11-17低身長・思春期早発(当直での緊急性判断)
成長曲線・思春期発来・神経症状の有無
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- 低身長も思春期早発も、当直で診断する病気ではない。今夜の仕事は緊急性の見極めと、紹介するかどうかの判断。
- 基準はいつも成長曲線。-2.0SDから+2.0SDの間に約95%の子どもが含まれ、-2.0SD以下は100人のうち2〜3人。ここまでは通常心配ない。
- 思春期早発の主症候は年齢で決まる。女児は乳房発育(7歳6か月未満)、男児は精巣容積4mL以上(9歳未満)が思春期の開始。
- 当直で本当に持ち帰ってはいけないのは神経症状を伴う早発だけ。まれに脳などの病変が原因のことがある。
- 乳児の原因不明の低血糖は下垂体機能低下(GH・コルチゾール分泌不全)のサインになりうる。低血糖のクリティカルサンプルを思い出す。
2鑑別のながれ
- 思春期早発の徴候→頭痛・嘔吐・視力低下や視野障害・けいれん等の神経症状を伴う→頭蓋内器質性疾患を疑う。持てない。画像ができる施設へ
- 乳児・新生児の低血糖+成長不良→説明のつかない意識障害・けいれん→下垂体機能低下症(GH・コルチゾール分泌不全)を疑う
- 陰核腫大・体毛/体臭の変化→恥毛の急激な増加・声変わりを伴う急速な進行→副腎腫瘍・卵巣腫瘍・先天性副腎過形成等。持てない
- 思春期前の性器出血→異物・外傷・性的虐待の鑑別が要る→末梢性思春期早発症(McCune-Albright症候群等)を含め評価。様子見にしない
- 低身長+思春期が来ない(女児)→二次性徴の欠如、心疾患・難聴の合併もありうる→ターナー症候群を疑う。染色体検査へ
3検査
- 成長曲線に身長・体重(乳児は頭囲も)を正確に測ってプロットする。過去の記録(母子健康手帳・学校健診)を集める
- 思春期の徴候を確認:乳房発育(女児)・精巣容積(男児)の有無と年齢
- 神経症状の有無:頭痛・嘔吐・視力/視野・意識。あれば119レベルとして動く
- 見逃してはいけない内分泌疾患も想起する(症候から鑑別を思い出す)
- 成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD):乳児期の症候性低血糖、または身長が-2.0SD以下・成長速度が2年以上-1.5SD以下で疑う
- 甲状腺機能低下症:倦怠・便秘・徐脈を伴うことがある
- プラダー・ウィリー症候群:乳児期の筋緊張低下・肥満・発達の遅れ
- ヌーナン症候群:低身長・思春期遅発・心疾患・特徴的な外観
- 頭部MRIは当直帯に撮れない。当直帯の仕事は頭蓋内病変を示す症状(頭痛・嘔吐・視野障害)が今あるかだけを見て、あれば搬送すること
4対応の注意
避けること・注意:低身長・思春期早発を当直で確定診断しようとすること、思春期前の性器出血を様子見にすること、神経症状のない思春期早発を緊急搬送すること(外来紹介でよい)。
↑ このページの入口へ5帰宅・入院の目安
- 帰宅基準範囲内(-2.0SD〜+2.0SD)かつ随伴症状なし:かかりつけでフォロー、家族性・体質性で基準範囲内:当院・かかりつけでよい
- 搬送・紹介神経症状を伴う思春期早発:持てない。画像ができる施設へ、乳児の低血糖+成長不良:低血糖として対応後、専門施設へ紹介、急速な男性化:持てない、思春期前の性器出血:持てない(婦人科的評価が要る)、低身長の精査(GH分泌刺激試験・染色体検査等):持てない。小児内分泌外来へ、中枢性思春期早発症の疑い(神経症状なし):紹介。緊急搬送ではなく外来紹介でよい
6診療中の疑問と回答
- 身長が−2SD以内なら紹介は不要?
- 単回の身長だけでなく成長曲線の傾きと成長速度を確認する。以前の曲線から下へ外れる、体重増加不良や慢性症状を伴う場合は基準範囲内でも評価が必要。両親の身長、出生歴、薬剤、思春期の進み方をそろえて小児内分泌へ相談する。
根拠:日本小児内分泌学会 低身長 / 日本小児内分泌学会 思春期早発症 - 背を伸ばすサプリや成長ホルモンを先に試す?
- 病的な低身長の有無を確認せず開始しない。食事・睡眠と慢性疾患を評価し、成長ホルモン治療は適応疾患と専門検査に基づいて判断する。効果が証明されていないサプリで紹介を遅らせず、成長曲線と再評価の時期を共有する。
根拠:日本小児内分泌学会 低身長 / 日本小児内分泌学会 思春期早発症 - 早い乳房発育にすぐ思春期抑制治療が必要?
- 発症年齢、進行速度、身長の伸びと他の二次性徴を確認し、単独の乳房発育と進行する思春期を区別する。骨年齢・ホルモン検査や画像の要否は専門科と決める。頭痛、視野異常、嘔吐などの神経症状を伴う場合は通常の外来紹介を待たない。
根拠:日本小児内分泌学会 低身長 / 日本小児内分泌学会 思春期早発症
- 思春期早発は全部緊急?
- いいえ。神経症状(頭痛・嘔吐・視野障害・けいれん)を伴う早発だけが当直の緊急対応。神経症状がなければ外来紹介でよい。
- 低身長は当直で検査する?
- しない。成長曲線に乗せて基準範囲かどうかを見て、逸脱があれば小児内分泌へ紹介する。
- 乳児の原因不明の低血糖で何を考える?
- 下垂体機能低下症(GH・コルチゾール分泌不全)を考える。意識障害・けいれんがあれば検査より先にブドウ糖投与を優先し、クリティカルサンプルは可能な範囲で確保する(院内方針院内)。
- 思春期前の性器出血は様子見していい?
- しない。異物・外傷・性的虐待の鑑別も含め、その場で評価する。
8家族への説明
身長や思春期の始まる時期には、お子さんごとの個性があります。基準範囲(標準範囲)とされる-2.0SDから+2.0SDの間に約95%の子どもが含まれますので、そこから大きく外れていなければ、通常はあまり心配いりません。今日1回の測定だけでは決められないことも多いので、母子健康手帳の成長曲線に記録をつけながら、小児科でフォローすることをお勧めします。頭痛や吐き気、目の見え方の変化を伴う場合、急に体つきが変わってきた場合、思春期が始まる前に出血があった場合は、そのままにせず早めに受診してください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。