12-13髄液検査(腰椎穿刺)
細菌性髄膜炎の確定診断・脳ヘルニア徴候の除外
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- 髄液検査は髄膜炎の診断と起炎菌推定に重要。穿刺前に神経所見・呼吸循環・出血リスクを評価し、安全性と治療開始の遅れを確認する。
- 脳ヘルニアが疑われず、かつ髄液検査の禁忌でない限り速やかに腰椎穿刺を行う。ただし検査で治療開始が1時間以上遅れる場合はこの限りではない。
- 明らかな脳ヘルニア徴候がなくても穿刺を見送る所見がある。新規巣症状・瞳孔異常・重度または進行する意識低下では専門施設へ相談する。
- 穿刺できないときは血液培養。頭蓋内圧亢進などで髄液検査が施行不可能な場合は血液培養の結果が起炎菌同定に重要となる。
- 当直帯の当院に頭部CTは無い。CTが要る状態は搬送の理由であって当院で待つ理由にはならない。
判断の流れ
拡大して見る ↗2鑑別のながれ
- 発熱+頭痛・意識障害→脳ヘルニアの徴候(視神経乳頭浮腫・瞳孔固定/散大・除脳/除皮質肢位・Cheyne-Stokes呼吸・固定した眼球偏位)→LPは見送る。培養は治療を遅らせず採取可能な場合のみ。抗菌薬・安定化・専門相談を先行
- 発熱+頭痛・意識障害→新規巣症状・瞳孔異常・重度または進行する意識低下→穿刺を見送り抗菌薬と安定化を先行。画像評価のできる専門施設へ相談
- 発熱+頭痛・意識障害→上記の神経所見がなく、呼吸循環が安定し、未制御発作・出血リスク・穿刺部感染がない→速やかに腰椎穿刺(治療開始が1時間以上遅れる場合を除く)
- 新生児の発熱→日齢・所見によらず→新生児発熱は全例フル精査を検討する院内方針院内。ただしLPは安全な場合のみ。安定化・抗菌薬を検査のために遅らせない
- 突然の激しい頭痛でCT陰性→小児ではまれ→くも膜下出血の確認目的の腰椎穿刺
- 進行する筋力低下→蛋白細胞解離→Guillain-Barré症候群
3髄液所見の目安(正常値と細菌性・ウイルス性髄膜炎)
| 正常(新生児・乳児) | 髄液初圧100mmCSF、細胞数は新生児22/mm³以下・生後0〜8週30/mm³以下・生後8週以降5/mm³以下(乳児は8/mm³以下とする表記も併記あり)、蛋白20〜170mg/dL、糖34〜119mg/dL | 年齢・検体条件と臨床像で判断。正常範囲だけで髄膜炎を除外しない |
|---|---|---|
| 正常(学童以上・成人) | 髄液初圧50〜180mmCSF、細胞数5/mm³以下、蛋白45mg/dL以下、糖45〜80mg/dL | 年齢・検体条件と臨床像で判断。正常範囲だけで髄膜炎を除外しない |
| ウイルス性髄膜炎 | 細胞数100〜1,000/mm³、蛋白50〜100mg/dL、髄液糖/血糖比0.6超 | 細菌性との区別に用いる |
| 細菌性髄膜炎 | 髄液初圧180mmCSF超、細胞数1,000〜5,000/mm³・多形核球比率80%以上、蛋白100〜500mg/dL、糖40mg/dL以下、髄液糖/血糖比0.4未満 | 抗菌薬を開始し搬送を検討 |
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4検査
- 必須の髄液検査:初圧・細胞数と分画・髄液糖・髄液蛋白量・グラム染色と鏡検
- 同時血糖(髄液糖/血糖比のため必須)、血液培養(強く推奨)
- 髄液培養は夜間提出不可。必要量・容器・検体ごとの保管/搬送条件を検査室へ確認し、固定の採取量や翌朝までの保管を独断で決めない。採取・提出調整で抗菌薬を遅らせない
- グラム染色の感度は抗菌薬投与前で75〜90%、投与後は40〜60%に低下。培養陽性率は未治療で70〜80%、抗菌薬治療群で50%以下に低下する
- 新生児・乳児は典型的な細胞増多・蛋白高値・糖低値を示さないことがある。B群レンサ球菌髄膜炎はその30%が細胞数増多を示さない
5手技の流れ(当院で行う場合・体位/穿刺部位/針/局所麻酔濃度は医学書による一般的な目安)
- 神経所見、呼吸循環、けいれん制御、出血リスク、穿刺部感染を確認。安全性が確保できない場合は穿刺を見送る
- 同意(目的・起こりうることの説明)
- 清潔操作の準備:帽子・マスクを着用し長袖白衣は脱いで手指消毒。消毒液(イソジン)・滅菌綿球・滅菌ガーゼ・滅菌ドレープ・滅菌手袋を用意する
- 器具:局所麻酔薬(0.5%または1%キシロカイン)・5mL注射器・26G注射針、穿刺針は新生児・乳児27G/幼児以降23G・25G、圧測定用マノメーター(エクステンションチューブで代用可)と三方活栓、検体採取容器(小分けにして数本)
- モニタ装着(SpO2・心拍)。体位で呼吸が止まりうるため抑える人と見る人を分ける。小児は原則術者単独で行わず介助者をつける
- 血液培養は治療を遅らせず可能なら投与前に採取
- 同時血糖のための採血を忘れない
- 体位は左側臥位・膝屈曲位。患者の肩と骨盤(ヤコビー線)を平行かつ処置台に垂直にする。介助者は患者の腹部に膝をつけ腰部を術者側へ突き出すように保持する(新生児・乳児は介助者が腰部と肩部を押さえる)。頭部を過度に前屈させると気道閉塞のおそれがあるため注意する
- 穿刺部位はヤコビー線上のL4棘突起(L4/L5が第一選択だが最も刺しやすい位置でよい)。消毒は穿刺部を中心に外側へ、最低2回繰り返す。滅菌ドレープをかけたのち局所麻酔薬を穿刺部周囲に十分浸潤させる
- 針は新生児・乳児27G、幼児以降23G/25G。皮膚に垂直に刺入し、通過後は頭側(臍部を狙う感じ)へ傾けて進める。皮膚→皮下組織→棘上靱帯→棘間靱帯→黄色靱帯→硬膜外腔→硬膜→くも膜下腔の順に進む
- 清潔操作で穿刺。深さの目安は乳児〜3cm・幼児3.5〜4cm・学童以上5〜7cm。内針を適宜抜いて髄液の流出を確認し、流出がなければ内針を戻してさらに進める(流出が少なければ針を回転させると増えることがある)。血液の混入があれば再穿刺を考慮する
- 初圧は体位・鎮静・啼泣等の測定条件と神経所見を合わせて評価する。単一の圧閾値だけで採取継続やグリセオール等の自動投与を決めず、上級医が安全性を再評価し専門施設へ相談する
- 髄液を検査項目に応じて採取。分注方法・必要量・容器・保管/提出条件を検査室へ確認し、乳児を含め共通の固定量を置かない
- 終圧を測ってから内針を戻して抜針する(内針を戻すほうが穿刺後頭痛の発生が軽減する)。穿刺部を滅菌ガーゼで圧迫し髄液の流出がないか確認してテープで固定する
- 穿刺後は仰臥位とし安静を指示する。意識と呼吸を観察する。意識レベルの低下は脳ヘルニアを疑う
- 結果を待って抗菌薬を決めるのではなく、細菌性髄膜炎を疑うなら抗菌薬を先に開始する
やってはいけない・落とし穴
- 神経所見や状態変化を見ず、初圧だけで測定・採取継続や薬剤投与を決める
- 「髄液所見が軽いから髄膜炎ではない」と判断してしまう(新生児・乳児では成立しない)
- 培養の採取・保管手順が決まらないまま「抗菌薬の前に採る」が実務にならない
- 検体を1本にまとめて採り、培養用の量が不足する(1本目は培養・グラム染色用に確保する)
6帰宅・入院の目安
- 入院ウイルス性に見える髄液でも臨床的疑いが強ければ直ちに上級医相談。院内観察は安全性・治療・再評価計画を合意した安定例に限る
- 搬送・紹介脳ヘルニア徴候あり:LPを見送り、抗菌薬・安定化・専門相談を先行。培養は治療を遅らせず採れる場合のみ、出血傾向・血小板著減(穿刺しない、搬送)、禁忌なく細菌性髄膜炎を疑う(当院で穿刺して抗菌薬を開始し搬送)、新生児発熱はフル精査を検討し専門施設へ。LPは安全な場合のみ実施し、安定化・抗菌薬・搬送を遅らせない、新生児・早期乳児(所見が典型でないため閾値を下げて搬送)
7Q&A
- 頭部CTを先に撮ってから穿刺してよい?
- 当直帯はCT/MRI不可。新規巣症状・瞳孔異常・重度/進行意識低下等ではLPを延期し、抗菌薬・安定化・専門施設相談を先行する。危険因子解消と安全性を再評価できた場合にLPを検討。CTだけで安全性を保証できない。
- 抗菌薬を先に打つと検査が無駄になる?
- 培養やグラム染色の検出率は下がり得るが、採取で治療を遅らせない。培養は可能な範囲で投与前に採り、抗菌薬と安定化を先行する。LPは危険因子が解消し安全性を再評価できた場合に行う。
- 初圧が高いときはどうする?
- 初圧は体位・鎮静・啼泣等の測定条件と神経所見を合わせて評価する。単一の圧閾値だけで採取継続やグリセオール等の自動投与を決めず、上級医が安全性を再評価し専門施設へ相談する
- 新生児の発熱には、見た目が良くても腰椎穿刺をする?
- 新生児発熱は見た目が良くても全例フル精査を検討する院内方針院内。ただしLPは安全な場合のみ実施し、危険なら延期して安定化と治療を先行する
8家族への説明
背中から細い針を刺して、脳と脊髄のまわりを流れている液(髄液)を少し取る検査です。髄膜炎かどうかは、この検査でしか確かめられません。細菌による髄膜炎は、早く見つけて早く治療を始めることが結果を大きく変える病気です。検査のあと、頭痛や吐き気が出ることがありますが、しばらく横になっていると軽くなることがほとんどです。まれに検査のあとで具合が悪くなることがあるので、検査後も様子を見せていただきます。なお、検査より先にお薬(抗菌薬)を始めることがあります。これは、検査で治療が遅れることのほうが危ないと判断した場合です。
詳しい根拠・出典は 本文の出典欄を参照。
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