10-1こどもの頭痛
レッドフラグを画像なしで拾う
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- 当院は院内当直帯にCT・MRIが撮れないので、「CTを撮る基準」がそのまま「送る基準」になる。拾うべきレッドフラグは画像なしで拾える所見ばかり。
- レッドフラグ:突然発症の最悪の頭痛、早朝/起床時に増悪・朝の噴出性嘔吐、神経局在徴候(複視・片麻痺・失調・構音障害・視力障害)、進行性の増悪、後頭部痛、6歳未満での新規発症、発熱+項部硬直、VPシャント既往児の新規・増悪する頭痛、体位で変化する頭痛。
- 小児の後頭部痛は器質性疾患によるものが多く稀でも要注意。幼児期(2〜5歳)の頭痛は約7割が感染症由来の二次性頭痛との報告があり、年少児ほど慎重に評価する。
- レッドフラグ陰性なら一次性頭痛の病型判定へ。片頭痛は小児では持続時間が短く(2時間程度でも可)・両側性が多いなど成人と異なる。起立性調節障害との合併・鑑別も忘れない。
2鑑別のながれ
- 早朝/起床時に増悪する頭痛・夜間に痛みで目が覚める→朝の噴出性嘔吐を伴う→頭蓋内圧亢進(腫瘍性病変・特発性頭蓋内圧亢進症)(画像適応・専門紹介)
- 神経局在徴候(複視・片麻痺・失調・構音障害・視力障害)→特殊な前兆を伴う片頭痛でも一過性に類似症状が出る(併存報告約4.3%)→器質的病変を疑う所見(画像で除外)
- 発熱・項部硬直等の髄膜刺激徴候を伴う急性発症→緊急性が高く見逃し厳禁→細菌性髄膜炎などの中枢神経感染症(持てない)
- 突然発症・雷鳴様の頭痛(数秒〜数分でピーク)→今までに経験したことのない激しさ→頭蓋内出血を疑う所見
- VPシャント留置歴のある児の新規・増悪する頭痛→外来集計でシャントトラブルは0.3〜11.5%→シャント機能不全(脳神経外科紹介)
- 起床時〜午前中に強く午後に軽快する頭痛→鎮痛薬が効きにくい、立ちくらみ・朝の起床困難・動悸を伴う→起立性調節障害(OD)(新起立試験で診断)
- 両側性・非拍動性・軽〜中等度、日常動作で増悪なし→片頭痛との鑑別が難しく併存もある→緊張型頭痛
3頭痛パターンの目安
| 一次性頭痛(片頭痛・緊張型) | レッドフラグ陰性 | 非薬物療法(睡眠・食事・誘因除去)を土台に、必要時鎮痛薬 |
|---|---|---|
| 慢性連日性頭痛(CDH) | 月15日以上の頭痛が3か月以上持続 | 専門外来紹介。鎮痛薬の使用日数を確認(薬物乱用頭痛のリスク) |
| 二次性頭痛(レッドフラグ陽性) | 上記のいずれかの所見あり | バイタル・血圧・眼底検査 → 画像適応があれば搬送 |
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4検査
- バイタル・血圧測定、眼底検査(乳頭浮腫の有無):レッドフラグ陽性時。当直に眼科はいない。評価が要ると判断した時点で送る
- 頭部CT/MRI:急性外傷・出血疑いはCT、腫瘍性病変や慢性の頭蓋内圧亢進の精査はMRI。当直帯は撮れないため、画像適応があると判断した時点で送る
- 発熱・意識障害・髄膜刺激徴候を伴う場合:髄膜炎精査(血液検査、必要に応じ髄液検査)。頭蓋内圧亢進のリスクが否定できなければ画像で除外後に専門科が腰椎穿刺の適否を判断
- VPシャント既往児:シャント機能評価(画像+脳神経外科紹介)
- 神経学的所見が正常で典型的な片頭痛/緊張型頭痛パターンなら、ルーチンの脳波検査・頭部画像検査は不要
- 鎮痛薬(イブプロフェン・アセトアミノフェン)は片頭痛の第一選択。早期に十分量で内服。イブプロフェンは国内添付文書上5歳未満で臨床試験未実施(実質適応外)
5処置・処方例
Rp. 1イブプロフェン 1回5〜10mg/kg 頓用、次回まで6〜8時間あける(1回200mg・1日600mgを超えない、5歳以上が対象) 内服
片頭痛急性期の第一選択のひとつ。頭痛発症後できるだけ早期に十分量を内服する。国内添付文書上4歳以下の乳幼児への安全性は確立していない(ガイドラインは5歳未満で臨床試験未実施=実質適応外としている)。使用可否は医師の個別判断
- ブルフェン顆粒20%・イブプロフェン顆粒20%(200mg/g)なら1回 —〜—(5〜10mg/kg)を内服
- 1回200mg・1日600mgを超えない。錠剤(ブルフェン錠100・200mgなど)で出す場合も同じ量
- 次回まで6〜8時間あける
- 製剤・採用品は当院で確認する
Rp. 2アセトアミノフェン 1回10〜15mg/kg 頓用、次回まで4〜6時間以上あける(1日総量60mg/kgまで、成人量1回500mg・1日1,500mgを超えない) 内服
片頭痛急性期の第一選択のひとつ。頭痛発症後できるだけ早期に十分量を内服する
- カロナールシロップ2%(20mg/mL)なら —〜—、細粒20%(200mg/g)なら —〜— を1回(10〜15mg/kg)
- 坐剤(アンヒバ坐剤・アルピニー坐剤 50・100・200mgなど)でもよい。次回まで4〜6時間以上あける
- 1日総量60mg/kgを超えない(成人量1,500mg/日を超えない)
避けること・注意:レッドフラグ陽性例で画像適応の判断を先送りにしたまま鎮痛薬のみで経過観察すること。起立性調節障害が主体の頭痛への鎮痛薬中心の対応。
↑ このページの入口へ6紹介・入院の目安
- 帰宅レッドフラグ陰性・典型的な一次性頭痛パターン → 非薬物療法(睡眠・食事・誘因除去)を中心に外来フォロー
- 搬送・紹介レッドフラグ陽性+画像異常:直ちに小児神経科/脳神経外科紹介。緊急性が高ければ入院、画像正常+うっ血乳頭陽性(特発性頭蓋内圧亢進症疑い):眼科と脳神経内科/脳神経外科へ紹介、VPシャント児の新規・増悪する頭痛:脳神経外科(シャント外来)へ紹介、特殊な前兆(片麻痺性・脳幹性・網膜片頭痛)が疑われる初発例:小児神経科へ紹介、予防薬導入を要する頻回発作・生活支障の大きい片頭痛、標準治療抵抗性の慢性連日性頭痛、不登校を伴う例:頭痛専門外来/小児神経科へ紹介
7診療中の疑問と回答
- 鎮痛薬が効かない。薬を増やす前に何を聞く?
- 頭痛が強くなるまで待っていないか、処方量を実際に飲めたか、嘔吐で失われていないか、服薬日数が増えていないかを確認する。頭痛日誌に痛み・服薬時刻・効果・欠席を記録する。片頭痛では発症早期の服用が重要だが、毎日追加する対応は避け、病型や二次性頭痛を見直す。
根拠:日本小児神経学会:片頭痛の鎮痛薬 / 頭痛の診療ガイドライン2021:第VII章 - 週に何度も鎮痛薬が必要な児は、頓用を続けてよい?
- 頓用の追加だけで終えず、1か月の頭痛日数と服薬日数、学校生活への支障を別々に数える。頻回使用は薬剤の使用過多による頭痛につながり得る。市販薬・家族の薬も確認し、生活調整と予防療法の適応を小児神経・頭痛専門医と検討する。診断基準の頻度に届くまで待つ必要はない。
根拠:日本頭痛学会:薬剤の使用過多による頭痛 / NICE NG127:小児の頭痛の評価・紹介 - 片頭痛らしくても画像・紹介を急ぐのはどんなとき?
- 新たな神経所見、意識変化、進行性増悪、夜間覚醒・朝の頭痛と嘔吐、咳やいきみで悪化する痛みでは、従来の片頭痛という診断をいったん見直す。血圧、眼球運動・歩行、眼底を含め評価する。当院当直帯にCT・MRIができなければ、必要な同日評価が可能な施設へ相談する。
根拠:NICE NG127:小児の頭痛の評価・紹介 - 予防薬は頭痛が何回あれば始める?
- 回数だけで決めない。適切な頓用と睡眠・食事・活動の調整でも、欠席や日常生活の支障が続く場合、頓用が頻回になる場合に検討する。小児の予防薬には効果と安全性の不確実性があり、国内承認・年齢を確認して専門医と選ぶ。開始前に評価する指標と再診時期を決め、効かない薬を漫然と継続しない。
根拠:頭痛の診療ガイドライン2021:第VII章 - トリプタンへ変更すればよい?成人と同じ処方でよい?
- 鎮痛薬の適切な使用でも改善しない場合の選択肢だが、海外の小児推奨を国内の承認用量と同一視しない。年齢、製剤ごとの承認、禁忌・併用薬を確認し、特に15歳未満では適応外使用について説明・同意と専門医の判断を要する。成人の薬を家族から分けてもらう使い方はさせない。
根拠:頭痛の診療ガイドライン2021:第VII章
- 6歳未満の初発頭痛は様子を見ていい?
- 見ない。年少児ほど二次性頭痛の割合が高く(幼児期は約7割が感染症由来との報告)、新規頭痛は慎重に評価する。
- 後頭部が痛いだけなら心配ない?
- 小児の後頭部痛は稀で、器質性疾患によるものが多いとされる。診断上の注意を要する所見。
- 当直でCTが撮れないときはどう動く?
- レッドフラグ陽性で画像適応があると判断した時点が搬送の判断。単純X線は当直医が読める。
9家族への説明
この説明ページに、今日の判断と受診の目安がまとまっています。当てはまるサインがあれば様子を見続けずに連絡してください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。