3-9 肥厚性幽門狭窄症

緊急

3-9肥厚性幽門狭窄症

病態・根拠
このページの目次10項目

1嘔吐と代謝異常がつながる理由

幽門筋の肥厚により胃から十二指腸への通過が妨げられる。生後早期から徐々に強くなる無胆汁性嘔吐、吐いた後の哺乳意欲、体重増加不良が手がかりになる。胃酸を繰り返し失うと低クロール性の代謝性アルカローシスや脱水を生じるが、発症早期には古典的な電解質異常や触知腫瘤がそろわない。[1][2]

2鑑別の分岐

胃食道逆流のような軽い溢乳では、全身状態と体重増加が保たれているかを確認する。発熱、活気不良、循環不良があれば尿路感染・敗血症なども考える。胆汁性の緑色嘔吐は幽門狭窄の典型ではなく、腸回転異常・捻転等の緊急外科経路へ切り替える。「よく飲む」だけで脱水や閉塞を否定しない。[1][2]

3超音波と採血の役割

超音波は幽門筋と通過を評価する。早期・境界例では一回の検査が確定的でない場合があり、疑いが続けば専門家による再検を検討する。体重・日齢や手技により測定値の解釈が異なるため、単一の閾値だけで全例を判断しない。血糖、血液ガス、電解質と尿量は、診断の補助に加えて輸液・麻酔前準備の評価に使う。[1][2]

4手術前に内科的安定化を行う理由

初期治療は経口摂取の中止、静脈路の確保、脱水・電解質・酸塩基異常の補正である。必要に応じ胃管減圧を相談する。アルカローシスが残ると周術期の低換気・無呼吸の危険があるため、筋切開へ直行するより先に安定化する。輸液は循環状態、電解質、尿量と反復評価から調整する。[1]

当院には当直帯の超音波と小児外科手術がない。確定画像を得るまで院内で待つことを前提にせず、疑った段階で外科へ連絡する。国内では専門施設によりアトロピン療法を選ぶこともあるが、診断・監視・切替判断が必要であり、当直で独断開始する治療にはしない。[1][2]

5引継ぎ

嘔吐の色と頻度、哺乳・尿量、現在と過去の体重、電解質・ガス、輸液の内容と反応を伝える。初回画像が陰性でも嘔吐の増強や体重増加不良が続く場合は再評価を確保する。[1][2]

6出典・適用範囲

[1]は豪州小児施設の経路、[2]は国内大学病院小児外科の解説。国・施設による診断測定値や治療選択の差を明示し、薬剤固定量は追加していない。 確認日:2026-10-23。

7臨床医が迷う場面

8初回の超音波で確定しないが、噴水状嘔吐が続く。除外してよい?

発症早期は典型的な計測値がそろわない場合がある。非胆汁性嘔吐の反復、哺乳意欲、体重と脱水を評価し、疑いが続けば専門先と再超音波を相談する。陰性画像だけで終了せず、胆汁性嘔吐や全身状態悪化では別の閉塞性疾患を緊急評価する。

出典:RCH 肥厚性幽門狭窄(海外小児指針)

9手術を急ぐため、電解質補正を後回しにしてよい?

幽門筋切開の前に脱水、低Cl・低K、代謝性アルカローシスを補正する。補正不十分では周術期の呼吸などの危険がある。絶飲食・輸液と必要な減圧を行い、検査の推移を追う。専門施設への相談は補正完了まで待たず、治療と搬送計画を並行する。

出典:RCH 肥厚性幽門狭窄(海外小児指針)

10電解質が正常なので、吐き戻しとして帰宅できる?

早期には典型的な電解質異常がないことがある。噴水状嘔吐の反復や体重増加不良があれば症状から疑い、超音波と専門評価へつなぐ。吐いた後にまた飲みたがることも安心材料にしない。飲水・尿量と脱水を確認し、再診時期を明確にする。

出典:RCH 肥厚性幽門狭窄(海外小児指針)

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