4-16心筋炎を疑うとき
かぜの後の嘔吐・腹痛・胸痛を循環の所見と結びつける
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- 感染の後の嘔吐・腹痛・活気低下を胃腸炎だけで説明しない。心筋炎では消化器症状が初発となりうる。
- 発熱や脱水の程度と釣り合わない頻脈、末梢循環不良、肝腫大、呼吸苦、失神、胸痛を見たら心筋炎を鑑別する。
- まずABCと循環を評価し、12誘導心電図を取る。初期の心電図異常が軽微でも経時的に変化しうる。
- 心筋炎を疑ったら、小児循環器・集中治療へ早期に相談する。当院には小児循環器・集中治療の機能がないため、確定診断を待って抱え込まない。
- 心筋炎の確定には心臓MRIや心筋生検など専門施設の評価が要る。心電図・採血だけで『除外した』としない。
2鑑別のながれ
- かぜ様症状後の嘔吐・腹痛・活気低下→頻脈、末梢循環、肝腫大、呼吸の負担を同時に見る→心筋炎を疑う
- 胸痛・動悸・失神→心電図と循環評価を急ぐ→心筋炎・不整脈・心膜炎を鑑別する
- 発熱・循環不全→感染巣、末梢循環、心機能評価を並行する→敗血症との区別は難しい。両方を想定して上級医へ相談する
- 突然の胸痛・呼吸苦→呼吸音と胸部画像も確認する→気胸など呼吸器の緊急疾患も鑑別する
3検査
- 意識・呼吸・SpO2・血圧・心拍数・末梢冷感・毛細血管再充満・尿量を反復評価する
- 12誘導心電図を記録する。初回の変化が軽微でも疑いが続く場合は専門施設と再評価を相談する
- 心筋トロポニン、BNPまたはNT-proBNP、血液ガス・乳酸、胸部X線、心エコーを利用可能な範囲で検討する。検査待ちで相談や搬送を遅らせない
- 先行感染、胸痛・失神・動悸、症状の開始時刻、尿量、既往心疾患・川崎病、家族歴を記録する
4対応の注意
避けること・注意:嘔吐・腹痛を胃腸炎と決めつけない。初回の心電図や非特異的な炎症マーカーだけで否定しない。循環不全があるときは輸液量や処置を自己判断せず、上級医・搬送先と協議する。
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- 搬送・紹介心筋炎を疑い循環不全、呼吸苦、失神、不整脈、心電図異常のいずれかがある場合は、小児循環器・集中治療へ緊急相談する、当院では専門的な循環管理と確定診断を完結できない。搬送先と監視・移送方法を決める
6診療中の疑問と回答
- 胃腸炎らしいが頻脈が続く。補液を反復する前に何を見る?
- 熱や脱水に見合わない頻脈、肝腫大、奔馬調律、冷たい四肢、呼吸苦を確認し心筋炎を考える。補液後の灌流と呼吸を再評価し、改善しないからと大量輸液を重ねない。心電図と専門連絡を並行し、心原性ショックが疑わしければ搬送を前倒しする。
根拠:日本循環器学会・日本小児循環器学会 心筋炎GL2023 / 日本小児循環器学会誌 心筋炎2024 - 心筋トロポニンが高くない。心筋炎を除外してよい?
- 単回の採血だけで否定しない。症状の時期、心電図の変化、不整脈、心機能と循環を合わせて評価する。病態は経時的に変わるため、疑いが残れば再検・心エコーを専門医と相談する。検査値が軽度でも失神や循環不全があれば帰宅の根拠にしない。
根拠:日本循環器学会・日本小児循環器学会 心筋炎GL2023 / 日本小児循環器学会誌 心筋炎2024 - 回復後に体育や運動部へ戻してよいか聞かれたら?
- 症状が消えただけで運動再開を許可しない。心機能、不整脈、心筋障害の残存を循環器で評価し、病状に応じた活動制限と再評価の計画を作る。一般外来が一律の日数を提示せず、学校への指示も専門医と共有して段階的な復帰を調整する。
根拠:日本循環器学会・日本小児循環器学会 心筋炎GL2023 / 日本小児循環器学会誌 心筋炎2024
- 胸痛がなければ心筋炎は考えなくてよい?
- いいえ。小児では嘔吐・腹痛・活気低下が先に出ることがある。循環所見を合わせて評価する。
- 最初の心電図が目立たなければ帰してよい?
- それだけでは判断しない。心電図変化は経時的に現れることがあり、疑いが残れば上級医と専門施設に相談する。
- 当院で確定診断まで進める?
- 心臓MRIや心筋生検などの評価は専門施設の領域。疑った時点で相談し、必要な搬送を調整する。
8家族への説明
かぜの後の吐き気やおなかの痛みでも、まれに心臓の働きが悪くなる病気が隠れることがあります。脈、呼吸、血圧、心電図を確認し、心臓の専門施設と相談します。息が苦しい、意識や反応がおかしい、顔色が悪い場合はすぐに医療者へ伝えてください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。