まず寛解を目指す
保湿は続けるが、炎症のある部位には抗炎症外用薬が必要である。ステロイドのランクは皮疹の強さ、部位、年齢、使用期間で選ぶ。「顔だから」「乳児だから」だけで、効かない弱さに固定しない。一方、眼周囲や皮膚の薄い部位への高ランク・頻回・長期使用は慎重に評価する。[1]
眼周囲の難治病変は、皮疹の治療と眼科評価を並行する。眼痛・視力低下は当日相談。緑内障・白内障のリスクを考え、強い外用薬を漫然と続けない。[1]
ステロイド外用薬:5段階のランク
国内AD診療ガイドラインの5群を、強い順に示す。一般名はエステル名まで確認し、濃度・剤形と合わせて製品を照合する。異なる成分の濃度だけで強さを比べない。院内採用・在庫はこの表とは別に確認する。[1]
代表的な単剤17製品を掲載。表に記載した濃度・剤形の例であり、全銘柄の一覧ではない。商品リンクは電子添文。製品資料は2026-10-08に確認した。現在の院内採用・包装別供給を保証する表ではない。[1]
I群:ストロンゲスト
II群:ベリーストロング
III群:ストロング
IV群:ミディアム
V群:ウィーク
皮疹の強さから選ぶ目安
次は個々の皮疹に対する選択の目安。BSAで分類した病気全体の重症度とは区別する。部位・年齢・期間を合わせて判断する。[1]
| 個々の皮疹 | 基本の選択 |
|---|
| 炎症に乏しく、乾燥が主体 | ステロイドを含まない外用薬・保湿。 |
| 軽い赤み・鱗屑 | ミディアム以下。 |
| 中等度の赤み・鱗屑、少数の丘疹 | ストロングまたはミディアム。 |
| 強い腫れ・浸潤・苔癬化、難治性病変 | ベリーストロング。 |
| ベリーストロングでも不十分な部位 | その部位に限定してストロンゲストを検討。診断・使い方も再確認。 |
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ランク表を処方に使う前に
| 確認 | 判断の原則 |
|---|
| 皮疹の強さ | 部位ごとの炎症に合う強さを選ぶ。低ランクで改善しないまま続けない。 |
| 顔 | 顔は一般にミディアム以下が基本。重い炎症では必要な強さで速やかに改善させ、その後に減量・間欠塗布を検討する。高ランクを漫然と続けない。 |
| 乳幼児 | 年齢だけで一律に1ランク弱めない。短期間で効果が出やすいため、期間・塗布量・面積を確認する。おむつの密封効果にも注意。 |
| 剤形 | 軟膏・クリーム・ローションは病変の性状、部位、使用感に合わせる。皮膚用製剤を眼科用として使わない。 |
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ランク表はADの抗炎症療法の参照用。汗疹・おむつ皮膚炎・虫刺されには、それぞれの病態と部位に合わせた選択が必要である。再診で炎症の改善、皮膚萎縮・毛細血管拡張などの局所副作用、眼症状を確認する。強さだけで副作用リスクを決めず、量・面積・期間も評価する。[1]
リンデロンVとVGを区別する。 Vはベタメタゾン吉草酸エステル0.12%の単剤。VGは同じステロイド成分にゲンタマイシンを加えた配合剤である。VGを「Vより強いステロイド」と扱わず、感染の有無と電子添文の適応を確認する。感染がないADへの抗菌薬配合の定型処方にしない。[1] [23]
旧商品名を調べるとき
ADGLの表8は2023年6月時点の代表名を含む。デルモベート・キンダベートは現在の処方例と分ける。GSKの2026年1月通知では、下記製品は2026年3月31日に経過措置満了・薬価削除となり、4月1日以降の処方分は保険請求不可とされる。[22]
| 旧商品名 | ランク・成分濃度 | 同成分の確認先 |
|---|
| デルモベート(軟膏・クリーム・スカルプローション) | I群。クロベタゾールプロピオン酸エステル0.05% | 主表のクロベタゾール軟膏0.05%「イワキ」。剤形・包装・採用を確認。 |
| キンダベート軟膏0.05% | IV群。クロベタゾン酪酸エステル0.05% | 主表のクロベタゾン酪酸エステル軟膏0.05%「イワキ」。包装・採用を確認。 |
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販売名だけで剤形・濃度を置き換えない。後発品も電子添文と供給・院内採用を確認する。
FTUと処方量
FTU(finger-tip unit)は、成人の人差し指の先端から第一関節まで出した外用薬の量。標準的な口径のチューブでは約0.5gで、成人の手のひら約2枚分の面積に相当する。小児に塗る場合も保護者の指を使うが、必要なFTU数は患児の年齢・部位で変わる。[1]
「患児の指で1FTU」「全ての部位に一律1FTU」としない。チューブの口径や剤形で量も変わるため、実際の製品を使って量を示す。[1]
小児の1回外用量の目安(FTU)
部位全体に塗る場合の目安。上肢・下肢は片側量で、両側なら2倍。皮疹が一部なら面積に合わせる。薬剤ごとの塗布上限が優先し、全身へ表の量をそのまま使う指示ではない。[1]
| 年齢 | 顔・頸部 | 上肢片側 |
|---|
| 3〜6か月 | 1 | 1 |
| 1〜2歳 | 1.5 | 1.5 |
| 3〜5歳 | 1.5 | 2 |
| 6〜10歳 | 2 | 2.5 |
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| 年齢 | 下肢片側 | 体幹前面/背面 |
|---|
| 3〜6か月 | 1.5 | 1/1.5 |
| 1〜2歳 | 2 | 2/3 |
| 3〜5歳 | 3 | 3/3.5 |
| 6〜10歳 | 4.5 | 3.5/5 |
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表にない年齢を補間して厳密な承認用量としない。必要な処方総量と使用方法は、患児の皮疹を診て決める。[1]
主な非ステロイド外用薬
| 薬 | 国内用法の基本 | 効果不十分時と注意 |
|---|
| タクロリムス(プロトピック) | 0.03%小児用は1日1〜2回。低出生体重児・新生児・生後6か月未満は禁忌。16歳以上は0.1%の用法を確認。 | 2週間以内に改善なし/悪化なら中止。初期の灼熱感、塗布上限、感染・びらん、腎機能の条件を確認。[7] |
| デルゴシチニブ(コレクチム) | 小児は0.25%、症状に応じ0.5%、1日2回。生後6か月未満の試験なし。 | 0.5%で4週以内に改善なしなら中止。改善後0.25%を検討。体格・塗布上限を確認。[8] |
| ジファミラスト(モイゼルト) | 生後3か月以上。小児は0.3%、症状に応じ1%、1日2回。 | 1%で4週以内に改善なしなら中止。改善後0.3%を検討。妊娠・避妊の注意も確認。[9] |
| タピナロフ(ブイタマー) | 成人・12歳以上は1%、12歳未満小児は0.5%、1日1回。 | ADで8週以内に改善なしなら中止。毛包炎・接触皮膚炎に注意。2歳未満は試験なし。[10] |
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濃度をステロイドのランクに換算しない。粘膜・潰瘍・明らかなびらん、感染部位の扱いは各薬の電子添文を確認する。タクロリムスは広範囲・重度皮疹では腎機能確認の条件もある。デルゴシチニブの1回5g上限を乳児の推奨量とせず、体格を考慮する。[7] [8] [9] [10]
2026年10月改訂のタクロリムス0.03%小児用電子添文では、生後6か月以上2歳未満の用法が追加された。1回の上限は次の表で確認する。体格や塗布面積を考慮し、上限量を毎回塗るという意味ではない。[7]
| 年齢(体重の目安) | 1回の最大塗布量 |
|---|
| 生後6か月以上2歳未満(10kg未満) | 0.5g |
| 2〜5歳(10kg以上20kg未満) | 1g |
| 6〜12歳(20kg以上50kg未満) | 2〜4g |
| 13歳以上(50kg以上) | 5g |
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ブイタマー0.5%は2026年9月版に追加されたが、販売開始欄は未記載。処方前に最新電子添文と入手・採用状況を確認する。[7] [10] [20]
処方前に「1回量 × 1日回数 × 日数」から必要な総量を見積もる。家族に実際に塗ってもらい、量・範囲・回数を確認する。処方量が足りるか、園や学校で塗れるか、刺激感や不安で中断していないかも聞く。[1]
改善した後
頻回に再燃する部位では、炎症を十分に抑えた後に、ステロイドまたはタクロリムスを週2回程度塗る維持療法を検討する。これをプロアクティブ療法という。保湿は継続する。未改善の皮疹を残したまま、回数だけを減らさない。[1]
抗ヒスタミン薬だけでADの炎症は治療できない。かゆみへの補助として効果と眠気を評価する。ミチーガの導入条件に既存の抗アレルギー薬治療があることと、AD全例への一律投与は別である。[1] [6]