7-11扁桃炎・咽頭炎(溶連菌以外)
ウイルス性が9割・4つの除外
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- 咽頭炎・扁桃炎の原因は9割がウイルス。小児の急性咽頭炎でGAS陽性は国内報告で16.3%にとどまる。
- まず急性喉頭蓋炎・扁桃周囲膿瘍/咽後膿瘍・EBVの脾破裂・川崎病の4つを除外する。
- 咳・鼻汁・結膜炎・嗄声・下痢があればウイルス性を示唆。3歳未満はGAS自体が稀。
- 想定される自然経過より治りが悪い、または軽快後に再増悪(二峰性)したら考え直す。
2鑑別のながれ
- 咽頭痛→吸気性喘鳴・sniffing/tripod position・流涎・くぐもり声→急性喉頭蓋炎(咽頭を覗かない)
- 咽頭痛→開口障害・唾液を飲み込めない・口蓋垂偏位→扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍
- 咽頭炎の経過中→左上腹部痛・ショック→脾破裂(EBV)
- 発熱5日以上→眼球結膜充血・口唇紅潮/いちご舌・四肢末端の変化・発疹・頸部リンパ節腫脹→川崎病
3検査
- 咳・鼻汁・結膜炎・嗄声・下痢の有無を確認する(あればウイルス性を示唆し、GAS迅速検査の事前確率が下がる)。
- 年齢を確認する。3歳未満ならGAS検査は原則不要。
- 事前確率が高ければGAS迅速抗原検査。陽性なら溶連菌のワークフローへ切り替える。
- 同様の咽頭痛・発熱を繰り返していないかを確認する(PFAPA症候群の可能性)。
4処置・処方例
Rp. 1アセトアミノフェン 10〜15mg/kg/回 頓用。1日総量60mg/kgかつ1500mgを超えない(1回最大500mg) 内服/坐剤
対症療法(解熱・鎮痛)。抗菌薬は投与しない。採用品(内服・坐剤)は院内採用品で確認
- カロナールシロップ2%(20mg/mL)なら —〜—、細粒20%なら —〜— を1回
- 4〜6時間以上あけて、痛い・熱がつらいときに。1回500mg・1日1500mgを超えない
避けること・注意:気道緊急(吸気性喘鳴・sniffing/tripod position・流涎)を疑ったら、咽頭を覗かない・仰臥位にしない・刺激しない。開口障害・口蓋垂偏位を疑ったら、当直帯に造影CTはない。CTで確かめようとせず耳鼻科のある施設へ送る。単純咽頭炎でウイルス性と判断される場合に抗菌薬をルーチン投与しない。小児の陰性GAS迅速検査後の確認培養は年齢・検査性能・施設方針に沿って判断する。深部感染・敗血症疑いは別経路とし、GAS検査が陰性でも必要な感染治療を遅らせない。
↑ このページの入口へ5帰宅・入院の目安
- 帰宅ウイルス性咽頭炎・扁桃炎(9割):当院で対応。対症療法と自然経過の説明
- 入院経口摂取ができない・脱水徴候:当院で輸液を開始し、入院適応を判断する
- 搬送・紹介開口障害・口蓋垂偏位・頸部腫脹:持てない、吸気性喘鳴・流涎・前傾姿勢:持てない、脾腫・薬疹・中枢神経症状:伝染性単核症へ切り替え、発熱5日以上+川崎病の所見:小児科で評価・紹介を検討
6診療中の疑問と回答
- 扁桃に白苔があるから、抗菌薬を始めてよい?
- 白苔だけではウイルスと細菌を区別できない。年齢、咳・鼻汁・結膜炎、リンパ節、経過からGASやEBVを検討し、必要な検査を選ぶ。ウイルス性と判断される単純咽頭炎には抗菌薬を一律処方しない。流涎・開口障害・呼吸苦は別の緊急経路で評価する。
根拠:RCH 咽頭痛(海外) / CDC GAS咽頭炎診療 - GAS迅速検査が陰性なら、悪化しても再診はいらない?
- 陰性結果は深頸部感染や他疾患の除外ではない。小児の確認培養は年齢・検査性能・施設方針で判断する。片側の強い痛み、頸部腫脹、嚥下不能、軽快後の再悪化があれば再評価し、追加の抗菌薬だけで対応せず耳鼻科への相談を検討する。
根拠:RCH 咽頭痛(海外) / CDC GAS咽頭炎診療 - 痛くて飲めない児は、抗菌薬より先に何をする?
- 気道が安全かを確認し、適切な鎮痛後に飲水できるかを再評価する。尿量、口腔乾燥、循環などから脱水を判断し、飲めない状態が続けば輸液・入院を検討する。唾液も飲み込めず流涎する、呼吸が苦しい場合は飲水を無理に勧めず気道評価を優先する。
根拠:RCH 咽頭痛(海外) / CDC GAS咽頭炎診療
- 抗菌薬(ペニシリン系)内服後に皮疹が出たら?
- EBVによる薬疹を疑う。溶連菌迅速陽性でもEBVを否定しない。抗菌薬を中止し血算・肝機能を確認する。
- 改善しない場合は?
- 想定される自然経過に比べ改善が乏しい、または軽快後の再増悪(二峰性の経過)なら深頸部感染・EBV・他の細菌感染を考え直す。
- 同じ症状を繰り返すときは?
- 同様の咽頭痛・発熱を繰り返す場合はPFAPA症候群も考える。まず小児科で経過観察し、診断が難しい例のみ小児感染症科へ紹介する。
8家族への説明
のどの痛みや扁桃の腫れの多くは、風邪と同じでウイルスによるものです。抗菌薬は効かず、自然に良くなります。ただし、唾を飲み込めない・口が大きく開かない・息が苦しそうなときは、のどの奥に膿がたまっていることがあるのですぐに連絡してください。熱が5日以上続く場合や、目が赤い・唇が赤くひび割れる・手足に変化が出るときは、別の病気がないか調べます。水分がとれずぐったりしているときも早めにご連絡ください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。