2-2アレルギー性鼻炎(花粉症)
くしゃみ・鼻漏・鼻閉
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- 典型的な鼻粘膜所見(蒼白・浮腫性・水様性鼻汁)+症状が揃えば、この時点で臨床的にARと判断し治療を開始してよい。
- 一側性・血性/悪臭の鼻漏(特に乳幼児)は鼻腔異物を最優先に疑う。両側性・水様性の典型ARとは所見が異なる。
- いびきの増悪+呼吸が止まって見える+日中の強い眠気は睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の合併を疑う。鼻閉型ARと重なるため見落としやすい。
- 重症度はくしゃみ発作/鼻漏の1日平均回数と鼻閉の程度の2軸で判定する(軽症〜最重症)。
- 鼻閉には鼻噴霧用ステロイド薬が中心的役割。第一世代抗ヒスタミン薬(乳幼児)は中枢移行が大きく原則使用しない。
2鑑別のながれ
- 鼻漏→一側性・血性/悪臭を伴う(特に乳幼児)→鼻腔異物(耳鼻咽喉科紹介)
- 水様性鼻漏→外傷後・術後に持続、前屈で増悪→髄液鼻漏
- いびき・鼻閉→呼吸が止まって見える、日中の強い眠気→睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の合併
- 発熱・顔面痛・膿性鼻汁→眼窩周囲の発赤腫脹・眼球運動障害を伴えば緊急→副鼻腔炎の合併(眼窩内合併症を含む)
- 鼻茸(鼻ポリープ)→小児での鼻茸は頻度が低い→嚢胞性線維症(CF)を含む器質的疾患
- 1歳未満の持続する鼻閉・鼻汁→乳児期から続く。典型的な花粉症の発症時期・経過と合わない→後鼻孔閉鎖など先天奇形を含む器質的疾患。この年齢での安易なAR診断は避ける
- 舌下免疫療法(SLIT)中の内服後→口の中の強いかゆみ・腫れ、息苦しさ、全身のじんましん、ぐったりする様子→アナフィラキシー。じんましんとアナフィラキシーのワークフローへ切り替え、アドレナリン筋注
3重症度分類(くしゃみ発作・鼻漏の1日平均回数×鼻閉の程度)
| 軽症(1+) | くしゃみ発作/鼻漏 1〜5回/日、口呼吸のない鼻閉 | 鼻閉型・充全型は単剤(いずれか)。くしゃみ・鼻漏型は重症度によらず抗ヒスタミン+鼻噴霧ステロイドの二剤が基本 |
|---|---|---|
| 中等症(2+) | 6〜10回/日、時々口呼吸 | くしゃみ・鼻漏型は抗ヒスタミン+鼻噴霧ステロイドの二剤。鼻閉型・充全型は抗LTs+鼻噴霧ステロイド+抗ヒスタミンの三剤へ |
| 重症(3+) | 11〜20回/日、大部分(半日以上)口呼吸 | くしゃみ・鼻漏型は二剤のまま。鼻閉型・充全型は三剤(抗LTs+鼻噴霧ステロイド+抗ヒスタミン) |
| 最重症(4+) | 21回〜/日、一日中口呼吸 | 同上の併用療法。無効なら点鼻用血管収縮薬や経口ステロイドを短期間追加 |
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4検査
- 問診(季節性/通年性、家族歴、アトピー素因、いびき・無呼吸)
- 鼻鏡・鼻腔内視鏡所見(アレルギー性は蒼白・浮腫性・水様性鼻汁、感染性は発赤・膿性鼻汁)
- 典型像が揃えば抗原同定検査は不要。臨床診断が困難・治療抵抗・免疫療法予定の場合のみ鼻汁好酸球検査/皮膚テストまたは特異的IgE/鼻誘発試験の2つ以上の陽性で確定診断
- 39項目一括パネル・副鼻腔X線/CTのルーチン施行は不要
5処置・処方例
Rp. 1フェキソフェナジン(アレグラ等、第2世代抗ヒスタミン薬) 6か月以上2歳未満:30mg/日、2歳以上12歳未満:60mg/日、12歳以上:120mg/日。いずれも分2 内服
くしゃみ・鼻漏型の第一選択の一つ。鼻閉型・充全型では鼻噴霧用ステロイド薬と併用する(採用品で確認)
- 年齢で1日量を選ぶ:6か月以上2歳未満は30mg/日、2歳以上12歳未満は60mg/日、12歳以上は120mg/日
- 1日量を2回に分けてドライシロップまたは錠で内服
- 眠気の少ない第2世代なので学童の日中内服にも使いやすい
Rp. 2レボセチリジン(ザイザル、第2世代抗ヒスタミン薬) 6か月以上1歳未満:1.25mg/日 分1、1歳以上7歳未満:2.5mg/日 分2、7歳以上15歳未満:5mg/日 分2 内服
生後6か月から使えるシロップ製剤。1歳以上15歳未満は朝食後・就寝前の1日2回。成人の1日1回・最大10mg/日を小児に流用しない(採用品で確認)
- 6か月以上1歳未満は1.25mg/日を1回で内服
- 1歳以上7歳未満は2.5mg/日を2回に分けて内服
- 7歳以上15歳未満は1回2.5mg(シロップ0.05%なら5mL)を朝食後・就寝前の1日2回(計5mg/日)
Rp. 3ロラタジン(クラリチン等、第2世代抗ヒスタミン薬) 3歳以上7歳未満:5mg/日、7歳以上:10mg/日。いずれも分1 内服
3歳から使える製剤がある(採用品で確認)
- 3歳以上7歳未満は5mg/日を1回で内服
- 7歳以上は10mg/日を1回で内服
Rp. 4フルチカゾン(小児用フルナーゼ点鼻液25μg、鼻噴霧用ステロイド薬) 各鼻腔に1噴霧(25μg)、1日2回 点鼻
鼻閉型・充全型、中等症以上の中心薬。くしゃみ・鼻漏型でも症状に応じて抗ヒスタミン薬に追加する。5歳未満は臨床試験データがなく、実務上は5歳以上を対象(採用品で確認)
- 使用前に鼻をかんで鼻腔を清潔にする
- 実務上は5歳以上が対象(添付文書上、低出生体重児・新生児・乳児・5歳未満の幼児での臨床試験は未実施)
- 小児用フルナーゼ点鼻液25μgを各鼻腔に1噴霧、1日2回
- 成人用製剤(フルナーゼ点鼻液50μg)は小児では使わない
Rp. 5モメタゾン(ナゾネックス点鼻液、鼻噴霧用ステロイド薬) 12歳未満は各鼻腔に1噴霧を1日1回、12歳以上は各鼻腔に2噴霧を1日1回 点鼻
年齢で噴霧回数が異なる点に注意(採用品で確認)
- 12歳未満は各鼻腔に1噴霧、1日1回
- 12歳以上は各鼻腔に2噴霧、1日1回
Rp. 6プランルカスト(オノン等、抗ロイコトリエン薬) 7〜10mg/kg/日を分2で内服(上限450mg/日=成人量) 内服
鼻閉型・充全型、中等症以上で鼻噴霧用ステロイド薬に追加する。モンテルカストと違いアレルギー性鼻炎にも保険適用がある。体重が大きい児はmg/kg計算値が上限を超えないか必ず確認する(採用品で確認)
- プランルカストドライシロップ10%を1日7〜10mg/kgで、分2にして内服
- 上限450mg/日(成人量)——体重50kg前後になるとmg/kg計算値がこの上限を超えうるので、大きい体重の児では計算値でなく上限を優先する
- モンテルカストの小児用製剤(チュアブル錠・細粒)はアレルギー性鼻炎に適応がないため、この適応では処方しない
避けること・注意:第一世代抗ヒスタミン薬の乳幼児への使用、点鼻用血管収縮薬の連用(2週間程度を超える漫然処方)、経口ステロイド薬の安易な長期使用、原因抗原確定なしでのSLIT導入、モンテルカストの小児用製剤(チュアブル錠・細粒)をアレルギー性鼻炎の適応で処方すること(気管支喘息のみ適応)、SLITは本剤でショックを起こしたことのある患者・重症/コントロール不良の気管支喘息患者には禁忌(導入前に喘息コントロール状態を確認)。
↑ このページの入口へ6紹介の目安
- 搬送・紹介保存的治療(併用療法)に抵抗性、強い鼻閉・嗅覚障害、頻回の鼻出血・持続する膿性鼻汁、頬部痛・頭痛(副鼻腔炎合併疑い)、睡眠時無呼吸(いびき・無呼吸+アデノイド/扁桃肥大所見)、一側性・血性・悪臭を伴う鼻漏(異物・腫瘍の除外)、SLIT導入の適応判断、重症スギ花粉症での抗IgE抗体適応検討
7診療中の疑問と回答
- 抗ヒスタミン薬を飲んでも鼻閉が残る。増量する?
- まず鼻閉優位か、内服できているかを確認する。鼻閉では鼻噴霧用ステロイドを含む病型に応じた治療を検討し、内服薬だけを増量しない。片側性、膿性鼻汁・痛み、強いいびきや無呼吸は他疾患も評価する。初回処方時に次回の症状評価を決め、無効薬を漫然と継続しない。
根拠:日本アレルギー学会誌:鼻アレルギー診療ガイドライン2024解説 / PMDA:ザイザルシロップ0.05% 添付文書(2025年8月改訂) - ザイザルは7歳から1日1回にまとめてよい?
- 国内の小児用法では7歳以上15歳未満は1回2.5mgを朝食後・就寝前の1日2回。成人の1日1回や最大10mg/日を小児へ流用しない。眠気がある、飲み忘れが多い、効果不十分なら処方全体を見直す。腎障害の小児は腎クリアランスと体重で個別調整し、成人用の腎機能別表を機械的に使わない。
根拠:PMDA:ザイザルシロップ0.05% 添付文書(2025年8月改訂) - 点鼻ステロイドを使って鼻血が出る。続ける?
- 噴霧の仕方と鼻粘膜を確認する。鼻中隔潰瘍があれば患部が治癒するまで休薬し、鼻手術・外傷後も治癒前には投与しない。反復出血では継続の可否を診察で判断する。大量出血はその場で対応し、頻回の鼻出血は耳鼻科評価へつなぐ。ナゾネックスは数か月以上使う際の鼻中隔潰瘍などに注意が必要。漫然と噴霧回数を増やさず、長期使用では成長と他のステロイド使用も確認する。
根拠:PMDA:ナゾネックス点鼻液 添付文書 / 日本アレルギー学会誌:鼻アレルギー診療ガイドライン2024解説 - 花粉症が落ち着いたらいつ減らす?
- 花粉への曝露が続く間は症状の再燃も見て判断する。ナゾネックスは好発期直前から抗原接触がなくなるまでが治療の目安で、通年性では改善が持続すれば減量を検討する。全員を同じ月に中止せず、原因抗原と生活環境を確認する。再燃時の再開方法を決め、点鼻血管収縮薬で置き換えて連用しない。
根拠:PMDA:ナゾネックス点鼻液 添付文書 / 日本アレルギー学会誌:鼻アレルギー診療ガイドライン2024解説 - スギ舌下免疫療法を希望。今日から始める?
- 原因抗原を検査で確認し、重症喘息などの禁忌を確認する。シダキュアは花粉飛散期には新規開始しない。十分な経験と緊急対応体制のある処方医のもとで初回投与後30分以上観察する。通常の対症薬と違う治療であり、実施体制のない外来では紹介して導入する。
根拠:PMDA:シダキュア舌下錠 添付文書 - 舌下免疫療法中に風邪や喘息発作。自己判断で続ける?
- 喘息発作中、喘息症状が強い時、急性感染症・体調不良時は服用可否を処方医に確認する。息苦しさ、全身じんましん、強い口腔・咽頭腫脹は服用を中止して緊急評価する。シダキュアは服用前と服用後2時間の激しい運動・入浴等を避ける。初回の花粉期を終えて効果がなければ、継続を慎重に判断する。
根拠:PMDA:シダキュア舌下錠 添付文書
- 典型的な症状ならすぐ薬を出していい?
- よい。典型的な鼻粘膜所見+症状が揃えば、この時点で臨床的にARと判断し治療を開始してよい。
- くしゃみ・鼻漏型と鼻閉型はどう見分ける?
- くしゃみ発作・鼻漏が鼻閉より強ければ「くしゃみ・鼻漏型」、鼻閉が強ければ「鼻閉型」、同程度なら「充全型」。治療は病型で分かれる(くしゃみ・鼻漏型は二剤、鼻閉型・充全型は中等症以上で三剤)。
- 舌下免疫療法(SLIT)はいつから使える?
- スギ花粉症はシダキュア、ダニはミティキュアでいずれも5歳以上が対象。原因抗原の確定診断が前提で、初回投与は院内で少なくとも30分の観察が必要。
- いびきを伴う鼻閉はどう考える?
- 鼻閉型ARと症状が重なるが、いびきの増悪・呼吸が止まって見える・日中の強い眠気があれば睡眠時無呼吸症候群の合併を疑い耳鼻咽喉科へ紹介する。
9家族への説明
アレルギー性鼻炎は感染性の病気ではないので、症状だけを理由に登園・登校を止める必要はありません。鼻づまりが強いときは鼻噴霧用のお薬が中心になります。片方の鼻だけから血の混じった鼻水やにおいの強い鼻水が続くとき、いびきが大きくなって呼吸が止まって見えるとき、熱や顔の痛みを伴う膿のような鼻水が続くときは、いつもの花粉症として様子を見ず受診してください。舌下免疫療法を始めたあとに口の中の強いかゆみ・息苦しさ・全身のじんましんが出たときはただちに受診または救急要請してください。
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