4-3こどもの熱傷(やけど)
面積・深度・気道熱傷の評価
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次10項目
1ポイント
- 小児は成人より早く「輸液が要る側」に入る。熱傷面積が成人で20%TBSA以上、小児では10%TBSA以上で輸液療法を行う。
- 冷やしすぎが小児では危険。長く広範囲を冷却すると低体温をきたし、意識障害や不整脈を起こすことがある。
- 顔面熱傷・閉所空間での火災なら、気道熱傷を疑って身体所見を取る。疑ったら高濃度酸素投与をすぐ開始し、挿管の必要性を検討する。
- 面積は本人の手全体で概算する。指・親指を合わせた掌側全体を約1%。掌だけ、医療者の手では代用しない。
- 境界が明瞭な浸漬熱傷・受傷機転と合わない熱傷では虐待を疑う。
2鑑別のながれ
- 気道熱傷を疑う所見→閉所空間での火災、顔面の熱傷やススの付着、嗄声、呼吸困難、喘鳴、肺雑音、黒色痰、意識障害→気道熱傷(高濃度酸素をすぐ開始、挿管の必要性を検討)
- 電撃傷→体表所見が軽くても深部損傷・不整脈がありうる→心電図評価が必要
- 境界明瞭な浸漬熱傷、受傷機転と所見の不一致→手袋・靴下状の分布→虐待を疑う
3重症度判定(Artzの基準)
| 軽症熱傷 | II度15%TBSA以下/III度2%TBSA以下 | 外来で治療可能 |
|---|---|---|
| 中等度熱傷 | II度15〜30%TBSA/III度10%TBSA以下(顔・手・足を除く) | 一般病院で入院加療 |
| 重症熱傷 | II度30%TBSA以上/III度10%TBSA以上/顔面・手・足のIII度熱傷/気道熱傷合併/軟部組織の損傷や骨折の合併/電撃傷 | 熱傷を扱える施設へ(当院は院内持てない) |
→ 横にスクロールできます
4検査
- 本人の指・親指を合わせた掌側全体を約1%として概算する。掌だけで代用しない
- 小児は成人の9の法則をそのまま使わない。小児では5の法則やLund & Browderの表を用いる(体表面積比率に対応するLund & Browderを院内標準とする方針・院内方針院内)
- 深度と面積を分けて記録する。顔・手・足・会陰・関節にかかるかを明記する(機能予後と転送基準に効く)
- 全周性の熱傷(四肢・体幹を一周)は循環・呼吸を絞める。減張切開が要る=当院で持てない
5処置・処方例
Rp. 1ワセリン(白色ワセリン等の油脂性基剤軟膏) I度熱傷(発赤のみ)は保湿と冷却が対応の基本。保湿は通常ワセリンなどの油脂性基剤軟膏を用いる(医学書・第一選択) 外用
創部痛が強ければステロイド外用薬を併用してもよいが、創治癒遷延・上皮化抑制作用があるため使用は受傷当初の2日間程度にとどめる。採用品で確認
- 発赤のみのI度熱傷に、ワセリンなどの油脂性基剤軟膏を塗布する
- 創部痛が強ければステロイド外用薬を併用してもよいが、使用は受傷当初の2日間程度までにとどめる
Rp. 2非固着性ガーゼ+ワセリン系軟膏、または創傷被覆材(フォーム材・ファイバー材・コロイド材) II度熱傷(水疱形成)は受傷早期、創面を保護し湿潤環境を保つため非固着性ガーゼにワセリンなどの油脂性基剤軟膏を十分量塗布して貼付する(医学書・第一選択) 外用
小範囲で破れておらず緊満感のない水疱は数日間温存する。壊死組織がなく創部に感染がなければ創傷被覆材も良い適応(壊死組織があれば先に除去する)。採用品で確認
- 水疱が破れておらず緊満感がなければ、そのまま数日間温存する
- 非固着性ガーゼにワセリンなどの油脂性基剤軟膏を十分量塗布して創面に貼付し、湿潤環境を保つ
- 壊死組織がなく感染がなければ、フォーム材・ファイバー材・コロイド材などの創傷被覆材に切り替えてもよい(壊死組織があれば先に除去する)
Rp. 3スルファジアジン銀(ゲーベンクリーム) III度熱傷(当院で入院管理する中等度熱傷の範囲)の感染予防目的に使用する(医学書・第一選択) 外用
抗菌作用と壊死組織の自己融解を促進するため広く使用される。壊死組織除去(デブリードマン)が必要になれば転送先へ引き継ぐ。採用品で確認。新生児・低出生体重児には使用しない(サルファ剤はビリルビンとアルブミンの結合を競合し、核黄疸のリスクを高める)
- III度熱傷の創面にスルファジアジン銀クリームを塗布する
- ガーゼ交換のたびに、付着した外用薬を生理食塩水などで洗い流す(シャワーは緑膿菌などの感染を引き起こすことがあるため使わない)
Rp. 4アセトアミノフェン 1回10〜15mg/kg、4〜6時間以上あけて、1日総量60mg/kgかつ1500mgを超えない(1回最大500mg) 内服/坐剤
洗浄・被覆などの創処置の痛みやI度熱傷の創部痛に使う。バイタルサインが変わりやすいため鎮痛(静)薬はできるだけ控えめに
- カロナールシロップ2%なら —〜—、細粒20%なら —〜—、坐剤(アンヒバ・アルピニー)は体重に近い規格を選んで1回分
輸液は熱傷面積が成人20%TBSA以上・小児10%TBSA以上で開始。尿量の目標は成人0.5mL/kg/hr以上、体重30kg以下の小児1.0mL/kg/hr、30kg超は0.5mL/kg/hr。外用薬は院内在庫・皮膚科方針に従う。 避けること・注意:III度熱傷に創傷被覆材で密閉すること(現在のところエビデンスがなく、感染の危険から推奨されない)。bFGF製剤(フィブラストスプレー等)を新鮮熱傷に使うこと(添付文書上、新鮮熱傷には使用せず他の適切な療法を考慮するとされる)。ステロイド外用薬を受傷当初の2日間を超えて使い続けること(創治癒遷延・上皮化抑制作用)。明らかな汚染創でなければ、深達度によらず全身性の予防的抗菌薬を投与すること。新生児・低出生体重児にスルファジアジン銀(ゲーベンクリーム)を使うこと(サルファ剤がビリルビンとアルブミンの結合を競合し核黄疸のリスクを高める)。
↑ このページの入口へ6熱傷の初期冷却
- 衣類が創部に貼り付いていれば無理に剥がさない
- 小範囲なら水道水、広範囲なら浴室のシャワーで、流水を最低5分から30分くらいかける
- 冷却と並行して保温する(冷却は局所、保温は全身。矛盾しない)
- 低体温徴候(顔色不良・震えなど)が出たら早めに切り上げる
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- 小児で長時間・広範囲を冷却する(低体温をきたし意識障害・不整脈のリスク)
- 貼り付いた衣類を無理に剥がす
- 気道熱傷の評価より冷却・面積計算を先にする(ABCを先に)
7帰宅・入院の目安
- 帰宅小範囲のII度で全身状態良好(冷却・被覆・鎮痛。冷やしすぎない。再評価を約束)
- 入院中等度熱傷(Artz基準:II度15〜30%TBSA/III度10%TBSA以下〈顔・手・足を除く〉)は、輸液・疼痛管理・創処置(外用薬・被覆)に限定して当院で入院管理し、壊死組織除去等が必要になれば転送する
- 搬送・紹介気道熱傷の疑い(持てない。酸素を開始して緊急搬送)、Artz基準の重症熱傷(軟部組織の損傷や骨折の合併を含む。持てない)、全周性熱傷(減張切開が要る。持てない)、電撃傷(持てない。不整脈・深部損傷の評価が要る)、小児10%TBSA以上(輸液を開始しつつ搬送を手配)
8診療中の疑問と回答
- 受傷直後は浅そうだった。翌日も同じ処置でよい?
- 熱傷の深さは初期に判定しきれない。色、毛細血管再充満、感覚、疼痛、浸出液を再診で見直す。手・顔・関節・陰部、全周性、深い熱傷は面積が小さくても専門相談する。外用薬を漫然と継続せず、治癒の進みと機能障害リスクで方針を調整する。
根拠:RCH Burns - acute management(海外指針) - 輸液を始めたが尿が少ない。計算量をそのまま続ける?
- 面積計算は開始の目安であり、尿量・循環・体重と実投与量で調整する。低尿量では熱傷面積、脱水、尿路と循環を再評価し、浮腫や呼吸状態も観察する。輸液を際限なく追加せず、広範囲熱傷は早期から小児熱傷に対応する施設と管理を相談する。
根拠:RCH Burns - acute management(海外指針) - 冷却して痛みが減った。ずっと水をかけてよい?
- 冷却中も深部体温・震え・反応を確認する。小児や広範囲熱傷では創を冷やす一方、他部位を保温し、低体温を起こす長時間冷却を避ける。氷を直接当てない。鎮痛後にも循環障害や気道熱傷の所見を再評価し、痛みの軽減だけで帰宅を決めない。
根拠:RCH Burns - acute management(海外指針)
- やけどはどのくらい冷やす?
- 最低5分から30分くらいを、できれば流水で。小児は長く広範囲だと低体温になりうるので冷やしすぎない。
- 面積はどう測る?
- 本人の指・親指を合わせた掌側全体を約1%とする概算。掌だけ、保護者や医療者の手では代用しない。
10家族への説明
やけどは、見た目の広さと深さで治療が変わります。冷やすことは大事ですが、小さなお子さんを長時間・広い範囲で冷やすと体温が下がりすぎて危険です。当院では手術が必要なやけどの処置ができないので、必要と判断したら、できる病院にお願いします。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。