1-17水痘(みずぼうそう)
掻痒を伴う全身性皮疹・紅斑→水疱→痂皮
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- 紅斑→丘疹→水疱→痂皮の各段階が混在する全身性皮疹+掻痒で臨床診断する。原則、検査は不要。
- 重症化リスク(新生児・生後12か月未満・13歳以上・慢性皮膚/肺疾患やステロイド常用・家族内二次発症例・免疫不全)があれば抗ウイルス薬を検討する。
- 皮疹出現後24時間以内の投与開始が効果を得るうえで重要。72時間以降の新規開始は効果が期待しにくい。
- アスピリン(サリチル酸系製剤)は原則禁忌。ライ症候群のリスクがあり、15歳未満の水痘患者には投与しない。
- 意識障害・けいれん・歩行のふらつき(急性小脳失調)、頻呼吸・持続する咳嗽・胸痛(水痘肺炎)、発疹局所の急激な発赤腫脹・解熱後の再発熱(二次性細菌感染)を見逃さない。
2鑑別のながれ
- 全身性皮疹+掻痒→手掌・足底・口腔粘膜(±殿部)が主座で、紅斑→水疱→痂皮の全身性の経時変化・混在にならない→手足口病
- 全身性の発疹→水疱よりびらん・蜜色調の厚い痂皮が主体、発熱を伴わないことが多い→とびひ(伝染性膿痂疹)
- 集簇性の水疱疹→神経支配領域に一致した片側性・集簇性の分布→帯状疱疹
- 既存の湿疹部位への水疱→中央臍窩を伴う水疱が湿疹部位に密集しやすいが、周囲にも広がる。発熱がなくても疑えば当日評価→カポジ水痘様発疹症(単純ヘルペス重複感染)
3重症度
| 軽症 | 重症化リスク因子なし | 外用剤・掻痒対策・解熱を中心とした対症療法。抗ウイルス薬のルーチン投与は必須ではない |
|---|---|---|
| 重症化リスクあり | 新生児・生後12か月未満・13歳以上・慢性皮膚/肺疾患やステロイド常用・家族内二次発症例・免疫不全 | 経口抗ウイルス薬を検討。皮疹出現後24時間以内の開始が望ましい |
| 重症 | 急性小脳失調・肺炎・重症二次感染・意識障害などレッドフラグ該当 | 精査・専門紹介・入院を検討 |
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4検査
- 原則不要。臨床所見(発疹の経時的な性状変化と分布パターン)で診断する。レッドフラグ該当・鑑別困難例・免疫不全児に限り、VZV抗原迅速検査・PCR・血清抗体検査を選択的に検討する
5処置・処方例
Rp. 1フェノール亜鉛華リニメント(カチリ) 体重換算の用量規定なし(外用) 外用
水疱の乾燥を早め、細菌性二次感染を防ぐ目的で患部に塗布する。重症化リスクがない軽症例の対症療法の基本
- 水疱に直接塗布する。回数・部位あたり量の定めはなく、乾燥を早め二次感染を防ぐ目的の外用剤
Rp. 2アセトアミノフェン 1回10〜15mg/kg、6時間以上あけて頓用。1日総量60mg/kgを超えない(1回最大500mg、1日最大1,500mg) 内服
解熱・不快感の緩和に使う対症療法
- シロップ(カロナールシロップ2%=20mg/mL):—〜— を1回
- 細粒(カロナール細粒20%=200mg/g):—〜— を1回
- 坐剤:1回 —〜— に一番近い規格・個数を選ぶ(アンヒバ/アルピニー 50・100・200mg)
- 次は6時間以上あける。1日の合計は — まで
Rp. 3アシクロビル(ゾビラックス顆粒40%/アシクロビルDS80%など) 1回20mg/kg・1日4回 内服
重症化リスクがある場合に検討。皮疹出現後24時間以内の投与開始が望ましい
- 1回 — を1日4回内服。水痘(帯状疱疹と同枠)での1回最高用量は800mgを超えない
- 顆粒40%(ゾビラックス顆粒40%など)・DS80%(アシクロビルDS80%など)で含有量が異なる。採用品の濃度で1回量をgに換算する
Rp. 4バラシクロビル顆粒(バルトレックス顆粒50%など) 1回25mg/kg・1日3回・5日間投与 内服
40kg未満の小児は顆粒製剤を使う(錠は体重40kg以上に限った用法)。乳児は安全性未確立・水痘への保険適用は書籍と添付文書で記載が食い違う(当院は院内現行の添付文書を優先)ため、乳児にはアシクロビルを優先する
- 1回 — を1日3回、5日間内服。1回最高用量1000mgを超えない
- バルトレックス顆粒50%など、含有量は製剤ごとに異なる。採用品の濃度(%表示)で1回量をgに換算する
Rp. 5アシクロビル 1回5mg/kg・1日3回(8時間毎)=15mg/kg/日相当 点滴静注
経口摂取困難・重症例で上位施設と連携する。投与は1時間以上かけ、脱水を助長しないよう十分な水分補給を行う
- 1回 — を1日3回、8時間ごとに1時間以上かけて点滴静注
- 脳炎・髄膜炎や免疫不全での病勢進行例は1回 — まで増量できる
- 投与前後は十分な水分補給を行う(脱水下の急速投与は結晶尿・急性腎障害のリスク)
新生児のIVアシクロビルは小児量と別の用法(1回10mg/kg・1日3回・8時間毎に10日間、上限1回20mg/kg)が添付文書に定められている。新生児の投与設計は新生児科に委ねる。 避けること・注意:アスピリン(サリチル酸系製剤)は原則禁忌(ライ症候群のリスク)。バラシクロビルは乳児(生後12か月未満)で安全性未確立・水痘への保険適用は書籍と添付文書で記載が食い違う(当院は院内現行の添付文書を優先)ため、乳児にはアシクロビルを優先する。重症化リスクのない健常な低年齢児への抗ウイルス薬のルーチン投与、皮疹出現後72時間以降の抗ウイルス薬の新規開始は避ける。
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- 帰宅重症化リスクがなく全身状態が良好なら対症療法で経過観察
- 入院新生児・免疫不全患者の発症、または経口摂取困難で点滴管理が必要な場合
- 搬送・紹介急性小脳失調・肺炎・重症二次感染・意識障害などレッドフラグ該当時、分娩5日前〜産褥2日ごろに母親が水痘を発症した場合の新生児(周産期・新生児科と連携)
7診療中の疑問と回答
- 水痘なら全員に抗ウイルス薬を処方する?
- 健常児の典型的な軽症例では一律投与を必要としない。発疹開始時刻と免疫抑制、慢性皮膚・肺疾患などの重症化リスクで判断する。内服の利益は早期開始ほど大きいが、重症・免疫不全例を発症日数だけで治療対象外にしない。
根拠:CDC 重症水痘リスクと治療 - 抗ウイルス薬の開始が遅れた重症例は経過観察でよい?
- 肺炎、脳炎、出血性病変、内臓病変や免疫不全を疑う場合は入院・静注治療の適否を専門科と判断する。軽症児の早期内服の時間枠を重症例に転用しない。呼吸苦、意識変容、強い皮膚痛や再発熱があれば直ちに再評価する。
根拠:CDC 重症水痘リスクと治療 - 家族に水痘が出たが免疫抑制児は症状が出るまで待つ?
- 曝露時刻、接触状況、罹患・接種歴と免疫抑制の程度を確認し、発症予防の適否を当日主治医へ相談する。生ワクチンや免疫グロブリンの適応・入手は国内条件に従い判断する。発症後は受診前に連絡し、待合での曝露を避ける。
根拠:CDC 重症水痘リスクと治療
- 抗ウイルス薬はいつから始める?
- 皮疹出現後24時間以内の開始が効果を得るうえで重要。72時間以降の新規開始は効果が期待しにくい。
- 軽症の健常児にも抗ウイルス薬を使う?
- ルーチン投与は必須ではない。外用剤・掻痒対策・解熱を中心とした対症療法が基本。
- 登園はいつから?
- すべての発疹が痂皮化するまで出席停止。「熱が下がったら」「一部かさぶたになったら」では判断しない。
9家族への説明
水痘(みずぼうそう)です。発疹は紅斑→水疱→痂皮の順に経過し、通常1週間前後ですべてかさぶたになります。登園・登校は、すべての発疹がかさぶたになるまでお休みです。ぐったりして反応が悪い、まっすぐ歩けない、呼吸が苦しそう、発疹が急に赤く腫れて痛む、水分が摂れない、といった様子があればすぐにご連絡ください。痛み止め・解熱に市販のアスピリンは使わないでください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。