6-1SSSS(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)
有痛性紅斑・浅い水疱・表皮剥離
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次11項目
1ポイント
- 皮膚の痛み・圧痛+急速に広がる紅斑・浅い剥離から疑う。口囲・眼囲、頸部・腋窩・鼠径を診る。発熱がなくても否定しない。
- 原則入院を検討。全身抗菌薬、補液・鎮痛、皮膚保護を並行する。外用薬だけで経過を見ない。
- MSSAとMRSAを分けて抗菌薬を選ぶ。MSSAならCEZ、MRSAを疑う場合はVCMなどを検討。日本では施設のMRSA状況も確認する。
- 当院ではSSSSの患部にアクアチム軟膏1%とアズノール軟膏0.033%を塗布する。(2026-10-28確認の院内方針院内)。塗布する部位・量・回数・期間は個別指示に従う。
2鑑別のながれ
- 有痛性紅斑・浅い水疱・剥離→急速に広がる、口囲や間擦部に目立つ、粘膜は通常保たれる→SSSSを疑い入院評価
- 水疱・びらんが限局→局所病変が中心で全身状態良好→水疱性膿痂疹との鑑別
- 明らかな口腔・眼・陰部のびらん→新規薬剤、標的状病変など→SJS/TENを再評価し皮膚科へ緊急相談
- 循環不全・臓器障害→反応低下、尿量減少、呼吸障害→敗血症・毒素性ショック症候群を考え蘇生と搬送相談
- 皮膚所見に比べ深い強い痛み→局所腫脹、急速な進行、循環不全→壊死性軟部組織感染を考え外科へ緊急相談
3入院・重症対応の判断
| 入院評価 | SSSSを疑い、静注治療・観察が必要 | 特に新生児・乳児、急速拡大、広範囲病変では入院管理 |
|---|---|---|
| 入院管理 | 経口摂取不良・脱水、強い疼痛、全身状態不良 | 静注抗菌薬、補液・鎮痛、皮膚科相談 |
| 重症 | ショック・臓器障害、創傷管理や集中治療を自施設で行えない | 安定化と搬送・専門施設への相談を並行 |
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4検査
- バイタル、反応、末梢循環、経口摂取、尿量、体重、疼痛、剥離の範囲と新規病変を記録する。
- 可能なら抗菌薬前に鼻腔・咽頭・眼脂、臍・会陰など疑う感染源の培養を採取する。水疱内容の培養が陰性でも否定できない。陽性が保菌を示す場合もある。
- 血液培養は新生児、発熱・全身状態不良、敗血症疑いなどで検討する。
- 採血は全例一律にしない。広範囲病変・脱水・全身状態不良では、病態に応じてCBC・CRP・電解質・BUN・Crなどを検討する。検査値だけで確定・除外しない。
- 当直帯に培養受付ができない場合は、検査室の保管・提出手順を確認する。必要な抗菌薬を翌朝まで待たない。
- 非典型例は皮膚科と皮膚生検を相談する。Nikolsky徴候を繰り返し誘発しない。
5皮膚保護・補液・疼痛管理
- やさしく清潔にし、こすらない。被覆は全例には要さず、必要に応じて非固着性被覆材などで保護する。
- 当院ではSSSSの患部にアクアチム軟膏1%とアズノール軟膏0.033%を塗布する。塗布は皮膚をこすらずやさしく行い、部位・量・回数・期間は個別指示に従う。
- 水疱を意図的に破らない。表皮を無理に剥がさず、粘着材をびらんに直接貼らない。
- 経口摂取・尿量・体重・電解質を追い、脱水と皮膚からの喪失に応じて補液する。
- 保温と鎮痛を行う。皮膚処置の前にも疼痛対策を行う。
- 手指衛生、滲出液への接触予防策を施設手順に合わせる。複数例の発生は感染対策チームへ相談する。
6処置・処方例
Rp. 1セファゾリン(CEZ) MSSAを想定・確認した場合の候補 静注
施設のMRSA状況と重症度を確認して選ぶ。培養結果と反応で適正化する。
- 薬剤アレルギー歴、体重、日齢・年齢、腎機能を確認し、院内採用製剤の電子添文とレジメンで投与設計する。
- 培養結果と臨床経過を確認する。悪化・反応不良ならMRSAや他の病態を再評価する。
Rp. 2バンコマイシン(VCM)などの抗MRSA薬 MRSAを疑う・確認した場合に検討 点滴
MRSA既往・保菌、院内疫学、重症度、初期治療への反応、培養から判断する。
- 感染症科・薬剤師と投与を相談する。国内MRSA指針の推奨を、全SSSS一律のVCM投与と解釈しない。
- 腎機能とTDMを組み合わせて投与量・間隔を調整する。
- 感受性判明後は適切な薬剤へ狭域化する。
Rp. 3セファレキシン(CEX) 改善し、MSSAに適合する場合の切替候補 内服
全身状態・発熱・疼痛が改善し、水分と薬を内服できることを確認する。
- 感受性、内服可能性、家族による継続管理を確認する。
- MRSAが疑われる・確認された場合は、CEXへ機械的に切り替えない。感受性と年齢に合う薬を相談する。
Rp. 4アズノール軟膏0.033%(ジメチルイソプロピルアズレン) 院内方針院内:アクアチムに加え患部へ塗布し、びらん部を保護する。 外用
抗菌薬ではなく、全身抗菌薬と支持療法に併用する皮膚ケア。添文上は通常1日数回で、実際の回数・量は個別指示に従う。
- 清潔にしたびらん部へ適量を塗布する。部位・範囲・回数は個別に指示する。
- 必要に応じて非固着性被覆材で保護する。成分への過敏症既往には使わず、眼科用には使用しない。刺激・発赤があれば再評価する。
Rp. 5アクアチム軟膏1%(ナジフロキサシン) 院内方針院内:アズノールとともに患部へ塗布する局所抗菌薬。 外用
添文上は通常1日2回。低出生体重児・新生児・乳児・幼児の有効性・安全性を評価した臨床試験はないため、適応・範囲・期間を処方医が確認する。
- SSSSの患部にアクアチムを塗布し、アズノールも患部に塗布する。部位・量・回数・期間は個別指示に従う。
- 原則として感受性を確認し、必要最小限の期間にとどめる。成分への過敏症既往には使用せず、眼には使用しない。
- 混合調剤・混合比・塗布順序は今回の指示に含まれないため、ここでは新たに設定しない。
当院では患部にアクアチムとアズノールを塗布する院内方針院内。全身抗菌薬・補液・鎮痛などの治療も並行する。外用の量・回数・期間は個別指示、抗菌薬の確定用量は院内採用品・体重・日齢・腎機能で確認する。 避けること・注意:外用だけでの治療、びらん面の摩擦・積極的な表皮除去、感受性不明のCLDM単剤、指示された患部以外への外用、混合指示のない混合調剤。
↑ このページの入口へ7抗菌薬の継続・再評価
治療期間と内服への切替
- 海外CHOP経路では静注+内服で総7〜10日が目安。菌血症・深部感染や反応不良は別途評価する。
- 落屑は軽快後も続くことがある。落屑だけで抗菌薬を延長・広域化しない。
CHOPのSSSS経路は海外施設の方針。国内の院内レジメンへそのまま置き換えない。
クリンダマイシン(CLDM)
- 毒素産生抑制の理論はあるが、通常例への一律追加の利益は確立していない。
- 重症・難治例などで、感受性と耐性を踏まえて個別検討する。感受性不明での単剤を標準にしない。
改善しないとき
- 全身状態、発熱、圧痛、新規紅斑・剥離の拡大、摂取・尿量を評価する。
- MRSA、感染源、深部感染、SJS/TENなどの鑑別、薬剤選択を再確認し、皮膚科・感染症科へ相談する。
国内根拠と外用薬の確認
- MRSA感染症の診療ガイドライン2024・小児領域を参照。地域・施設の疫学を確認する。
- アクアチム電子添文とアズノール電子添文に基づき、適応・小児情報・塗布範囲を確認する。
8入院・退院・紹介の目安
- 帰宅退院候補は全身状態・発熱・疼痛が改善し、水分と薬を内服でき、家族が皮膚ケアを行える場合。再診先・時期と悪化時の受診条件を共有。落屑の完全消失は必須ではない
- 入院SSSSを疑い静注治療・観察が必要。特に新生児・乳児、急速拡大、広範囲病変、経口摂取不良・脱水、強い疼痛、全身状態不良
- 搬送・紹介ショック・臓器障害、鑑別困難、自施設で広範囲創傷管理や集中治療を行えない。安定化と並行して専門施設へ相談
9診療中の疑問と回答
- 皮膚の培養が陰性で、CEZを続けてよいか迷うときは?
- SSSSは離れた感染源の毒素で発症し、剥離面から菌が出ないことがある。鼻腔・咽頭・眼脂などの感染源、採取時期、抗菌薬前投与を確認する。培養陰性だけで中止せず、皮膚痛と新規剥離、全身状態の推移から診断と抗菌薬を再評価する。
根拠:CHOP SSSS診療経路(海外施設) / 日本化学療法学会ほか MRSA感染症GL2024 - 全身抗菌薬を始めても皮膚痛・剥離が進む。薬を追加する?
- MRSAリスク、培養・感受性、投与状況に加え、TENなど別病態、脱水、感染源の持続を見直す。抗菌薬の無条件な併用より皮膚科・感染症担当へ早めに相談する。腎機能悪化があれば補液と薬剤曝露を評価し、VCM使用時はTDMで調整する。
根拠:CHOP SSSS診療経路(海外施設) / 日本化学療法学会ほか MRSA感染症GL2024 - 皮膚がむけている間は、点滴抗菌薬と外用抗菌薬を続ける?
- 落屑の残存だけで全身抗菌薬を延長せず、新規剥離、圧痛、発熱、飲水・内服可能性で経口移行を検討する。当院ではSSSSの患部にアクアチム軟膏1%とアズノール軟膏0.033%を塗布する。外用の継続期間は患部の状態を見て指示し、混合調剤・混合比・塗布順序は今回の指示に含まれない。
根拠:CHOP SSSS診療経路(海外施設) / 日本化学療法学会ほか MRSA感染症GL2024 / PMDA アクアチム軟膏1% / PMDA アズノール軟膏0.033%
- アクアチムとアズノールだけで治療できる?
- 外用だけでは治療しない。当院では患部にアクアチムとアズノールを塗布し、全身抗菌薬と支持療法を並行する。
- すべてのSSSSにCEZでよい?
- MRSAの関与があるため一律には選ばない。既往・保菌、施設疫学、重症度、培養、反応を踏まえる。
- 水疱の培養が陰性なら否定できる?
- できない。感染源から離れた部位に毒素が作用するため、鼻腔・咽頭・眼脂なども評価する。
- 落屑が残っている間は静注を続ける?
- 落屑だけでは決めない。全身状態・発熱・圧痛の改善と経口摂取を確認して切り替える。
11家族への説明
細菌が作る毒素の影響で、皮膚の表面がはがれやすくなる病気です。抗菌薬で原因となる細菌を治療し、軟膏や被覆材で皮膚を守ります。皮膚をこすらず、薬は指示した部位に使ってください。飲めない、尿が減る、ぐったりする、赤みや痛みが増すときは、すぐに医療者へ知らせてください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。