6-15白癬・疥癬・シラミ
頭部脱毛斑・環状紅斑・夜間増強する痒み
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- 3疾患とも大半は緊急性が低い皮膚感染症。当直で命に関わる判断が要るのは疥癬の「角化型」だけと考えてよい。
- 角化型疥癬では多数のヒゼンダニが患者の皮膚角質層内に存在するため、肌と肌の直接接触を介さずに感染が成立することがある。感染力が桁違いに強い。
- 頭部白癬はしばしば頭部脂漏性皮膚炎・アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬・頭部(慢性)膿皮症との鑑別を要する。治らない脱毛斑は真菌検査に回す。
- 学校感染症としてはいずれも法律上の指定病名ではない。疥癬・アタマジラミは治療を始めれば出席停止の必要はない。トンズランス感染症のみ、接触の多い練習・試合を治るまで休ませる。
2鑑別のながれ
- 全身の蛎殻様角質肥厚+免疫抑制状態→ステロイド・免疫抑制剤使用中、悪性腫瘍、糖尿病、透析、高齢者施設等からの間接曝露歴→角化型疥癬(個室隔離が必要な場合がある)
- 頭部に強い炎症・排膿・脱毛・所属リンパ節腫脹→毛包から排膿、抜毛しやすい毛→ケルスス禿瘡(炎症性の頭部白癬)
- 体幹の環状紅斑→境界明瞭、中心治癒傾向→体部・股部白癬
- 乳児の手掌・足底の水疱・膿疱→疥癬罹患時や治癒後→acropustulosis of infancy(通常の湿疹と誤診しない)
- 頭皮のかゆみだけ→一般に無症状、吸血部位にかゆみ→アタマジラミ(頭髪をよく見ないと見逃す)
- 疥癬・アタマジラミの掻破部に広範な発赤・熱感・発熱→二次性の細菌感染→とびひ・蜂窩織炎の合併(先に評価を優先)
3検査
- 疥癬は手関節屈側・手掌・指間・外陰部・腋窩、白癬は体幹の環状紅斑と頭部の脱毛斑、アタマジラミは頭髪の根本を視診
- 直接鏡検(疥癬はヒゼンダニ・虫卵・糞塊、白癬はKOH法での菌糸)の感度は高いとはいえず、偽陰性となりやすい
- 頭部白癬で直接鏡検が陰性でも真菌培養は感度が高く推奨されるが、当直帯は検体を提出できない(facility.json)。当直は臨床診断+皮膚科紹介とし、培養は日勤帯に回す
4対応の注意
薬剤名・用量は院内採用・アンチバイオグラムで決まるため意図的に記載しない。角化型疥癬は個室隔離(治療開始後1〜2週間)・処置ごとの手洗い・リネンの熱処理または殺虫剤散布が骨格。
↑ このページの入口へ5入院患者に疥癬が判明した場合
- 通常疥癬は個室隔離不要。予防衣・手袋も不要で、通常の洗濯でよい
- 角化型疥癬は個室に隔離し治療を開始。隔離期間は治療開始後1〜2週間が目安
- 角化型疥癬は身体介護時に予防衣・手袋を使用し、使用後はポリ袋に入れて廃棄・洗濯する
- 処置ごとの手洗いを徹底する
- リネン・寝具は隔離解除時に熱処理または殺虫剤散布のうえ洗濯する(自家感染予防のため治療の度に交換)
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- 通常疥癬にまで個室隔離を広げない
- 角化型疥癬を通常の乾燥肌・老人性皮膚掻痒症と誤診し隔離が遅れる
6帰宅・入院の目安
- 帰宅通常の体部白癬・股部白癬・軽症のアタマジラミ、通常疥癬(同居家族・同室者にも予防的治療を行う方針。皮膚科と共有)
- 搬送・紹介頭部白癬(浅在性・ケルスス禿瘡いずれも)は真菌検査と内服適応の判断が要るため皮膚科へ、角化型疥癬(疑い含む)は個室隔離・感染対策の体制が要る。体制がなければ皮膚科・感染症科のある施設へ相談、集団発生(保育園・学校・部活動)は保健所・学校医・施設側との連携が要る
7診療中の疑問と回答
- 疥癬治療後もかゆい。すぐ同じ薬を追加する?
- 治療後もかゆみが残ることはあり、かゆみだけで駆虫失敗としない。新しい皮疹・疥癬トンネル、虫体の確認、塗り残し、接触者の未治療を見直す。再評価をせず駆虫薬を反復せず、残る炎症への対処と再治療の必要性を皮膚科で区別する。
根拠:日本皮膚科学会 疥癬診療ガイドライン第3版 - 同居家族は無症状なら対応不要?
- 潜伏期間には無症状のことがある。誰とどの程度接触したかを確認し、患者と接触者の診察・治療時期、寝具や衣類の扱いをそろえる。患者だけ繰り返し治療しても再感染し得るため、家庭・施設の連絡先を含む感染対策を皮膚科と調整する。
根拠:日本皮膚科学会 疥癬診療ガイドライン第3版 - 痂皮が厚いが、かゆみは弱い。通常の疥癬と同じ?
- 免疫低下や厚い角化を伴う皮疹では角化型を疑う。かゆみの弱さで感染力を低く見積もらず、接触予防策・個室管理を開始し皮膚科へ速やかに相談する。診断と治療に加え、接触者調査や環境対策を同時に進め、通常型の外来処方だけで完結させない。
根拠:日本皮膚科学会 疥癬診療ガイドライン第3版
- アタマジラミは不衛生だから起きる?
- 違う。衛生不良の指標ではなく、児童に多い一般的な感染症。
9家族への説明
今日の診断は、白癬(いわゆる“たむし”)・疥癬・アタマジラミのいずれかです。どれも命に関わる病気ではありませんが、人にうつる皮膚の病気なので、治療と合わせて生活の工夫が必要です。アタマジラミは児童に多く、清潔にしていてもうつるもので、衛生が悪いから起きるものではありません。タオル・くし・帽子・寝具の共有は避けてください。多くは治療を始めれば学校や保育園を休む必要はありませんが、格闘技の部活動をしているお子さんの体や頭の白癬は、うつる心配がなくなるまで練習・試合を休んでいただくことがあります。疥癬は家族の中で同じ時期に同じような発疹やかゆみが出ている方がいたら、一緒に受診してください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。