
- インスリンはすぐ始める?
- 始めない。輸液を十分に行い、少なくとも1時間たってから開始する。ボーラス投与はしない。
- カリウムが低いときは?
- 3.3mEq/L未満ならインスリンを始めない・増やさない。先に補充する。
- 搬送前に何を伝える?
- 血糖・pH・HCO3⁻・カリウム・意識レベルをセットで伝える。開始した輸液の種類・量・時刻、インスリンを始めたか(始めていなければその理由)も伝える。
9家族への説明
インスリンが足りなくなって、血液が酸性に傾いた状態です。吐き気やお腹の痛みで来られることが多く、胃腸炎と間違われやすい病気です。治療は点滴から始め、血糖や電解質、意識の変化を繰り返し確認しながら進めます。集中的な管理が必要なので設備のある病院へ移っていただきます。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。