4-20電撃傷(感電・落雷)
見える傷で重症度を判断しない
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- 見える傷で重症度を判断しない。電撃傷では体内を通過する電流により皮膚だけでなく様々な臓器・組織の損傷を起こしうる。
- 高電圧・落雷、意識消失、心電図異常、深部熱傷・筋傷害は専門評価・入院管理を要する。補液は循環と筋傷害、体重・尿量・電解質・腎機能に合わせる。
- 無症状の短い低電圧接触では、必要な評価が正常で外傷・熱傷の入院適応がなければ、院内の観察基準に従い帰宅を検討できる。皮膚の見た目だけで決めない。
2鑑別のながれ
- 心停止・意識障害→落雷・高電圧で起こりうる→心停止(蘇生)
- 赤色尿(ミオグロビン尿)→電撃による筋障害→横紋筋融解(大量輸液が要る)
- 電流の入口と出口が体幹をまたぐ(手→対側の手/手→足)→経路が心臓・脊髄を通過→重篤な深部損傷を想定
- 口唇・口腔の電撃傷(乳幼児がコードを噛んだ)→受傷直後は軽く見えても数日たって痂皮が脱落する→口唇動脈からの遅発性大出血
- 四肢の腫脹・緊満・強い痛み・知覚異常→深部の筋障害と腫脹→コンパートメント症候群(減張切開が要る。持てない)
3検査
- 安全確認(通電が止まっているか)。気道・呼吸・循環
- 心電図/モニターは失神・心症状・高電圧・熱傷等のリスクに応じて判断する。院内の観察方針に従う。
- 外傷として全身を診る(転落・飛ばされ)。頸椎保護
- 電流の入口と出口を探す(手・足・頭・口唇)。体幹をまたぐ経路かを判断
- 深部筋傷害・腎障害を疑う場合は尿・時間尿量を評価する。赤褐色尿だけでミオグロビン尿と確定しない。導尿は必要性を判断する。
- 採血は深部筋傷害や高電圧等のリスクに応じ、CK・電解質・腎機能等を選ぶ。全例一律の採血・導尿を要するわけではない。
- 四肢の腫脹・緊満・知覚を繰り返し確認(コンパートメント)
4処置・処方例
Rp. 1乳酸リンゲル液(高電圧電撃傷・ABLS 2018プロトコル) 4mL/kg/%TBSAの半量を受傷後8時間で投与し、残りの半量を次の16時間で投与する(全年齢) 点滴静注
これは国内熱傷GLが引用する高電圧電撃傷の開始時プロトコルであり、低電圧接触や小児の個別輸液処方を決める式ではない。受入専門医と循環・体重・尿量・腎機能・電解質を見て調整する。
- 総輸液量(mL) = 4 × 体重(kg) × 熱傷面積(%TBSA)。この半量を受傷後8時間で、残りの半量を次の16時間で投与する
- 小児ではこれにグルコースを含む維持液を追加する(具体的な組成・量は院内で定める)
- ミオグロビン尿を疑う赤褐色尿では、尿量・循環・電解質・CK・腎機能を反復評価し、熱傷/集中治療専門医と体重に応じた輸液・尿量目標を決める。年齢で区別されていない75〜100mL/hrの絶対値を小児へ一律適用しない。
- 目標尿量と補液の増減は体重・循環・腎機能・電解質・うっ血を合わせ専門医と決める。尿量の変化だけで機械的に増減しない。
高電圧・深部筋傷害の輸液計画は専門施設と決める。体表の熱傷面積や赤い尿だけで輸液量を固定しない。無症状の低電圧接触へ大量補液の式を転用しない。
↑ このページの入口へ5帰宅・入院の目安
- 帰宅家庭用電源(100V)で瞬間的、意識清明、心電図正常、尿正常な例は、4〜6時間の心電図モニタ観察後、心電図異常・熱傷所見がなければ帰宅可
- 入院深部熱傷・筋傷害、全身症状、必要な観察を外来で安全に行えない場合は入院または専門紹介を検討する。入院したこと自体を一律の輸液適応とはしない。
- 搬送・紹介高電圧・落雷(持てない。輸液しながら搬送)、心電図異常・意識障害(持てない)、ミオグロビン尿・CK著明高値(持てない。血液浄化が要りうる)、コンパートメント症候群(減張切開が要る。持てない)、口唇の電撃傷(乳幼児。持てない。遅発性出血の説明が必須)
6診療中の疑問と回答
- 家庭のコンセントで感電したが元気。全員に入院監視する?
- 電圧、接触時間、電流の経路、意識消失、動悸・胸痛と外傷を確認する。低電圧で無症状かつ診察正常なら外来管理を検討できるが、失神、異常心電図、高電圧、胸を横切る電流などでは心電図・監視と専門相談が必要。見た目の熱傷面積だけで決めない。
根拠:Perth Children’s Hospital Electrical injuries - 皮膚の傷が小さければ深部損傷も軽い?
- 電撃傷では皮膚所見より深い筋損傷が大きいことがある。筋痛・腫脹、運動障害、末梢循環、尿の色を再評価し、横紋筋融解やコンパートメント症候群を疑えば検査・入院へ進む。落下による頭頸部外傷も同時に評価する。
根拠:Perth Children’s Hospital Electrical injuries - 口でコードをかじった熱傷は、止血していれば終了?
- 口唇・口角の電撃傷は後日に出血することがある。気道、摂食、深さを評価し、熱傷・形成外科へ相談する。帰宅時には出血時の圧迫と緊急連絡先を具体的に説明し、創の再評価を設定する。自宅で痂皮をはがさせない。
根拠:Perth Children’s Hospital Electrical injuries / RCH Trauma:電撃熱傷と口唇動脈出血
- 皮膚のやけどが軽ければ帰していい?
- 見える傷では判断しない。電流は体の中を通るため、皮膚は軽くても筋肉・心臓・腎臓が傷んでいることがある。
- 乳幼児がコードを噛んだら?
- 口唇交連部の電撃傷。受傷直後は軽く見えるが、数日たってかさぶたが取れるときに口唇動脈から大出血を起こしうる。家族に必ず伝える。
- 尿が赤いときは?
- ミオグロビン尿を疑う赤褐色尿では、尿量・循環・電解質・CK・腎機能を反復評価し、熱傷/集中治療専門医と体重に応じた輸液・尿量目標を決める。年齢で区別されていない75〜100mL/hrの絶対値を小児へ一律適用しない。
8家族への説明
感電のけがは皮膚の見た目だけでは重さが決まりません。電気の種類、体を通った経路、意識や心臓、筋肉・腎臓への影響を調べます。必要に応じて心電図や血液・尿の検査、点滴、入院を行います。赤い尿が出た場合も、原因と血液検査・尿量に合わせて点滴を調整します。短い家庭用電源への接触で無症状なら、必要な評価と観察の後に帰宅できる場合もあります。乳幼児がコードを噛んだ場合は、数日後に口から大量に出血することがあります。出血したら部位を押さえ、すぐに救急車を呼んでください。
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