2-8急性副鼻腔炎
眼窩内・頭蓋内合併症の除外
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
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このページの目次10項目
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1ポイント
- 当直帯にCTが撮れない(単純・造影とも)。副鼻腔炎そのものは扱えるが、眼窩内合併症(眼球突出・眼球運動障害・視力低下・眼瞼の発赤腫脹)を疑った時点で送る。
- 臨床診断はAAPの3パターン:持続型(10日以上改善なく遷延)/増悪型(軽快後の再増悪)/重症型(39℃以上の発熱+膿性鼻汁が3日以上)。
- 日本鼻科学会スコアリングで軽症(1〜3)・中等症(4〜6)・重症(7〜8)を判定する。
- 軽症は抗菌薬を投与せず5日間経過観察。中等症以上はアモキシシリン常用量(20〜40mg/kg/日、分3〜4)を5日間投与し、5日後に改善なければ高用量または他系統薬へ。
- 画像検査はウイルス性上気道炎との鑑別に寄与せず、合併症を疑わない限り不要。CT所見は特異度が低く過剰診断につながりやすい。
↑ このページの入口へ2鑑別のながれ
- 眼瞼腫脹・発赤(片側性・急速進行)→眼球運動障害・複視・眼球突出→眼窩内合併症(眼瞼蜂窩織炎〜眼窩膿瘍)
- 高熱の持続+強い頭痛・嘔吐→意識障害・項部硬直・痙攣、前頭部の腫脹→頭蓋内合併症(硬膜外/硬膜下膿瘍・脳膿瘍・髄膜炎)
- 鼻汁・湿性咳嗽・鼻閉→10日以上改善なく続く→持続型の副鼻腔炎
- 感冒がいったん軽快後の再増悪→発熱・鼻汁・咳嗽が新規出現→増悪型の副鼻腔炎
- 39℃以上の発熱+膿性鼻汁→3日以上同時に持続→重症型の副鼻腔炎
↑ このページの入口へ3重症度スコア(日本鼻科学会、鼻漏・不機嫌・湿性咳嗽+鼻汁/後鼻漏の性状量)
| 軽症 | 合計1〜3点 | 鼻処置+抗菌薬非投与で5日間経過観察 |
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| 中等症 | 合計4〜6点 | 鼻処置+アモキシシリン常用量で5日間投与 |
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| 重症 | 合計7〜8点 | 鼻処置+アモキシシリン常用量で5日間投与。改善なければ高用量へ |
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↑ このページの入口へ4計算・スコア
スコア
日本鼻科学会スコア(小児急性副鼻腔炎)
↑ このページの入口へ5検査
- 問診(発症からの日数・症状パターン・既往、保育園状況、直近1か月以内の抗菌薬使用歴)と鼻腔・咽頭の視診が診断の中心
- 合併症(眼窩内・頭蓋内)を疑う場合のみCT。当直帯にCTが撮れない(単純・造影とも)
- 画像検査・鼻汁培養のルーチン施行は不要
↑ このページの入口へ6処置・処方例
Rp. 1アモキシシリン(AMPC)
常用量20〜40mg/kg/日を3〜4回に分服、5日間 内服中等症以上の第一選択。5日後に改善なければ高用量AMPCまたは他系統薬へ変更。製剤・在庫は当院で確認する
- 製剤: アモキシシリン細粒10%(100mg/g、例: サワシリン細粒10%・パセトシン細粒10%)またはアモキシシリン細粒20%(200mg/g、例: ワイドシリン細粒20%)
- 1日量は20〜40mg/kg/日(力価)。10%細粒なら1日 —〜—、20%細粒なら1日 —〜—(いずれも20〜40mg/kg/日の換算)
- 上記1日量を3〜4回に分けて内服する。5日間投与し、5日後に改善なければ高用量または他系統薬へ変更
- 上限は1日90mg/kg(力価)を超えない。10%細粒なら1日 —、20%細粒なら1日 —が上限の目安(90mg/kg/日)
2歳以下・耐性菌リスクの高い児は高用量アモキシシリン・クラブラン酸を検討することがある(専門施設判断)。
↑ このページの入口へ7紹介の目安
- 帰宅軽症で鼻処置のみ、5日間の経過観察で自然軽快することが多い
- 搬送・紹介眼窩内・頭蓋内合併症の兆候(即日、眼科・耳鼻咽喉科、頭蓋内合併症疑い時は脳神経外科へ)、中等症〜重症で複数回薬剤を変更しても改善しない難治例(耳鼻咽喉科へ)、乳幼児で経口摂取不良・脱水傾向
↑ このページの入口へ8診療中の疑問と回答
- 黄色い鼻汁が続く。抗菌薬が必要な細菌性副鼻腔炎?
- 鼻汁の色だけでは決めない。改善しない鼻汁・日中の咳が10日を超える、いったん改善して再び悪化する、39℃以上の発熱と膿性鼻汁が3日以上続く、という経過を確認する。さらに国内の重症度スコアと合併症を評価する。このページの院内方針院内では軽症は鼻処置を行い5日間観察し、中等症以上で抗菌薬を検討する。
根拠:AAP 2013 小児急性細菌性副鼻腔炎:診断、72時間の再評価、合併症 / 日本鼻科学会:鼻副鼻腔炎診療の手引き2024 - 抗菌薬の3日目に鼻汁が残る。増量すべき?
- 残っていても減っている症状と、全く改善しない・悪化する症状を分ける。AAPは72時間で改善しない場合の再評価を推奨するが、これは自動的な増量指示ではない。服薬状況、用量、診断と合併症を確認する。院内の予定評価は5日後としつつ、悪化時や改善の兆しが乏しい場合は早めに再診し、所見に応じて変更する。
根拠:AAP 2013 小児急性細菌性副鼻腔炎:診断、72時間の再評価、合併症 - 薬を替え続ける前に、何を見直す?
- 投与量・飲めているか・直近の抗菌薬歴に加え、アレルギー性鼻炎など非感染性の原因や構造的な問題を再評価する。不応例では耐性菌も考えるが、薬を順番に試すだけにしない。適切な治療でも不応・反復する場合は耳鼻科に相談し、必要な検体採取や内視鏡評価を依頼する。
根拠:IDSA 2012:副鼻腔炎の治療不応と培養・紹介 - 治りきらないからCTや鼻汁培養を全員に出す?
- 単純な急性副鼻腔炎の確定にCTを用いない。鼻咽腔の培養は副鼻腔内の原因菌を正確に反映せず、その結果だけで広域薬へ替えない。適切な初期治療に不応で原因菌の確認が必要なら、耳鼻科と相談して採取方法を選ぶ。眼窩内・頭蓋内合併症を疑う場合の画像は別扱いで、検査可能な施設へ送る。
根拠:AAP 2013 小児急性細菌性副鼻腔炎:診断、72時間の再評価、合併症 / IDSA 2012:副鼻腔炎の治療不応と培養・紹介 - まぶたが腫れた。内服の増量で翌日まで待てる?
- 眼球運動時痛・運動制限、複視、眼球突出、視力低下、強い頭痛、意識変容、けいれんを確認する。これらや急速な眼周囲腫脹があれば合併症として即日紹介する。当院の当直帯はCTが撮れないため、画像を待つための経過観察にしない。眼科・耳鼻科、必要に応じ脳神経外科が対応できる施設へ相談する。
根拠:AAP 2013 小児急性細菌性副鼻腔炎:診断、72時間の再評価、合併症 - 抗菌薬の5日分が終わる。鼻汁がゼロになるまで延長する?
- このページの5日は院内の再評価を伴う処方単位であり、すべての患児の総治療期間を5日と固定する意味ではない。症状が改善しているか、発熱や痛みが残るかで終了・継続・診断の見直しを判断し、残存鼻汁だけで漫然と延長しない。IDSA 2012は小児で10〜14日を推奨しており、国内運用と混在させず担当医が総期間を決める。
根拠:IDSA 2012:副鼻腔炎の治療不応と培養・紹介 / 日本鼻科学会:鼻副鼻腔炎診療の手引き2024
- 軽症でも抗菌薬を出す?
- 出さない。軽症は鼻処置を優先し、抗菌薬は投与せず5日間経過観察する。5日後に改善なければ抗菌薬投与へ移行する。
- 画像で確定診断する?
- しない。画像検査はウイルス性上気道炎との鑑別に寄与せず、合併症を疑わない限り不要。CT所見は特異度が低く過剰診断につながりやすい。
- 5日たっても良くならない場合は?
- 経過観察・お薬のいずれでも5日たっても改善しなければ再評価・薬剤変更を検討する。
↑ このページの入口へ10家族への説明
まぶたが片方だけ急に腫れる・赤くなる、目が動かしにくい・物が二重に見える、高い熱が続き強い頭痛や繰り返す嘔吐を伴う、というときは様子を見続けずに連絡してください。経過観察やお薬を始めたあとに症状がかえって悪くなる、5日たっても良くなっている感じがしないときも受診してください。