4-19溺水
静かに沈む・無理に吐かせない
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- こどもは声を出さず、静かに沈む。保護者の8割以上が「悲鳴や助けを求める声が聞こえなかった」と報告している。「目を離していない」を否定の根拠にしない。
- 3cm以上の深さがあれば、乳幼児は溺れる。浴槽・洗面器・ビニールプールでも起きる。
- 無理に水を吐かせない。胃の内容物で気道が塞がれて窒息する危険がある。
- 年齢で場所が変わる。0〜3歳は浴槽、5歳以上は海や川などの自然水域。中学生以下の水難死者・行方不明者の約57%は河川。
- 当院は院内人工呼吸管理を持たない。呼吸症状があれば早期に上級医・受入先へ相談する。酸素需要や呼吸仕事量の増加、持続する低酸素・意識障害では搬送を急ぐ。軽症の院内観察も監視と悪化時搬送の体制が前提となる。
2鑑別のながれ
- てんかんの既往→入浴中の発作→けいれん発作による溺水
- 原因不明の溺死の家族歴、失神の既往→不整脈を疑う→QT延長症候群等の不整脈
- 受傷機転と状況の不一致、繰り返す事故→虐待・ネグレクトを疑う所見→虐待・ネグレクト
- 飛び込みによる受傷→頸部の外傷機転→頸椎損傷(固定を先に。固定したまま搬送)
3検査
- 水没時間と、救助までにかかった時間(分単位で)
- SpO2の経時的モニタリング
- 胸部X線は呼吸症状・肺傷害の疑いに応じて選ぶ。無症状で意識・バイタル正常の全員に一律に実施せず、画像だけで帰宅可否を決めない。
- 血液ガス、血糖、体温(低体温の評価)
- けいれん・失神が疑われれば心電図
4AEDパッドの選択と貼付
- 身体が濡れているため、パッド装着部付近の皮膚はよく拭いてから貼る
- 乳児および8歳未満の小児には、小児用パッドが利用可能な場合はそれを使用する。小児用パッドがない場合は成人用パッドを使用し、パッドが互いに接触したり重なり合わないように貼り付ける
- 乳児には一般的に前後方向(胸部と背部)のパッド配置が使用される
- 8歳以上は成人用パッドを使用する。パッドに描かれた図に従って配置する
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- 小児用パッドがないことを理由にショックを見送る(成人用パッドを使う方がショックを行わないより良い)
- パッド同士を接触・重複させて貼る
- 濡れた皮膚を拭かずにパッドを貼る(通電不良・皮膚熱傷のおそれ)
- AEDの準備で人工呼吸と胸骨圧迫を含むCPRの開始を遅らせない
5帰宅・入院の目安
- 帰宅受傷時刻を起点に院内方針院内の6〜8時間観察し、無症状、呼吸診察正常、室内気SpO2 95%以上、監護と再受診が確保できる場合に帰宅を検討する。時間だけで決めない。
- 入院軽い呼吸症状があっても、酸素化と呼吸状態が安定し、上級医・受入先と方針を共有し監視と悪化時搬送を確保できる場合に限り院内観察を検討する。、軽度低体温(32℃以上)は毛布・輸液加温等の復温を当院で行う(院内方針院内)
- 搬送・紹介心肺停止・呼吸不全(蘇生後、人工呼吸管理のできる施設へ。持てない)、低酸素脳症を疑う意識障害(持てない)、酸素需要・呼吸仕事量の増加、持続低酸素、呼吸症状の進行では搬送を急ぐ。改善するか数時間待ってから初めて相談するものではない。、深部体温32℃未満(中等度以上の低体温)は当院で持てない。低体温の基準に従い搬送を検討する
6診療中の疑問と回答
- 胸部X線が正常なら観察を短くできる?
- 画像所見だけでは経過を予測できない。受傷時刻から院内方針院内の6〜8時間を目安に、呼吸仕事量、SpO2、意識と肺所見を追う。酸素需要や呼吸苦があれば画像正常でも帰さず、人工呼吸管理を持たない当院では早期に搬送先と相談する。
根拠:RCH Drowning(海外指針・観察は院内方針) - 水を吸ったので抗菌薬を全例に出す?
- 予防的抗菌薬は全例に必要ではない。高度に汚染された水、発熱など感染・敗血症の所見を区別し、必要な場合に培養と薬剤選択を検討する。咳や肺所見は非感染性の肺障害でも生じるため、それだけで抗菌薬の追加・延長を決めない。
根拠:RCH Drowning(海外指針・観察は院内方針) - 泳げる子が突然沈んだ。事故だけで説明してよい?
- 発生前の動悸・失神・けいれん、既往、家族の突然死歴を確認し、必要に応じ心電図を評価する。低酸素が軽いのに意識障害が続く場合は低血糖・低体温・外傷なども再検討する。事故予防の指導と、溺水の原因となった病態の評価を両方行う。
根拠:RCH Drowning(海外指針・観察は院内方針)
- 水を吐かせるべき?
- 無理に吐かせない。胃の内容物で気道が塞がれて窒息する危険がある。
- 症状がなければすぐ帰していい?
- 受傷時刻を起点に院内方針院内の6〜8時間観察し、無症状、呼吸診察正常、室内気SpO2 95%以上、監護と再受診が確保できる場合に帰宅を検討する。時間だけで決めない。
- どのくらいの深さで溺れる?
- 3cm以上の深さがあれば乳幼児は溺れる。浴槽・洗面器・ビニールプールでも起きる。
- AEDを使うときの注意は?
- 体が濡れているため、パッド装着部付近の皮膚をよく拭いてから貼る。
- 誤嚥があれば抗菌薬を始めるべき?
- 浴槽・海水では予防的抗菌薬は不要。汚水誤嚥や感染徴候があれば使用する。
8家族への説明
水を飲んだあとは、その場で元気に見えても、あとから呼吸が悪くなることがあります。今日は呼吸の様子と酸素の値を確認します。無理に水を吐かせないでください。吐いたものがのどに詰まって、かえって危険になります。おうちに帰ってからも、咳が増える・息が速い・ぼんやりする、といった変化があれば、すぐに来てください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。