6-16蜂窩織炎・眼窩周囲蜂窩織炎
皮膚の発赤・腫脹・熱感、目のまわりの腫れ
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- まず壊死性筋膜炎を外す。重症の皮膚軟部組織感染では敗血症・ショックを伴いうる。全身状態不良なら敗血症を評価し、壊死性筋膜炎も除外する。
- 目のまわりの腫れは、隔膜の前か後ろかで別の病気。眼窩蜂窩織炎(OC)は眼窩膿瘍・脳膿瘍・髄膜炎・海綿静脈洞血栓症を起こしうる重症細菌感染症。
- 眼球突出も眼球運動障害もない眼窩蜂窩織炎の症例が報告されている。眼の所見がないことを否定の根拠にしない。
- 当直帯の当院に造影CTは無い。両者の鑑別手段が無い以上、目のまわりの腫れで迷ったら送る。
- 膿瘍が疑われれば排膿・培養の要否を評価し、当院では独自に穿刺・切開せず、処置可能な外科へ相談する。排液が自然に得られる場合は培養を検討する。
2鑑別のながれ
- 皮膚所見と不釣り合いな強い痛み・範囲を超えて広がる圧痛→急速に拡大、全身状態不良(意識障害・頻脈・血圧低下・頻呼吸)→壊死性筋膜炎(重症の皮膚軟部組織感染では敗血症・ショックを伴いうる)
- 目のまわりの腫脹・発赤→眼球突出・眼球運動障害・視力障害、または所見がはっきりしなくても否定できない→眼窩蜂窩織炎(OC)(副鼻腔炎合併率83.3%)
- 頸部リンパ節炎→発熱が長く続く、他の川崎病主要症状を伴う→川崎病(主要症状の1つ。3歳以上の患者では約90%に見られる)
- 表在性の発赤・水疱・痂皮→痂皮・水疱が主体→とびひ(伝染性膿痂疹)
- 目のまわりの腫れ→痒みが主体、発熱がなく両側性のことが多い→アレルギー性の眼瞼腫脹(蜂窩織炎ではない)
3検査
- 壊死性筋膜炎の4項目(不釣り合いな痛み・範囲を超える圧痛・全身状態不良・急速拡大)をまず外す
- 境界をペンでマークし時刻を書く。拡大速度が判断材料になる
- 目のまわりなら眼球突出・眼球運動・視力を確認する。迷えば送る(当直帯にCTは無い)
- 膿瘍・異物・深部感染を疑えば画像と外科評価を相談する。当院では独自の試験穿刺・切開を行わない。
4対応の注意
治療期間の目安は局所所見が消失するまで、経過に応じて7〜14日程度。抗菌薬の具体的な薬剤・用量の院内レジメンは現時点で未整備(作成中)。
↑ このページの入口へ5膿瘍を疑うときの専門接続
- 痛み・範囲・全身状態を評価し、壊死性病変や敗血症なら緊急対応する
- 排膿・培養の要否を処置可能な外科と相談する。当院で盲目的に穿刺・切開しない
- 自然排液があれば安全に採取可能な検体の培養を検討し、抗菌薬投与歴を伝える
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- 皮膚の発赤だけで膿瘍と決めない。深部感染が疑わしければ画像/外科相談を遅らせない
- 手技書の試験穿刺の記載を、そのまま当院での実施許可としない
6帰宅・入院の目安
- 帰宅局所の蜂窩織炎で全身状態良好、境界をマークして経過を見られる、再診の日を決め、悪化の条件(拡大・発熱・全身状態)を紙で渡す
- 搬送・紹介壊死性筋膜炎の疑い(外科のある施設へ緊急)、眼窩蜂窩織炎(OC)の疑い、膿瘍形成で切開排膿が要る(外科へ紹介)
7診療中の疑問と回答
- 抗菌薬開始翌日に赤みが少し広がった。直ちに変更する?
- 開始直後は見かけ上悪化することもある。範囲を記録し、疼痛、発熱、全身状態と服薬状況を合わせて評価する。ただし不釣り合いな強い痛み、急速な進行、壊死・水疱、循環不良は待たず外科・上位施設へ相談する。安定例でも24〜48時間で再評価する。
根拠:RCH 小児皮膚軟部組織感染(海外指針) / RCH 眼窩・眼窩周囲蜂窩織炎(海外指針) - 眼瞼が腫れているが、内服して明日まで待てる?
- 視力・複視・眼球運動時痛、眼球突出、強い頭痛を確認する。評価困難な乳幼児や腫脹で眼を診られない例も慎重に扱う。当院当直帯は造影CTができないため、眼窩内感染を否定できず迷う場合は検査可能な施設へ同日相談する。
根拠:RCH 小児皮膚軟部組織感染(海外指針) / RCH 眼窩・眼窩周囲蜂窩織炎(海外指針) - 膿瘍を伴う蜂窩織炎は抗菌薬増量だけで治る?
- 波動や限局した腫脹、改善しない疼痛があれば膿瘍・異物を再評価し、超音波などと排膿の要否を相談する。感染源の処置が必要なら薬の変更だけでは不十分。当院で独自に穿刺・切開せず、処置可能な外科へつなぐ。
根拠:RCH 小児皮膚軟部組織感染(海外指針) / RCH 眼窩・眼窩周囲蜂窩織炎(海外指針)
- 蜂窩織炎でショック様所見があれば?
- 重症の皮膚軟部組織感染では敗血症・ショックを伴いうる。壊死性筋膜炎・敗血症を考える。
- 目の所見がなければ眼窩蜂窩織炎は否定できる?
- できない。眼科的症状が全くみられないOC症例が報告されている。
- 膿瘍が疑われたらどうする?
- 当院で独自に穿刺・切開せず、排膿と培養の要否を外科へ相談する。自然排液が得られる場合は培養を検討する。
9家族への説明
皮膚の深いところに細菌が入って炎症を起こしています。赤みの範囲に印をつけました。これが広がるかどうかが、薬が効いているかの目安になります。印を超えて広がる・熱が上がる・ぐったりするときは、時間を待たずに来てください。目のまわりの場合は、奥まで炎症が及んでいないかを確かめることがあります。奥に及んでいると、目や脳に影響することがあるためです。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。