1-22突発性発疹
解熱後の発疹という事後診断・熱性けいれんの合併
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
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このページの目次10項目
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1ポイント
- 生後3か月(90日)未満の発熱はこの疾患の対象外。突発性発疹らしい経過でも、若年乳児発熱のワークアップ(重症細菌感染症の除外)を優先する。
- 38〜40℃の高熱が3〜4日持続したのち、解熱とともに体幹中心の紅色斑丘疹が出るのが典型。解熱後に発疹が出て初めて確定できる事後診断。
- 高熱の割に比較的機嫌が保たれることが多い。この『熱の高さと元気さのギャップ』が突発性発疹らしさのサイン。
- HHV-6/7初感染は熱性けいれん合併率が高く、生後6〜18か月の乳児で10〜15%程度に熱性けいれんを伴う。発熱から24時間以上経過してからのけいれん発症は複雑型を疑うパターン。
- 大泉門膨隆はHHV-6初感染時の脳炎・脳症でしばしば認める所見。解熱後も意識障害・活気不良が遷延する場合はHHV-6脳炎・脳症を除外する。
- けいれんが5分以上持続、または止まっても意識がなかなか戻らないのは重積状態に該当。当院に頭部MRIは撮れないが、腰椎穿刺と髄液の一般検査(細胞数・糖・蛋白・グラム染色)はできる。
↑ このページの入口へ2鑑別のながれ
- けいれんの群発、発熱から24時間以上経過してからの発症→単純型熱性けいれんではなく複雑型ないしけいれん重積型急性脳症(AESD)を疑うパターン。突発性発疹はAESD全体の約15%を占める→複雑型熱性けいれん・AESD
- 大泉門膨隆・解熱後も意識障害/活気不良が遷延→ウイルスの中枢神経への波及を示唆する所見→HHV-6脳炎・脳症(国内年間60〜100例程度)
- カタル症状(咳・鼻汁・結膜充血)を伴う発熱が先行し二峰性の熱型、解熱前〜再上昇期に発疹→解熱後に発疹が出る突発性発疹と決定的に異なる→麻疹
- 発熱が5日以上長引く、解熱と発疹出現が一致しない→典型経過から外れる場合に再検討する→川崎病、その他ウイルス性発疹症、細菌感染症
- 発熱と同時期に発疹・後頸部/耳介後部/後頭部リンパ節腫脹→解熱後に発疹が出る突発性発疹と異なり、発熱と同時に発疹が出る→風疹
- 呼吸が速い・苦しそう、唇や顔色が悪い、手足が冷たくなって血の気が悪い→意識障害の所見と並ぶ徴候として見逃さない→敗血症性ショックを疑う
- 手足の動きに左右差がある、うまく動かせない→麻痺・瞳孔不同などの局在神経症状→局在神経症状として精査する
- 皮膚に出血斑のような赤紫のあざが広がる、体がだるそうで肌や目が黄色っぽい→出血斑・紫斑、黄疸を伴う肝機能悪化を疑う所見→血小板減少性紫斑病(ITP)・劇症肝炎(まれ)を疑う
- 吐くことを繰り返す、水分が摂れない→経口摂取不良による脱水徴候→脱水を評価し全身状態を再評価する
↑ このページの入口へ3重症度
| 典型経過(軽症・大多数) | 38〜40℃の高熱が3〜4日持続後、解熱とともに体幹中心の発疹が2〜4日出現 | 対症療法。突発性発疹の疑いとして経過を見る |
|---|
| 熱性けいれん合併型 | 単純型(全般性・15分未満・24時間以内に1回のみ)か複雑型(部分発作様/群発/長時間/24時間以内に複数回) | 単純型は精査不要。複雑型は髄液・血液・画像検査を検討 |
|---|
| 脳炎・脳症型(まれ・重症) | けいれん重積型急性脳症(AESD)。解熱後に部分けいれんの群発を伴う | 精査・上位/専門紹介 |
|---|
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↑ このページの入口へ4計算・スコア
計算
アセトアミノフェン頓用量
kg
いつ使う
発熱・疼痛のつらさ緩和目的の頓用。解熱剤は「つらさ緩和」であり治癒判定ではない(本シート正本の記載)。熱の数字を下げること自体は目的にしない。
落とし穴
- 1回上限と1日上限は別々に効く。体重26kg以上では、1回量の上限を4〜6時間ごとに4回打つと1日上限(1,500mg)を超える。上の「1日の回数」はその逆算で、数字が4未満なら間隔を空けるか1回量を下げる
- 1回500mg・1日1,500mgの上限を超えない(体重約33kg以上では体重換算より1回上限が先に当たる)
- ここに出るのは体重換算の「考え方」。個別の処方値は診察で決定し、基礎疾患・併用薬を確認する
次の一手
解熱の有無にかかわらず、水分・反応・呼吸の観察を続ける。受診判断は本シート上部のレッドフラグ表へ。
出典
カロナール(アセトアミノフェン)添付文書(PMDA): 1回10〜15mg/kg・4〜6時間以上あけて投与・1日総量60mg/kgを限度(1回500mg・1日1,500mgを超えない) 添付文書(正本で照合済み・2026-08-14リンク更新)
↑ このページの入口へ5検査
- 典型経過の突発性発疹自体には確定検査不要。臨床経過(解熱後の発疹出現・年齢・永山斑の有無)で診断する
- 単純型熱性けいれん(初回・全般性・15分未満・意識清明への回復良好)では髄液検査・血液検査・頭部画像を必ずしも行う必要はない
- 複雑型/けいれん重積/意識障害遷延/麻痺を伴う場合は、髄膜炎・脳炎脳症の除外目的で髄液検査・血液検査を行う。当院当直帯は頭部CT・MRIが撮れない(画像は単純X線のみ可)ため、頭部画像評価が必要と判断すればそのまま搬送する。腰椎穿刺と髄液の一般検査(細胞数・糖・蛋白・グラム染色)はできる(院内方針院内)
↑ このページの入口へ6処置・処方例
Rp. 1ジアゼパム坐薬(熱性けいれん再発予防)
37.5℃を目安に1回0.4〜0.5mg/kg(最大10mg)を挿肛し、8時間後も発熱が持続していれば同量を2回目として追加して終了。1日総量は1mg/kgを超えない(添付文書上の日量上限) 坐剤ルーティンに使用する必要はない。適応は①遷延性発作(15分以上)単独、②焦点発作/24時間以内反復・神経学的異常や発達遅滞・家族歴・初回発作が生後12か月未満・発熱後1時間未満での発作・38℃未満の発熱に伴う発作のうち2つ以上を満たした発作が2回以上、のいずれか
- 37.5℃を目安に、体重×0.4〜0.5mg/kg=—〜—(上限10mg/回)に一番近い規格(ダイアップ坐剤4mg・6mg・10mgの3規格)を選んで直腸内に挿入する
- 8時間後も発熱が持続していれば同量を2回目として追加して終了(3回目は投与しない)
- 1日総量は1mg/kgを超えない(添付文書上の日量上限)
避けること・注意:けいれんが既に消失している児へのジアゼパム坐薬のルーチン投与(脳炎・脳症による意識障害を『けいれん後もうろう状態』と見誤るリスク)。発熱時の眠くなりやすい第一世代抗ヒスタミン薬、テオフィリン等のキサンチン製剤の安易な使用。アスピリン等サリチル酸系薬を安易に解熱目的で用いること。
↑ このページの入口へ7紹介・入院の閾値
- 帰宅典型経過で全身状態良好、単純型熱性けいれんなら経過観察
- 入院複雑型熱性けいれん等で腰椎穿刺を行い、髄液所見がウイルス性で全身状態が安定していれば、夜間は当院で入院管理し、日勤帯に専門施設と相談する(院内方針院内)
- 搬送・紹介けいれん重積(30分以上)、けいれんの群発、意識障害の遷延、大泉門膨隆を伴う場合は救急要請または高次医療機関へ紹介、複雑型熱性けいれんでAESDが疑われる、または髄液所見が細菌性・脳炎脳症を示唆する場合は小児神経専門施設へ紹介
↑ このページの入口へ8診療中の疑問と回答
- 突発性発疹らしい年齢なので、発熱中の検査は不要?
- 発疹が出る前は確定できず、月齢と全身状態に応じて尿路感染や他の感染症を評価する。呼吸苦、飲水不良、反応低下を見逃さない。低月齢の発熱は当院の年齢別精査・入院方針に従い、予想される発疹を待って治療や紹介を遅らせない。
根拠:JIHS 突発性発疹詳細版 / 日本小児神経学会 熱性けいれんGL2023 - 熱が下がって発疹が出たのに、ぐったりが続く。通常経過?
- 解熱と発疹だけで回復と判断しない。反応の悪さ、けいれん、呼吸・循環異常が続く場合は脳炎・脳症などを再評価する。診察時点の意識と経時変化を確認し、疑えば神経評価のできる施設へ相談する。発熱期の採血が軽微でも安心材料にしない。
根拠:JIHS 突発性発疹詳細版 / 日本小児神経学会 熱性けいれんGL2023 - けいれんが短く止まった。念のため予防坐剤を追加する?
- 停止後の全身状態と意識の回復、発作の長さ・反復・焦点性を確認する。単純型で回復した児へ一律に坐剤を追加せず、熱性けいれんの予防適応で判断する。眠気が脳症評価を難しくする可能性も説明し、再発時と反応不良時の受診条件を渡す。
根拠:JIHS 突発性発疹詳細版 / 日本小児神経学会 熱性けいれんGL2023
- 発疹が出る前に診断できる?
- できない。解熱後に発疹が出て初めて確定できる事後診断。発熱中は『突発性発疹の疑い』として経過をみる。
- 熱性けいれんはいつもの熱性けいれんと同じ扱い?
- 単純型(全般性・15分未満・24時間以内に1回のみ)は同じ扱いでよいが、複雑型(部分発作様/群発/長時間/24時間以内に複数回)は髄液・血液・画像検査を検討する。
- 解熱後も機嫌が戻らないのは大丈夫?
- 大丈夫ではない。典型例は解熱すれば機嫌が良くなるため、これが揃わない場合はHHV-6脳炎・脳症等の除外のため再評価が必要。
↑ このページの入口へ10家族への説明
突発性発疹です。38〜40℃の高熱が3〜4日ほど続いたあと、熱が下がるのと入れ替わりに体を中心に赤い発疹が出て、2〜4日で消えていきます。熱の割に機嫌が良いことが多いのが特徴です。けいれんが5分以上続く、または止まったあとも意識がはっきり戻らないときはためらわず救急車を呼んでください。けいれんを繰り返す、大泉門(頭のてっぺんの柔らかいところ)がふくらんでいる、呼びかけへの反応が乏しい、手足の動きに左右差がある、熱が下がって発疹が出ているのに機嫌が戻らずぐったりしたまま、といった様子があればすぐにご連絡ください。