10-23不登校・こころのSOS
希死念慮を直接聞く・器質疾患の除外・つなぐ
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- 「学校に行けない」は診断名ではない。当直で本当に聞くべきは一つ:いま死にたい気持ちや自分を傷つけたい気持ちがあるか、それに具体的な計画や手段があるか。
- 直接聞いていい、むしろ聞かないほうが危険。率直で誠実な態度で話すことが自殺の危険を引き起こすことはない(厚生労働省・文部科学省)。「死にたい」と言っている人は死なないというのは誤解。
- 身体症状(朝起き不良・立ちくらみ・倦怠感)が前景なら、まず起立性調節障害など器質疾患の除外を先に行う。
- 無理に登校の約束をしない。不登校支援は『学校に登校する』結果のみを目標にせず、社会的自立を目指す(文部科学省)。
- 令和4年度の小・中学校の不登校児童生徒数は約29万9千人(過去最多)。
2鑑別のながれ
- 朝起きられない・立ちくらみ・倦怠感が主体(思春期)→希死念慮・自傷なし→起立性調節障害(器質疾患の除外を先に)
- 新学期・クラス替え・進学など環境変化への反応→希死念慮・自傷を伴わない→通常の登校しぶり(学校・家庭での様子見)
- 特定の相手・場面と結びついた回避→友人関係・いじめが背景にある→いじめ・友人関係のストレス(学校への働きかけ)
- 興味喪失・食欲不振・不眠が持続→「いのちのSOS」サインと重なる→うつ病・抑うつ状態(精神科・心療内科へ紹介)
- 体重・体型への強いこだわり、るいそう→起立性調節障害のレッドフラグと重複→摂食障害(専門科へ)
- 外傷の説明が不自然、安否確認ができない→家庭訪問・電話を繰り返しても確認できない→虐待(通告を検討)
- 独語・被害的な訴え・行動や身なりの急な変化→→統合失調症の前駆状態(精神科へ)
3検査
- 希死念慮・自傷の有無を直接尋ねる。はぐらかさない
- 希死念慮があれば6項目で確認:①自殺を具体的に計画しているか ②手段を確保しているか ③いつ頃からそう考えているか ④どの程度持続しているか ⑤どの程度その思いが強いか ⑥客観的に焦燥感・遺書の準備などの行動があるか
- 危険因子:過去の自殺企図・自傷歴、喪失体験、苦痛な体験(いじめ・家庭問題)、自殺企図手段への容易なアクセス、飲酒・薬物乱用
- 防御因子:支援の存在、安定した社会生活、適切な対処行動、周囲の理解
- 自傷創・体重・栄養状態を診察。刃物・薬など手段になりうるものが本人の手元にあるか確認し、あれば預かる・家族と共有する
- 身体愁訴が前景なら器質疾患の除外へ(起立性調節障害の問診・検査を参照)
- 家族に、家庭内の刃物・薬・高所など危険な手段を遠ざけるよう直接伝える
- 家族から変化点(いつから・きっかけ)を聴き、学校・かかりつけとの情報共有の同意を得る
4対応の注意
避けること・注意:『死にたい』と聞くことを避けること(率直に尋ねても自殺の危険は高まらない)、良い・悪いの判断や批評をすること、無理に登校の約束をさせること。
↑ このページの入口へ5送る・持つの目安
- 帰宅身体愁訴のみで希死念慮なし:器質疾患を除外し、起立性調節障害等のワークフローへ
- 搬送・紹介自殺企図の直後(過量服薬・切創など医学的処置が必要):身体的処置を先に。持てない(精神科と連携できる施設へ)、切迫した希死念慮+具体的な計画+手段を確保している:持てない。一人にせず精神科の緊急介入につなぐ、希死念慮の訴えがあるが切迫していない:6項目で評価のうえ心療内科・精神科への紹介を組み立てる、自傷(軽症):創処置のうえ背景評価と紹介、虐待・安否確認不能を疑う:通告(市町村・児童相談所、必要なら警察へ情報提供)
6診療中の疑問と回答
- 登校できた日数だけを治療目標にしてよい?
- 本人の安全と健康、学び・人とのつながりを保つことを目標に含める。睡眠、身体症状、いじめや家庭・学校での困難を確認する。無理な登校の約束ではなく、本人ができる活動を小さく設定し、学校・相談先と役割と次の確認日を決める。
根拠:文部科学省 不登校児童生徒への支援の在り方 / 厚労省 ゲートキーパー養成研修テキスト第3版 - 朝の腹痛や起床困難は不登校が原因と考えてよい?
- 発症時期、休日にもあるか、食事と睡眠、体重や診察所見を確認する。起立性調節障害など身体疾患と抑うつ・不安を並行評価し、心理面だけに帰結させない。体重減少、血便、発熱や神経症状などがあれば身体の精査を優先する。
根拠:文部科学省 不登校児童生徒への支援の在り方 / 厚労省 ゲートキーパー養成研修テキスト第3版 - 死にたい気持ちはないと言えば、そのまま通常再診でよい?
- 一度の返答だけで決めず、最近の自傷、具体的計画・手段、焦燥、支えてくれる人と安全な居場所を確認する。切迫した危険や安全確保ができない場合は一人にせず緊急精神科連携へ。危険が切迫していなくても連絡先と早期再診を共有する。
根拠:文部科学省 不登校児童生徒への支援の在り方 / 厚労省 ゲートキーパー養成研修テキスト第3版
- 『死にたい』と聞くと危険をあおらない?
- あおらない。率直で誠実な態度で自殺について話すことが自殺の危険を引き起こすことはない。むしろ聞かないほうが危険。
- 希死念慮を聞いたらまず何をする?
- 否定・批評せずに6項目(計画・手段・時期・持続・強さ・焦燥や遺書などの行動)を順に確認する。
- 安否確認ができないときは?
- 家庭訪問・電話を繰り返しても安否が確認できない場合は、市町村・児童相談所への通告、必要なら警察への情報提供を検討する。
8家族への説明
学校に行けない状態が続いていて、心配なお気持ちだと思います。今日確認したいのは、体に隠れた病気がないかと、お子さんの心が今どれくらいつらいかです。学校に戻ることだけがゴールではありません。もし『消えたい』『死にたい』という言葉が出たときは、はぐらかさずそのまま聞いてあげてください。それだけでお子さんの安心につながります。文部科学省の24時間電話相談「なやみ言おう」(0570-0-78310)、法務省の「子どもの人権110番」(0120-007-110)もあります。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。