10-19注意欠如・多動症(ADHD)の外来評価
外来で確認する診断基準・検査・行動療法・薬物療法
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次11項目
1ポイント
- 診断:症状項目・生活の支障と、家庭・学校の情報を確認する。
- 検査:WISCは認知・学習、PARS-TRはASDを評価する。
- 治療:行動療法・環境調整を始め、年齢と支障に応じて薬を検討する。
- 運用:医師確認前の下書き。院内の採用・依頼条件は要確認。
2鑑別のながれ
- 寝不足・いびき・日中の眠気→睡眠時間・質を確認→睡眠不足・睡眠障害を評価。介入後も注意症状を再評価する。
- 呼びかけや指示が伝わりにくい→聴覚・視覚・言語理解を確認→感覚器・言語発達の問題を評価する。
- 特定の読み書き・計算で困る→課題別のつまずきを確認→限局性学習症を評価。WISCだけでは判断しない。
- 対人交流の特徴・こだわり・感覚の偏り→幼児期からの経過を確認→ASDの鑑別・併存を評価する。
- 幅広い学習・理解と生活動作で困る→認知水準と適応行動を確認→知的発達症を評価する。
- 急な変化・強い不安・気分低下→いじめ・ストレスと安全を確認→不安・抑うつ・心理社会的負担を評価。ADHDの併存も検討。
- 反応停止・意識の途切れ・退行→発作・発達の変化を確認→神経疾患を疑い、小児神経へ相談する。
3DSM-5に基づく診断基準
| 症状数 | 16歳以下:6項目以上 | 不注意9項目、または多動・衝動性9項目のうち、少なくとも一方で6項目以上。 |
|---|---|---|
| 症状数 | 17歳以上:5項目以上 | 不注意9項目、または多動・衝動性9項目のうち、少なくとも一方で5項目以上。 |
| 持続 | 6か月以上 | 発達水準に不釣り合いな症状。 |
| 発症時期 | 12歳未満 | いくつかの症状が既に存在。診断年齢とは別。 |
| 場面 | 2つ以上 | 家庭・学校などで症状を確認。 |
| 支障 | 生活機能への影響 | 学業・対人関係などの具体的な支障。 |
| 鑑別・併存 | 他の病態も評価 | 他の病態でよりよく説明されないか確認。併存も検討。 |
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診断で確認する18項目(要約)
不注意と多動・衝動性を別々に数える。 両領域の合計で6項目としない。両領域がそれぞれ基準を満たす場合もある。
| 不注意 (9項目) | 多動・衝動性 (9項目) |
|---|---|
| 不注意による見落とし・ミスが多い。 | 手足を動かす、座ったままそわそわする。 |
| 課題や遊びに注意を保ちにくい。 | 座る必要がある場面で席を離れる。 |
| 直接話しかけても、聞いていないように見える。 | 不適切な場面で走り回る・よじ登る。 |
| 指示に沿って課題を最後まで終えにくい。 | 静かに遊びや余暇活動へ参加しにくい。 |
| 課題や活動の段取りを組みにくい。 | じっとしていられず、動き続ける。 |
| 集中を続ける課題を避けたり、取りかかりにくい。 | 話しすぎる。 |
| 課題に必要な物をよくなくす。 | 質問が終わる前に答える、相手の話を先に言う。 |
| 周囲の刺激や無関係な考えに注意がそれやすい。 | 順番を待ちにくい。 |
| 日々の用事や約束を忘れやすい。 | 会話や活動を遮る、割り込む。 |
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- 頻度・程度:一度だけの行動を1項目とせず、頻度・持続期間・発達水準を確認する。
- 年長者:走る・登る症状が、落ち着かなさとして現れる場合がある。
- ほかの条件:6か月以上、12歳未満からの症状、複数場面、生活の支障、鑑別も必要。
- 出典・位置づけ:NIMHの解説に基づく要約。正式な診断基準・評定尺度の代わりではない。面接での確認手順も参照。
症状数の数え方:10歳の例
- 10歳・不注意4+多動・衝動性4:合計8でも、症状数の条件を満たさない。
- 10歳・不注意7:症状数の条件に該当。他の診断条件も確認する。
- 10歳・不注意6+多動・衝動性6:両領域の症状数条件に該当。他の条件も満たせば混合した状態。
4検査
- ADHD-RS:家庭・学校での症状を整理する補助尺度。症状項目の要約も参照。
- WISC-V:認知・学習支援の計画に使う。対象は5歳0か月〜16歳11か月。
- PARS-TR:ASDを疑うとき、養育者面接で特性と支援ニーズを整理する。
- 学習・言語・適応行動:困難の領域に合わせて追加評価する。
- 採血・脳波・MRI:身体・神経疾患を疑う所見がある場合に検討する。
- 院内依頼:採用版・対象年齢・依頼先を確認し、評価の目的を添える。
5投薬前から始める行動療法・環境調整
- 目標:改善したい行動を一つ決め、場面と頻度を記録する。
- 保護者訓練:ペアレントトレーニングで、短い指示と具体的な称賛を練習する。
- 家庭:手順を見える形にし、できた直後に認める。小さく達成できる目標にする。
- 学校・園:課題を区切り、刺激を減らす。目標行動の記録を家庭と共有する。
- 再診:目標行動と生活の支障、支援の実施状況を確認し、方法を調整する。
| 年齢 | 行動・学校の支援 | 薬の検討 |
|---|---|---|
| 4〜5歳 | 保護者訓練・園の行動療法を優先。 | 支障が続くときは専門医へ相談。 |
| 6〜11歳 | 保護者訓練・学校支援を続ける。 | 支障に応じて薬との併用を検討。 |
| 12〜17歳 | 計画・整理の練習と学校支援。 | 本人の納得も確認し、併用を検討。 |
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6歳以上で重い支障があるとき、行動療法の終了を薬の必須条件にしない。6歳未満の処方は専門医・国内適応を確認する。
↑ このページの入口へ6処置・処方例
治療選択肢・同時に処方するセットではない
Rp. 1コンサータ(メチルフェニデート徐放錠) 中枢神経刺激薬・6〜17歳 経口・朝1回徐放錠。割る・砕く・噛む・溶かすことを避ける。
- 開始前:医師・医療機関・薬局と患者の登録、文書同意を確認する。
- 禁忌確認:運動性チックなど、国内添付文書の禁忌を確認する。
- 開始量:18 mgを朝1回。
- 増量:1週間以上あけ、1日量を9 mgまたは18 mgずつ増やす。
- 維持・上限:維持18〜45 mg/日。上限54 mg/日。
- 錠剤:9 mgの調整は錠剤規格を変更する。錠剤を半分にしない。
- 開始後:食欲・睡眠・成長・血圧・脈拍を確認する。
Rp. 2インチュニブ(グアンファシン徐放錠) 非刺激薬・6〜17歳・体重別用量 経口・1日1回
徐放錠。割る・砕く・噛むことを避ける。眠気・低血圧・徐脈・失神に注意。
- 開始前:心電図異常の有無、血圧・脈拍を確認する。
- 開始量:17 kg以上50 kg未満は1 mg/日。50 kg以上は通常2 mg/日。
- 増量:1週間以上あけ、1 mgずつ増やす。
- 維持・上限:体重別の用量表で確認する。
- 例外:CYP3A4/5阻害薬併用・重度肝腎障害では1 mg/日から。
- 用量変更後:1〜2週間後に血圧・脈拍を確認する。
- 用量決定後:4週に1回を目安に血圧・脈拍を測る。
- 中止時:医師の管理下で、原則3日以上あけて1 mgずつ減らす。急に中止しない。
Rp. 3ストラテラ等(アトモキセチン) 非刺激薬・6〜17歳・1日量を2回に分ける 経口・小児は1日2回
悪心・食欲低下・眠気に注意。
- 開始前:体重・肝機能・併用薬を確認し、用量を選ぶ。
- 開始量:0.5 mg/kg/日。1日量を2回に分ける。
- 増量:1週間以上あけ、0.8→1.2 mg/kg/日へ。
- 維持量:1.2〜1.8 mg/kg/日。
- 上限:1.8 mg/kg/日と120 mg/日の少ない方。
- 開始後:気分・自殺念慮、肝障害、血圧・脈拍を確認する。
Rp. 4ビバンセ(リスデキサンフェタミン) 中枢神経刺激薬・6〜17歳の新規開始 経口・朝1回
国内適応年齢と腎機能を確認して選ぶ。
- 開始前:登録・流通管理と覚醒剤原料としての管理を確認する。
- 開始量:30 mgを朝1回。
- 増量:1週間以上あけ、1日量の増加は20 mg以内。
- 上限:70 mg/日。GFR 30 mL/min/1.73 m²未満では50 mg/日。
- 腎障害:透析中・GFR 15 mL/min/1.73 m²未満では、さらに低用量を検討する。
- 開始後:食欲・体重・睡眠・血圧・脈拍・精神症状を確認する。
対象:6〜17歳の新規開始。 1日量と1回量を区別する。増量は効果・副作用を確認して医師が判断する。6歳未満・成人用量は本表の対象外。当院の採用薬・登録体制・処方担当は未確認。詳細と出典は国内の開始・調整用量を確認する。
↑ このページの入口へ7初診から再診までの進め方
- 初診:困りごと・強みと安全を確認。症状項目の具体例と診断条件を評価する。
- 情報収集:同意の下で家庭・学校の情報を集める。症状と具体的な支障を記録する。
- 追加評価:認知・学習にはWISC、ASD疑いにはPARS-TR。目的に応じて選ぶ。
- 再診:診断条件、鑑別・併存、検査結果を統合し、行動支援と薬の要否を決める。
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- 尺度の点数・WISCの指標差・薬への反応だけで診断を確定しない。
- 家庭・学校の回答が違うときは、環境や支援の違いを確認する。
- 診断・検査を待つ間も、家庭・学校の環境調整を始める。
8安全と紹介の目安
- 帰宅安全を確認し、支援・追加評価・再診先と時期を決める。
- 入院自傷・自殺、重い他害、虐待の切迫した危険や急性神経症状は当日対応。入院の要否は担当医が判断する。
- 搬送・紹介診断不明、強い併存症、重い支障、4歳未満、退行・神経所見は発達専門医・児童精神科・小児神経へ相談する。
9診療中の疑問と回答
- 薬が効かないと言われたら、すぐ増量する?
- 家庭と学校のどの時間帯・場面で支障が残るか、服薬できているか、睡眠、併存症と診断を確認する。増量は症状改善だけでなく学習・生活機能と副作用を比較する。適切な試行で効果が乏しければ、処方担当が剤形・薬剤・支援を再検討する。
根拠:NICE NG87 ADHD管理(海外指針・国内用量は別欄) - 食欲低下や体重減少は、効いている証拠として放置できる?
- 成長曲線、食事量、服薬時間、睡眠を確認し、栄養支援や服用法、処方の見直しを検討する。血圧・脈拍も開始前後と増量時に評価する。休薬を選ぶ場合も生活への影響を含め処方医が計画し、家族の判断だけで量を変更しない。
根拠:NICE NG87 ADHD管理(海外指針・国内用量は別欄) - グアンファシン服用中に眠気や立ちくらみが強くなったら?
- 血圧・脈拍、失神や起立時の症状を評価し、強い症状は速やかに処方医へ連絡する。起立性低血圧や失神が続く場合は処方医が減量や変更を検討する。併用薬、脱水、飲み間違いも確認し、症状がある間の活動の安全を確保する。 急な中止を避け、減量・中止は血圧と脈拍を監視しながら添付文書に従って段階的に行う。
根拠:NICE NG87 ADHD管理(海外指針・国内用量は別欄) / PMDA インチュニブ電子添文(減量・中止時の注意)
- WISCとPARSを両方依頼する?
- 全例の必須セットではない。認知・学習とASDの両方を評価する目的があれば、併用を検討する。
- WISCが正常ならADHDではない?
- 否定できない。WISCはADHDの確定・除外検査ではない。
- 診察室で落ち着いていればADHDではない?
- 否定できない。家庭・学校での症状と生活への支障を確認する。
- 院内で心理検査を行っていれば十分?
- 検査に加えて家庭・学校の情報と診察を統合し、鑑別・併存を評価する。結果を具体的な支援につなげる。
- 行動療法をしてから薬を考える?
- 4〜5歳は保護者訓練・園の行動療法を優先する。6歳以上では支援と薬の併用も検討し、重い支障への治療を不必要に遅らせない。
- 保護者に声かけのコツを渡せば十分?
- ペアレントトレーニングは、専門職と練習・振り返りを繰り返す支援。助言用紙を渡すだけで終了せず、家庭・学校の経過を確認する。
11家族への説明
検査は、得意なことと必要な支援を知るために選びます。結果を待つ間も、家と学校でできる工夫を始めます。薬の増減・中止は担当医と相談してください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。