6-1SSSS(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)
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1病態と診断
SSSSは、黄色ブドウ球菌が産生する表皮剥脱毒素が血行性に作用し、表皮の浅い層の接着を障害する病態。感染源と皮膚剥離部位が一致しないことがある。水疱性膿痂疹は局所で毒素が作用する病態で、局在する水疱・びらんが中心。SSSSでは皮膚の圧痛、広範囲の紅斑・剥離、発熱・不機嫌などを合わせて判断する。[2]
粘膜は通常保たれる。明らかな口腔・眼・陰部のびらん、薬剤曝露、標的状病変があればSJS/TENなどを考える。Nikolsky徴候だけで両者を区別しない。非典型例は皮膚科に相談し、必要に応じて皮膚生検で剥離の深さを確認する。[2,8]
2MSSA・MRSAと抗菌薬の根拠
CHOPの小児SSSS経路はセファゾリン静注、内服可能例のセファレキシン、改善後の内服移行と総7〜10日治療を提示している。これは海外施設の経路で、日本の院内処方をそのまま規定するものではない。[1]
国内『MRSA感染症の診療ガイドライン2024』の小児領域はSSSSにおけるMRSAの関与に注意を促し、MRSA感染症としてのSSSSにはVCMを推奨する。MRSAを扱う指針であり、全SSSSに無条件でVCMを使うという意味ではない。MSSAを想定できる状況と、MRSAが疑わしい状況を分け、地域・院内の疫学、重症度、培養、治療反応から選択する。[3]
国内の培養陽性入院児を対象にした小規模後方視研究では、MRSAが多く分離された。感受性のある抗菌薬を5日間以上投与した群・それ以外の群で症状持続・入院期間に有意差を認めなかったが、対象の選択、保菌と起炎菌の区別、症例数の限界がある。初期薬剤の一致・不一致だけを比べた研究ではない。βラクタムで全例治療できる、あるいは抗菌薬を省略できるという根拠にはならない。[4]
3クリンダマイシン・治療反応の見方
CLDMには毒素産生抑制という理論がある。一方、小児SSSSの観察研究では耐性や治療選択の交絡が問題になり、通常例へ追加する利益は確立していない。重症・難治例で検討する際は感受性と施設疫学を踏まえ、CLDM単剤を感受性不明のまま選ばない。[7,10]
改善の判断は、全身状態、発熱、皮膚の圧痛、新規紅斑・剥離の拡大、摂取・尿量で行う。軽快後も落屑は続くことがある。落屑だけを治療失敗と扱わず、全身状態の悪化や新規炎症所見があれば原因菌・薬剤、鑑別、深部感染などを再評価する。[1]
4アクアチム・アズノールの位置付け
当院ではSSSSの患部にアクアチム軟膏1%とアズノール軟膏0.033%を塗布する。(院内方針、2026-10-28に診療担当者が明示)。アクアチムは局所抗菌、アズノールはびらん保護を目的として使い、全身抗菌薬・支持療法も並行する。電子添文は各薬の適応・用法・安全情報の出典であり、当院の併用方針そのものの出典ではない。[5,6]
アクアチムは低出生体重児・新生児・乳児・幼児を対象とした有効性・安全性の臨床試験がない。使用の必要性を個別に判断し、原則感受性を確認して必要最小限の期間にとどめる。両剤とも成分への過敏症既往には使用せず、眼科用には使用しない。塗布後の刺激・発赤・接触皮膚炎が疑われたら再評価する。[5,6]
塗布部位はSSSSの患部とし、量・回数・期間は個別指示に従う。混合調剤・混合比・塗布順序は今回の指示に含まれないため新たに設定しない。必要に応じて非固着性被覆などで摩擦を避ける。[2,8]
5出典・確認情報
- [1] Children’s Hospital of Philadelphia. SSSS Clinical Pathway. 抗菌薬、内服移行、退院条件、総治療期間、落屑の扱い。海外施設経路。
- [2] Children’s Hospital of Philadelphia. SSSS: History and Physical、Gentle Skin Care. 診断・鑑別と皮膚ケア。検査・入院判断は[1]も参照。海外施設経路。
- [3] 日本化学療法学会・日本感染症学会. MRSA感染症の診療ガイドライン2024. 小児領域、本文p.308–309。MRSA感染症としてのSSSS、培養、VCM・TDM。
- [4] 本多愛子ほか. SSSSにおける抗菌薬の有用性. 日本小児科学会雑誌 124(5), 2020. 単施設後方視研究。公開抄録を確認。
- [5] PMDA. アクアチム軟膏1% 電子添文. 適応、用法、小児等、眼への使用禁止。
- [6] PMDA. アズノール軟膏0.033% 電子添文. 成分、びらん・潰瘍の適応、用法、副作用。
- [7] Vanderbilt University Medical Center. Pediatric Skin and Soft Tissue Infection Guideline, 2026. SSSSの治療、重症・難治例でのCLDM検討。海外施設経路。
- [8] British Association of Dermatologists. Staphylococcal scalded skin syndrome. 皮膚の洗浄、油性保護、被覆。患者向け学会資料。
- [9] CDC. Appendix A: Type and Duration of Precautions. Staphylococcal disease / Scalded skin syndromeの接触予防策・標準予防策と罹患期間、新生児室の集団発生。
- [10] Liy-Wong C, Pope E, Weinstein M, Lara-Corrales I. Staphylococcal scalded skin syndrome: An epidemiological and clinical review of 84 cases. Pediatr Dermatol. 2021;38(1):149–153. DOI: 10.1111/pde.14470。小児SSSSの後方視研究。CLDM併用と入院期間の関連、交絡の限界。
最終根拠確認: 2026-10-23。小児科医による逐条レビュー、院内採用品・用量と皮膚科相談経路の確認後に公開を判断する。全身抗菌薬の固定用量は未設定。
6臨床医が迷う場面
7皮膚の培養が陰性で、CEZを続けてよいか迷うときは?
SSSSは離れた感染源の毒素で発症し、剥離面から菌が出ないことがある。鼻腔・咽頭・眼脂などの感染源、採取時期、抗菌薬前投与を確認する。培養陰性だけで中止せず、皮膚痛と新規剥離、全身状態の推移から診断と抗菌薬を再評価する。
8全身抗菌薬を始めても皮膚痛・剥離が進む。薬を追加する?
MRSAリスク、培養・感受性、投与状況に加え、TENなど別病態、脱水、感染源の持続を見直す。抗菌薬の無条件な併用より皮膚科・感染症担当へ早めに相談する。腎機能悪化があれば補液と薬剤曝露を評価し、VCM使用時はTDMで調整する。
9皮膚がむけている間は、点滴抗菌薬と外用抗菌薬を続ける?
落屑の残存だけで全身抗菌薬を延長せず、新規剥離、圧痛、発熱、飲水・内服可能性で経口移行を検討する。当院ではSSSSの患部にアクアチム軟膏1%とアズノール軟膏0.033%を塗布する。外用の継続期間は患部の状態を見て指示し、混合調剤・混合比・塗布順序は今回の指示に含まれない。
出典:CHOP SSSS診療経路(海外施設) / 日本化学療法学会ほか MRSA感染症GL2024 / PMDA アクアチム軟膏1% / PMDA アズノール軟膏0.033%
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。