12-18浣腸(手技と禁忌)
便秘での便塊除去・禁忌の急性腹症を見分ける
β版 · 紙面の最終確認 2026-09-28
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次6項目
1ポイント
- 当直で最も多い失敗は「浣腸してはいけない子に浣腸すること」。添付文書の禁忌に「吐気、嘔吐または激しい腹痛等、急性腹症が疑われる患者」が明記されている。
- 腹痛の子に「便秘だろう」で浣腸する前に、腸重積・虫垂炎・軸捻転を外す。浣腸で便が出ても、それは診断にならない。
- 立位での浣腸は禁止。添付文書に「立位の状態での浣腸は危険ですので行わないこと」と明記。左側臥位で行う。
- 挿入の深さは成人5〜6cm、小児3〜6cm、乳児3〜4cm。無理に挿入すると直腸粘膜を損傷する。
- 乳児は慎重投与。患児側の反応を十分に把握できない場合、過量投与に陥りやすい。
2鑑別のながれ
- 腹痛+胆汁性嘔吐→緑色・黄色っぽい嘔吐→腸回転異常症・中腸軸捻転。浣腸しない
- 腹痛+腹膜刺激症状・板状硬→穿孔を疑う所見→穿孔・腹膜炎。禁忌
- 間欠的な啼泣+嘔吐+不機嫌(3か月〜2歳)→当直帯はエコーが無い→腸重積。浣腸せず整復可能施設へ電話を先にする
- 右下腹部痛+発熱→歩行時に響く→虫垂炎。禁忌
- 硬便・排便時痛・便塊の触知→全身状態良好で急性腹症なし→浣腸の適応になりうる
- 鼠径部の膨隆・陰嚢の腫脹→急性の腫脹・圧痛→嵌頓ヘルニア・精巣捻転。浣腸の適応ではない
- 血便を伴う腹痛→下血・血便あり→原因検索が先。浣腸の適応ではない
- 化学療法中など好中球減少がある児→粘膜損傷から菌血症になりうる→原則行わない。主治医に確認してから
- 全身状態不良・ぐったり・脱水→全身衰弱が強い→全身衰弱の強い患者は禁忌
3浣腸の手技(添付文書のとおり)
- 本品をそのまま温湯に入れ、約40℃(体温程度)に温める
- 容器の挿入部を少量の内容液で潤すか、オリブ油・ワセリン等の潤滑剤を塗布する
- 患者を左側臥位にする。立位での浣腸は行わない
- 容器内の空気を追い出す
- 目盛(3・4・5・6cm)を目安に、挿入部を肛門内に緩徐に挿入する。成人5〜6cm、小児3〜6cm、乳児3〜4cm(30mL製剤は3cm以上)
- 浣腸液をゆっくりと直腸内に注入する。小児は1回 —〜—(1〜2mL/kg、院内基準。添付文書上限の150mLを超えない)
- 注入後、挿入部を静かに抜去し、肛門部を脱脂綿等で圧迫する
- 通常3〜10分後、便意が強まってから排便させる
- 患者の状態を観察しながら投与し、異常が認められた場合には直ちに中止する
やってはいけない・落とし穴
- 禁忌の見落とし:腸管内出血・腹腔内炎症、腸管穿孔またはそのおそれ、全身衰弱の強い患者、下部消化管術直後、急性腹症が疑われる患者
- 処置中に顔面蒼白・徐脈・冷汗が出たら迷走神経反射を疑い、臥位・下肢挙上で対応する
- 浣腸後に腹痛が完全に消えたか確認しないまま「便秘だった」と判断してしまう
- 無理な挿入による直腸粘膜損傷・出血(グリセリンが血管内に入り溶血を起こすおそれ)
- 連用による効果減弱。長期連用を避け、1個を1回で使用し残液は廃棄する
- 重篤な心疾患・腸管麻痺・肛門部の炎症や創傷がある児は慎重投与。好中球減少(化学療法中)は原則行わない。いずれも主治医に確認してから
4帰宅・入院の目安
- 帰宅浣腸後に腹痛が完全に消失している、急性腹症を疑う所見がない、排便・症状消失を確認したうえで30分程度の院内観察後に帰宅可
- 搬送・紹介急性腹症を疑う(浣腸しない、原因の評価へ)、腸重積の疑い(当直帯は整復に進めないため整復可能施設へ)、浣腸中の出血・強い痛み(中止し穿孔を疑えば持てない)、重症の硬結便で浣腸が奏効しない(全身麻酔下摘便が必要になりうるため専門施設へ紹介。院内方針院内)
5Q&A
- 浣腸で便が出たら便秘が原因と確定してよい?
- 確定できない。腸重積でも虫垂炎でも浣腸すれば便は出る。腹痛が完全に消えたかを必ず確認する。
- 立位で手早く浣腸してもよい?
- だめ。添付文書に立位での浣腸は危険と明記されている。左側臥位で行う。
- 乳児にも同じ感覚で浣腸してよい?
- 乳児は慎重投与。反応を把握しづらく過量投与に陥りやすい。
6家族への説明
お尻から薬液を入れて、たまった便を出す処置です。横向きに寝た姿勢で行います(立ったままでは危険なので行いません)。3〜10分ほどで便意が強くなります。処置のあと、お腹の痛みが完全になくなったかどうかを必ず確認させてください。便が出ても痛みが残る場合は、便秘以外の原因を考えます。おうちで浣腸を繰り返すと、だんだん効かなくなり薬に頼りがちになるので、続けて使うのは避けてください。処置のあとに強い痛み、出血、顔色が悪い、吐くといったことがあれば、すぐに教えてください。
詳しい根拠・出典は 本文の出典欄を参照。
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