9-3急性糸球体腎炎(溶連菌感染後)
血尿・浮腫・高血圧
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- コーラ色の尿+まぶたの腫れ+2週間前の咽頭炎が揃えばほぼこれ。とびひ先行はやや遅れて3〜6週間後に発症するとされる。4〜10歳に多く、ほとんどの場合完全に治癒する。
- 当直で命に関わるのは腎臓そのものでなく血圧と水。高血圧性脳症(けいれん・意識障害)・肺水腫(呼吸困難)・高カリウム血症を見る。
- 体重を測る。数日での急な増加は体液貯留のサイン。頭痛・嘔吐は高血圧の症状として扱う。
- 腎炎そのものに効く薬はない。当直の仕事は血圧・体重・尿量の評価と、安静・水分/塩分制限などの対症療法。
- 当直帯の尿検査は定性のみ(沈渣は出ない)。夜は「潜血+蛋白」「血圧」「尿量」「浮腫」の4つで入院と降圧の判断ができる。
2鑑別のながれ
- 血尿・浮腫→感染と同時(1〜3日以内)の肉眼的血尿、補体正常、反復する→IgA腎症
- 血尿→排尿痛・頻尿、浮腫・高血圧なし(アデノウイルスが多い)→出血性膀胱炎
- 血尿→発熱・膿尿・細菌尿。浮腫・高血圧なし→尿路感染症
- 血尿・むくみ→下肢の触知可能な紫斑が先行または同時→紫斑病性腎炎(IgA血管炎)
- むくみ→浮腫が主役・蛋白尿が主役、補体は正常→ネフローゼ症候群
- 頭痛・嘔吐→血圧を測っていない→高血圧性脳症(降圧開始→搬送)
- 血性下痢が先行→腎炎として扱われがち→溶血性尿毒症症候群(HUS)
- 発熱・皮疹・関節痛→抗核抗体陽性、腎炎に加え全身症状を伴う→ループス腎炎(専門施設で精査)
- 浮腫が主訴→肝腫大・頸静脈怒張。心エコーは当直帯不可のため呼吸数・肝腫大・頸静脈・ラ音で疑う→心不全(浮腫を腎炎のせいにしない)
3検査
- 血圧測定(年齢基準・カフサイズ確認)と体重測定(前回値との差)— 最優先、夜間に完結する
- 尿定性(潜血・蛋白)— 当直帯で可。尿沈渣・赤血球円柱は当直帯には出ないので翌日に確認する
- 尿蛋白クレアチニン比 — 当直帯で可。ネフローゼ域なら非典型
- 血算(貧血・血小板減少はHUSを示唆)— 当直帯で可
- Cr・BUN・電解質(特にK)・アルブミン・CRP — 当直帯で可
- C3(補体)・ASO/ASK — 当直帯に出せるかは未確認。低補体が8週を超えて続けばMPGN・C3腎症を疑うが、結果を待たず潜血・蛋白・血圧・尿量・浮腫の4項目で入院・降圧の判断を進める
- 心電図(高カリウム血症の評価。テント状T波)
- 胸部X線(肺水腫・心拡大)— SpO2低下・起座呼吸があれば
- 腎エコーは当直帯では撮れない
4血圧測定(正しいカフの選び方)
- 坐位で数分間安静にしてから右上腕で測定する(体位)
- カフはゴム嚢の幅が上腕周囲長の40%以上、長さが上腕周囲の80%以上のものを選ぶ
- 年齢の目安:3〜6歳未満は7cm幅、6〜9歳未満は9cm幅、9歳以上は成人用カフを使う
- 複数回測定する
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- カフの幅が狭すぎると収縮期・拡張期とも実際より高く測定され、高血圧と見誤る。広すぎると逆に低く出る
5帰宅・入院の目安
- 帰宅肉眼的血尿のみ、血圧正常、浮腫なし、全身状態良好
- 入院典型的な経過で血圧・尿量が保たれている初発例(夜間は当院で入院管理し、日勤帯に専門施設と相談する)、体重が数日で数kg増加
- 搬送・紹介高血圧性脳症(降圧開始のうえ搬送)、肺水腫で人工呼吸・透析が要る場合、高カリウム血症で透析が要る場合、乏尿・無尿を伴う急性腎障害、低補体の遷延・ネフローゼ域蛋白尿(腎生検が要る)
6診療中の疑問と回答
- 茶色い尿が薄くなれば、降圧薬や利尿薬はやめてよい?
- 尿色だけで治療終了を決めない。体重、血圧、尿量、浮腫、腎機能・電解質を確認し、体液過剰と高血圧の改善に合わせて調整する。頭痛・嘔吐、呼吸困難は尿の見た目に関係なく緊急再評価し、けいれんや意識障害があれば専門施設へ急ぐ。
根拠:RCH 溶連菌感染後糸球体腎炎(海外) / CDC 溶連菌感染後糸球体腎炎 - 溶連菌が先行した腎炎なら、抗菌薬で腎炎も治る?
- 腎炎は感染後の免疫反応で、抗菌薬だけで体液過剰や高血圧が改善するわけではない。残る溶連菌の除菌・伝播予防と、腎炎の支持療法を分けて考える。抗菌薬を開始しても体重・尿量・血圧を追い、低補体や蛋白尿が続く例は腎臓専門医へ相談する。
根拠:RCH 溶連菌感染後糸球体腎炎(海外) / CDC 溶連菌感染後糸球体腎炎 - 血尿が長引く。ステロイドを始めるべき?
- 血尿だけで免疫抑制薬を追加しない。蛋白尿、腎機能、血圧、補体の回復を合わせて追う。遷延する低補体、増える蛋白尿、腎機能悪化などは典型的な回復から外れるため別病態を再評価する。専門医と生検等の必要性を判断し、尿色のみで増悪としない。
根拠:RCH 溶連菌感染後糸球体腎炎(海外) / CDC 溶連菌感染後糸球体腎炎
- 血尿は何日続く?
- 3〜6か月続くことがあるが、蛋白尿がなければ運動を禁止する必要はない。血尿だけでは治癒と判断せず、血圧・尿蛋白・腎機能・補体の回復を再診で確認する。
- 登園・登校は?
- 蛋白尿が消えれば血尿が残っていても登園・登校でき、他の子と同じ生活でよい。蛋白尿が消えるまでは体育などの運動を禁止する。
- 尿沈渣が出ないと動けない?
- 動ける。夜は定性の潜血・蛋白、血圧、尿量、浮腫の4つで入院と降圧の判断ができる。赤血球円柱は翌日に確認する。
8家族への説明
のどや皮膚の感染のあと、2週間ほどしてから腎臓に炎症が起きる病気です。おしっこが赤い(コーラのような色)、まぶたが腫れる、血圧が上がるのが特徴で、ほとんどの場合完全に治ります。強い頭痛、吐く、息が苦しい、横になれない、けいれん、おしっこがほとんど出ない、このどれかがあればすぐに連絡してください。血尿は3〜6か月続くことがありますが、たんぱくが消えれば運動を止める必要はありません。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。