5-11細菌性腸炎・腸管出血性大腸菌(EHEC)とHUS
このページの目次10項目
1病態:腸炎の重症度と、毒素による障害を分ける
2鑑別:血便をすべて感染と決めない
3検査の目的と限界
便の検査は原因微生物を調べるもので、HUSの有無を判定するものではない。STECが疑われる場合は志賀毒素等を含む検査の可否を確認する。顔色不良、点状出血、乏尿、浮腫、傾眠・けいれんは血算・血小板、Cr・電解質、溶血の評価につながる。発症初期の正常値だけで後のHUSを除外できず、経過に応じて再検を計画する。[2]
4治療:補水と抗菌薬を別々に判断する
まず循環・水分状態を評価し、飲める場合は経口補水、必要時は静脈補液を行う。ただし、乏尿・腎障害が生じた後の補液は、脱水予防の段階と同じ量で続けず、体重、尿量、血圧・浮腫を見て腎専門医と調整する。STECで止痢薬を使わない点は、国内HUSガイドラインとCDCが一致する。[1][2]
抗菌薬は菌種・重症度・宿主要因で目的が異なる。STECについて、CDC2024はHUSリスクから使用しないよう勧告し、国内2014年HUSガイドラインは一定の結論なしとしている。この年代・推奨差を無視して、すべての血便へ経験的抗菌薬を定型投与しない。敗血症など時間依存の治療が必要な場合も含め、感染症・腎臓専門医と直ちに判断する。[1][2]
5帰宅時の説明と追跡
6出典と適用範囲
- [1] CDC Treatment of E. coli Infection。補水、STECでの抗菌薬・止痢薬回避。2024年。
- [2] 日本小児腎臓病学会ほか:溶血性尿毒症症候群の診断・治療ガイドライン。HUSの病態・診断、腎障害・補液、EHEC治療。2014年初版であることに留意。
STEC抗菌薬に関する国内旧版とCDCの推奨差は未解消であり、院内方針を本節で確定していない。その他の菌種ごとの抗菌薬適応・用量を網羅する節ではない。
7臨床医が迷う場面
8下痢が減ったので、HUSの心配も終わり?
腸症状の改善後にもHUSが発症し得る。尿量減少、顔色不良、むくみ、紫斑、強い倦怠感を説明し、発症日からの経過と血算・腎機能を追う。疑う変化があれば次回予約を待たず再評価する。初回の血算やCrが正常でも後日の発症は否定できない。
9血便があるので、止痢薬と抗菌薬を同時に出す?
止痢薬は使わず、便検査と脱水・腎機能評価を行う。STEC/EHECを疑う場合、抗菌薬は利益とHUSリスクが議論され、当院は投与しない既存方針で対応する。他病原体、敗血症、基礎疾患では判断が変わるため、原因を区別して専門医と相談する。
10早く補液すべきなら、尿が出なくても大量に入れる?
早期の脱水補正は重要だが、乏尿・無尿や腎傷害が進む場合は体液過剰を避ける必要がある。体重、入出量、呼吸、電解質を反復評価し、漫然と輸液を続けない。HUSが疑わしければCrの閾値到達を待つのではなく、血液浄化に対応する施設へ相談する。
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