7-2眼外傷・化学眼外傷(洗眼が最優先)
化学物質・打撲・穿孔・異物
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- 化学物質が目に入ったら、問診より洗眼が先。眼を開けたまま流水で10分以上、症状(異物感・充血)が続くなら洗浄を続ける。
- 化学物質が眼に接触している時間が長いほど障害は重症になる。アルカリは眼の内部にまで及ぶことがある。
- 眼球破裂・穿孔を疑ったら押さえない・洗わない・異物を抜かない。硬いもので両目とも覆って搬送する。
- 打撲で外見上の異常なし・視力良好でも、後から緑内障・白内障・網膜剥離が出ることがある。
2鑑別のながれ
- 洗剤・漂白剤・石灰・セメント→アルカリ性→最も重症化しやすい。粉末は乾いたまま払ってから洗う
- 瞳孔変形・前房消失・眼内容の脱出→強い視力低下→眼球破裂・穿孔(押さえない・洗わない)
- 前房に血液の水平面→打撲後→前房出血
- 複視・眼球運動制限・眼球陥凹→鼻をかんで腫れた→眼窩壁骨折
- 眼球運動制限+嘔気・嘔吐→外見上の腫脹が軽度でも・視力が保たれていても→眼窩壁骨折(外眼筋絞扼)を疑い専門機関へ。today扱いにしない
- 乳幼児の説明のつかない眼外傷→受傷機転の説明が所見と合わない→虐待を疑う
- 白色瞳孔に気づいた→外傷とは無関係に瞳が白く見える→網膜芽細胞腫を疑う
3処置・処方例
Rp. 1オキシブプロカイン塩酸塩点眼液(ベノキシールなど) 1回2滴 点眼
↑ このページの入口へ洗眼・結膜異物の除去前に点眼麻酔として使う。痛みが強ければ適宜追加する。角膜上皮の治癒を妨げるため院内での使用に限り、持ち帰り処方はしない。採用品で確認する。
- 点眼前に局所麻酔薬アレルギーの有無を聞く
- 患眼に1回2滴点眼する。効果が乏しければ適宜追加する
- 麻酔が効いたら開瞼器(または介助者の指)で開瞼し、洗眼・異物確認に進む
4化学眼外傷の洗眼
- 電話の時点でその場で洗い始めてもらう。流水で10分以上。
- 来院直後は問診より先に洗眼。何が入ったかは洗いながら聞く。
- 点眼麻酔(オキシブプロカイン点眼液を1回2滴)ののち、開瞼器(または介助者の指)で開ける。
- コンタクトレンズを装用していれば直ちに外す(洗浄前・洗浄中いずれで気づいても)。
- 輸液ライン(生理食塩水)に点滴セットをつなぎ、患側眼にかけ流しながら持続洗浄する。眼を上下左右に動かしてもらいながらまんべんなく。上下の結膜嚢(フォルニクス)を翻転して洗う。固形物・粉末は用手的に除去する。
- 洗眼後は結膜嚢のpHを確認し、中性に戻るまで繰り返す(洗浄量の目安:通常1〜4L程度)。専用のpH試験紙がなければ検尿(定性)試験紙のpH部分を切り取り(角も切って丸める)結膜嚢に当てて代用できる。
- pH試験紙が無ければ、十分量(1〜2L以上)の洗浄後、症状(異物感・充血)の改善を終点の目安とする。
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- 眼球破裂・穿孔を疑ったら洗わない・押さえない・異物を抜かない
- 粉末(石灰・セメント)は乾いたまま払ってから洗う
5帰宅・入院の目安
- 帰宅表層の結膜異物は点眼麻酔下で綿棒等による除去を当院で試みる、打撲で視力良好・所見なしでも翌日に眼科(その場で「大丈夫」と言い切らない)。ただし眼球運動制限や嘔気・嘔吐があれば眼窩壁骨折(外眼筋絞扼)を疑い、today扱いにせず専門機関へ
- 搬送・紹介化学眼外傷:洗眼を当院で最優先に行い、そのうえでただちに眼科へ、眼球破裂・穿孔/前房出血・視力低下/眼窩壁骨折/角膜混濁・結膜虚血:持てない
6診療中の疑問と回答
- 化学物質が入った。成分を調べてから洗眼を始める?
- 洗眼を遅らせない。可能なら並行して製品名を確認し、流水や使用可能な洗浄液で早く洗い流す。医療機関では結膜嚢内の残留物とpHを確認し、必要な洗浄を続ける。症状が軽くなっても角膜や眼内の障害評価が必要なため、眼科につなぐ。
根拠:RCH 急性眼外傷(海外) / RCH 穿孔性眼外傷(海外) - 点眼麻酔で痛みが消えたので、家でも使わせてよい?
- 痛みの改善は治癒を意味しない。角膜上皮障害の確認と原因除去を行い、点眼麻酔を持ち帰り鎮痛薬として処方しない。反復使用は治癒を妨げ重い障害につながり得る。痛みが続く、視力が落ちる、異物が残る場合は眼科で再評価する。
根拠:RCH 急性眼外傷(海外) / RCH 穿孔性眼外傷(海外) - 打撲後、見た目が正常なら眼科は不要?
- 視力、複視、瞳孔、眼球運動、痛みを確認する。視力低下や運動障害、瞳孔異常、眼内出血が疑われれば緊急眼科評価が必要。穿孔を疑えば眼を押さえず硬いシールドで保護し、検査を無理に進めない。遅れて症状が出たときの再受診も伝える。
根拠:RCH 急性眼外傷(海外) / RCH 穿孔性眼外傷(海外)
- 何分洗えばよいか?
- 流水で10分以上。痛くて開けにくいが、洗い流すことが最優先。症状(異物感・充血)が続くなら洗浄を続ける。
- 眼球破裂を疑ったら洗眼してよいか?
- しない。押さえない・洗わない・異物を抜かない。硬いもので覆って搬送する。
8家族への説明
目に薬品が入ったときは、病院に来る前に、その場で洗ってください。目を開けたまま、水道水を流しながら10分以上です。薬品が目についている時間が長いほど、目の傷は重くなります。痛くて目を開けられないので難しいのですが、それでも洗い流すことがいちばん大事です。特にアルカリ性のもの(漂白剤・洗剤・石灰・セメント・パーマ液)は、目の表面だけでなく目の中まで傷めることがあります。洗ったあとはすぐに眼科です。目を強くぶつけた場合は、見た目が軽くても、あとから緑内障や白内障、網膜の病気が出ることがありますので、眼科で見てもらってください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。