9-3 急性糸球体腎炎(溶連菌感染後)

緊急

9-3急性糸球体腎炎(溶連菌感染後)

病態・根拠
このページの目次9項目

1鑑別の考え方:血尿だけでなく、水と血圧の病気として診る

溶連菌感染後糸球体腎炎は、感染に続く免疫反応による非化膿性の腎炎である。糸球体の炎症により血尿・蛋白尿を生じ、水と塩分の排泄低下が浮腫・高血圧につながる。したがって、尿の色が薄くなったことだけを改善の指標にせず、体重、血圧、尿量、呼吸、腎機能を並べて評価する。[1][2]

2先行感染の検査と、今の腎障害の検査を分ける

C3等の補体、ASO・抗DNase B等の先行感染の証拠は診断を支持する。一方、Cr・電解質・尿蛋白は現在の重症度を示す。咽頭培養が陰性でも、感染が過去のものならそれだけで否定できない。肉眼的血尿が反復する、感染と近接して起こる、全身性の発疹・関節症状がある場合は、IgA腎症やIgA血管炎、SLE等も考える。[1][2]

夜間に尿沈渣が出なくても、高血圧、乏尿、浮腫と潜血・蛋白の組合せから重症度判断を始める。翌日の赤血球円柱確認を待って肺水腫・高K血症への対応を遅らせない。超音波は典型例全員の確定検査ではなく、診断が不明、非典型、疼痛が強いなどの場合に別の原因を調べるため使う。[1]

3利尿・降圧と抗菌薬は目的が異なる

治療の中心は体液過剰と高血圧の管理である。体重と出納を反復し、利尿・塩分や水分の調整を病態に合わせる。乏尿だからという理由で脱水例と同じ補液を繰り返すと、うっ血を悪化させうる。高度高血圧の神経症状、肺水腫、危険な電解質異常、進行する腎機能悪化は、腎臓・集中治療へ緊急相談する。[1]

抗菌薬は残存する溶連菌の除菌と伝播防止が目的で、成立した免疫性腎炎を直接治す薬とは区別する。選択と投与は国内の施設手順で確認する。[2]

4尿所見だけを追って終わらせない

血圧・腎機能・体液量が改善してから退院・外来管理を考える。補体や腎機能が回復しない、蛋白尿が増える、肉眼的血尿が持続・再発する場合は専門再評価が必要である。顕微鏡的血尿が残る期間と、腎機能や補体の異常が続くことを同じ扱いにしない。[1]

5出典と適用範囲

海外の即放性降圧薬の具体量や家庭での利尿薬継続方針は、この解説では国内へ転用しない。

6臨床医が迷う場面

7茶色い尿が薄くなれば、降圧薬や利尿薬はやめてよい?

尿色だけで治療終了を決めない。体重、血圧、尿量、浮腫、腎機能・電解質を確認し、体液過剰と高血圧の改善に合わせて調整する。頭痛・嘔吐、呼吸困難は尿の見た目に関係なく緊急再評価し、けいれんや意識障害があれば専門施設へ急ぐ。

出典:RCH 溶連菌感染後糸球体腎炎(海外) / CDC 溶連菌感染後糸球体腎炎

8溶連菌が先行した腎炎なら、抗菌薬で腎炎も治る?

腎炎は感染後の免疫反応で、抗菌薬だけで体液過剰や高血圧が改善するわけではない。残る溶連菌の除菌・伝播予防と、腎炎の支持療法を分けて考える。抗菌薬を開始しても体重・尿量・血圧を追い、低補体や蛋白尿が続く例は腎臓専門医へ相談する。

出典:RCH 溶連菌感染後糸球体腎炎(海外) / CDC 溶連菌感染後糸球体腎炎

9血尿が長引く。ステロイドを始めるべき?

血尿だけで免疫抑制薬を追加しない。蛋白尿、腎機能、血圧、補体の回復を合わせて追う。遷延する低補体、増える蛋白尿、腎機能悪化などは典型的な回復から外れるため別病態を再評価する。専門医と生検等の必要性を判断し、尿色のみで増悪としない。

出典:RCH 溶連菌感染後糸球体腎炎(海外) / CDC 溶連菌感染後糸球体腎炎

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