2-17喘息の長期管理(発作ではない相談)
治療ステップの確認・専門医紹介の目安
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- 最初の分岐は「今夜は発作か、長期管理の相談か」。喘鳴・陥没呼吸などがあれば喘息の発作のワークフローへ切り替える。
- 長期管理は5歳以下/6〜15歳で分かれた治療ステップ1〜4の段階治療(JPGL2023)。当院は院内新規に組み立てる場ではない。
- ステップ3以降でコントロール困難な場合は専門医と連携した治療を検討する対象。
- 運動時にだけ急に出る吸気性喘鳴は喘息と別の運動誘発性喉頭閉塞症(EILO)のことがある。喘息治療の強化だけでは改善しない。
- 生物学的製剤は治療ステップ4の選択肢として位置づけが上がっているが当院では扱わない。
2鑑別のながれ
- 運動時の呼気性喘鳴・咳嗽・呼吸困難→臨床的に喘息と診断されていない者にも起こる→運動誘発気管支収縮(EIB)
- 運動中の急な吸気性喘鳴→喉を最強点とする吸気性で、いつもの発作止めが効きにくい→運動誘発性喉頭閉塞症(EILO)
- 喘息治療に反応しないコントロール不良→ストレス・刺激物・胃酸逆流・後鼻漏が誘因→誘発性喉頭閉塞症(ILO、旧VCD)
- 「重症喘息」に見える→アドヒアランス不良・吸入手技不良・増悪因子未対応→治療失敗(生物学的製剤の前に基本を確認)
3検査
- 現在の治療ステップと薬剤を確認する(本人・お薬手帳・個別対応プラン)
- コントロール状態(症状頻度・夜間症状・生活制限)を聞く
- 服薬・吸入アドヒアランスと吸入手技を確認する(可能ならデバイスを実際に使ってもらう)
- 過去の急性増悪での入院・ICU歴、経口ステロイド使用頻度を聞く
- 増悪因子(アレルゲン・感染・運動・受動喫煙)を確認する
- 呼吸機能(スパイロメトリー・呼気NO)はJPGL2023が評価項目に挙げるが、当直で測れるかは当院の体制次第
4対応の注意
避けること・注意:この場での長期管理薬の新規導入・増量、生物学的製剤の適応判断、安易な生物学的製剤導入前の基本確認省略。
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- 帰宅コントロール良好で、確認事項の申し送りだけで足りる(かかりつけの次回受診へ)
- 搬送・紹介治療ステップ3以降でコントロール不良(数日以内)、生物学的製剤の適応検討(数日以内)、EILO・ILOを疑う(持続的喉頭内視鏡ができる施設へ・数日以内)、過去に入院を伴う急性増悪の既往があり今回も症状が強い(当日〜数日以内)
6診療中の疑問と回答
- 「最近よく発作止めを使う」だけで長期管理薬を増やす?
- その場で増量せず、日中症状・夜間覚醒・運動制限・発作止めの使用日数と、救急受診や全身性ステロイドの履歴を聞く。薬を実際に持参してもらい、スペーサーを含む吸入手技と残薬・処方間隔を確認する。当院は院内長期薬を調整せず、記録をかかりつけへ送り早めの再評価につなぐ。現在の呼吸苦があれば発作対応へ切り替える。
根拠:RCH:学童の喘息管理(海外指針) / CPS:小児喘息急性増悪(海外指針) - 薬を正しく使っていても咳が続く。次に何を確認する?
- 喘息の診断、鼻炎などの併存症、受動喫煙、アレルゲン曝露を再点検する。吸気時に喉で音がする、運動中だけ急に苦しくなる、吸入への反応が乏しい場合は別の原因も評価する。「重症化」と決めつけて薬を積み重ねず、専門医に検査と治療調整を依頼する。
根拠:RCH:学童の喘息管理(海外指針) / RCH:急性喘息(海外指針) - 症状が消えたら吸入ステロイドを中止してよい?
- 無症状だけでは中止しない。コントロールの持続期間、過去の重症発作、季節性・曝露、家庭での対応力を確認し、かかりつけが最小有効治療を検討する。海外指針は約3か月の良好な状態を減量検討の目安とするが、年齢で中止条件が異なる。当院から一律の休薬指示は出さず、変更後の再診を先に決める。
根拠:RCH:学童の喘息管理(海外指針) / RCH:就学前の喘息管理(海外指針) - 風邪をひいたら普段の吸入ステロイドを倍にする?
- 自己判断で一時的に倍量にしない。小児では短期増量の有効性が明確でなく、反復高用量には有害作用がある。普段の処方と個別の発作時指示を確認し、発作止めで改善しない呼吸苦には受診を促す。長期薬の再設計はかかりつけに依頼し、発作時の薬と予防薬を家族と区別する。
根拠:CPS:小児喘息急性増悪(海外指針) - モンテルカスト開始後に悪夢や性格の変化が出たら?
- 開始日・症状の出現日、睡眠、行動の変化を確認する。国内添付文書には精神症状の報告があり、因果関係は明らかではないが観察が必要とされる。処方医へ速やかに連絡し、休薬・変更の要否を判断する。自傷のおそれなど切迫した症状は当日評価とする。無効なのに漫然と継続せず、この薬を発作止めにも使わない。
根拠:PMDA:モンテルカストチュアブル錠 添付文書 - 紹介状に何を書けば、専門外来で調整しやすい?
- 年齢、薬剤名・規格・デバイス・実使用量、吸入実演の結果、夜間症状・運動制限・発作止めの頻度、全身性ステロイドと救急・入院歴を添える。成長経過と治療継続の障害も共有する。診断不確実、繰り返す増悪や治療不良は、薬を増やす前の専門評価につなぐ。当院の紹介運用として用いる項目である。
根拠:RCH:学童の喘息管理(海外指針) / RCH:就学前の喘息管理(海外指針) / CPS:小児喘息急性増悪(海外指針)
- 発作止めをよく使う子はどうする?
- 頓用薬の頻用は専門医紹介を考えるきっかけのひとつ。この場で薬を増やす判断はしない。
- 運動時だけの喘鳴はいつも喘息の悪化?
- そうとは限らない。運動誘発気管支収縮(EIB)は喘息と診断されていない者にも起こる。いつもの発作止めが効きにくい吸気性喘鳴はEILOを疑う。
- 生物学的製剤は当院で使える?
- 使わない。治療ステップ4の選択肢として位置づけは上がっているが、当院では扱わず専門医療機関の判断に委ねる。
8家族への説明
喘息は発作が起きたときだけでなく、ふだんから気道の炎症を抑える治療(長期管理)を続けることで発作を防ぐことが大切な病気です。今日は発作の状態ではないので、当院で普段のお薬を新しく変えたり増やしたりはしません。今使っているお薬の種類や量、吸入の仕方に迷いがあれば、かかりつけの先生と一緒に確認してください。もし運動したときだけ急にゼーゼー・息苦しさが出て、いつもの発作止めが効きにくいようなら、喘息とは別の原因(のどの反応)のこともあるので、その点もかかりつけで相談してください。夜間、本当に苦しそうなとき(会話ができない、唇の色が悪い、ゼーゼーが急に静かになった)は、ためらわず救急要請してください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。