3-7腸重積症
間欠的な啼泣・target sign・48時間
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- 間欠的な腹痛(不機嫌)だけで疑診が成立する。三主徴を待たない。
- 血便が無いことは否定の根拠にならない。発症12時間以内に自然に血便を出すことはまれ。
- 数分の腹痛のあと15〜20分は機嫌よく遊べる。痛くない時間帯に診察して「元気だから違う」と判断するのが典型的な見逃し方。
- 当直帯の当院では確診できない(超音波が無い)。だが疑診は「腹痛ないし不機嫌が間欠的」ならそれだけで成立する。疑診が立った時点が搬送の起点。
- 48時間が分岐点(2012年版)。48時間を超えると整復率が下がり腸管壊死が増える。これとは別の統計として、前医で入院後24時間を超えてから移送された例は手術率52%、24時間以内なら39%(2012年版・米国小児病院データ)。
判断の流れ
拡大して見る ↗2鑑別のながれ
- 初期に下痢・感冒様症状を伴う腹痛→経過が合わない(痛みが間欠、腹部膨満、血便)→急性胃腸炎(本症を否定できない)
- 腹痛と不機嫌→浣腸で痛みが完全に消えるか→便秘(反応便に血が混じれば腸重積を疑う)
- 年長児の腹痛のみの訴え→エコーで両方確認(当直帯は撮れない)→急性虫垂炎
- 理由なく泣いてばかり・寝てばかりの乳児→保護者の直感を初期症状として扱う→腸重積の初期像
- 年長児(5歳以上)の腹痛・2回以上の再発→整復時のエコーで先進部を積極的に検索→病的先進部(Meckel憩室・悪性リンパ腫など。5歳以上は先進部の頻度が約60%に上がる)
3診断基準(疑診・確診)
| 疑診 | A項目2つ、A1つ+B1つ、B3つ以上。**腹痛/不機嫌が間欠的ならそれだけで疑診** | 搬送の起点にできる |
|---|---|---|
| 確診 | 疑診+C項目(画像の特徴的所見) | 当直帯は超音波が無く到達できない。送り先で確定する |
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4検査
- 超音波が第一選択(推奨度A、感度85〜100%・特異度88〜100%)だが当直帯は当てられない
- 腹部単純X線(推奨度B)は診断ではなく、遊離ガス(穿孔)と小腸閉塞像の確認のために撮る。夜間も撮れる
- 注腸造影・CTは送り先での検査
- 遊離ガスがあれば整復の絶対禁忌
5帰宅・入院の目安
- 搬送・紹介ショック状態で急速輸液に反応しない、または腹膜刺激症状・遊離ガス(整復せず外科のある施設へ)、全身状態不良・顔面蒼白・ぐったりして不活発は腸管壊死を疑う所見。整復を試みず緊急移送、間欠的な啼泣+嘔吐(3か月〜2歳)だけで疑診が成立する時点で整復可能施設へ電話する、発症48時間以上、特に発熱・6か月未満は穿孔リスクが高い群として重症側に倒し直ちに搬送する、年長発症・2回以上の再発は小児外科へ紹介する(病的先進部の検索が必要)
6診療中の疑問と回答
- 診察中は笑っている。間欠的啼泣でも帰してよい?
- 発作間欠期に元気でも腸重積は否定できない。急な泣き方、蒼白、嘔吐、反応低下の時間経過を聞き、腹部所見と全身状態を評価する。血便や腫瘤の出現を待たず疑いで動く。当院の当直帯は確診できないため、超音波・整復可能な施設へ相談する。
根拠:RCH 腸重積(海外小児指針) - 下痢もあるので胃腸炎として経口補水を続ける?
- 初期の腸重積は下痢を伴い胃腸炎に見えることがある。間欠的疼痛、蒼白、繰り返す嘔吐、眠り込みがあれば再評価する。疑いが高ければ飲食を止め、輸液・鎮痛と搬送調整を行う。便の性状だけで診断せず、症状のパターンを重視する。
根拠:RCH 腸重積(海外小児指針) - 整復後に同じ症状が戻った。処方薬を飲んで待てる?
- 再発を考え、整復した施設へ速やかに連絡する。痛みや嘔吐を薬で抑えて様子を見ず、再評価と必要な超音波・処置につなぐ。持続痛、発熱、腹膜刺激、循環不良があれば穿孔なども考え救急対応する。退院時に家族が連絡先と再受診の方法を理解しているか確認する。
根拠:RCH 腸重積(海外小児指針)
- 血便が無ければ違うと言える?
- 言えない。発症12時間以内に自然に血便を出すことはまれ。血便を待たない。
- 痛くない時間に診たら元気そうだった。違うと考えていい?
- 考えない。間欠期はケロッとしている。これが典型的な見逃し方。
- 整復は当院でする?
- しない。確診の手段が無く、不成功時に開腹できないため、疑診の時点で整復可能施設へ搬送する。
- 整復後に自宅で同じ泣き方が戻ったら?
- 再発は約10%、その1/3は最初の48時間に起きる。当直帯は確認手段が無いため、整復した施設に戻す。
8家族への説明
腸の一部が隣の腸にもぐり込んでしまう病気です。早く見つけて元に戻せば手術は要らないことが多く、時間が経つほど手術が必要になります。お腹の痛みが波のように来て、その合間は機嫌がよい — これがこの病気の出方です。元に戻したあとも、10人に1人くらいは繰り返します。帰宅後に同じ泣き方が戻ったら、すぐ来てください。
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