5-4こどもの便秘
このページの目次15項目
1要点(3行)
2いつ使う・いつ使わない(適応/非適応)
- 使う(適応):
- Rome IV基準を満たす、または基準を満たさなくても排便回数減少・排便時痛など臨床的に便秘が疑われる児の評価・治療[1][3]
- fecal impaction(便塞栓)が疑われる/確認された児へのdisimpaction(経口薬または経直腸治療)[1]
- disimpaction後、または便塞栓のない機能性便秘に対する維持治療(生活・食事指導+薬物療法)[1]
- red flags(表8-3参照)陽性例の、専門施設への紹介前提での基礎疾患検索[1]
- 使わない・過剰になりがち:
- グリセリン浣腸を維持治療として反復連用すること(連用による耐性化・効果減弱・薬剤依存のリスクが添付文書上も明記されている)[5]
- fecal impactionを解除しないまま浸透圧性下剤の維持量だけで様子を見ること(効果が出にくい)[1]
- red flagsを認める児に、精査を後回しにして機能性便秘としての薬物治療だけを先行させること[1]
- 腎機能を確認せずに酸化マグネシウムを漫然と継続すること(高マグネシウム血症のリスク)[6]
3実際(読み方・基準値・手技・スケジュール等)
2-1. 診療の基本フロー
JSPGHANガイドラインの診療フローチャートは以下の順で進む[図4-1/図8-1再掲][1]。
- 便秘の症状・病歴・身体所見を確認
- red flagsの有無を確認 → 陽性なら専門施設で基礎疾患検索
- red flags陰性なら、身体所見+必要に応じ画像検査でfecal impactionの有無を判定
- fecal impaction陽性ならdisimpactionを先行
- 生活・排便・食事指導+薬物治療(維持療法)を開始
- 経過良好なら治療継続→治癒、経過不良なら専門家にコンサルト
2-2. 診断基準(Rome IV)
Rome IVでは年齢で基準が分かれる。いずれも1か月以上、週1回以上の頻度で以下のうち2項目以上を満たす場合に機能性便秘と診断する(器質性疾患を示唆する所見がないことが前提)[3]。
| 乳幼児(発達年齢4歳未満) | 児童・思春期(発達年齢4歳以上) | |
|---|---|---|
| 排便回数 | 週2回以下 | トイレでの排便が週2回以下 |
| 便失禁 | - | 週1回以上の便失禁 |
| 我慢姿勢 | 便貯留の既往 | 我慢姿勢・意図的な便の我慢の既往 |
| 排便時痛 | 痛みを伴う・硬い便の既往 | 痛みを伴う・硬い便の既往 |
| 便塊 | 直腸内の大きな便塊 | 直腸内の大きな便塊 |
| 便径 | 大径便の既往 | トイレを詰まらせるような大径便の既往 |
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- Rome基準に合致しなくても、排便回数が少ない・排便に苦痛を伴う例は便秘と診断し治療対象としてよい[1]。
- 過敏性腸症候群(IBS)の基準を満たさないことも要件(IBS随伴の便秘型は別カテゴリー)[1]。
2-3. fecal impaction(便塞栓)の診断
以下のいずれかがあればfecal impactionを疑う(表8-1/表10-1)[1]。
- 腹部触診で便塊を触知
- 直腸指診で便塊を触知
- 画像上、直腸に便塊を認める
- いきんでいるが出ないとの訴え
- overflow incontinence(漏便)がある
- 少量の硬い便が出ている
- 最後の排便から5日以上経過
- 便性状評価にはBristol stool form scale(1=硬いコロコロ便〜7=水様便)が簡便で客観的[1]。
- overflow incontinence(漏便)を「下痢」「便失禁」「遺糞症」と別々に誤診しやすい点に注意(実際は同じ病態の表現型の違い)[1]。
- 直腸指診は診断に有用だが侵襲的手技。目的説明・同意取得・プライバシー確保・付添者立会・施行者の性別配慮が必要。同意が得られない場合は腹部触診・画像検査で代替する[1]。
- 画像診断(腹部X線・腹部超音波)はfecal impaction自体の診断・重症度評価としては限定的なエビデンスで、「直腸指診が困難」「難治傾向の評価」「基礎疾患除外」が必要な場合に行う(推奨度B)[1]。
2-4. disimpaction(便塊除去)
fecal impaction陽性例は、経口薬・経直腸治療(浣腸・坐薬)・両者の併用のいずれかで行う。優劣を示す強いエビデンスはなく、家族を意思決定に参加させて選択する(推奨度B)[1]。
| 経路 | 薬剤(一般名) |
|---|---|
| 経直腸(浣腸) | グリセリン浣腸液 |
| 経直腸(坐薬) | ビサコジル/炭酸水素ナトリウム+無水リン酸二水素ナトリウム |
| 経口(浸透圧性) | 酸化マグネシウム/水酸化マグネシウム/ラクツロース |
| 経口(刺激性) | ピコスルファートナトリウム/センノシド |
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- 実施期間の目安: 数日〜1週間。必ず再診し効果判定を行う。排便日誌の活用が有効[1]。
- 国際GL(NASPGHAN/ESPGHAN 2014)は経口PEG(1〜1.5 g/kg/日を3〜6日間)をdisimpactionの第一選択としているが、当時の日本にはPEG3350+電解質の保険適応がなく、JSPGHANガイドライン本体(2013年版)の表には掲載されていない[1][2]。現在はモビコール(PEG製剤)に小児の便秘症適応があるが、添付文書の用法用量は通常の段階増量法であり、高用量disimpactionプロトコルとしての用量・投与法は明記されていない点に注意(下記2-6参照)[4]。
- disimpactionが奏効しない、外来治療が困難な重度impactionでは、入院治療または全身麻酔下摘便を要することがあるため、小児便秘症の治療経験豊富な小児科医・小児外科医への紹介を検討する[1]。
- 治療開始時は一過性に症状(腹痛・漏便)が強くなり得ることを、事前に患者・養育者へ説明しておく[1]。
2-5. グリセリン浣腸(体重換算・手技の考え方)
添付文書上の用法用量は年齢・症状により適宜増減で、体重換算のmg/kg式は設定されていない(用量は「年齢」ベースで調整する薬剤)[5]。
- 用量: 通常1回10〜150 mLを直腸内注入。年齢・症状により適宜増減[5]。
- 決定:体重換算の目安: 添付文書自体は体重換算を示していないが、体重換算では1〜2 mL/kg/回を院内基準とする(例:10kg→10〜20mL、20kg→20〜40mL、40kg→40〜80mL。添付文書の10〜150 mLの範囲内)。1〜2 mL/kgは『直伝 小児の薬の選び方・使い方』p.165、『小児疾患の診断治療基準』p.67、『医療的ケア児・者 在宅医療マニュアル』p.122、『子供の便秘はこう診る』p.109/112/117/124の4点で独立に一致する[8][9][10][11]。乳児は添付文書上「慎重投与」のため1 mL/kg寄り、年長児は2 mL/kg寄りという運用が考えられるが、これは年齢帯別の絶対量表からの推測であり、per-kgで直接記載した出典はない点に注意する。大阪小児科医会の目安(体重1kgあたり1〜1.5 g、10kgで約15g、4〜5歳で20〜30g)とも整合する[12]。詳細は浣腸の「量」節。
- 挿入深度の目安: 乳児3〜4 cm/小児3〜6 cm/成人5〜6 cm[5]。
- 体位: 左側臥位。立位での実施は禁止(直腸穿孔リスク)[5]。
- 禁忌: 腸管内出血・腹腔内炎症のある患者、腸管穿孔またはそのおそれのある患者、全身衰弱の強い患者、下部消化管術直後、急性腹症が疑われる患者[5]。
- 乳児への注意: 添付文書上「乳児に投与する場合は慎重に投与すること。患児側の反応を十分に把握できない場合、過量投与に陥りやすい」と明記されている=乳児は年齢の割に少量から[5]。
- 連用回避: 連用による耐性増大等で効果が減弱し薬剤に頼りがちになるため長期連用を避ける(disimpactionの補助として使い、維持療法の主軸には据えない)[5]。
2-6. 維持療法(PEG/酸化マグネシウム/ラクツロース)
維持療法は原則として浸透圧性下剤(塩類下剤・糖類下剤)から開始する(推奨度C1)。効果発現に数日を要すること、十分な水分摂取が必要なことを事前に説明する[1]。JSPGHANガイドライン表11-2では、乳児期の浸透圧性下剤として「ラクツロース・酸化マグネシウム・マルツエキス」の3剤が挙げられている(幼児期以降は酸化マグネシウム・ラクツロース・水酸化マグネシウムが中心)[1]。
マルツエキス ── モビコール(1歳以上)・マグミット等の酸化マグネシウム製剤(銘柄により1歳以上)が使えない1歳未満児で使える浸透圧性下剤の代表[1]。
- 添付文書上の小児投与量の目安:6か月未満 1回3〜6 g/6か月以上1歳未満 1回6〜9 g/1歳以上3歳未満 1回9〜15 g、いずれも1日2〜3回経口投与[1]
- 主成分は麦芽糖(マルトース)で、副作用はほとんどないとされる[1]
- 一般用医薬品・医療用医薬品の両方が流通しており、医療用は保険適応がある[1]
モビコール配合内用剤(PEG/マクロゴール4000) ── 慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)。2026年9月改訂で1歳の用量が追加された[4]。
- 1歳:初回LD1包を1日1回。調整後は1日1〜2回、最大1日LD2包(1回LD2包=HD1包)。
- 2歳以上7歳未満:初回LD1包を1日1回。7歳以上12歳未満:初回LD2包またはHD1包を1日1回。最大1日LD4包(1回LD2包=HD1包)。
- 1〜11歳の増量は2日以上あけ、増量幅は1日量としてLD1包まで。2歳以上は調整後1日1〜3回。
- 12歳以上:初回LD2包またはHD1包を1日1回、最大1日LD6包(1回LD4包=HD2包)。増量は2日以上あけ、1日量としてLD2包まで。
- HD1包=LD2包。水に溶かして服用し、腹痛・下痢では減量・休薬等を検討する。
- 禁忌:成分過敏症の既往、腸閉塞・腸管穿孔・重症の炎症性腸疾患が確認されている、または疑われる患者。ショック・アナフィラキシーに注意。1歳未満の臨床試験は未実施[4]。
- 添付文書に体重換算(mg/kg)の用量はなく、年齢別の段階増量。高用量便塊除去の海外手順と区別する[4]。
酸化マグネシウム ── 銘柄によって小児の用法用量記載の有無が異なる点に要注意。
- マグミット®錠/マグミット®細粒83%(2025年改訂の電子添文で小児用法用量が整備)[7]:
- 通常、1歳以上の小児には酸化マグネシウムとして1日20〜80 mg/kgを食後2回に分割経口投与
- 開始用量の目安は1日40 mg/kg。便性状(Bristol様の便性状評価)に応じて増減する(コロコロ便・硬便が続けば増量、泥状便・水様便が続けば減量)
- 低出生体重児・新生児・乳児を対象とした臨床試験は未実施
- 他社の酸化マグネシウム製剤(例:酸化マグネシウム錠「TX」等、2023年改訂添付文書)には小児向けの用量記載がなく、「年齢、症状により適宜増減する」という成人用法の記載にとどまるものがある[6]。処方時は製剤ごとに添付文書の小児記載の有無を確認する。
- 重要な基本的注意(酸化マグネシウム全般):高マグネシウム血症は腎機能正常・通常用量以下でも重篤な転帰の報告があり、必要最小限の使用、長期投与時は定期的な血清マグネシウム濃度測定、嘔吐・徐脈・筋力低下・傾眠が出現したら中止し受診、と明記されている(重大な副作用:高マグネシウム血症→呼吸抑制・意識障害・不整脈・心停止に至り得る)[6]。
- 併用注意(薬物相互作用):添付文書上、テトラサイクリン系・ニューキノロン系抗菌薬、活性型ビタミンD3製剤を含む骨粗鬆症治療薬、一部のCa拮抗薬(エホニジピン塩酸塩エタノール付加物等)、ジギタリス製剤、ポリカルボフィルカルシウム、大量の牛乳・カルシウム製剤との併用で吸収・作用に影響が出得るとされている。慢性疾患合併・多剤併用児では見落としやすいため処方時に確認する[1]。
- ガイドライン本文でも、腎機能正常な小児に通常量投与した検討では血清Mg値上昇は軽度(2.4 mg/dL:便秘児 vs 2.2 mg/dL:対照群)で臨床的に問題となるレベルではないと報告されている一方、腎機能低下児では十分な注意が必要、年少児ほど血清Mg値が上昇しやすい傾向があり、特に乳児への長期投与時は注意、とされている[1]。
ラクツロース(モニラック等) ── 小児適応あり。用量は便の性状により適宜増減する。高アンモニア血症に伴う症状の適応もある製剤がある[1]。
その他: 浸透圧性下剤で無効な例には刺激性下剤(ピコスルファートナトリウム等)、消化管運動賦活薬(モサプリド)、漢方製剤(大建中湯、小建中湯、大黄甘草湯等)が有効な場合がある(推奨度B)。刺激性下剤は乳児には推奨されず、あくまで救済的・短期投与が原則(海外GL)[1]。
- 漢方製剤の安全性注記:添付文書上、小建中湯は3か月未満の乳児には使用しない。大建中湯・小建中湯・大黄甘草湯はいずれもカンゾウ(甘草)を含み、重大な副作用として偽アルドステロン症・ミオパシーの記載があるため、血清カリウム値・血圧に十分注意する。大建中湯には重大な副作用として間質性肺炎・肝機能障害の記載もある[1]。
2-7. 維持療法の継続期間・中止判断
4鑑別・拾える疾患/注意すべき病態
慢性便秘症をきたす主な外科的・内科的基礎疾患(表8-2より抜粋)[1]。
- 腸管神経異常:ヒルシュスプルング病、腸管神経の未熟性・低形成を認めるヒルシュスプルング病類縁疾患、internal anal sphincter achalasia、intestinal neuronal dysplasia
- 直腸肛門形態異常:直腸肛門奇形、rectocele、congenital funnel anus
- 脊髄神経系の異常:脊髄脂肪腫、二分脊椎、脊髄奇形、脊髄損傷、脊髄係留症候群(tethered cord)
- 骨盤内病変:Currarino症候群、仙骨前奇形腫、卵巣嚢腫
- 代謝内分泌疾患:甲状腺機能低下症、高カルシウム血症、低カリウム血症、糖尿病、副甲状腺機能亢進症、尿崩症、MEN 2B
- 消化器疾患:嚢胞性線維症、セリアック病
- 神経・精神疾患:神経線維腫症、重度心身障害、脳性麻痺、自閉症・注意欠陥多動性障害等の発達障害、抗精神病薬等の副作用性
- 腹部の異常:prune belly症候群、腹壁破裂、Down症
- 結合組織の異常:強皮症、全身性エリテマトーデス、Ehlers-Danlos症候群
- 薬剤性:麻薬、フェノバルビタール、制酸薬、抗高血圧薬、抗コリン薬、抗うつ薬、鉄剤、コレスチラミン 等
- その他:重金属摂取(鉛等)、ビタミンD中毒、ボツリヌス中毒、牛乳不耐症、牛乳アレルギー
新生児期発症の便秘ではヒルシュスプルング病・直腸肛門奇形を、下肢の運動異常を伴う場合は脊髄神経異常を、肛門位置異常にも留意する(エビデンスレベル4)。手術適応のある外科的疾患の除外には注腸造影検査(first line)、ヒルシュスプルング病の確定診断には直腸肛門内圧検査・直腸粘膜または直腸全層の病理診断(アセチルコリンエステラーゼ染色を含む)を組み合わせる。腰仙部脊椎奇形が疑われる場合はMRIが有用(推奨度B)[1]。
5忘れがちポイント・落とし穴 ★
- disimpactionを飛ばして維持療法だけを始めてしまう。fecal impactionが残ったまま浸透圧性下剤の維持量を出しても効果が出にくい。必ず先にimpactionの有無を評価し、あれば除去してから維持治療に移行する[1]。
- 維持療法を早くやめてしまう。「排便が安定した=治った」と数週間で中止すると高率に再燃する。目安は6〜24か月、幼児は排便自立まで継続。5年以内に約半数が再発するため最低1年は経過観察する[1]。
- 酸化マグネシウムの高マグネシウム血症を軽視する。腎機能正常でも通常用量以下で重篤な転帰の報告があり、長期投与時は血清Mg測定を検討する。特に乳児・年少児・腎機能低下児では上昇しやすい[2008年の国内成人死亡例2例を受けて添付文書の注意喚起が強化された経緯あり][1][6]。
- 酸化マグネシウムの製剤(銘柄)による小児用法用量記載の差を知らずに処方する。2025年改訂でマグミット®は小児(1歳以上)の用法用量・開始用量目安(40 mg/kg、範囲20〜80 mg/kg/日)が電子添文に明記されたが、他銘柄の酸化マグネシウム製剤は成人用量のみの記載にとどまるものがある。銘柄名を確認せず「酸化マグネシウムには小児適応がない」と思い込むのも、逆に他銘柄をマグミットと同じ感覚で使うのも誤り[6][7]。
- モビコールを何歳からでも使える薬だと思ってしまう。2026年9月の用法改訂で1歳の用量が追加された。1歳未満を対象とした臨床試験は未実施である[4]。
- red flags(表8-3)を見落として機能性便秘として治療を開始してしまう。胎便排泄遅延(生後24時間以降)、成長障害・体重減少、繰り返す嘔吐、血便、paradoxical diarrhea、腹部膨満、腹部腫瘤、肛門の形態・位置異常、直腸肛門指診の異常、脊髄疾患を示唆する神経所見と仙骨部皮膚所見──これらはヒルシュスプルング病・脊髄係留症候群等の器質性疾患のサインであり、精査(専門施設紹介)が必要[1]。
- yellow flags(表8-5)を「よくある便秘」として様子見してしまう。排便自立後の便失禁・漏便、我慢姿勢、排便時の強い痛み、軟便でも排便回数が少ない(週2回以下)、排便時出血、直腸脱等の肛門部所見併発、画像上の結腸・直腸拡張、病悩期間が長い、他院治療への反応不良──該当例は難治化が予想され、積極的な薬物治療の早期併用・治療経験豊富な施設への紹介が推奨される[1]。
- overflow incontinence(漏便)を下痢や反抗的行動と誤診する。一度確立した排便習慣後の便汚染はfecal impactionのサインとして重要で、便性状は液状〜「ぽろぽろ」まで多様、特有の悪臭を伴う。止痢薬で対応してしまう誤りに注意[1]。
- グリセリン浣腸を漫然と連用する。連用で耐性化・効果減弱を招き薬剤依存の一因になる。あくまでdisimpactionの一手段であり、維持療法の主軸には据えない[5]。
- 直腸指診を説明・同意なしに実施する。侵襲的手技であり、目的説明・同意取得・プライバシー配慮・付添者立会・施行者の性別配慮が求められる。同意が得られない場合は無理に行わず、腹部所見や画像で代替する[1]。
6患者・保護者への説明(要点)
- 便秘は「しつけ」や「気合い」の問題ではなく、治療が必要な体の状態であること。叱ると排便を我慢する悪循環になりやすい[1]。
- 治療を始めた最初の数日〜1週間は、便が増えたり、下着が汚れたり、お腹が痛くなったりすることがある。これは治療がうまくいっている過程で起こり得る一時的な反応であること[1]。
- 薬(酸化マグネシウムやPEGなど)は「もう治った」と自己判断ですぐやめると、また便秘に戻りやすい。医師が減らしてよいと言うまで続けること[1]。
- 十分な水分摂取が薬の効果を出すために大切なこと[1]。
- トイレットトレーニングは、便秘の治療で規則的な排便習慣がついてから始める。失敗しても叱らず、シールやご褒美を活用するとよい[1]。
- 市販の下剤感覚で量を増やさないこと。特に腎臓の状態によっては量を調整する必要があるため、自己判断で増減しないこと[1][6]。
7院内ローカルルール
- 決定:経口・浣腸での摘便が奏功しない場合は速やかに全身麻酔対応可能な専門施設へ紹介する(論点:全身麻酔下摘便が必要な重度fecal impaction例の入院・紹介基準)
8出典(日本のGL優先・URL+版年)
- [1] 日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児外科学会(編)『小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン』2013年. https://www.jspghan.org/constipation/ishi_guideline.html (第4章 診療のフローチャート: https://www.jspghan.org/constipation/files/05_section04.pdf /第8章 診断: https://www.jspghan.org/constipation/files/09_section08.pdf /第10章 disimpaction: https://www.jspghan.org/constipation/files/11_section10.pdf /第11章 維持療法: https://www.jspghan.org/constipation/files/12_section11.pdf)※2013年発行。【2026-07-31確定】本ガイドラインは2025年10月3日、日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児消化管機能研究会編『小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン(2025年版)』として12年ぶりに改訂・発行された(診断と治療社刊、ISBN 978-4-7878-2717-3。書籍案内: https://www.shindan.co.jp/np/isbn/9784787827173/)。全文は市販書籍のみで無料公開PDFはなし。本ドラフトの数値・推奨度は2013年版に基づくため、運用前に必ず2025年版と照合すること。
- [2] Tabbers MM, DiLorenzo C, Berger MY, et al. Evaluation and Treatment of Functional Constipation in Infants and Children: Evidence-Based Recommendations From ESPGHAN and NASPGHAN. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2014;58(2):258-274. doi:10.1097/MPG.0000000000000266
- [2b] Gordon M, de Geus A, Banasiuk M, et al. ESPGHAN and NASPGHAN 2024 protocol for paediatric functional constipation treatment guidelines (standard operating procedure). BMJ Paediatr Open. 2025;9(1):e003161. doi:10.1136/bmjpo-2024-003161(2026-07-31時点でPubMed確認:これはGRADE手法による改訂ガイドライン作成のプロトコル論文であり、正式な推奨事項本体はこの論文の時点では未発表。本体の公表時期は本論文に明記なし)
- [3] Rome IV Diagnostic Criteria for Functional Constipation(Infant/Toddler・Child/Adolescent). The Rome Foundation. https://theromefoundation.org/pediatric/ (要約参照:MDCalc https://www.mdcalc.com/calc/10311/rome-iv-diagnostic-criteria-infant-functional-constipation および https://www.mdcalc.com/calc/10331/rome-iv-diagnostic-criteria-child-functional-constipation)
- [4] モビコール配合内用剤LD/HD 添付文書. 医薬品医療機器総合機構(PMDA). https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/111890_2359110B2025_1_02 (2026年9月改訂第2版、用法及び用量変更)
- [5] グリセリン浣腸液50%「ケンエー」添付文書. 健栄製薬株式会社. 2022年11月改訂(第1版). https://www.kenei-pharm.com/cms/wp-content/uploads/2020/06/35b074383c780a899451662739c793c7.pdf
- [6] 酸化マグネシウム錠250mg/330mg「TX」添付文書. 原沢製薬工業株式会社. 2023年5月改訂(第1版). https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00052034.pdf
- [7] マグミット®錠・マグミット®細粒83% 小児用量早見表. 丸石製薬株式会社/マグミット製薬株式会社. 2025年10月改訂マグミット錠電子添文(第3版)・2025年8月作成マグミット細粒83%電子添文(第1版)に基づく資料(2026年2月作成). https://www.maruishi-pharm.co.jp/medical/media/MT_syouni-hayamihyou_20260327.pdf
- [8] 『直伝 小児の薬の選び方・使い方』p.165「グリセリン浣腸液50%(使用量の目安1〜2 mL/kg/回)新生児5〜10mL/乳幼児10〜20mL/学童以上30〜60mL」(体重換算1〜2 mL/kg/回の決定根拠、2026-09-26bookgrep確認)
- [9] 『小児疾患の診断治療基準』p.67「1日以上排便がなく緊急重篤なサインがなければ浣腸をして排便を確認する。50%グリセリン浣腸液を1〜2mL/kg注腸する」(体重換算1〜2 mL/kg/回の決定根拠、2026-09-26bookgrep確認)
- [10] 『医療的ケア児・者 在宅医療マニュアル』p.122「通常のグリセリン浣腸を1〜2mL/kgを目安に使用する」(体重換算1〜2 mL/kg/回の決定根拠、2026-09-26bookgrep確認)
- [11] 『子供の便秘はこう診る』p.109/112/117/124「グリセリン浣腸液50% 1〜2mL/kg適宜」(体重換算1〜2 mL/kg/回の決定根拠、複数箇所で一致、2026-09-26bookgrep確認)
- [12] 大阪小児科医会.「浣腸」.https://www.osk-pa.or.jp/child-care/cc2/20060901148.html ── 「浣腸液の量は体重1kgあたり1gから1.5gまで使います」「10kgの1歳児には20gまたは30g製剤を15gぐらい使って下さい」「4、5歳では20gから30gを目安に」(2026-09-26WebFetchで原文確認・体重換算1〜2 mL/kg/回と整合。g→mL換算は比重を厳密に確認したものではない)
※改定の速い添付文書情報(モビコール・酸化マグネシウム各銘柄)は運用前に必ずPMDA医療用医薬品情報検索(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)で最新版を確認すること。
9臨床医が迷う場面
10下剤を飲んでいるのに出ない。まず増量する?
増量前に便塊が残っていないか、服薬量・飲み残し、便を我慢する行動、痛みを確認する。漏便があっても直腸内の便塊の周囲を便が漏れることがあり、下痢とは限らない。便塞栓があればまず便塊除去、その直後から維持療法へ進む。胆汁性嘔吐、著明な膨満、間欠的な激痛・血便があれば単なる便秘として下剤や浣腸を増やさない。
11維持薬は便の回数だけを見て調整すればよい?
痛まず容易に出る軟らかい便を目標にし、便性状、排便時痛、我慢、漏便、服薬を日誌で確認する。硬便や排便困難が続けば適正量を増やし、水様便が続けば減量を検討する。ただし漏便や少量の液状便は便塞栓の可能性があり、先に腹部と経過を再評価する。生活指導だけで難治例を長く待たない。
根拠:RCH Constipation:便塊除去、維持療法、再発 / 丸石製薬:マグミット小児用量と調節(2025年電子添文に基づく)
12モビコールを数日飲んでも効かない。どこまで増やす?
年齢、LD/HDの取り違え、溶解・服薬量と便塞栓を確認する。2026年9月改訂で1歳はLD1包を1日1回から、最大1日・1回LD2包。2〜11歳は最大1日LD4包・1回LD2包で、1〜11歳の増量は2日以上あけて1日量LD1包まで。12歳以上の上限・増量幅は別欄を確認する。海外の高用量便塊除去法を国内用法へ転用せず、上限でも不応なら診断と解除の成否を見直す。
13酸化マグネシウムで注意する検査・中止サインは?
腎機能と併用薬、処方銘柄を確認する。マグミットには1歳以上の小児用量があるが、全銘柄が同じ記載とは限らない。長期投与時は定期的な血清Mg測定などで監視し、腎機能低下があれば特に慎重に扱う。嘔吐、脱力、傾眠、徐脈などが出たら服用を止めて診察し、高マグネシウム血症を評価する。便が硬いという理由だけで際限なく増量しない。
根拠:丸石製薬:マグミット小児用量と調節(2025年電子添文に基づく) / PMDA:マグミット電子添文(2025年10月、基本的注意8.1)
14毎日出るようになったら、いつ下剤を減らす?
1回よく出ただけでは中止しない。痛み・我慢・漏便がなく軟便を安定して出せる状態を保ち、排便習慣が整ってから少しずつ減らす。治療は数か月以上を要することが多い。硬便や我慢が戻れば、再び便塊ができる前に前の有効量への調整を相談する。トイレットトレーニング中は服薬を急にやめず、本人の発達と生活変化に合わせる。
根拠:RCH Constipation:便塊除去、維持療法、再発 / 小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン2013:維持療法
15どの段階で便秘専門外来・小児外科へ紹介する?
新生児期からの便秘、胎便排泄遅延、体重増加不良、持続嘔吐、神経・肛門の異常は早めに器質性疾患を調べる。適切な便塊除去と維持薬、服薬確認・生活調整を行っても不応なら専門科へ相談する。強い腹痛や膨満・嘔吐がある便塊除去不成功例は漫然と外来で増薬せず、院内方針どおり入院での処置が可能な施設へ紹介する。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。