3-11 嵌頓鼠径ヘルニア

緊急

3-11嵌頓鼠径ヘルニア

病態・根拠
このページの目次7項目

1戻らない膨隆が意味すること

鼠径ヘルニアでは腹腔内臓器が鼠径部へ脱出する。普段は柔らかく、泣いた時に増えて安静時に小さくなる膨隆でも、内容がはまり込むと戻らなくなり、静脈うっ血から血流障害へ進み得る。痛い・硬い・触ると強く嫌がる膨隆と嘔吐は、単なる一過性の腫れと区別する。[1][2]

発赤や青灰色の変色、腹部膨満、胆汁性嘔吐、全身不良は重症化を疑う。発熱がないことや、泣き止む時間があることだけでは除外できない。鼠径部だけでなく腹部と両側の陰嚢・外陰部を確認し、急性陰嚢症では精巣捻転も同時に考える。[1][2]

2診断確認のために時間を失わない

嵌頓ヘルニアと精巣捻転は外科評価を急ぐ病態である。超音波は必要に応じて専門側で使うが、検査を済ませてから紹介する条件にはしない。特に当院は夜間超音波と外科がないため、疑いの段階で小児外科対応施設に連絡し、画像を翌朝まで待たない。[1](当院運用)

当院では徒手還納を行わない運用を維持する。強く押して戻すことを家族にも勧めず、絶飲食、鎮痛、循環と脱水の評価を行って搬送につなぐ。還納の可否と方法は、腸管の状態を評価し、失敗時や壊死時の処置が可能な専門側で判断する。[1][2](当院運用)

診察時に膨隆が消えていても病気が消失したとは限らない。発症時の写真や左右・持続時間・嘔吐を記録し、小児外科紹介を継続する。痛みのない還納性ヘルニアも将来の嵌頓を防ぐ治療計画が必要で、自然に治る臍ヘルニアと同じ説明にしない。家族には「硬く痛くなり戻らない、吐く、色が変わる時はすぐ救急受診」と具体的に伝える。[1][2]

3出典

  1. 海外・RCH:Acute scrotal pain or swelling(本文確認:2026-10-23)
  2. 海外・RCH Kids Health Info:Inguinal hernia(本文確認:2026-10-23)

海外資料の薬剤・処置は国内の承認・院内採用を意味しない。本文の施設条件を前提に適用する。

4臨床医が迷う場面

5鼠径部の腫れが硬いが痛みは弱い。外来予約でよい?

乳児では強い痛みを訴えないことがある。戻らない腫瘤、嘔吐、腹部膨満、皮膚変色と全身状態を確認し、嵌頓を疑えば緊急外科評価へつなぐ。当院では用手整復を試みず搬送する方針で、痛みの強さだけを待機の理由にしない。

根拠:RCH Acute scrotal pain or swelling

6超音波を撮ってから搬送を決める?

嵌頓や精巣捻転が疑わしければ診断画像のために外科評価を遅らせない。絶食と鎮痛、必要な補液を行い、受入先へ発症時刻、嘔吐、皮膚色、循環を伝える。院内で検査ができないことを理由に翌日へ延期しない。

根拠:RCH Acute scrotal pain or swelling

7移動中に腫れが戻ったら受診を中止できる?

自然に戻ったようでも嵌頓後の損傷や再発があり得る。疼痛・嘔吐が残るかを評価し、外科への相談を継続する。当院の方針では整復後もその場で小児外科へ紹介し、反復する腫脹を家庭だけで戻し続けさせない。

根拠:RCH Acute scrotal pain or swelling

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