3-4 急性腹痛・嘔吐(外科のない当直で)

緊急

3-4急性腹痛・嘔吐(外科のない当直で)

病態・根拠
このページの目次9項目

1鑑別の考え方:痛みの場所と経過を、病態から読む

小児の急性腹痛では、最初の診察で病名を確定することより、腸管の血流障害、穿孔、捻転など、待つことで治療の機会を失う病態を拾う。痛みの始まった場所、移動、持続性、体動との関係を聞き、腹部を繰り返し診察する。虫垂炎などは時間とともに所見が明瞭になるため、初回に腹膜刺激がないという理由だけでは除外できない。鎮痛は行ってよく、痛みを放置して診断精度を保とうとしない。[1]

2嘔吐の色は、家族と具体的に確認する

胆汁性嘔吐として警戒するのは濃い緑色の吐物である。黄色い胃内容と同じ意味にはしない。写真や色見本があれば確認し、緑色の嘔吐は消化管閉塞を否定できるまで外科的疾患として扱う。下痢のない嘔吐では、胃腸炎以外に尿路感染、DKA、頭蓋内病変、精巣・卵巣捻転も検討する。制吐後に吐かなくなっても、原因となる閉塞や頭蓋内病変が消えた証拠ではない。[2]

3検査は、疑っている病態に合わせる

尿、血糖、血算・炎症反応などは、病歴と診察から候補を絞って選ぶ。正常な炎症反応は発症早期の外科疾患を除外しない。便秘の確認だけを目的とする腹部X線を常用せず、腸閉塞や穿孔を疑う場合の画像とは目的を分ける。思春期では本人のプライバシーに配慮し、妊娠関連病態も評価する。[1]

当直帯に超音波・CTが使えない当院では、画像が必要なほど外科疾患を疑った時点で受入先へ連絡する。検査不能を「異常がなかった」と扱わない。絶食、必要な静脈路・補液、鎮痛を進め、循環不良、腹膜刺激、緑色嘔吐、陰嚢痛、反復する強い発作痛を搬送先へ伝える。[1][2]

4治療後に観察を選ぶなら、終了条件を決める

帰宅は全身状態が良く、緊急原因を十分検討し、経口摂取と再診の体制が整う場合に考える。痛みの持続・増悪、緑色嘔吐、血便、反応低下、新たな陰嚢痛なら予定を待たず再評価する。院内観察では診察時刻、圧痛の変化、嘔吐、摂取・排尿を比較し、「改善しないまま朝まで待つ」状態を作らない。[1][2]

5出典と適用範囲

  • [1] RCH Abdominal pain – acute。小児腹痛の反復診察、検査選択、鎮痛と紹介判断。
  • [2] RCH Vomiting。緑色胆汁性嘔吐、下痢のない嘔吐、制吐後も重症原因を除外しない点。

当直帯に画像を利用できない施設条件へ適用した。個々の手術適応は受入外科が判断する。

6臨床医が迷う場面

7鎮痛薬を使うと診断できなくなるので待つ?

適切な鎮痛は行い、その前後で腹部所見と全身状態を記録する。痛みが減ったことだけで外科疾患を否定しない。胆汁性嘔吐、腹膜刺激、陰嚢痛、間欠的な激痛を先に確認し、疑いがあれば画像待ちで搬送を遅らせない。

根拠:RCH Acute abdominal pain

8下痢があるから胃腸炎として帰してよい?

虫垂炎なども下痢を伴うことがある。持続・局在する痛み、歩行時痛、嘔吐との順序、尿・陰嚢・鼠径部や呼吸器の所見を確認する。年少児では典型像を欠くため、繰り返し診察し、説明できない疼痛や悪化は外科へ相談する。

根拠:RCH Acute abdominal pain

9診断がつかない腹痛を帰宅させる条件は?

全身状態が安定し、痛みの経過が改善し、緊急疾患の懸念が低く、飲水と再診が可能な場合に限って検討する。痛む場所の変化、持続嘔吐、血便、歩けないなどの再受診条件を具体的に伝え、再評価時刻を設定する。観察手段が乏しければ紹介する。

根拠:RCH Acute abdominal pain

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