当院で行う範囲
- 当院では川崎病を疑った時点で小児循環器専門施設へ紹介・搬送相談し、IVIG治療は紹介先で行う。以下の専門施設向けレジメンを当院の実施許可と解釈しない。
- 当直帯に冠動脈評価の心エコー、白血球分画、赤沈は実施できない。検査やリスクスコアの完成を待って紹介を遅らせない。
- 採用情報はベニロン2,500mg/バイアル。院内の実調製容量・運用速度は未確認のため、このページから患者別mL/hやバイアル数の指示は生成しない。
適用から外れる状況・急変時の対応
- 院内で完結する標準入院パスではない
- ショック・心筋炎疑いは緊急対応
- ショック・心不全・不整脈
- 意識変化・多臓器障害
- 必要な心エコー・監視が確保できない
時期ごとの検査・指示
- 疑った時点で、病日と全経過を整理する:初診・紹介相談時
- 初期治療前に、冠動脈と不応リスクを評価する:専門施設到着~治療開始前
- IVIG投与中は、容量負荷と投与反応を追う:IVIG開始~終了
- 投与終了後の反応を、国内基準で判定する:IVIG終了24~36時間後
- 解熱維持を確認して、薬を減らす:解熱から48~72時間以降
- 退院後まで、冠動脈評価を切らさない:退院前~外来
疑った時点で、病日と全経過を整理する
初診・紹介相談時 / 当院
- 症状の時系列
- 発熱開始日、結膜充血、口唇・口腔所見、発疹(BCG痕発赤を含む)、四肢末端所見、頸部リンパ節腫脹を、現在の有無と経過中の出現に分けて記録。発熱5日を待つ運用にしない。 [1]
- 重症所見と紹介
- 血圧・脈拍・末梢循環・意識・呼吸を評価し、ショックや心機能低下を疑うときは緊急搬送を並行する。不全型も紹介の対象とし、主要症状が全部そろうまで待たない。 [1][5]
- 紹介状に添える検査
- 血算・血小板、CRP、Na、AST/ALT、総ビリルビン、アルブミン、腎機能と尿所見を時刻付きで整理。白血球分画・赤沈・尿沈渣など未実施の項目は『未測定』とし、正常扱いしない。 [1][2]
次の段階へ進む条件
- 紹介先・搬送方法が決まり、症状の経過、検査、投薬歴を引き継いだ。
初期治療前に、冠動脈と不応リスクを評価する
専門施設到着~治療開始前 / 専門医管理下
- 心エコーの基準点
- 身長・体重を実測し、冠動脈内径とZスコア、左室機能、僧帽弁逆流、心膜液を記録。初回正常でも川崎病は否定できず、検査手配によって治療を遅らせない。 [5]
- 初期強化療法の検討
- 小林スコア5点以上など、採用する不応予測基準で判断する。低月齢や初診時冠動脈異常も専門医が評価し、低スコアだけで低リスクと決めない。必要データがないスコアは未完成とする。 [2][5]
- 投与前の確認
- 使用するIVIG製剤、計算体重、循環・腎機能、過敏反応歴、説明同意を確認。追加免疫治療が想定される場合は、IVIG後に抗体検査が影響される点を踏まえ、必要な治療前検体を検討する。 [3][2]
次の段階へ進む条件
- 標準治療か初期強化療法かが決まり、処方と監視計画を専門医が確定した。
IVIG投与中は、容量負荷と投与反応を追う
IVIG開始~終了 / 専門医管理下
- 標準治療の実施
- IVIGとアスピリンを開始し、高リスク例は選択した併用療法を行う。製剤ごとの用法と投与速度を照合し、開始・速度変更・終了時刻を記録する。 [2][3]
- 観察を強める場面
- 投与開始直後と増速時に血圧低下、皮疹、呼吸状態を確認。尿量、輸液を含む総入量、循環所見も追い、反応や心不全を疑えば投与を中断して評価する。 [3]
次の段階へ進む条件
- 終了時刻・実投与量・副反応を記録し、不応判定時刻と次回評価を申し送った。
投与終了後の反応を、国内基準で判定する
IVIG終了24~36時間後 / 専門医管理下
- 国内GL 2020の不応判定
- IVIG終了後24~36時間(基本は開始後48時間)で、腋下37.5℃以上または深部38.0℃以上の発熱を確認。発熱以外の主要症状、検査、冠動脈所見も合わせて追加治療を判断する。 [2]
- AHAとの時刻の違い
- AHA 2024は初回IVIG終了から36時間以上後の発熱持続・再燃を不応と定義する。国内基準の24~36時間と同一条件として混ぜない。重症化時の対応を判定時刻まで待たせない。 [5]
- 不応・再燃なら再治療へ
- 感染症など他の発熱原因を再検討し、心エコーと炎症評価を見直す。追加IVIG、PSL/ステロイドパルス、インフリキシマブ、シクロスポリン、血漿交換などから専門医が選択する。順番と組合せを全例一律にはしない。 [2]
次の段階へ進む条件
- 反応良好なら解熱維持の観察へ。不応または再燃なら、次の治療と再評価の時刻を明文化した。
解熱維持を確認して、薬を減らす
解熱から48~72時間以降 / 専門医管理下
- アスピリンの切替
- 解熱が48~72時間続けば、抗炎症量から抗血小板量への減量を検討。熱型だけでなく全身状態、炎症、冠動脈経過を確認して確定する。 [2]
- ステロイド併用例
- PSL中は発熱やCRPが抑えられ、再燃を見逃しやすい。減量日程だけを追わず、症状・採血・心エコーを確認して進める。漸減案は下のレジメン参照。 [2]
- 冠動脈の再評価
- 同じZスコア計算法を継続し、現在値と経過中の最大値を記録。小瘤はZ 2.5以上5未満、中等瘤はZ 5以上10未満かつ内径8mm未満、巨大瘤はZ 10以上または内径8mm以上を目安に専門医が管理を分ける。内径8mm以上はZ値にかかわらず巨大瘤として評価する。 [7]
次の段階へ進む条件
- 再燃がなく、退院後の内服・循環器評価・連絡方法が具体化した。
退院後まで、冠動脈評価を切らさない
退院前~外来 / 専門医管理下
- 早期のエコー計画
- AHA 2024では冠動脈病変のない例も退院後1~2週で再評価。Z 2.5以上なら入院中は少なくとも週2回を目安に進行を確認し、退院時と退院後1週以内の評価を検討する。病変と治療反応に応じて専門医が調整する。 [5]
- 国内の長期フォロー
- 国内JCS 2020の冠動脈後遺症を残さない例では、発症後1・2・6か月、1年、5年が経過観察の目安。病変がある場合は別計画とし、早期エコーと長期フォローをまとめて予約する。 [7]
次の段階へ進む条件
- 初回外来日、エコー予定、処方終了を判断する担当医を家族と共有した。
治療量・期間
対象・重症度・製剤・併存症を確認し、治療を担当する専門医が個別に指示します。
IVIG:初回標準治療
専門施設で急性期川崎病と診断し治療適応を確認した例
2g/kgを単回点滴静注。国内では製剤により投与時間・増速条件が異なる。
期間・切替:ベニロン-Iの2g/kg投与は12時間以上が目安。『全IVIG製剤を同じ速度』にはしない。 [2][3]
投与中に確認
- 製剤・計算体重・投与量・開始終了時刻
- 呼吸、血圧、末梢循環、尿量、腎機能、総入量
- 過敏反応、溶血・血栓症などの有害事象
注意・適用条件
- ベニロン-I電子添文では初日の開始30分を0.01~0.02mL/kg/分、異常がなければ0.03~0.06mL/kg/分まで徐々に増速。これは電子添文の調製条件での製剤固有値であり、患者別指示は実製剤と循環状態を照合して確定する。
- 当院では実施しない。心機能低下・腎障害のある例は容量負荷にも配慮し、専門施設で個別化する。
アスピリン:有熱期から抗血小板療法へ
専門施設での標準治療。感染症や副作用を踏まえて適応確認
有熱期30~50mg/kg/日を1日3回に分割。解熱48~72時間が維持されれば3~5mg/kg/日を1日1回へ。
期間・切替:国内GL 2020では低用量を2~3か月使用。冠動脈病変が残る場合の継続・他の抗血栓療法は循環器医が決定する。 [2]
投与中に確認
- 再発熱、血小板、肝機能
- 鼻出血、黒色便、腹痛など出血・消化管症状
注意・適用条件
- 水痘・インフルエンザ罹患中や回復期はReye症候群を考慮しASAを用いず代替を専門医と決める。服用中に感染が疑われたら当日相談。
- 冠動脈評価前に退院日だけで中止日を固定しない。
プレドニゾロン:高リスク例の初期併用(RAISE型)
小林スコア5点以上などで専門医が初期強化療法を選択した例。IVIGに併用
PSL 2mg/kg/日(最大60mg/日)を1日3回。有熱期は静注、解熱・全身状態改善後に同量の内服へ。
期間・切替:CRP陰性化後も初期量(2mg/kg/日、最大60mg/日)を5日間、その後1mg/kg/日を分2で5日間、0.5mg/kg/日を分1で5日間として終了する国内GLのRAISE型参考レジメン。初期量に上限が適用される症例の漸減量は担当施設が確定し、mg/kg値を機械的に適用しない。再燃所見があれば予定通りに減量しない。 [2][4]
投与中に確認
- 症状、採血と心エコーで再燃を評価
- 血圧、血糖、感染徴候、消化管症状
注意・適用条件
- IVIGを伴わないステロイド単独の初期治療として使用しない。
- 陰性化を確認するCRP基準、採血時期、漸減の実処方を担当施設で確定する。
毎日の評価と記録
- 3つの時間軸
- 本日の病日/IVIG終了からの時間/最後の発熱からの時間を回診で共有。体温は測定部位も記録し、不応判定とASA減量の時計を取り違えない。 [2]
- 症状と循環
- 主要症状の再出現、活気、呼吸、脈拍・血圧、末梢循環、尿量、体重・入出量を確認。解熱しても循環悪化や新しい腹痛・胸部症状を見逃さない。 [5][3]
- 採血は前値と比較
- 血算・血小板、CRP、Na、肝機能、アルブミン、腎機能を病状に応じて再評価。固定の日次採血を全例に要求せず、治療反応・副作用・減量判断の目的を明確にする。 [2][3]
- 冠動脈と薬の見直し
- 最新エコー日、最大Zスコアと推移、次回評価日、ASA/PSLの現在量を照合。冠動脈瘤の抗凝固判断は国内GLとAHA訂正版の病変別管理を参照し循環器医が行う。 [7][5][6]
退院条件・外来への引継ぎ
- 退院の確認項目案
- 解熱と全身状態改善が続き、追加急性期治療を必要とせず、経口摂取・内服が可能であることを確認。冠動脈・心機能の評価と再燃時対応を担当医が確定する。全国共通の固定退院日ではなく、本ページの確認項目案として使う。 [2][5]
- 処方と再受診
- ASAの量・次回評価、PSLを用いた場合は減量表を渡す。退院後の再発熱は当日連絡し、特に退院後1週以内の再発熱では再評価と心エコーを検討。胸痛、呼吸困難、顔色不良などは緊急受診と伝える。 [2][5]
- ワクチン予定を製剤ごとに調整
- IVIG実施日・製剤・総量を記録。ベニロン-I電子添文では大量療法後の注射の生ワクチン(MR・水痘・おたふく等)は原則6か月以上延期し、麻疹感染リスクが低い場合の麻疹ワクチンは11か月以上延期。併用した免疫抑制薬も確認し、接種担当医が再開日を決定する。『一律6か月で全ての注射生ワクチン可』と案内しない。 [3]
- 退院後の連携
- 病日、治療内容と実施日、経過中最大の冠動脈所見、現在の内服、次回受診日を川崎病急性期カードや診療情報にまとめる。正常化した例も予定された経過観察へつなぐ。 [7]
院内で決める事項
- 当院の紹介窓口・休日夜間の連絡順と搬送手順。
- 治療する専門施設のIVIG製剤、調製・増速条件、監視頻度と副反応時の指示。
- 採用する不応予測スコア、初期併用療法、不応時の再治療選択。
- 国内GLに基づく不応判定時刻・採血と心エコーの再評価計画。
- ASA減量・終了、PSL漸減、冠動脈病変別の退院基準と外来予約。
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