6-11 伝染性軟属腫(水いぼ)

緊急

6-11伝染性軟属腫(水いぼ)

病態・根拠
このページの目次12項目

1一目でわかるフロー

受診(保護者が「水いぼ」を主訴に来院/健診で指摘)
  │
  ├─ ① レッドフラグ評価(§1)
  │     免疫不全示唆・眼瞼病変+眼症状・急な有痛性水疱化(発熱がなくても当日評価)・強い二次感染
  │     → あれば精査/専門科紹介ルートへ(経過観察・摘除の議論より優先)
  │
  ├─ ② 病型・重症度の判定(§2)
  │     定型(ドーム状・中央臍窩)か/湿疹合併型か/炎症期(治りかけ)か
  │     数・範囲(軽症〜難治型)、年齢、アトピー性皮膚炎の有無を確認
  │
  ├─ ③ 検査(§3)
  │     通常は視診のみで臨床診断。生検は鑑別困難時・免疫不全疑い時のみ
  │
  ├─ ④ 治療方針の共同意思決定(§4)
  │     経過観察 と 摘除(±疼痛緩和) は"どちらも正解"の選択肢
  │     → エビデンス上どちらが優れるかは未確定。保護者と相談して選ぶ
  │
  └─ ⑤ 再診・保護者説明(§5)
        自然経過(数か月〜数年)/プール可(タオル等共用回避)/登園登校制限なし
        → 再受診サイン・紹介閾値を明示して終診

図は横にスクロールできます →

2レッドフラグ(見逃し厳禁)

このサインがあれば「水いぼの通常経過」として様子見せず、精査・専門科紹介を検討する。

  • 巨大病変(目安1cm超)・急速な増数/播種状拡大・治療抵抗性:免疫不全(先天性免疫不全症、HIV感染、免疫抑制薬使用中など)を示唆する所見。特に基礎疾患不明の児で通常型と明らかに異なる急拡大がある場合は背景精査を検討する[7]。
  • 眼瞼・眼周囲の病変+結膜充血/流涙/異物感などの眼症状:濾胞性結膜炎や表層角膜症を合併しうる。皮膚病変が消退すれば眼症状も軽快することが多いが、症状がある間は眼科紹介・二次細菌感染予防の点眼を検討する[眼科関連情報]。
  • 急な有痛性水疱化・びらん(特にアトピー性皮膚炎児):水いぼ自体は非有痛性のドーム状丘疹であり、疼痛・急速な水疱形成はカポジ水痘様発疹症(単純ヘルペスの重複感染)など別疾患を疑う所見。発熱がなくても、疑えば当日に皮膚科へ紹介する[NICE-CG57]。水いぼの自然経過として説明しない。
  • 強い発赤・腫脹・熱感・排膿・拡大する疼痛:搔破による伝染性膿痂疹(とびひ)の合併を疑う。抗菌薬治療の適応を評価する。
  • 基礎疾患(先天性免疫不全、悪性腫瘍治療中、臓器移植後、HIV等)が既知の児での新規発症・急拡大:専門科(免疫・感染症)と連携し、通常の待機的方針を機械的に適用しない。
  • 陰部・肛門周囲に限局する病変(体幹・四肢など他部位に病変がない場合):水いぼの陰部病変の多くは自己接種(掻破による自己拡大)で生じ、単独では性的虐待を意味しない。ただし国際的な小児科教育資料は「陰部病変がある場合は常に性的虐待の可能性に留意し慎重に評価する」ことを推奨しており、外傷痕など他の所見と合わせた評価を行う(国内の一次GLは未特定のため、評価の枠組みは院内・地域の虐待対応体制に従う)[9]。

3重症度・病型の判定

  • 病型
  • 定型:光沢のあるドーム状、中心臍窩を伴う粟粒大〜米粒大(1〜5mm)の丘疹。体幹・四肢・腋窩に好発[3]。
  • 湿疹合併型(軟属腫性湿疹):病変周囲に湿疹反応を伴う。アトピー性皮膚炎児で目立ちやすい。
  • 炎症期(いわゆる"治りかけ"のサイン):発赤・腫脹し膿疱様に見えることがあるが、これは免疫反応による自然消退過程であり悪化のサインではない。保護者が「バイ菌が入った」と誤解しやすいため説明が要る。
  • 重症度の目安
  • 軽症:数個〜10個程度、限局部位。
  • 中等症:数十個、体幹四肢に散在。掻破・湿疹合併あり。
  • 難治型:100個以上に及ぶ多発・播種状、または通常の経過観察/摘除で制御困難。この場合は§1のレッドフラグ(免疫不全)を再確認する。
  • 年齢因子:好発は乳幼児期(概ね1〜7歳)。皮膚バリア機能が未熟な低年齢児、ドライスキン・アトピー性皮膚炎の児で数が増えやすく範囲も広がりやすい[1]。

4検査

  • 必要:
  • 通常例は視診のみで臨床診断可能(追加検査は基本的に不要)。
  • 診断が非典型で鑑別が困難な場合、または免疫不全を疑う巨大・非典型病変の場合:皮膚生検(軟属腫小体=Henderson-Paterson小体の確認で確定診断)[鑑別診断関連情報]。
  • 不要・過剰になりがち:
  • 通常例へのウイルス学的検査(培養・抗体検査等)は不要。
  • 典型例への画像検査は不要。
  • 基礎疾患を疑う所見(§1)がないのに、水いぼの数が多いというだけで免疫不全スクリーニングを行うのは過剰。

5治療

  • 第一選択:
  • 経過観察(無治療) と 摘除(ピンセット/トラコーマ攝子による内容除去) はいずれも臨床的に妥当な第一選択で、どちらか一方が「標準治療」として優越しているわけではない。Cochraneレビューでも単独治療で明確に有効性が確立されたものはなく、免疫能正常児での経過観察(benign neglect)は合理的な選択肢とされている[6]。
  • 摘除を選ぶ場合:数が少なければ(目安3個程度まで)無麻酔でも施行可能なことがある[4]。疼痛緩和が必要な場合はリドカイン含有貼付剤(ペンレステープ)を処置の約1時間前に貼付し、除去直前に剥がして摘除する。2012年6月22日、「伝染性軟属腫摘除時の疼痛緩和」の効能・効果追加が承認され保険適用となった(PMDA新医薬品承認リストで承認日を直接確認済み)[5][8]。
  • 禁忌:本剤の成分またはアミド型局所麻酔薬に対し過敏症の既往歴のある児には使用しない。貼付前に必ず既往歴を確認する[8]。
  • 使用してはいけない部位:湿疹または発疹のある部位・損傷皮膚(掻き壊し痕等)・粘膜には使用しない[8]。§2の「湿疹合併型(軟属腫性湿疹)」やアトピー性皮膚炎で搔破痕のある病変はこれに該当しうるため、貼付前に部位を個別確認し、該当する場合は疼痛緩和なしでの摘除・複数回に分けての施行・皮膚科紹介などの代替を検討する。
  • 重大な副作用:ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)。使用中・除去後を通じて不快感・呼吸困難・血圧低下・意識障害等が出た場合は直ちに使用を中止し救急対応する。除去後にも同様の症状が生じうるため、除去後も一定時間の観察が望ましい[8]。
  • 年齢に関する留意点:伝染性軟属腫摘除に関する国内第Ⅲ相治験の対象は小児4〜11歳であり、低出生体重児・新生児・乳児を対象とした臨床試験は実施されていない[8]。水いぼの好発年齢(概ね1〜7歳)のうち1〜3歳の低年齢児は治験で直接検証された年齢層の外にあるため、使用可否は個別に判断する。
  • 用量の考え方:本剤は体重換算(mg/kg)ではなく1回の処置につき2枚までという枚数上限で規定されている[5]。乳幼児など体表面積が小さい児に広範囲へ多数枚を貼付すると相対的な吸収量が増える可能性があるため、貼付面積・枚数は添付文書の上限内に留める。
  • 経過観察を選ぶ場合:自然消退までの期間は個人差が大きく、健康な小児でおおむね6か月〜数年(長い場合は4年程度)とされる[1][3]。免疫能に問題のない児での自然消退は保証された経過であり、「痛い思いをさせてまで摘除する必要はない」という立場も専門医の間で明確に存在する[4]。
  • 第二選択・無効時:
  • 摘除・経過観察のいずれでも制御困難、または心理的負担が大きい難治例では皮膚科紹介を検討。
  • 液体窒素による凍結療法は選択肢の一つとして行われるが、疼痛を伴い保険適用や実施体制は施設ごとに異なる[要確認]。
  • 保湿・湿疹治療の併用:バリア機能低下(ドライスキン・アトピー性皮膚炎)が拡大の背景にある場合、保湿とスキンケアの強化が拡大抑制に資すると考えられている[1]。
  • やってはいけない/非推奨:
  • イミキモド外用:エビデンス上プラセボ(基剤)と比較して治癒率に有意差がなく、適用部位反応がむしろ増えるとされる(かつ日本では本症への保険適用がない)[6]。
  • 疼痛緩和なしでの多数個・広範囲摘除の強行:痛覚閾値が下がり児の苦痛が増すため、少数ずつ複数回に分けるか、疼痛緩和処置を用いる[4]。
  • 「水いぼがあるからプール禁止・登園禁止」という一律運用:後述§5参照。学会の統一見解と矛盾する対応であり、保護者・園/学校への誤った説明を避ける。

6再診・帰宅指導・保護者説明

  • 再受診すべきサイン(保護者に伝える):
  • 病変周囲の急な発赤・腫脹・熱感・排膿、痛みの増強(とびひ合併の疑い)。
  • 急な水疱形成・強い痛み(発熱がなくても当日受診。水いぼの通常経過ではない)。
  • 眼のまわりに広がり、目やに・充血・見えにくさなどの眼症状が出た場合。
  • 治療(摘除)後も新しい水いぼが増え続け生活に支障が大きい場合。
  • 経過の見通し・登園/登校の目安:
  • 自然消退まで数か月〜数年と幅があり、正確な予測は困難であることを事前に伝える[1]。
  • 摘除しても、潜伏期間(2〜7週間程度、まれに6か月に及ぶこともある[3])中に感染していた部位から後日新たな病変が出ることがあり、複数回の通院・処置が必要になりうることをあらかじめ説明する[1][3]。
  • 治りかけの時期に病変が赤く腫れて見えることがあるが、これは悪化ではなく免疫反応による自然経過であることを説明し、不要な受診・不安を減らす。
  • 登園・登校制限は不要。プールも入って構わない(水を介した感染は起こらないとされる)。ただしタオル・浮き輪・ビート板など肌に直接触れるものの共用は避けるよう伝える[1][2]。患部を防水フィルム等で覆うかはプール施設側の運用に合わせる。
  • 紹介・入院の閾値:
  • §1のレッドフラグに該当する場合(免疫不全示唆・眼症状・とびひ合併の重症化・急な有痛性水疱化)は皮膚科・眼科・感染症科等へ紹介。カポジ水痘様発疹症を疑えば、発熱がなくても当日紹介とする[NICE-CG57]。
  • 基礎疾患既知の免疫不全児での新規発症・急拡大は、通常の待機的方針を適用せず専門科と連携する。
  • 外来での摘除が児の体動・不安等で安全に実施できない場合は皮膚科紹介を検討。

7院内ローカルルール

  • 決定:皮膚科紹介を基本方針とする(器具・施行者の常備状況を踏まえ)(論点:摘除処置を小児科外来で行うか、皮膚科への紹介を基本方針とするか(施行者・器具の常備状況を含む))

8出典(日本のGL優先・URL+版年)

  • [1] 日本小児皮膚科学会「Q&A:伝染性軟属腫(みずいぼ)」(日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会 統一見解 2010年11月/2013年5月) https://jspd.umin.jp/qa/01_mizuibo.html (改定で変わるため運用前に最新版確認)
  • [2] 公益社団法人日本皮膚科学会「皮膚の学校感染症とプールに関する統一見解および統一見解に関する解説について」(2013年5月24日発表・2016年5月19日更新) https://www.dermatol.or.jp/public/publicnews/4296/
  • [3] 公益社団法人日本小児科学会「伝染性軟属腫(水いぼ)」(一般の方向け予防・感染症情報) https://www.jpeds.or.jp/general/prevention/yobo-kansensho/kansensho03-41.html
  • [4] マルホ株式会社 医療関係者向けサイト「皮膚科専門医に聞く!伝染性軟属腫治療の考え方」(日野治子医師インタビュー) https://www.maruho.co.jp/medical/articles/molluscumcontagiosum/specialist/index.html
  • [5] マルホ株式会社 ペンレスインフォメーション「ペンレス開発秘話−伝染性軟属腫摘除時の疼痛緩和−」(2012年6月22日 効能・効果追加承認) https://www.maruho.co.jp/medical/penles_info/mizuibo/kaihatsu/
  • [6] van der Wouden JC, et al. Interventions for cutaneous molluscum contagiosum. Cochrane Database of Systematic Reviews(要約: JMIR Dermatology 2023「From the Cochrane Library: Interventions for Cutaneous Molluscum Contagiosum」) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10335125/
  • [7] Giant eyelid molluscum contagiosum as an indicator of underlying immunosuppression(HIV): case report and literature review, Cureus/PMC 2023 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10387225/ (免疫不全示唆所見の参考。国内小児での頻度は稀)
  • [8] ペンレステープ18mg 電子添付文書(禁忌・使用してはいけない部位・重大な副作用・治験対象年齢・低出生体重児等の記載を2026-08-01に本文で直接確認。2023年4月改訂第1版/YJコード1214701S1051/承認番号22000AMX01557000)。PMDA医療用医薬品情報検索(医療関係者向け) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdSearch/02/1214701S1051 (URL更新 2026-09-28。2026年8月改訂第2版添付文書で「伝染性軟属腫摘除時の疼痛緩和」の効能・効果を再確認)/全文参照はKEGG医薬品情報ミラー https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00055660 。効能追加承認日(2012年6月22日=平成24年6月22日)はPMDA「承認品目一覧(新医薬品:平成24年4月~平成25年3月)」No.45(ペンレステープ18mg/日東電工)で確認 https://www.pmda.go.jp/files/000160046.pdf
  • [9] Riahi A, Shokravi MB. "Approach to Molluscum Contagiosum." PedsCases Podcast Script(2020年12月19日、UBC小児科・皮膚科医監修)https://pedscases.com/sites/default/files/Approach%20to%20Molluscum%20Contagiosum.pdf (陰部病変と性的虐待評価に関する国際的な小児科教育資料。国内の一次GLは未特定のため参考情報にとどめ、評価の実務は院内・地域の虐待対応体制に従う)
  • [NICE-CG57] NICE「Atopic eczema in under 12s: diagnosis and management」(CG57、2025年9月22日更新)、Recommendations 1.5.1.40・1.5.1.42・1.7.1.1(発熱は必須所見ではなく、カポジ水痘様発疹症を疑えば当日専門評価)。https://www.nice.org.uk/guidance/cg57/chapter/Recommendations (2026-10-08確認)
  • 鑑別診断関連情報(Henderson-Paterson小体・生検適応の一般的記載。一次GL未特定のため運用前に皮膚科専門医の確認が望ましい)[要確認]
  • 眼科関連情報(伝染性軟属腫の眼瞼病変に伴う濾胞性結膜炎・角膜症の一般的記載。一次GL未特定)[要確認]

9臨床医が迷う場面

10数が増えている水いぼは必ず摘除する?

自然消退まで時間がかかることを説明し、痛みや本人の負担、湿疹・掻破、部位で選ぶ。無症状の児に全病変の摘除を必須としない。治療する場合も痛みへの配慮と同意が必要で、家庭でつぶしたり針を刺したりさせない。

根拠:RCH Molluscum contagiosum

11水いぼの周囲が赤い。抗菌薬を使う?

消退時の炎症や周囲の湿疹でも赤くなる。掻痒・乾燥には保湿と湿疹治療を行い、膿、強い痛み、拡大する熱感、発熱があれば細菌感染として再評価する。赤みだけで一律に抗菌薬を出さず、掻破を減らす計画を立てる。

根拠:RCH Molluscum contagiosum

12眼の近くや広範囲の病変も同じように経過観察する?

眼瞼病変に結膜炎を伴う場合、診断が典型的でない場合、免疫不全が疑われる広範囲・難治例は専門科へ相談する。典型的な病変では通常検査は不要だが、出血・潰瘍など別の病変を疑う所見は見直す。

追加根拠:College of Optometrists:伝染性軟属腫と結膜炎

根拠:RCH Molluscum contagiosum

一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。

スペースで絞り込み(例:夜尿症 休薬)↑↓ 移動 / Enter 開く