10-11失神・一過性の意識消失
心原性を外す・全例心電図
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- 意識が戻らない・不整脈が続いている・ショックがあれば、鑑別より先に蘇生を優先し、モニタを装着する(待たない)。
- 失神の大半は良性(反射性・起立性)だが、心原性失神は予後が悪い。当直の仕事は良性の診断ではなく心原性を外すこと。
- 心電図を撮る。失神で来たら原則として全例。正常な心電図1枚でも心原性を否定できない。危険な病歴があれば小児循環器へ相談する。
- 危ないのは次の7つ:前駆症状なし・胸痛・動悸・運動中に発症・臥位で発症・器質的心疾患の既往・突然死の家族歴。
- 運動中の失神は、証明されるまで心原性として扱う。けいれん様の動きを伴っても失神のことがあり、『けいれんした』で神経の枠に決めつけない。
判断の流れ
拡大して見る ↗2鑑別のながれ
- 誘因あり(起立・痛み・恐怖・排尿・咳・採血)、前駆症状あり→倒れた後すぐ回復→反射性(神経調節性)失神(心原性を外したうえで診断。当院で完結しうる)
- 起立時、朝に強い、立ちくらみの反復→起立試験で評価→起立性低血圧・起立性調節障害(当院で対応)
- 運動中・臥位・前駆症状なし・胸痛・動悸・突然死の家族歴・器質的心疾患→病歴・診察・心電図で疑う。正常心電図でも危険な病歴があれば専門相談→心原性失神(持てない。小児循環器へ)
- 発作後のもうろう、舌咬傷、けいれんが先行、回復が遅い→病歴・脳波→てんかん発作(専門外来へ)
- 空腹・糖尿病治療中、意識の戻りが遅い→血糖測定→低血糖(当院で対応)
- 誘因、しびれ、テタニー→病歴→過換気(当院で対応)
- 蒼白、頻脈、月経過多→血算→貧血・出血(当院で対応)
- 頻回、目撃者の前で、外傷を伴わない→除外診断。決めつけない→心因性(偽失神)(慎重に)
3検査
- 心電図(原則全例):QT延長、デルタ波、Brugada型、ST-T異常、心室肥大、徐脈・伝導障害を見る
- 学校心臓検診でQT延長を指摘された既往があれば、失神の有無によらず心電図を再検し、延長があれば小児循環器へ紹介する
- 血糖
- 血算(貧血・出血)
- 起立試験(反射性失神・起立性調節障害を疑うとき)
- 心エコー・ホルター・運動負荷は専門施設で(当直帯には無い)
4対応の注意
避けること・注意:運動中の失神を心原性以外として扱うこと、けいれん様の動きがあったことだけで神経の枠に決めつけること、判断がつかないまま『様子を見ましょう』で終わらせること。
↑ このページの入口へ5送る・持つの目安
- 帰宅反射性失神らしく、心電図正常、危険な所見なし:当院で対応。誘因の回避と再発時の対応を指導し、再受診条件を渡す
- 搬送・紹介心原性を疑う所見がひとつでもある:持てない。小児循環器へ紹介、心電図に異常がある:持てない。小児循環器へ、判断がつかない:心電図を添えて紹介する
6診療中の疑問と回答
- 心電図が正常なら、運動中の失神でも体育を許可できる?
- 正常な一枚だけでは心原性を除外できない。運動中の発症、胸痛・動悸、家族の突然死を確認し、小児循環器で評価するまで強い運動再開を安易に許可しない。反射性失神に見えても危険な病歴を優先し、検査と復帰判断を専門医につなぐ。
根拠:RCH 小児失神(海外指針) / RCH 小児心電図の解釈(海外) - 倒れたときに手足が動いた。てんかん薬を始める?
- 失神でも短いけいれん様運動が起こり得る。姿勢、誘因、前駆症状、皮膚色、持続と回復の速さを確認し、心電図も評価する。動きだけでてんかんと決めず、意識回復が遅い・反復するなどの所見に応じて小児神経・循環器へ相談する。
根拠:RCH 小児失神(海外指針) / RCH 小児心電図の解釈(海外) - 反射性らしい失神が繰り返す。薬を出す前に何をする?
- 水分・食事、睡眠、暑熱や長時間立位との関係を確認し、前駆症状があれば座る・横になる対応を教える。貧血や脱水などを病歴から評価し、頻回で生活に支障がある場合は専門評価へ進む。新たな胸痛や運動時発症は以前の良性診断に固定しない。
根拠:RCH 小児失神(海外指針) / RCH 小児心電図の解釈(海外)
- 失神は全員に心電図が要る?
- 原則全例。心原性を外すことが当直の仕事。
- けいれん様の動きがあれば神経の問題?
- 失神でもけいれん様の動きが出ることがある。姿勢・誘因・前駆症状・回復の速さを目撃者から聴く。
- 運動中の失神はどう扱う?
- 証明されるまで心原性として扱う。心電図を撮り小児循環器へ。
8家族への説明
気を失うことの多くは、血圧や脈が一時的に下がって脳の血の巡りが減るもので、命に関わりません。ただし、運動しているときに倒れた・横になっているときに倒れた・前ぶれなく倒れた・ご家族に若くして突然亡くなった方がいる、このどれかに当てはまるときは、心臓が原因のことがあるので詳しい検査をします。心電図は今日撮ります。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。