2-15長引く咳(3週以上)
遷延性・慢性咳嗽の鑑別
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次7項目
1ポイント
- 咳は持続期間で3つに分ける:3週未満=急性咳嗽、3週以上8週未満=遷延性咳嗽、8週以上=慢性咳嗽。
- 分岐はまず年齢。国内の長引く咳嗽(医師の診断ベース)は呼吸器感染症35.1%、気管支喘息33.4%、後鼻漏症候群24.3%。低年齢層ほど感染症の割合が高い。
- 最初に外す2つは結核と気道異物。結核は2週間以上継続的な咳が隔離・スクリーニングの対象。
- 乾性か湿性か、いつ消えるかが手がかり。学童・思春期で睡眠中・没頭時に消える乾性咳嗽は心因性咳嗽を疑う。
- 8週以上で他に症状がなければ、結核など見逃してはいけないものを外したあとに1〜2週間の経過観察でよいこともある。
2鑑別のながれ
- 2週間以上続く咳→家族・同居人に結核患者、高まん延国滞在歴→結核(隔離・N95・保健所届出)
- 乳児の咳+哺乳不良・体重増加不良・顔色不良→呼吸困難・嘔吐・けいれん・意識障害を伴う→粟粒結核・結核性髄膜炎(すでに至っていることが多い。画像・血液・搬送を急ぐ)
- 誤嚥エピソード後の咳→片側性の呼吸音低下、原因不明の遷延する咳・反復する肺炎→気道異物(持てない)
- 乳児の咳+無呼吸・チアノーゼ→咳が先行しないこともある→百日咳
- 新生児・乳児期早期の吸気性喘鳴→哺乳時に悪化→先天性気道形態異常・胃食道逆流症
- 日中に激しく夜間・没頭時に消える乾性咳嗽→学童・思春期→心因性咳嗽
- 解熱後も乾性咳嗽が持続→マクロライド治療後も持続することがある→マイコプラズマ・クラミジア肺炎
- 湿性咳嗽が遷延し抗菌薬でも改善しない→頻度は不明だが概念はある→遷延性細菌性気管支炎(PBB)疑い:精査へ
- 喘鳴・呼吸困難が急性に悪化→問診中に出現、既往に喘鳴あり→喘息発作として対応。喘息の発作へ切り替え
- 体重増加不良・成長の頭打ち→慢性肺疾患・免疫不全・原発性線毛機能不全症・心疾患などの既往歴→基礎疾患を背景にした遷延・重症化(専門施設と連携、成長で評価)
3検査
- 問診:乾性か湿性か、誤嚥の目撃、夜間・運動・季節での変動、没頭時に消えるか
- 結核スクリーニング問診:2週間以上の咳か、家族・同居人の結核既往・高まん延国滞在歴・BCG接種歴
- 身体所見:喘鳴の有無と部位(両側性か片側性か)、体重・成長曲線、呼吸様式
- 胸部X線 — 年齢・病歴・身体所見とあわせて慢性咳嗽の鑑別に有用
4送る/持つの目安
- 帰宅マイコプラズマ肺炎で酸素化良好なら当院で対応可、後鼻漏症候群・胃食道逆流症が疑われ生活に支障が乏しければ経過観察、診断がつかず8週以上で他に症状がなければ、十分な説明のうえ経過観察という選択肢もある
- 搬送・紹介結核疑い(隔離・胸部X線・届出は当院で行う。結核病床・陰圧室の有無は未確認のため、入院基準〈重症結核・全身状態不良等〉に該当する場合は受け入れ可否を確認したうえで入院か搬送かを判断する)、気道異物(持てない)、乳児の吸気性喘鳴・先天性気道形態異常疑い(専門施設へ)、百日咳で乳児が無呼吸・チアノーゼ(持てない)
5診療中の疑問と回答
- 咳の期間だけで喘息治療を試してよい?
- 乾性・湿性、毎日あるか、夜間・運動・食事との関係と喘鳴を確認する。突然始まった咳は異物、食事中の咳は誤嚥も考える。喘息を支持しない孤立性の咳に漫然と薬を追加せず、持続する毎日の咳は胸部所見と必要な検査を再評価する。
根拠:RCH Cough:小児の持続咳嗽の評価 - 湿った咳が長引くが元気。抗菌薬を続ければよい?
- 持続する細菌性気管支炎などを考えるが、異物、誤嚥、気管支拡張症や基礎疾患の徴候も確認する。必要な治療を選んだ場合は終了時の反応を評価し、不応・反復例で漫然と延長しない。体重増加不良や喀血、反復肺炎があれば呼吸器専門へ紹介する。
根拠:RCH Cough:小児の持続咳嗽の評価 - 睡眠中に咳が消えるなら心因性で確定?
- 睡眠中の消失だけで診断しない。喘息、感染、異物などを経過・診察で評価し、機能性の咳と判断する場合も陽性所見と生活への影響を共有する。新しい発熱、呼吸苦、血痰や進行する湿性咳があれば、既診断にかかわらず再評価する。
根拠:RCH Cough:小児の持続咳嗽の評価
- 咳がいつから「長い」と考える?
- 3週未満は急性咳嗽、3週以上8週未満は遷延性咳嗽、8週以上は慢性咳嗽と分類する。
- 結核はどう疑う?
- 2週間以上継続的な咳、または最近結核に罹患した家族・親族・同居人がいれば、一般待合から隔離しN95マスクを着用して優先的にスクリーニングする。
- 8週以上続く咳は必ず精査が要る?
- 結核など見逃してはいけないものを外したあとで、ほかに症状がなければ1〜2週間の経過観察でフォローを中止することもある。
7家族への説明
咳が3週間以上続くときは、原因を順番に外していく必要があります。多くはかぜの後の咳や、気管支喘息、鼻や副鼻腔の炎症が原因ですが、まれに結核や気道の異物など、見逃してはいけない原因も含まれるため、いつから咳が始まったか、何かを誤って飲み込んだり吸い込んだりした覚えがないか、家族や身近な人に結核にかかった方がいないかをうかがいます。今日はまず、レントゲンや診察で緊急性のあるものを外し、必要に応じて専門の外来につなぎます。咳が夜になると止まる、勉強や遊びに集中しているときは出ない、というときは、体だけでなく心の負担が関係していることもあります。診断がつかなくても、生活に大きな支障がなければ、しばらく様子を見て自然に良くなることもあります。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。