12-12心電図(失神・胸痛・動悸・学校心臓検診)
突然死する不整脈を外す・高K血症を拾う・けいれん様失神を分ける
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-01
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次7項目
1ポイント
- 当直で心電図を撮る理由は3つ。①突然死する不整脈を外す ②高カリウム血症を見つける ③『けいれんに見えた失神』を分ける。
- 小児の心電図は年齢で正常が変わる。新生児〜乳児は右室優位でV1の高いR波・右軸偏位・V1〜V3の陰性T波は生理的なことがある。逆に左側胸部誘導(V3〜V6、小学生はV4〜V6)の陰性T波は異常。
- 突然死に直結する所見は決まっている。QT延長・Brugada型・WPW型・3度房室ブロック・多形性/2連発以上/R on Tの心室期外収縮・心室頻拍・明らかな心室肥大・左側胸部誘導の陰性T波。
- 若年者の突然死の家族歴を1問だけ聞く。あれば同じ心電図の意味が変わる。
- 学校心臓検診の紙で「すみやかに精密検診を考慮する心電図所見」に当たれば、当院で止めずに専門施設へ。
2鑑別のながれ
- 失神・前失神→運動中・水中・驚愕での発症、前駆症状なしの突然の意識消失→心原性失神(QT延長・Brugada型・WPW型・房室ブロック・心室肥大)を疑う
- けいれんに見える発作→誘因が立位・痛み・驚きで、発熱を伴わない→convulsive syncope(けいれん様失神)を鑑別に上げる
- 動悸→突然始まり突然終わる→上室頻拍。発作中の記録が取れれば決定的
- 急性腎障害・DKA・横紋筋融解などの背景→テント状T波→P波消失→QRS幅増大→高カリウム血症。心電図変化があればKの値を待たず治療を始める
3検査
- QT延長のスクリーニング:自動計測でQTc0.45秒以上が出たら、自分でII誘導かV5で接線法をあて直す
- 接線法によるQT延長のカットオフ:小学1年(男女とも)0.43秒、中学1年(男女とも)0.44秒、高校1年男子0.44秒・女子0.45秒。他学年はデータがないため上記を参考にする
- WPW型の基準:一般はPR時間0.12秒未満かつQRS幅0.12秒以上かつVAT0.06秒超、小学生はPR時間0.10秒未満かつQRS幅0.10秒以上かつVAT0.05秒超(いずれもI・II・aVL・V4・V5・V6のいずれか)
- Brugada型の基準:右側胸部誘導V1・V2・V3のいずれかでJ点0.2mV以上のST上昇、かつCoved型またはSaddleback型
- 高度ST低下の基準:ST-J降下0.2mV以上でT波が陰性または2相性、陰性部分0.5mV以上(I・II・aVL・aVF・V1〜V6のいずれか、T波はV3〜V6)
- 所見の取り方:失神の状況(立位か運動中か驚愕か水中か)、前駆症状、家族歴、薬剤歴、電解質(K・Ca・Mg)、心雑音、発作中の記録、学校心臓検診の紙の所見名
4対応の注意
避けること・注意:成人の自動診断コメントをそのまま信じない。学校心臓検診の基準は学年で作られており、当直で来る乳幼児にそのまま当てはめない。
5帰宅・入院の目安
- 帰宅典型的な血管迷走神経性失神で心電図が正常
- 入院高カリウム血症の心電図変化(治療開始は当院、透析が要れば持てない)、上室頻拍の発作中(迷走神経刺激による初期対応は当院。停止しなければ速やかに上級医・小児循環器(または119)に連絡する)
- 搬送・紹介心室頻拍・心室細動(119、蘇生は当院で開始)、3度房室ブロック・高度徐脈、Brugada型・QT延長・WPW型、心筋炎を疑う(胸痛がなくても感染後の嘔吐・腹痛、頻脈、循環不全などで疑う)、学校心臓検診の所見のみで症状なし(紹介先を決めて予約する)
6Q&A
- 自動計測のQTcが0.45秒以上ならそのまま異常と判定してよい?
- しない。自動計測法は接線法より約20ミリ秒長く出るため、自分でII誘導かV5で接線法をあて直して判定する。
- 失神があれば必ず心電図を撮る?
- 失神・胸痛・動悸を訴える小児は原則全例で心電図を撮影する運用としている。
- 学校心臓検診で引っかかった子は当院で経過を見てよい?
- 「すみやかに精密検診を考慮する心電図所見」に該当すれば当院で止めず専門施設へ紹介する。
- 学校心臓検診でQT延長を指摘された既往がある子が、失神ではない主訴で受診した。心電図は撮らなくてよい?
- 指摘歴があれば失神の有無によらず心電図を再検する。延長を認めれば循環器専門科へ紹介する(院内方針院内)。
7家族への説明
心電図は、心臓の電気の流れを見る検査です。子どもの心電図は大人とは正常の形が違うので、年齢に合わせて読みます。今日は、急に意識を失ったり突然死につながることのある不整脈がないかを確かめるために撮りました。心電図が正常でも、その時に起きていない不整脈は写りません。動悸や気を失いそうになったときにその場で心電図を撮れると診断がはっきりします。ご家族に若くして急に亡くなった方がいる場合は、必ず教えてください。判断が変わります。
詳しい根拠・出典は 本文の出典欄を参照。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。