12-8血液検査(血球の数)
年齢別基準値・貧血の分類・好中球減少
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次6項目
1ポイント
- 当直帯に末梢血液像(鏡検)と自動分画(好中球%)は出ない。夜に手元にあるのは白血球の総数だけ。発熱性好中球減少症の判定・ANCを炎症マーカーに使う経路は当直帯では使えない。化学療法中・免疫抑制中の子の発熱は、発熱性好中球減少症を否定できない緊急事態として直ちに上級医に相談する。
- 小児のCBCは年齢別基準値で判定する。成人基準をそのまま当てはめると、乳児期のリンパ球優位・生後2〜3ヶ月の生理的貧血・新生児の高MCVを「異常」と誤読する。
- 貧血はまずMCVで小球性/正球性/大球性に分け、網状赤血球・RDW・末梢血液像で機序を絞り込む。
- 白血病を疑うサインは「遷延する発熱+骨痛/出血斑+説明のつかない血球減少」の組み合わせ。末梢血液像が正常でも、芽球が見えなくても白血病は否定できない。
- 判断を保留したまま帰さない(当院は院内夜間入院ができる)。数字と臨床像で判断し、鏡検は翌朝に回す。
2鑑別のながれ
- 異型リンパ球(活性化T細胞)が目立つ→発熱・咽頭扁桃炎・頸部リンパ節腫脹・肝脾腫(リンパ球増多≥50%または≥5,000/μL・異型リンパ球≥10%)→EBV伝染性単核症
- 芽球の出現→強い炎症・重症感染症(類白血病反応)との鑑別が必要なことがある→急性リンパ性白血病(ALL)・急性骨髄性白血病(AML)
- 破砕赤血球(スキストサイト)→血小板減少・急性腎障害とセット、下痢先行歴(特に血性)→溶血性尿毒症症候群(HUS)/TMA
- 球状赤血球(central pallor消失)→家族歴・新生児黄疸歴→遺伝性球状赤血球症・自己免疫性溶血性貧血
- 汎血球減少+低身長・橈骨列異常などの身体所見→先天性骨髄不全を示唆→先天性骨髄不全症候群(ファンコニ貧血)
3好中球減少の重症度(ANC基準。当直帯はANC算出不可、日中の値がある場合のみ使う)
| 軽度 | 1,000≦ANC<1,500 | 感染リスクはほぼ問題にならない |
|---|---|---|
| 中等度 | 500≦ANC<1,000 | 経過観察を強め、発熱時は迅速に評価する |
| 重度 | ANC<500 | 感染リスク上昇。臨床的に易感染性が問題となる |
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4検査
- 年齢別基準値の目安(WBC×10³/μL・Hb g/dL・MCV fL):新生児は日齢・在胎週数・検体別に施設基準値を確認し、共通正常域を置かない/1か月 WBC4.7〜18.6・Hb9.0〜13.5・MCV81.5〜96.0/1歳 WBC4.3〜19.6・Hb10.5〜14.1・MCV71.3〜86.9/6歳 WBC4.1〜16.3・Hb11.5〜14.4・MCV75.5〜87.0/12歳 WBC4.0〜10.7・Hb12.2〜15.7(男)11.9〜14.9(女)・MCV78.0〜92.0
- 分画(好中球・リンパ球の絶対数)は当直帯には出ない(自動分画も鏡検も夜間は不可)。日中の結果は%ではなく絶対数で評価する。安定例の精査は翌朝へつなぐが、FN疑い等の緊急判断は分画を待たず上級医・専門施設への相談と搬送で補う。WBC総数だけでFNを除外しない
- 血小板は10万/μL未満で減少と判定する。5万/μL超なら重篤な出血リスクは低く、2万/μL未満は自然出血リスクが高く要注意
- 血小板減少を見たら、まず偽性血小板減少(EDTAクランピング)を疑う。当直帯は鏡検ができないため塗抹での確認はできない。クエン酸管での再採血のみ行い、確定は翌朝の鏡検に回す
- 発熱性好中球減少症(FN)はANC 500/μL未満、または1,000/μL未満で48時間以内に500/μL未満への低下が予測される状態に、腋窩温37.5℃以上(口腔内38℃以上)の発熱を伴う場合。当直帯はANCが出せず判定できない(日中に既にANC・分画結果がある場合のみ使う)。化学療法中・免疫抑制中の子が発熱していれば、FNを否定できない緊急事態として直ちに上級医に相談する。それ以外の当直帯の炎症評価はCRP・WBC総数・体温・全身状態で行う
- 生後2〜3ヶ月の生理的貧血はHb nadirの目安9〜11g/dL。正期産児のこの範囲内での低下は広範な評価・治療を要さない。早産児はnadirがより低く、より早期に出現する
5Q&A
- 血算が正常なら白血病は否定できる?
- できない。末梢血に芽球が出ないこともある。発熱遷延・骨痛・出血斑・肝脾腫などの臨床像が揃えば、血算所見にかかわらず専門紹介を検討する。
- 生後2〜3ヶ月でHbが下がっていたら精査する?
- 正期産児でHb 9〜11g/dL程度の範囲内の低下なら、生理的貧血として経過観察でよい。早産児はnadirがより低い点に注意する。
- 血小板減少を見たらすぐ精査?
- まず偽性血小板減少(EDTAクランピング)を疑う。当直帯は鏡検ができないため、クエン酸管での再採血のみ行い、確定は翌朝の鏡検に回す。
- 化学療法中の子の発熱にはどう動く?
- 当直帯は好中球数が出ずFNを確かめられない。否定できない緊急事態として直ちに上級医に相談する。
6家族への説明
血液検査では、赤血球(酸素を運ぶ細胞)・白血球(感染と戦う細胞)・血小板(血を止める細胞)の数と種類を調べます。子どもは月齢・年齢によって正常な範囲が変わるので、大人の基準とは違う「ものさし」で結果を見ています。生後2〜3ヶ月ごろに一時的にヘモグロビン(血の赤い色のもと)の値が下がるのは、体の成長過程で自然に起こることが多く、それだけで心配な病気とは限りません。
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