1-7咽頭結膜熱(プール熱)
高熱・咽頭炎・結膜炎の三徴と川崎病の鑑別
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- 高熱(39〜40℃前後)・咽頭痛・結膜充血の三徴が3〜5日持続し、活気・経口摂取は保たれるのが典型。三徴が揃えば臨床診断で足りる。
- 発熱が5日以上遷延、または一旦解熱後に再上昇する場合は川崎病(不全型を含む)を必ず想起する。アデノ迅速抗原陽性であっても川崎病の合併・移行を除外したことにはならない。
- 発熱が5日未満でも、新しい発疹や首のリンパ節の腫れが出てきた場合は川崎病を想起する。
- 持続する発熱に発疹・結膜充血・消化器症状・ショック徴候を伴う場合は、川崎病に加えMIS-C(小児多系統炎症性症候群)も鑑別に含める(院内方針院内)。
- アデノウイルス迅速抗原検査は結膜検体で特異度100%・感度約70%。特異度が高く陽性は診断的だが、陰性でも臨床的に典型例なら否定はできない。
- 高度な眼症状(角膜混濁・強い眼痛・視力低下)があれば流行性角結膜炎(EKC)を疑い眼科紹介とする。
- 登園・登校は主要症状(発熱・咽頭炎・結膜炎)が消退した後2日を経過するまで。
2鑑別のながれ
- 発熱が5日以上遷延、または一旦解熱後に再上昇→アデノ迅速抗原陽性でも川崎病の合併・移行を除外したことにはならない→川崎病(不全型を含む)
- 体に新しい発疹が出てきた、首のリンパ節が腫れてきた→発熱5日未満でも川崎病の主要症状の一部でありうる→川崎病(不全型を含む)を想起する
- 持続する発熱に発疹・結膜充血・消化器症状・ショック徴候→川崎病様所見に加え全身炎症・ショックを伴いうる(院内方針院内)→MIS-C(小児多系統炎症性症候群)も鑑別に含める
- 結膜炎を欠き扁桃発赤・白苔が主体→保菌例もあるためCentor/McIsaacスコア等で検査前確率を高めてから施行する→A群溶連菌感染症
- 高度な眼症状(角膜混濁・強い眼痛・視力低下)→咽頭結膜熱より眼症状が著明に強い→流行性角結膜炎(EKC)(眼科紹介)
3重症度
| 軽症(典型例) | 高熱39〜40℃前後・咽頭痛・結膜充血の三徴が3〜5日持続、活気・経口摂取は保たれる | 対症療法(解熱鎮痛薬・水分補給) |
|---|---|---|
| 中等症 | 咽頭痛による経口摂取不良、軽度〜中等度の脱水徴候、結膜炎の増悪(眼脂増加・両眼性への進展) | 経口補水療法を優先し、不可能なら補液を検討 |
| 重症 | 乳児・新生児での全身感染による重症化(呼吸器症状)、EKC様の眼病変 | 呼吸器症状は精査、眼病変は眼科紹介 |
→ 横にスクロールできます
4検査
- アデノウイルス迅速抗原検査:結膜検体は特異度100%・感度約70%。咽頭検体はキットにより感度60〜80%・特異度90%以上(代表的キットで感度86.4%・特異度96.8%とする報告もある)
- 発熱5日以上遷延・川崎病所見を疑う場合:血液検査(白血球数・CRP・肝逸脱酵素・Naなど。分画は当直帯に出せないためCRP・白血球数・全身状態で評価する)・尿検査(定性のみ可。沈渣は翌朝提出のため、無菌性膿尿の判定は日勤帯待ち)
- 結膜炎を欠き扁桃発赤・白苔が主体の場合:A群溶連菌迅速抗原検査を検討する
- 川崎病所見が疑わしい場合、当直帯に心エコーを読める人はいないため、経過観察より循環器・専門施設への紹介を優先する
5処置・処方例
Rp. 1アセトアミノフェン 1回10〜15mg/kg、投与間隔4〜6時間以上、1日総量60mg/kg 内服
成人量に達したら以降は成人量が上限。あわせて経口補水液等でこまめな水分補給を指導する
- シロップ(カロナールシロップ2%=20mg/mL):—〜— を1回
- 細粒(カロナール細粒20%=200mg/g):—〜— を1回
- 坐剤:1回 —〜— に一番近い規格・個数を選ぶ(アンヒバ/アルピニー 50・100・200mg。10kgなら100mgを1個)
- 次は4〜6時間以上あける。1日の合計は — まで
避けること・注意:抗菌薬のルーチン投与(ウイルス感染症であり無効)。アスピリン等サリチル酸系解熱鎮痛剤、およびジクロフェナクナトリウムの15歳未満への投与。迅速抗原陰性のみを根拠に臨床的に典型的な症例を否定すること。
↑ このページの入口へ6紹介・入院の閾値
- 帰宅三徴が揃い活気・経口摂取が保たれていれば対症療法で経過観察
- 入院経口摂取不能、中等度以上の脱水徴候がある場合は補液目的の入院を検討
- 搬送・紹介発熱5日以上遷延、または川崎病主要症状を複数満たす場合は循環器・専門施設へ紹介、持続する発熱に発疹・結膜充血・消化器症状・ショック徴候を伴う場合はMIS-C(小児多系統炎症性症候群)も鑑別に含め、川崎病と同様に循環器・専門施設へ紹介する(院内方針院内)、角膜混濁・強い眼痛・視力障害などEKC様の重症眼病変は眼科紹介、けいれんを起こした、意識がはっきりしないときは119(一般小児発熱プロトコルに準じる)、生後3か月未満の発熱は、上のサインがなくても早めの受診が必要(一般小児発熱プロトコルに準じる)
7診療中の疑問と回答
- アデノ迅速陽性だから、発熱が長くても待てる?
- 検出は現在の症状を全て説明するとは限らない。発熱の持続・再燃では川崎病などを念頭に皮疹、口腔、四肢、循環を再診察する。陽性結果を根拠に全身状態悪化や新しい所見を無視せず、必要な検査・紹介へ進む。
根拠:CDC Adenovirus clinical overview / RCH Acute red eye - 結膜充血が強いので抗菌薬やステロイド点眼を追加する?
- アデノウイルスに抗菌薬は効かない。眼痛、羞明、視力低下、角膜混濁があれば単純な結膜炎として追加処方せず眼科へ相談する。ステロイド点眼の適応は眼科で判断し、手洗いとタオル共用回避など接触感染対策も確認する。
根拠:CDC Adenovirus clinical overview / RCH Acute red eye - 症状は治ったが検査陽性が続く。陰性化まで治療する?
- 排泄が長引くことがあり、検査陽性だけで薬を延長したり病状悪化と扱ったりしない。国内の登校基準は主要症状消退後2日経過を確認する。免疫低下や症状再燃は別に評価し、陰性証明を得るためだけの反復検査は必要性を見直す。
根拠:CDC Adenovirus clinical overview / RCH Acute red eye / 学校保健安全法施行規則 第19条(e-Gov現行法令)
- 迅速抗原陰性なら否定できる?
- できない。特異度は高く陽性は診断的だが、陰性は感度の限界があり、臨床的に典型例なら否定しない。
- 登園はいつから?
- 主要症状(発熱・咽頭炎・結膜炎)が消退した後2日を経過するまで。解熱していても結膜症状や咽頭痛が残っている間は登園不可。
- プールでうつる?
- 適正に塩素消毒された水を介した感染は現在ではまれ。タオル・洗面用具の共用が主要な接触感染経路。
9家族への説明
咽頭結膜熱(プール熱)です。高い熱・のどの痛み・目の充血が3〜5日ほど続くのが典型的な経過です。発熱が5日以上続く、または一度下がった熱が再び上がる場合は、別の病気がないか確認しますのですぐにご連絡ください。登園・登校は、熱・のどの痛み・目の充血がすべて治まってから2日経つまでお休みです。タオルや洗面用具は共用しないでください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。