10-7急性小脳失調・歩行異常
突然の失調・ふらつき・腱反射で分岐
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- 突然歩けなくなった・ふらつく子どもは、まず腱反射と眼球運動を確認する。腱反射が保たれていれば小脳性の失調、低下・消失していればギラン・バレー症候群/ミラー・フィッシャー症候群を最優先で疑う。
- 意識障害・けいれん・朝に強い頭痛や嘔吐を伴う失調は、ただの良性の失調と考えない。ADEM・脳腫瘍・中毒を想定して動く。
- 眼球が多方向へ不規則かつ急速に動くオプソクローヌス+ミオクローヌスがあれば、神経芽腫の検索が必要。
- 当院は院内当直帯にCT・MRI・腹部エコーが使えない。腰椎穿刺と髄液検査(細胞数・糖・蛋白・グラム染色)はできる(培養の夜間提出は不可)。画像適応があると判断した時点が搬送の判断。
2鑑別のながれ
- 先行感染(かぜ・水痘)後の突然の失調→意識清明・腱反射正常・進行していない→感染後急性小脳失調症(当院で経過観察可)
- 失調+意識障害・けいれん・髄膜刺激徴候→複数病変・脳炎様症状、行動異常や片麻痺→急性散在性脳脊髄炎(ADEM)(持てない・MRI/専門科へ)
- 失調+腱反射の低下・消失→複視(外眼筋麻痺)やふらつきで発症することが多い→ギラン・バレー症候群/ミラー・フィッシャー症候群(持てない)
- 失調+オプソクローヌス+ミオクローヌス→眼球が多方向へ不規則かつ急速に動く→オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(OMS)→神経芽腫(持てない・腹部胸部画像検索)
- 進行性・非対称性の失調→朝起きたときに強くなる頭痛・嘔吐(頭蓋内圧亢進)→後頭蓋窩腫瘍(髄芽腫など)(持てない・MRI相談)
- 頭部外傷後に出現した失調→特に後頭部の打撲→後頭蓋窩出血・小脳挫傷(持てない・頭部CTが撮れる施設へ)
- 内服歴・薬剤へのアクセスがある→眼振・傾眠・構音障害を伴うことがある→中毒(中毒110番へ相談。持てない可能性が高い)
- 失調+発熱・項部硬直→意識障害を伴うことがある→細菌性髄膜炎・小脳膿瘍(持てない)
3検査
- 腱反射(膝蓋腱・アキレス腱)と眼球運動(眼振・複視・オプソクローヌス)をまず確認
- 指鼻試験・踵膝試験で四肢の運動失調、支えなしで座れるか・立てるかを見る
- 構音障害・嚥下障害・呼吸苦(球麻痺様所見)があればその時点で持てない。ベッドサイドのSBC(吸気後にひと息で1から数を数える)は人工呼吸管理の予測材料になる(20未満)
- 血算・生化・血糖。中毒を疑えば中毒110番に相談
- 腰椎穿刺・髄液検査(細胞数・糖・蛋白・グラム染色)は当直帯で可。培養は夜間提出不可
- 頭部CT・MRI・腹部エコーは当直帯不可。画像適応があると判断した時点が搬送の判断
4対応の注意
避けること・注意:腱反射低下・消失を小脳失調と決めつけること、GBS/ミラー・フィッシャー症候群を疑った時点での急性期治療(免疫グロブリン・血漿浄化療法)を当院で行うこと。
↑ このページの入口へ5経過観察・搬送の目安
- 帰宅重症・治療可能な原因を評価して原因の説明がつき、臨床的に良好である、家族に悪化時の即時再受診目安を伝え、確実な再診・フォローを設定できる、意識清明・腱反射正常・非進行という所見だけでは帰宅の安全性を確定しない
- 搬送・紹介意識障害・けいれんを伴う失調(即時)、頭部外傷を契機とする失調(即時)、腱反射の低下・消失(GBS/ミラー・フィッシャー症候群疑い)、オプソクローヌス+ミオクローヌス(OMS疑い、神経芽腫検索)、進行性・非対称性の失調、頭蓋内圧亢進所見、中毒を疑う内服歴、発熱・項部硬直を伴う失調(細菌性髄膜炎・小脳膿瘍疑い)
6診療中の疑問と回答
- 感染後のふらつきなら良性小脳失調として帰せる?
- 感染後急性小脳失調は除外診断。意識、頭痛・嘔吐、眼球運動、腱反射・筋力と進行性を評価し、中毒や腫瘍・炎症を除く。原因の説明がつき全身状態良好で、確実な再診がある場合に限り外来を検討し、新しい症状があれば再評価する。
根拠:RCH Ataxia - 腱反射が残っていればGBSは否定できる?
- 早期には典型所見がそろわないことがある。歩けない理由が失調か筋力低下・痛みかを診察し、眼球運動障害、球症状、呼吸・自律神経症状を確認する。進行する脱力や反射低下があれば神経専門科へ相談し、単回の正常所見で帰宅を決めない。
根拠:RCH Ataxia - 翌日も同じふらつきならそのまま待てる?
- 悪化・非対称性、強い頭痛や朝の嘔吐、意識変化、新しい神経症状があれば画像を含む評価へ進む。症状が改善しない場合も診断を見直す。当院で必要な画像ができない時間帯は、検査可能な施設への相談を先延ばしにしない。
根拠:RCH Ataxia
- 腱反射が正常なら見た目でGBSは否定できる?
- できない。GBSは通常腱反射が低下・消失する(98%)が、病初期には正常のこともある。
- 朝に強い頭痛・嘔吐は何を疑う?
- 頭蓋内圧亢進・水頭症。進行性・非対称性の失調を伴えば後頭蓋窩腫瘍を疑い、持てない。
- 水痘のあとの小脳失調は心配ない?
- 脳炎の中では小脳炎が多く小脳失調をきたすことがあるが、予後は良好とされる。他のレッドフラグがなければ経過観察でよい。
8家族への説明
急に歩き方がおかしくなった原因の多くは、かぜや水ぼうそうなどのウイルス感染のあとに、小脳の働きが一時的に乱れるもので、多くは自然に良くなっていきます。ただし、意識がぼんやりする、頭を強く痛がる、手足に力が入らない、目が勝手にぐるぐる動く、といった様子があればすぐに受診してください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。