1-7 咽頭結膜熱(プール熱)

緊急

1-7咽頭結膜熱(プール熱)

病態・根拠
このページの目次12項目

1一目でわかるフロー

[受診] 発熱+咽頭痛+眼症状(三徴の一部または全部)
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【① レッドフラグ評価】(§1)
   発熱5日以上/活気不良・脱水徴候/呼吸苦/
   意識障害・痙攣/高度眼症状(角膜混濁・強い眼痛)
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   ├─ あり → 川崎病(不全型含む)・EKC・重症化を疑い
   │          精査/上位紹介/入院検討へ
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   └─ なし → 継続
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【② 重症度・病型判定】(§2)
   軽症(典型: 三徴+活気良好)/
   中等症(経口摂取不良・脱水傾向)/
   重症(乳児重症肺炎化・EKC様高度眼病変)
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【③ 検査(要る/要らない)】(§3)
   三徴が揃えば臨床診断で足りる
   迅速アデノ抗原(咽頭 or 結膜)は確定診断・登園基準運用の根拠として実施
   発熱5日超・川崎病所見疑い → 血液検査等の鑑別検査を追加
   結膜炎を欠き扁桃発赤主体 → A群溶連菌迅速検査を検討
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【④ 治療】(§4)
   対症療法が基本(解熱鎮痛薬・水分補給)
   抗菌薬・抗菌点眼薬のルーチン投与は不要
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【⑤ 再診・帰宅指導】(§5)
   保護者へ再受診サイン/登園目安(主要症状消退後2日)を説明
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【⑥ 紹介・入院判断】
   川崎病疑い → 循環器・専門施設紹介
   経口不能/中等度以上脱水 → 補液目的入院検討
   角膜混濁等EKC様所見 → 眼科紹介

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2レッドフラグ(見逃し厳禁)

  • 発熱が5日以上遷延、または一旦解熱後に再上昇する:咽頭結膜熱の発熱は通常3〜5日で解熱する[1][3]。5日を超えて続く発熱は川崎病(不全型を含む)を必ず想起し、眼球結膜充血・口唇口腔所見・不定形発疹・四肢末端の変化・非化膿性頸部リンパ節腫脹の有無を再度診察する。川崎病診断の手引き改訂6版(2019年)では主要症状から発熱の日数条件そのものが削除されており、「発熱+眼球結膜充血」はアデノウイルス感染症と川崎病の双方で見られる所見であるため、アデノ迅速抗原陽性であっても川崎病の合併・移行を除外したことにはならない点に注意する[6]。
  • 活気不良・哭泣減弱・尿量減少などの脱水徴候、経口摂取不能:咽頭痛による摂取不良から脱水に進行しうる。
  • 呼吸苦・多呼吸・低酸素:乳児・新生児では全身感染による重症化(呼吸器症状増悪)が報告されている[2]。
  • 意識障害・項部硬直・痙攣:まれにウイルス性髄膜炎等の中枢神経合併症が示唆される場合がある(教科書的記載)。
  • 高度な眼症状(角膜混濁・強い眼痛・視力低下の訴え):咽頭結膜熱に比べ眼症状が著明に強い場合は流行性角結膜炎(EKC)を疑う。EKCは学校保健安全法上も咽頭結膜熱とは別の第三種感染症に分類され、出席停止の考え方が異なる(医師が感染のおそれなしと認めるまで)ため、対応が変わる[5]。
  • 3歳未満の発熱性疾患で全身状態が不良:咽頭結膜熱の三徴が揃わない段階では、他の重症細菌感染症の除外を優先する。

3重症度・病型の判定

  • 軽症(典型例):高熱(39〜40℃前後)・咽頭痛・結膜充血の三徴が3〜5日持続し、活気・経口摂取は保たれる[1][3]。5歳以下の小児に好発し、夏季(6〜8月)に流行のピークがある[2]。潜伏期間は5〜7日程度とされる(学会資料では2〜14日とする幅の広い記載もある)[1][2]。
  • 中等症:咽頭痛による経口摂取不良、軽度〜中等度の脱水徴候、結膜炎の増悪(眼脂増加・両眼性への進展)を伴う。
  • 重症:乳児・新生児での全身感染による重症化(呼吸器症状を伴う場合がある)[2]。眼症状が著明でEKC様の経過(角膜上皮下浸潤・視力障害のリスク)をとる場合は病型がEKC寄りである可能性を考慮する[4]。
  • 年齢因子:新生児・乳児は重症化リスクが相対的に高く[2]、年長児・成人では結膜炎が軽く咽頭症状・発熱が主体になりやすい傾向が臨床的に指摘されている。

4検査

  • 必要:
  • 臨床所見(高熱・咽頭炎・結膜炎の三徴)が揃えば臨床診断で対応可能。迅速抗原検査は確定診断、保護者への登園基準の説明根拠、および流行状況の把握目的で実施する[1][2]。
  • アデノウイルス迅速抗原検査:結膜検体では特異度100%・感度約70%(イムノクロマト法、日本眼科学会ガイドライン記載値)[4]。咽頭検体ではキットにより感度60〜80%・特異度90%以上とされ、代表的な咽頭用キットの報告例では感度86.4%・特異度96.8%とするものがある。いずれも特異度が高く陽性は診断的だが、陰性でも臨床的に典型例なら否定はできない(感度の限界)ため、迅速検査陰性のみで咽頭結膜熱を除外しない[4]。
  • 発熱5日以上遷延・川崎病所見を疑う場合:血液検査(白血球分画、CRP、肝逸脱酵素、Naなど)・尿検査(無菌性膿尿の有無)で川崎病随伴所見を評価し、該当すれば循環器・専門施設への紹介を検討する[6]。
  • 結膜炎を欠き扁桃発赤・白苔が主体の場合:A群溶連菌迅速抗原検査を検討する。ただし保菌例もあるため、Centor/McIsaacスコア等で検査前確率を高めた上で施行するのが望ましい(迅速検査の一般的な性能は感度80〜90%・特異度95%以上とされる、文献要約に基づく)。
  • 不要・過剰になりがち:
  • ウイルス分離培養・遺伝子検査(PCR・血清型決定)は院内感染対策や重症例の精査目的以外、通常の外来診療では不要(専門施設・地方衛生研究所向け)[4]。
  • 症状に乏しい典型例へのルーチンの血液培養・胸部X線(呼吸器症状がなければ不要)。
  • 抗菌薬感受性検査(細菌感染合併を疑う所見がない限り不要)。

5治療

  • 第一選択: 特異的な抗ウイルス薬はなく、対症療法が治療の中心である[1][2]。解熱鎮痛薬はアセトアミノフェンを第一選択とし、体重換算の考え方は「1回10〜15mg/kg、投与間隔4〜6時間以上、1日総量60mg/kg(成人量に達したら以降は成人量が上限)」がGL・添付文書上の一般的な目安である(個別処方は医師の裁量)[8]。あわせて経口補水液等によるこまめな水分補給を指導する。
  • 第二選択・無効時: 咽頭痛による経口摂取不良・脱水徴候がある場合は経口補水療法を優先し、不可能なら補液(点滴)を検討する。結膜炎症状が強い場合に二次細菌感染予防や対症目的で点眼薬を用いることがあるが、確立したエビデンスに基づくルーチン適応ではない。
  • やってはいけない/非推奨:
  • 抗菌薬のルーチン投与(ウイルス感染症であり無効。細菌感染合併を示唆する所見がない限り非推奨)[1][2]。
  • アスピリン等サリチル酸系解熱鎮痛薬、およびジクロフェナクナトリウムの15歳未満への投与:厚生労働省は1998年(平成10年)にサリチル酸系医薬品の水痘・インフルエンザ患者(15歳未満)への投与を原則禁忌とする安全対策を実施している。これとは別に、ジクロフェナクナトリウムについては2001年(平成13年)5月30日、インフルエンザ脳炎・脳症患者への投与を禁忌とする通知が発出されている(サリチル酸系の1998年措置とは対象・年とも別の通知)[7]。アデノウイルス感染症に限定した措置ではないが、小児のウイルス性疾患全般における解熱鎮痛薬選択の基本方針として踏まえる。
  • 迅速抗原陰性のみを根拠に臨床的に典型的な症例を否定すること(感度の限界を踏まえ、臨床所見を優先する)[4]。

6再診・帰宅指導・保護者説明

  • 再受診すべきサイン(保護者に伝える):
  • 発熱が5日以上続く、または一度下がった熱が再び上がる
  • 元気がない・ぐったりしている・おしっこの回数や量が減る(脱水のサイン)
  • 水分や食事がほとんど摂れない
  • 目の症状が悪化する(充血・目やにの増悪、強い痛み、まぶしがる、見えにくいと訴える)
  • 新しい発疹が出る、首のリンパ節が腫れてくる(川崎病の可能性があるため必ず伝える)[6]
  • 経過の見通し・登園/登校の目安:
  • 発熱は通常3〜5日で解熱し、結膜炎はやや遅れて出現・軽快までに数日〜1〜2週間かかることがある[1][3]。
  • 登園・登校基準(★忘れがちポイント):咽頭結膜熱(プール熱)は学校保健安全法施行規則第18条の第二種学校感染症に指定されており、出席停止期間は「主要症状(発熱・咽頭炎・結膜炎)が消退した後2日を経過するまで」である(令和6年6月1日時点の運用でも同基準)[5]。解熱していても結膜症状や咽頭痛が残っている間は登園不可であることを保護者に明確に伝える。保育所についても同基準に準じる運用が一般的だが、最終的な登園可否判断は各施設・園医の運用に従うため、施設ごとの確認は保護者に促す(施設により運用差がある)。
  • プール自体(適正に塩素消毒された水)を介した感染は現在ではまれとされるが、タオル・洗面用具の共用は結膜炎の主要な接触感染経路であり、家庭内でも個人専用とするよう指導する[3]。
  • 紹介・入院の閾値:
  • 発熱5日以上遷延、または川崎病主要症状(眼球結膜充血・口唇口腔所見・発疹・四肢末端変化・頸部リンパ節腫脹)のうち複数を満たす場合は、不全型を含め川崎病を鑑別し、循環器・専門施設への紹介を検討する[6]。
  • 経口摂取不能、中等度以上の脱水徴候がある場合は補液目的の入院を検討する。
  • 角膜混濁・強い眼痛・視力障害などEKC様の重症眼病変を認める場合は眼科紹介とする[4]。

7院内ローカルルール

  • 確定(2026-09-14):迅速抗原検査は当直帯にも実施できる

8出典(日本のGL優先・URL+版年)

9臨床医が迷う場面

10アデノ迅速陽性だから、発熱が長くても待てる?

検出は現在の症状を全て説明するとは限らない。発熱の持続・再燃では川崎病などを念頭に皮疹、口腔、四肢、循環を再診察する。陽性結果を根拠に全身状態悪化や新しい所見を無視せず、必要な検査・紹介へ進む。

根拠:CDC Adenovirus clinical overview / RCH Acute red eye

11結膜充血が強いので抗菌薬やステロイド点眼を追加する?

アデノウイルスに抗菌薬は効かない。眼痛、羞明、視力低下、角膜混濁があれば単純な結膜炎として追加処方せず眼科へ相談する。ステロイド点眼の適応は眼科で判断し、手洗いとタオル共用回避など接触感染対策も確認する。

根拠:CDC Adenovirus clinical overview / RCH Acute red eye

12症状は治ったが検査陽性が続く。陰性化まで治療する?

排泄が長引くことがあり、検査陽性だけで薬を延長したり病状悪化と扱ったりしない。国内の登校基準は主要症状消退後2日経過を確認する。免疫低下や症状再燃は別に評価し、陰性証明を得るためだけの反復検査は必要性を見直す。

追加根拠:学校保健安全法施行規則 第19条(e-Gov現行法令)

根拠:CDC Adenovirus clinical overview / RCH Acute red eye

一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。

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