7-3急性中耳炎
耳痛・発熱・耳漏・不機嫌
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
前の画面から引き継いだ体重です。
このページの目次10項目
このページ
1ポイント
- よくある。軽症は抗菌薬なしで3日間観察が推奨。処方したら飲み切る。
- 診断は気密式耳鏡で鼓膜の膨隆・耳漏を見る。発赤だけでは急性中耳炎としない。
- 耳介の前方突出・耳後部の発赤腫脹と圧痛は乳様突起炎。視診と触診で拾え、拾えたら画像を待たずに耳鼻科のある施設へ。
- 当院の当直帯に側頭骨CTは撮れない。
↑ このページの入口へ2鑑別のながれ
- 耳痛・発熱→耳後部の腫脹・耳介の前方偏位→乳様突起炎(耳鼻科のある施設へ)
- 耳痛・発熱→顔面の左右差・複視・けいれん・意識変容→神経合併症・頭蓋内合併症
- 耳痛・発熱→鼓膜の膨隆・耳漏がある→急性中耳炎(スコアで重症度)
- 耳痛→鼓膜は正常・耳介の牽引痛→外耳炎
↑ このページの入口へ3重症度(GL2024スコア。24か月未満は3点加算)
| 軽症 | 5点以下 | 抗菌薬なしで3日間観察 |
|---|
| 中等症 | 6〜11点 | AMPC高用量。鼓膜切開の適応を検討 |
|---|
| 重症 | 12点以上 | AMPC高用量またはCVA/AMPC(1:14)。鼓膜切開の適応を検討 |
|---|
→ 横にスクロールできます
↑ このページの入口へ4計算・スコア
スコア
急性中耳炎 重症度スコア
スコアの前に診断そのものの要件を満たすか確認する。中等度〜高度の鼓膜膨隆、または急性外耳炎に起因しない耳漏。あるいは軽度の鼓膜膨隆と48時間以内に発症した耳痛(言語化前の児では耳を押さえる・ひっぱる・こすりつける)、あるいは急性発症の耳痛と鼓膜の強い発赤。中耳貯留液がみられない場合は急性中耳炎と診断すべきではない。
いつ使う
急性中耳炎と診断したあとの重症度分類。この点数で第一選択〜第三選択の段が変わる。24か月未満は年齢だけで3点が入るため、同じ所見でも低年齢児は重く出る。
落とし穴
- 鼓膜膨隆と耳漏は加算可(両方あれば合算する)。片方だけ取ると過小評価になる
- 中耳貯留液がない状態でスコアを付けない — 急性中耳炎の診断要件を満たしていない
- どの段階でも鼓膜切開の適応を検討する(高度の鼓膜膨隆、適切な抗菌薬治療でも鼓膜異常所見が改善しない・悪化する場合)。鼓膜切開が可能な耳鼻咽喉科医との連携が必要
次の一手
各段階で3〜5日投与し、改善しなければ次段階へ。経過観察は初診時より3週間までが目安。抗菌薬使用前に細菌学的検査を実施し、選択・変更の参考にする。
出典
小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版(日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会・日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会編、金原出版)。スコア表・分類・診断要件はいずれも本シート§2の記載。URLは詳細リファレンス参照。
↑ このページの入口へ5検査
- 中等症・重症では抗菌薬投与前に中耳貯留液・耳漏を採取する(培養は夜間提出不可のため保管し、翌朝提出する)
↑ このページの入口へ6処置・処方例
Rp. 1アモキシシリン(AMPC)高用量
80〜90mg/kg/日(1回45mg/kg、1日90mg/kgを超えない) 内服第一選択。3〜4日目に再評価し、改善なければ次の段階へ(各段階3〜5日投与)
- ワイドシリン細粒20%(200mg/g)で1日 —〜—(80〜90mg/kg/日)を分2〜3
- 添付文書の上限は90mg/kg/日。これを超えない
- 3〜4日目に再診して鼓膜を見る。改善なければ次の段階へ
Rp. 2クラバモックス小児用配合ドライシロップ(AMPC/CVA 14:1)
96.4mg/kg/日 分2、12時間ごと、食直前 内服AMPC高用量で改善しないときの次の段階
- 1日 —(96.4mg/kg/日)を2回に分けて12時間ごと、食事の直前
- 分包(1.01g)で出すなら1日量の目安:6〜10kg 1包/11〜16kg 2包/17〜23kg 3包/24〜30kg 4包/31〜36kg 5包/37〜39kg 6包
- 40kg以上は用量を確かめた試験がない
Rp. 3セフジトレンピボキシル(メイアクトMS)高用量
18mg/kg/日 分3、食後(1回200mg・1日600mgを超えない) 内服中等症の第二・第三選択、重症の第二選択。AMPC高用量/CVA・AMPCで改善しないとき
- メイアクトMS小児用細粒10%で1日 —(18mg/kg/日 分3、上限600mg/日)を食後、3〜5日投与
Rp. 4テビペネム ピボキシル(オラペネム)常用量
8mg/kg/日 分2、食後(1回300mg・1日600mgを超えない) 内服中等症の第三選択。CVA/AMPC・CDTR-PI高用量で改善しないとき。適応は肺炎・中耳炎・副鼻腔炎のみ
- オラペネム小児用細粒10%で1日 —(8mg/kg/日 分2、上限600mg/日)を食後、3〜5日投与
Rp. 5テビペネム ピボキシル(オラペネム)高用量
12mg/kg/日 分2、食後(1回300mg・1日600mgを超えない、投与期間は7日以内目安) 内服重症の第三選択。中等症の常用量とは区別する
- オラペネム小児用細粒10%で1日 —(12mg/kg/日 分2、上限600mg/日)を食後、投与期間は7日以内
Rp. 6トスフロキサシン(オゼックス)常用量
12mg/kg/日 分2(1回180mg・1日360mgを超えない、原則7日以内) 内服中等症の第三選択、重症の第二・第三選択。けいれん性疾患には慎重投与
- オゼックス細粒小児用15%で1日 —(12mg/kg/日 分2、上限360mg/日)を、原則7日以内
Rp. 7アンピシリン(ABPC)
150mg/kg/日 分3、3日間 点滴静注重症の第三選択(経口不可時の静注選択肢)
- 1日 — を3回に分けて点滴静注(150mg/kg/日 分3)、3日間
Rp. 8セフトリアキソン(CTRX)
60mg/kg/日 分2または分1、3日間(新生児は50mg/kg/日以下) 点滴静注重症の第三選択。高ビリルビン血症を伴う未熟児・新生児には禁忌。カルシウム含有製剤・輸液と同一経路での同時投与も禁忌(結晶析出による死亡例報告あり)
- 1日 — を分2または分1で点滴静注、3日間(新生児は — 以下)
Rp. 9アセトアミノフェン
10〜15mg/kg/回 頓用。1日総量60mg/kgかつ1500mgを超えない(1回最大500mg) 内服痛みに。アスピリンは使わない(ライ症候群)
- カロナールシロップ2%(20mg/mL)なら —〜—、細粒20%なら —〜— を1回
- 4〜6時間以上あけて、痛いときに。1回500mg・1日1500mgを超えない
βラクタム系アレルギー歴を先に確認する。CDTR-PI・TBPM-PIは低カルニチン血症・低血糖に注意。TFLXはけいれん性疾患に慎重投与。抗ヒスタミン薬は無効で使わない。 避けること・注意:抗ヒスタミン薬、鼓膜穿孔のない例への点耳薬。
↑ このページの入口へ7帰宅・入院の目安
- 帰宅レッドフラグがない、軽症〜中等症で内服ができる、3〜4日後に再診できる
- 入院重症で経口不可
- 搬送・紹介乳様突起炎・神経合併症を疑う(耳鼻科のある施設へ)
↑ このページの入口へ8診療中の疑問と回答
- 耳が痛いと言われたら、その場で抗菌薬を始める?
- まず鼓膜の膨隆・耳漏を確認し、発赤だけや耳痛だけで診断しない。年齢を含む重症度を採点する。軽症は鎮痛を行い3日間観察できるが、3日後に鼓膜を再評価できることが条件。中等症・重症は院内アルゴリズムで抗菌薬を開始し、鼓膜切開が必要かも同時に考える。
根拠:小児急性中耳炎診療ガイドライン2024(CQ3-3〜3-5、治療アルゴリズム) - 抗菌薬を飲んでも2日目に発熱していたら、すぐ変更する?
- 発熱だけで自動的に広域化しない。服薬量・回数・飲み残しや嘔吐を確認し、耳痛・機嫌と鼓膜所見の推移で判断する。国内GLの定期再評価は開始3〜4日目。改善が乏しければ重症度と培養を見直して次段階へ進む。症状が悪化すれば予定日を待たず再診し、耳後部腫脹や神経症状は緊急紹介する。
根拠:小児急性中耳炎診療ガイドライン2024(CQ3-3〜3-5、治療アルゴリズム) - 次の薬を選ぶ前に、培養や鼓膜切開をどう考える?
- 中等症・重症や治療不応では、採取可能な耳漏・中耳貯留液から原因菌と感受性を確認する。高度の膨隆がある、適切な抗菌薬でも鼓膜異常が改善しない・悪化する場合は鼓膜切開を耳鼻科と相談する。処方だけを繰り返さない。当直帯の培養提出・保管は既存の院内手順に従い、紹介が必要な児の搬送を遅らせない。
根拠:小児急性中耳炎診療ガイドライン2024(CQ3-3〜3-5、治療アルゴリズム) - 熱と痛みが取れても鼓膜の奥に液が残る。抗菌薬を延長する?
- 中耳貯留液だけが残ることはあり、急性炎症が改善していれば、それだけを理由に抗菌薬を延長・変更しない。耳痛・発熱・膨隆の再出現は急性中耳炎として再評価する。液の残存と聞こえ・言語発達を追跡し、3か月を超えて残る場合は聴力評価と耳鼻科相談を行う。
根拠:RCH Acute otitis media:残存する中耳貯留液 - 抗菌薬の途中で下痢や食欲低下が出たら、どこで中止・相談する?
- 軽い軟便と、血便・強い腹痛・脱水・全身状態不良を区別する。後者や蕁麻疹、呼吸症状は直ちに診察し、原因薬の中止を含めて対応する。ピボキシル系薬では摂取不良に低カルニチン血症・低血糖が重なり得る。傾眠・活気低下・けいれんは薬を飲み切らせず、血糖を含めて緊急評価する。
根拠:PMDA:ピボキシル基を有する抗菌薬の低カルニチン血症・低血糖 - 痛みがなくなったら治療終了?繰り返すときは?
- 抗菌薬は処方した期間を基本に、3〜4日目の診察で継続・変更・終了を医師が判断する。自己判断で残薬を次の発熱に使わない。再燃時には鼓膜を再診察し、前の感染の遷延か新たな感染かを考える。6か月で3回以上、または12か月で4回以上の反復例では、聴力や貯留液の経過も含め耳鼻科と相談する。
根拠:小児急性中耳炎診療ガイドライン2024(CQ3-3〜3-5、治療アルゴリズム)
- 発赤だけで抗菌薬を出す?
- 出さない。鼓膜の膨隆か耳漏がなければ急性中耳炎と診断しない。
- 抗菌薬は何日?
- 各段階で3〜5日投与し、改善なければ次の段階へ。3〜4日目に再評価する。
- 出席停止は?
- ない。熱と機嫌で判断する。
- 繰り返す中耳炎は?
- 6か月に3回、または12か月に4回以上なら反復性中耳炎。耳鼻科への紹介を検討する。
↑ このページの入口へ10家族への説明
とてもよくある耳の炎症です。軽い場合は抗菌薬なしで数日見ることもあります。処方されたら飲み切ってください。耳の後ろが腫れる、顔の動きが左右で違うときはすぐ連絡してください。