5-11 細菌性腸炎・腸管出血性大腸菌(EHEC)とHUS

緊急

5-11細菌性腸炎・腸管出血性大腸菌(EHEC)とHUS

病態・根拠
このページの目次10項目

1病態:腸炎の重症度と、毒素による障害を分ける

細菌性腸炎では腸管の炎症・分泌による下痢と、摂取低下による脱水を評価する。一方、腸管出血性大腸菌(STEC/EHEC)では志賀毒素による血栓性微小血管障害が問題となり、溶血性貧血、血小板減少、急性腎障害を伴うHUSへ進む場合がある。便の回数や血便が減っても、腎臓・血液の合併症の評価は別に続ける必要がある。[1][2]

2鑑別:血便をすべて感染と決めない

血便・強い腹痛ではSTEC等を疑うが、腸重積、炎症性腸疾患等も鑑別する。緑色嘔吐、腹膜刺激、強い発作痛、循環不良があれば、便培養だけを待つ経過観察にはしない。食事、動物接触、渡航、集団内発症、家族の症状と経過を聞き、原因菌と感染拡大の可能性を絞る。[1][2]

3検査の目的と限界

便の検査は原因微生物を調べるもので、HUSの有無を判定するものではない。STECが疑われる場合は志賀毒素等を含む検査の可否を確認する。顔色不良、点状出血、乏尿、浮腫、傾眠・けいれんは血算・血小板、Cr・電解質、溶血の評価につながる。発症初期の正常値だけで後のHUSを除外できず、経過に応じて再検を計画する。[2]

4治療:補水と抗菌薬を別々に判断する

まず循環・水分状態を評価し、飲める場合は経口補水、必要時は静脈補液を行う。ただし、乏尿・腎障害が生じた後の補液は、脱水予防の段階と同じ量で続けず、体重、尿量、血圧・浮腫を見て腎専門医と調整する。STECで止痢薬を使わない点は、国内HUSガイドラインとCDCが一致する。[1][2]

抗菌薬は菌種・重症度・宿主要因で目的が異なる。STECについて、CDC2024はHUSリスクから使用しないよう勧告し、国内2014年HUSガイドラインは一定の結論なしとしている。この年代・推奨差を無視して、すべての血便へ経験的抗菌薬を定型投与しない。敗血症など時間依存の治療が必要な場合も含め、感染症・腎臓専門医と直ちに判断する。[1][2]

5帰宅時の説明と追跡

補水でき、循環が安定し、再診が確保できる場合に帰宅を考える。STEC疑い・確定例は、排尿低下、顔色不良、むくみ、強い倦怠感、反応の変化があれば下痢が軽くなっていても再受診するよう説明する。HUS所見や神経症状は腎・集中治療へ緊急相談する。[1][2]

6出典と適用範囲

STEC抗菌薬に関する国内旧版とCDCの推奨差は未解消であり、院内方針を本節で確定していない。その他の菌種ごとの抗菌薬適応・用量を網羅する節ではない。

7臨床医が迷う場面

8下痢が減ったので、HUSの心配も終わり?

腸症状の改善後にもHUSが発症し得る。尿量減少、顔色不良、むくみ、紫斑、強い倦怠感を説明し、発症日からの経過と血算・腎機能を追う。疑う変化があれば次回予約を待たず再評価する。初回の血算やCrが正常でも後日の発症は否定できない。

出典:CDC E. coli感染症の治療 / 国内HUS診断治療ガイドライン

9血便があるので、止痢薬と抗菌薬を同時に出す?

止痢薬は使わず、便検査と脱水・腎機能評価を行う。STEC/EHECを疑う場合、抗菌薬は利益とHUSリスクが議論され、当院は投与しない既存方針で対応する。他病原体、敗血症、基礎疾患では判断が変わるため、原因を区別して専門医と相談する。

出典:CDC E. coli感染症の治療 / 国内HUS診断治療ガイドライン

10早く補液すべきなら、尿が出なくても大量に入れる?

早期の脱水補正は重要だが、乏尿・無尿や腎傷害が進む場合は体液過剰を避ける必要がある。体重、入出量、呼吸、電解質を反復評価し、漫然と輸液を続けない。HUSが疑わしければCrの閾値到達を待つのではなく、血液浄化に対応する施設へ相談する。

出典:CDC E. coli感染症の治療 / 国内HUS診断治療ガイドライン

一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。

スペースで絞り込み(例:夜尿症 休薬)↑↓ 移動 / Enter 開く