12-6 血液ガス検査

緊急

12-6血液ガス検査

静脈血ガス・DKA・アニオンギャップ・敗血症性ショック
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30

日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。

このページの目次9項目

ページ内目次

1ポイント

2鑑別のながれ

3DKAの重症度(ISPAD 2022)

軽症pH<7.3 または HCO3⁻<18mmol/LDKAは軽症でも初期輸液・K評価と専門施設への即時相談を並行。当院は院内インスリン持続投与を行わず速やかに搬送する方針のため、日勤まで待機する経路にしない。搬送遅延時の管理は専門医の個別指示を受ける
中等症pH<7.2 または HCO3⁻<10mmol/L軽症と同じ。意識障害・循環不全があれば直ちに搬送する
重症pH<7.1 または HCO3⁻<5mmol/L重度アシドーシスとして直ちに搬送する。搬送準備の間に輸液・カリウム補正を開始する

4計算・スコア

計算

血液ガスの読み(代償とアニオンギャップ)

mmHg
mEq/L

アニオンギャップ(任意)

mEq/L
mEq/L

値を入れると判定します

    静脈血は動脈血の代用になる項目とならない項目がある。pH(静脈は平均0.033低い)とHCO3⁻(静脈は平均1mEq/L高い)はばらつきが狭く代用に適するが、PCO2は静脈血単独での代用は困難(静脈PCO2 55mmHgのとき動脈は44.3〜57.4mmHgの幅)。呼吸性の異常が疑われる場面(細気管支炎の疲弊によるCO2貯留、喘息重積)は、経時的なトレンドと臨床所見(努力呼吸・意識レベル・SpO2)と組み合わせて判断する。

    いつ使う

    代謝性の酸塩基平衡異常(脱水・DKA・敗血症の乳酸評価など)はpHとHCO3⁻が動脈血とよく相関するため静脈血ガスを積極的に使ってよい。呼吸性の異常は静脈血だけでの代用が難しい。

    落とし穴
    • 新生児・低月齢乳児は腎での重炭酸再吸収閾値が生理的に低く、HCO3⁻がやや低め(軽度の代謝性アシドーシス寄り)に振れやすい。この年齢層は哺乳・活気・体重増加とあわせて評価する
    • AGの基準値は施設依存。一般に12とすることが多いが、本邦のようにClをイオン選択電極法で測定する場合は10程度と低くなる。古典的な基準範囲として12±4(8〜16)を挙げる教科書もある
    • 呼吸性代償の予測よりPaCO2が高ければ代償不全=疲弊・呼吸障害の合併を疑う。数字が「代償されている」ように見えても臨床像を見る
    次の一手

    AGが開大していれば高AG性の鑑別へ、正常AG(高Cl性)なら別の鑑別へ(本シート§3)。乳酸は正常なら動脈も正常域とみなせるが、上昇時は動静脈差が拡大する(高乳酸血症で1.06±1.30mmol/L)ため幅を持たせて解釈する。

    出典

    動静脈同時採血のメタ解析(本シート§2-1)/基準値は成書的な代表値(§2-2)/代償の予測式と酸血症の閾値は§2-3。URLは本シート詳細リファレンス参照。

    計算

    初期輸液・ボーラス量(場面別)

    kg

    場面

    この道具の目的は量を出すことではなく、場面を取り違えないこと。同じ「初期輸液」でも 10mL/kg と 20mL/kg が場面によって使い分けられており、量そのものよりどの場面かの判断が先にある。とくにショックでないDKAに 20mL/kg を急速投与すると脳浮腫のリスクを上げる。実施は院内プロトコルに従い、医師が判断する。

    いつ使う

    体重と場面を選ぶと、正本が挙げている初期輸液の量と投与時間が出る。「ショックなら20mL/kg」と丸暗記していると、DKA・アナフィラキシーで量も時間も変わることを見落とす。

    落とし穴
    • 10mL/kg と 20mL/kg は矛盾ではなく場面の違い。どちらか一方を既定値として覚えない
    • 敗血症性ショックでは J-SSCG2024 が10〜20mL/kg ずつ反復し、反応を評価する形をとる。1回で決め打ちにせず、輸液過剰の所見や反応の鈍化があれば中断を検討する
    • アナフィラキシーのガイドラインは成人量(総量1〜2L)が先に目に入る書きぶりになっている。「1〜2L」は成人の総量目安で、小児にそのまま当てはめない
    • 胃腸炎で使う「下痢1回ごとに10mL/kg追加(上限240mL/回)」は経口の追加量であって、ここでいう静脈内ボーラスとは別物
    • 維持輸液(Holliday-Segar)とボーラスは別の話。ボーラス後の維持は別に計算する
    出典

    ショック時20mL/kg=本サイト「経口補水・外来輸液」「血液ガスの読み方」。敗血症性ショック10〜20mL/kgずつ反復=J-SSCG2024 小児章。アナフィラキシー小児10mL/kg=日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン2022(図12ステップ8・p19、「4 症状別の治療/補液」p24)。DKA=ISPAD 2022 および 日本糖尿病学会・日本小児内分泌学会 2024コンセンサスガイドライン第9章。ショックでない重症発熱性疾患にルーチンのボーラスを行わない、および最初の1時間の合計上限(40〜60mL/kg)=JRC蘇生ガイドライン2020 第3章 p.200-201「8 ショック」(原文PDFで直接確認・2026-09-13)。いずれも本サイトの該当シートに一次出典のURLを載せている。

    5検査

    6処置・処方例

    Rp. 1生理食塩水(0.9%) 20mL/kgをボーラス投与し、必要なら反復する。合計40mL/kgに達しても改善しなければイノトロープを検討し、上級医コール・搬送を前倒しする 静注(急速投与)
    DKAでショック徴候(意識障害・重度アシドーシス・循環不全)があれば直ちに開始し、同時に受け入れ先へ連絡する(インスリン持続静注は当院で開始しない、院内方針院内)。上限なく反復しない
    1. 体重ぶんの生理食塩水(0.9%)—を準備する
    2. 急速に静注(ボーラス)する
    3. 反応が乏しければ反復投与するが、合計 —(40mL/kg)に達しても改善しなければイノトロープを検討し、上級医コール・搬送を前倒しする
    Rp. 2生理食塩水(0.9%) 10mL/kgを30〜60分かけて投与する 点滴静注
    低張液による脳浮腫リスクに留意する。重炭酸は投与しない
    1. 体重ぶんの生理食塩水(0.9%)—を準備する
    2. 30〜60分かけて点滴投与する
    Rp. 3塩化カリウム(KCl) 血清K<5.5mEq/Lで開始し、輸液に10〜40mEq/Lの濃度で添加する 点滴(輸液に添加)
    初期輸液後に排尿・腎機能正常を確認してから開始する。急速投与による高カリウム血症に注意する
    1. 血清カリウム値を確認する(5.5mEq/L未満で補充を開始する)
    2. 輸液に塩化カリウムを10〜40mEq/Lの濃度で添加する
    DKA全般の注意:脳損傷徴候(頭痛・不穏・傾眠等)に注意しながら管理する。輸液速度・低張液(脳浮腫リスク)に厳重注意する。 避けること・注意:DKAでは重炭酸投与を原則行わない(脳浮腫リスクの観点から)。

    7血液ガスの採り方(新生児・乳児は毛細血管血)

    1. 穿刺部位(踵底部の左右側面。踵骨は避ける)をアルコール綿で消毒する
    2. 足を固定し、23G針またはランセットで皮膚に対して斜めに深さ3〜5mmほど穿刺する
    3. 組織液の混入を避けるため、最初の一滴は滅菌ガーゼで拭き取る
    4. 穿刺部位周辺を軽く搾るように血液を出し、キャピラリー(毛細管)で吸引する
    5. 採血が終わったら圧迫止血し、滅菌ガーゼで足をくるむ
    6. 採取後はすぐに専用キャップをして気泡の混入を防ぐ(気泡が入るとPaO2は実際より高く、PaCO2は実際より低く出る)
    7. 分析までに時間がかかる場合はシリンジを氷冷保存する(3時間程度まで保存可能)
    やってはいけない・落とし穴
    • 踵骨まで穿刺すると骨髄炎を起こす可能性がある。踵底部の側面を選ぶ
    • 穿刺部周囲の皮膚色が蒼白にならないよう、圧迫解除はしっかり行う
    • 血液が出にくいときはアルコール綿で穿刺部を拭き取ってみる

    8Q&A

    静脈血ガスで動脈血の代わりになる?
    代謝評価(pH・HCO3⁻)は代用できる。ただしPCO2は動静脈差のばらつきが大きく、単独で呼吸不全の有無を判断しない。
    脱水+アシドーシス=胃腸炎で片付けていい?
    片付けない。AGを計算せずに『脱水+アシドーシス=胃腸炎』とすると、初発DKAを見逃す。
    DKAに重炭酸は使う?
    使わない。脳浮腫リスクの観点から原則投与しない。
    DKAはいつ搬送する?
    DKAは軽症でも初期輸液・K評価と専門施設への即時相談を並行。当院は院内インスリン持続投与を行わず速やかに搬送する方針のため、日勤まで待機する経路にしない。搬送遅延時の管理は専門医の個別指示を受ける

    9家族への説明

    血液の中の酸性・アルカリ性のバランスと、脱水や呼吸の状態を数字で確認する検査です。多くの場合、点滴の針を刺すのと同じ静脈からの採血で確認できます。動脈からの採血(痛みが強い検査)が必ず必要というわけではありません。

    詳しい根拠・出典は 詳細リファレンス へ

    一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。

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