7-10 鼻出血

緊急

7-10鼻出血

病態・根拠
このページの目次12項目

1一目でわかるフロー

受診(鼻出血の訴え・保護者から連絡)
  → バイタル・全身状態評価(顔色・意識・出血量・ショック徴候の有無)
  → レッドフラグ評価(圧迫10〜15分で止血しない/他部位出血を伴う/
     片側性・悪臭鼻漏/思春期男児の反復大量出血/顔面外傷後/
     鼻腔内にボタン電池様異物を視認・強く疑う/病歴と所見の不一致 など)
  → 鼻腔内ボタン電池を視認・強く疑う=亜急性精査を待たず耳鼻咽喉科へ即日緊急紹介
  → 該当なし=単純な前鼻出血(キーゼルバッハ部位)として圧迫止血へ
     該当あり=病型に応じた精査へ分岐(下記)
  → 重症度・病型判定(前鼻出血/後鼻出血、単発/反復)
  → 正しい圧迫止血の実施・指導(小鼻をつまむ・前傾・後屈させない)
  → 止血成功?
      Yes → 反復例なら原因評価(乾燥・鼻いじり・アレルギー性鼻炎)→ 生活指導
      No  → 血管収縮薬含浸ガーゼ再圧迫 → なお不成功なら耳鼻咽喉科紹介
            (焼灼・パッキング)
  → 反復例・片側性・悪臭鼻漏 → 鼻鏡/内視鏡で異物・腫瘤の有無確認
  → 反復例・止血困難・他部位出血 → 血算・凝固検査 → 異常なら血液内科紹介
  → 思春期男児の片側性反復大量出血 → 若年性血管線維腫を疑い画像評価・耳鼻科紹介
     (生検は行わない)

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2レッドフラグ(見逃し厳禁)

  • 正しい圧迫止血(小鼻を10〜15分連続でつまむ)を行っても止血しない、または止血後すぐに再出血を繰り返す: 局所処置(焼灼・パッキング)の適応であり、全身性の出血傾向の検索も並行して検討する[2][4]
  • 鼻出血以外の出血(歯肉出血、点状出血・紫斑、血尿、下血)を伴う: 血小板減少症(ITP等)・凝固異常(血友病、von Willebrand病等)を疑う所見。MSDマニュアルも「複数回の再発」「出血性疾患の皮膚徴候」を鼻出血の危険信号として明記している[2][4]
  • 片側性の反復・持続する鼻出血で、悪臭を伴う鼻漏を伴う: 鼻腔異物を疑う(特に乳幼児〜低年齢児)。異物は「しばしば片方の鼻孔からの反復性の悪臭を伴う分泌物」を呈し、硬性内視鏡での確認が必要とされる[2][8]
  • 鼻腔内に電池様の異物(ボタン電池)を視認、または保護者の目撃・状況からボタン電池挿入が強く疑われる: 上記の「片側性・悪臭鼻漏の反復例」という亜急性ワークアップの対象とは区別する。電池が鼻粘膜に接すると電気分解により化学熱傷・組織壊死を来し、放置すれば鼻中隔穿孔に至りうる時間依存性の緊急事態である。悪臭鼻漏の出現を待たず、視認または強い疑いの時点で耳鼻咽喉科へ即日・緊急に紹介する(除去までの安全な猶予時間を明記した一次資料は確認できておらず、「数時間以内」等の具体的時間指定はしない)。
  • 思春期男児の片側性・反復性・大量鼻出血(進行すると鼻閉、頭痛、片側の頬部腫脹を伴うことがある): 若年性血管線維腫を疑う。血流が非常に豊富な良性腫瘍で、外来での安易な生検は大量出血のリスクがあるため禁忌に近い。画像検査(造影CT/MRI)と症状から診断し、耳鼻咽喉科で手術的切除により病理確定するのが基本[5]
  • 抗凝固薬内服歴、出血性疾患の家族歴: 遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病/HHT)などを考慮。HHTでは反復鼻出血が最も頻度の高い症状で加齢とともに症候性になることが多く、10歳以下の小児では診断基準(Curaçao基準)上の確定・疑い診断に至ることは多くないとされる[7](出典[7]に「何歳頃から出現するか」を明記した記述はなく、旧版にあった「多くは12歳前後から出現する」という表記は未確認情報のため削除した)
  • 顔面外傷後の鼻出血: 鼻骨骨折・頭蓋底損傷等の評価を優先する。特に鼻中隔に紫色調の隆起を認める場合は鼻中隔血腫を疑う。放置すると虚血性・感染性の軟骨壊死から鞍鼻変形を来しうるため、直ちに切開・排液(緊急ドレナージ)の適応となる(耳鼻咽喉科紹介・処置)[10]
  • 出血量が多く、顔面蒼白・頻脈・意識レベル低下などショック徴候を伴う: 気道・循環の安定化(ABCアプローチ)を最優先とする[4]
  • 説明のつかない鼻出血(特に乳児・歩行前児)、保護者の説明と鼻出血・外傷所見が一致しない、月齢/発達段階に不相応な外傷所見やあざの合併: 身体的虐待(非偶発的外傷)の可能性を考慮する。「説明と所見の不一致」「発達段階に不相応な外傷」は虐待を疑う際の一般的な着眼点である(鼻出血・鼻中隔損傷を虐待の特異的サインとして明記した公的GL・一次資料は確認できていないが、安全側の注意として維持する。院内の子ども虐待対応フローに従い評価・記録する)。

3重症度・病型の判定

  • 前鼻出血(大多数): 鼻中隔前下部のキーゼルバッハ部位(血管が網の目状に集まり粘膜表面に近い)からの出血で、鼻出血の大半を占める[2]。幼児期〜学童期低学年に好発し、5歳までに少なくとも30%が経験するとされる[1]
  • 後鼻出血(稀・小児では少ない): より重篤になりやすく、前方からの圧迫のみでは止血しにくい。出血が咽頭へ流れ込みやすく、量の評価が難しい[2]
  • 単発性 vs 反復性: 単発の少量出血で圧迫のみで止血する典型例と、頻回に繰り返す反復例を区別する。反復例は乾燥・アレルギー性鼻炎・鼻いじりなど局所要因の関与が多いが、1.のレッドフラグに該当しないか必ず再確認する[1]

4検査

  • 必要:
  • 反復例・止血困難例・他部位出血を伴う例: 血算(特に血小板数)、凝固能(PT/APTT)。ITPを疑う所見があれば血液内科紹介の判断材料とするが、GLの基本方針は治療適応を血小板数ではなく出血の重症度・HRQoL(健康関連QOL)で決めるというものであり、血小板数の単一閾値のみで紹介要否を機械的に判断しない[6]
  • 片側性・悪臭を伴う鼻漏の反復例: 鼻鏡診察、必要に応じ硬性内視鏡での鼻腔観察(異物の確認)[2][8]
  • 思春期男児の片側性反復大量出血: 耳鼻咽喉科紹介の上での造影CT/MRI(若年性血管線維腫の術前評価として専門医が施行)[5]
  • 虐待(非偶発的外傷)を疑う所見を伴う例: 院内の子ども虐待対応フローに従い、病歴・身体所見(外傷の部位・新旧・年齢相応性)を診療録に具体的に記録する(要確認:院内の子ども虐待対応窓口・通告フロー、§6参照)
  • 不要・過剰になりがち:
  • 単発・軽度の前鼻出血で全身状態良好、他の出血症状を伴わない典型的なキーゼルバッハ部位出血へのルーチンの血液検査
  • 上記の適応がない反復例への画像検査(CT/MRI)の先行実施
  • 若年性血管線維腫を疑う所見があるにもかかわらず行う外来での生検(大量出血のリスクがあるため避ける)[5]

5治療

  • 緊急対応(亜急性精査に乗せない):
  • 鼻腔内ボタン電池を視認・強く疑う場合: 圧迫止血の可否によらず、化学熱傷・鼻中隔穿孔の予防のため当日中に耳鼻咽喉科へ緊急紹介する。悪臭鼻漏など亜急性所見の出現を待たない[8]
  • 顔面外傷後に鼻中隔血腫(紫色調の隆起)を認める場合: 軟骨壊死・鞍鼻変形を防ぐため直ちに切開・排液が必要。耳鼻咽喉科へ緊急紹介する[10]
  • 第一選択: 正しい圧迫止血法
  • 姿勢: 座位でやや前傾(うつむき気味)。頭部を後屈させない(血液が咽頭に流れ込み、咳き込み・誤嚥・嘔気/嘔吐の原因になるため)[1][9]
  • 手技: 親指と人差し指で小鼻(鼻翼)をしっかりつまみ、10〜15分連続で圧迫する。MSDマニュアルは「両鼻翼を10分間つまむ」、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の小児向け案内は「約10分間」としており、いずれも鼻根部・鼻背ではなく鼻翼への圧迫を強調している[1][2]
  • 咽頭に流れた血液は飲み込まず吐き出させる(悪心・嘔吐の予防)[1]
  • 圧迫を頻回に緩めて確認しない(止血完了前の解除は再出血の誘因になる)
  • 第二選択・無効時:
  • 血管収縮薬(例: ナファゾリン等)を浸した綿球・ガーゼを出血側鼻腔に挿入し、さらに10分程度圧迫を追加する。小児、特に乳幼児では血管収縮薬の全身性作用(徐脈・低体温・傾眠等)への注意から必要最小限の使用とする(個別の用量・製剤選択は院内処方基準・添付文書のkg換算表に従う。本ファイルには記載しない)[2]
  • 出血点が視認できる場合、耳鼻咽喉科で硝酸銀焼灼(硝酸銀棒を出血部位に4〜5秒当てる)または電気凝固を行う。両側の鼻中隔を同時に焼灼しない(鼻中隔穿孔・壊死のリスクがあるため)。2回試みて止血しない場合は鼻腔パッキング等の手技に切り替える[3]
  • トラネキサム酸(局所または内服)は止血の補助として選択肢になりうるが、小児用量は添付文書の体重換算表に従う([要確認]:院内採用製剤・処方基準)
  • 反復例の背景治療: 鼻粘膜の保湿(ワセリン等を綿棒で鼻入口に塗布)、鼻いじり習慣の是正(爪を短く保つ)、室内の加湿、基礎にアレルギー性鼻炎があれば既存の鼻アレルギー診療ガイドラインに沿った治療を行う[1]
  • やってはいけない/非推奨:
  • 頭部を後屈させて圧迫する(血液の咽頭への流れ込みによる誤嚥・咳き込み・嘔吐のリスク)[1][9]
  • 鼻根部・鼻背を圧迫する(キーゼルバッハ部位を含む鼻翼を圧迫しなければ止血効果が乏しい)
  • 出血部位を確認しないまま焼灼を繰り返す・両側中隔を同時に焼灼する(穿孔リスク)[3]
  • 若年性血管線維腫が疑われる例への外来生検(大量出血のリスク)[5]
  • ボタン電池疑いの鼻腔異物を、片側性・悪臭鼻漏の出現を待って亜急性に精査すること(電気分解による化学熱傷・鼻中隔穿孔のリスクがあり、時間依存性の緊急事態として即日対応が必要)[8]
  • 鼻中隔血腫を認識しながら緊急ドレナージをせず経過観察すること(軟骨壊死・鞍鼻変形のリスク)[10]
  • 反復・大量出血や他部位出血の合併を確認せず、局所処置のみで経過観察を続けること(背景に血液疾患がないかの検索を怠らない)

6再診・帰宅指導・保護者説明

  • 再受診すべきサイン(保護者に伝える):
  • 正しい方法(小鼻をつまむ・前傾姿勢)で10〜15分以上圧迫しても止まらない、または止まってもすぐに再出血を繰り返す
  • 出血量が多い(コップ半分程度以上など)
  • 顔色が悪い・ふらつく・ぐったりするなどの全身症状を伴う
  • 歯茎からの出血や皮膚のあざ(点状出血・紫斑)など鼻以外からの出血を伴う
  • 片側から悪臭のある鼻水が続く(異物の可能性)
  • 経過の見通し・登園/登校の目安:
  • 単純な前鼻出血は圧迫止血後、当日から通常の登園・登校が可能(感染性疾患ではないため出席停止の対象ではない)
  • 止血直後は、強く鼻をかむ・鼻をいじる・熱い入浴・激しい運動を当日は控えるよう説明する(再出血予防)
  • 幼児期〜学童期低学年での反復は、乾燥・鼻いじり・アレルギー性鼻炎の対策(保湿・爪を短く・鼻炎治療)で頻度が減ることが多い[1]
  • 紹介・入院の閾値:
  • 耳鼻咽喉科紹介(緊急): 鼻腔内ボタン電池を視認・強く疑う(即日)、鼻中隔血腫を認める(即日)
  • 耳鼻咽喉科紹介(準緊急〜予定): 正しい圧迫で止血しない、出血点が視認できず焼灼・パッキングが必要、片側性反復+悪臭鼻漏(異物疑い)、思春期男児の反復大量出血(若年性血管線維腫疑い)
  • 血液内科等紹介: 他部位出血・紫斑等ITP/凝固異常を示唆する所見を伴う、または血算・凝固検査で異常が判明した場合。ITPの治療適応は血小板数単独でなく出血の重症度・HRQoLで判断されるため、血小板数の閾値のみで紹介要否を機械的に決めない[6]
  • 虐待(非偶発的外傷)を疑う場合: 院内の子ども虐待対応フローに従い、必要に応じて小児科内・関連科・地域の児童相談所等との連携を検討する(要確認:§6)
  • 入院: 出血量が多くバイタルが不安定、後鼻出血が疑われ難治性、基礎疾患(血液疾患・腫瘍性病変)の精査・治療のため専門的管理が必要な場合

7院内ローカルルール

  • 確定(2026-09-14 確認):当直帯に院内の耳鼻咽喉科はいない。大量出血・後鼻出血は院外の紹介動線が要る(施設名・番号は保留中)

8出典(日本のGL優先・URL+版年。運用前に最新版確認)

⚠ 検索の結果、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会・日本鼻科学会が発行する「鼻出血」単独の一次診療ガイドライン(正式CPG)は確認できなかった(学会が公開する診療ガイドライン/手引きINDEXには鼻アレルギー・鼻副鼻腔炎等のGLはあるが鼻出血単独のGLは掲載されていない、2026-07-31時点[要確認])。本ファイルは学会の一般向け疾患解説[1]・MSDマニュアル プロフェッショナル版[2][3][8](国際標準の教科書的資料)・小児ITP診療GL[6]・HHT診断の手引き[7]など、確認できた最良の情報源を組み合わせて構成した。院内での実運用前に、耳鼻咽喉科と圧迫時間(10分か15分か)・血管収縮薬/トラネキサム酸の使用基準・紹介閾値を擦り合わせることを推奨する。

9臨床医が迷う場面

10正しく圧迫しても止まらない。家庭で何度もやり直す?

小鼻を連続して圧迫できたかを確認するが、持続する多量出血、血を飲み込み続ける、顔色不良や循環不良では処置できる医療機関へつなぐ。圧迫を緩め続けたり後ろへ頭を倒したりしない。止血が難しければ耳鼻科へ早めに相談する。

出典:RCH 鼻出血(海外)

11何度も鼻血を出す児に、全員血液検査を行う?

単発の軽い前鼻出血では一律検査は不要。長引く出血、他部位の出血や紫斑、家族歴、服薬、貧血を疑う症状を聞く。こうした所見があれば血算・凝固などを選ぶ。片側性の反復や異物疑いは血液検査だけで済ませず鼻腔を評価する。

出典:RCH 鼻出血(海外)

12鼻血が止まった後、再発予防に抗菌薬を続ける?

乾燥、鼻いじり、強く鼻をかむ習慣を先に見直す。感染が疑われる痂皮などがある場合の局所薬は診察に基づき期間を決め、全例へ抗菌薬を長期処方しない。持続する片側性出血や頻回再発は耳鼻科へ紹介し、止血後の生活指導だけで放置しない。

出典:RCH 鼻出血(海外)

一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。

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