7-12扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍(深頸部感染)
口蓋垂偏位・開口障害・頸部腫脹
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- まず気道を評価する。喘鳴・無呼吸・流涎があれば刺激せず、気道確保のできる施設へ最優先で連絡する。
- 年齢で疾患が変わる。咽後膿瘍は5歳未満、扁桃周囲膿瘍は思春期以降に多い。
- 咽後膿瘍は「のど」でなく「首」で気づく。頸部腫脹・頸部可動域制限・いびき・流涎のいずれかが97%にある。
- 扁桃周囲膿瘍は口蓋垂偏位と開口障害。急性扁桃炎の経過中にこの2つが新たに出たら疑う。
- 当直帯に造影CTは無い。疑った時点で耳鼻科のある施設へ——盲目的に穿刺・切開しない。
2鑑別のながれ
- 急性扁桃炎の経過中→口蓋垂偏位・開口障害が新たに出現→扁桃周囲膿瘍(膿瘍化)
- 発熱・流涎・前傾姿勢→吸気性喘鳴・急速進行→急性喉頭蓋炎
- 頸部腫脹→造影CTで低吸収域があるが周囲に造影効果を認めない→川崎病
3検査
- 造影CT:膿瘍診断の中心だが当直帯の当院では撮れない。撮れる施設に委ねる。
- 血液培養・血算・CRP:結果待ちで気道の判断を遅らせない。血液培養は抗菌薬投与前に採取し、保管して翌朝提出する(夜間は培養に出せない)。
4処置・処方例
Rp. 1クリンダマイシン+セフォタキシムまたはセフトリアキソン クリンダマイシン30mg/kg/日・分3(8時間毎)+セフォタキシム150mg/kg/日・分3(8時間毎)、またはセフトリアキソン50mg/kg/日を24時間毎に1回 点滴静注(搬送前・経験的、扁桃周囲膿瘍)
気道評価・可能なら血液培養採取のあと、搬送前に開始し絶飲食とする。製剤・希釈は当院の採用品で確認する。
- クリンダマイシン:1日量 —(30mg/kg/日)を8時間毎に分けて静注
- +セフォタキシム:1日量 —(150mg/kg/日)を8時間毎に分けて静注、またはセフトリアキソン:1日量 —(50mg/kg/日)を24時間毎に静注
- 気道確保・搬送の判断を最優先し、抗菌薬の投与で搬送を遅らせない
Rp. 2クリンダマイシン+セフォタキシムまたはセフトリアキソン クリンダマイシン40mg/kg/日・分3(8時間毎)+セフォタキシム150mg/kg/日・分3(8時間毎)、またはセフトリアキソン50mg/kg/日を24時間毎に1回 点滴静注(搬送前・経験的、咽後・傍咽頭・咽頭外側膿瘍)
気道評価・可能なら血液培養採取のあと、搬送前に開始し絶飲食とする。気道閉塞・縦隔炎の懸念があれば切開排膿の要否も含めて耳鼻科へ伝える。製剤・希釈は当院の採用品で確認する。
- クリンダマイシン:1日量 —(40mg/kg/日)を8時間毎に分けて静注
- +セフォタキシム:1日量 —(150mg/kg/日)を8時間毎に分けて静注、またはセフトリアキソン:1日量 —(50mg/kg/日)を24時間毎に静注
- 気道確保・搬送の判断を最優先し、抗菌薬の投与で搬送を遅らせない
避けること・注意:口腔内からの盲目的な穿刺・切開(傍咽頭間隙深部の内頸動脈・総頸静脈・脳神経を損傷しうる)。
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- 搬送・紹介気道が危うい:気道確保のできる施設へ即、限局した蜂窩織炎(気道症状・嚥下障害なし)であっても、当直帯だけで安全に経過を見る体制(再評価の間隔・夜間の耳鼻科搬送先)が整うまでは、耳鼻科のある施設へ相談する、膿瘍を疑う(画像の有無を問わず):切開排膿は耳鼻科、造影CTで否定後も経過が思わしくない:一度否定されていても耳鼻科のある施設へ戻す
6診療中の疑問と回答
- 抗菌薬内服中なのに首を動かさない。さらに数日待てる?
- 内服中でも膿瘍化は否定できない。斜頸、頸部可動域制限、開口障害、くぐもり声、流涎を評価する。嚥下・気道の障害があれば絶飲食とし、耳鼻科・気道管理のできる施設へ早期相談する。当院の当直帯に造影CTがないことを理由に翌朝まで待たない。
根拠:RCH 咽頭痛・深頸部感染(海外) - 口を開けにくいので、押さえて咽頭を詳しく診る?
- 上気道閉塞が疑われる児を無理に押さえたり、咽頭を刺激したりしない。本人の楽な姿勢を保ち、酸素化と呼吸を観察して気道管理の応援を呼ぶ。必要な画像・採血も安全な体制で行い、診断のための処置で閉塞を悪化させない。
根拠:RCH 咽頭痛・深頸部感染(海外) - 抗菌薬で熱が下がれば、膿瘍の処置は不要?
- 解熱だけで感染源が制御できたとはいえない。嚥下、頸部所見、気道、全身状態と画像を合わせて、耳鼻科が排膿の要否を判断する。膿瘍が疑わしいのに薬だけを延長しない。当院では盲目的穿刺・切開を行わず、悪化時は治療反応を待たず搬送する。
根拠:RCH 咽頭痛・深頸部感染(海外)
- 搬送前に抗菌薬を始めるか?
- 搬送前に経験的抗菌薬を開始し、絶飲食とする(気道確保が必要になる可能性があるため)。
- 当院で穿刺・切開を試みてよいか?
- 試みない。傍咽頭間隙深部には内頸動脈・総頸静脈・脳神経があり、盲目的処置は神経・血管損傷のリスクがある。
- 造影CTで膿瘍が否定されたら安心してよいか?
- いいえ。Ring enhancementは絶対条件ではなく、否定後に増悪した実例がある。経過が悪ければ繰り返し評価が要る。
- 前医で抗菌薬が出ているから様子見でよいか?
- いいえ。抗菌薬投与下でも膿瘍化は進む(前医抗菌薬歴64%の実例)。
- 咽後膿瘍は典型的な4徴候(頸部腫脹・頸部可動域制限・いびき・流涎)がなければ否定してよいか?
- いいえ。33例中32例(97%)にこの4徴候のいずれかがあったが、残る1例は生後5か月児で吸気性喘鳴・無呼吸発作のみで発症し挿管後搬送された。典型的な4徴候がなくても否定しない。
8家族への説明
のどの奥や首の深いところに膿がたまっている可能性があります。小さなお子さんでは、のどの痛みより「首を動かさない」「いびきをかく」「よだれが増える」といった形で出ることがあります。膿を出す処置が必要かどうかは、造影CTと専門医の診察で決まります。当院ではその処置ができないので、必要なら耳鼻科のある病院へ移っていただきます。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。