7-4結膜炎(目やに・目の充血)
新生児結膜炎・角膜病変・眼窩蜂窩織炎の除外
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- 当院の当直帯は造影CTが撮れない。結膜炎そのものは扱えるが、眼窩蜂窩織炎(眼球突出・眼球運動障害・視力低下・眼瞼の強い発赤腫脹・発熱)を疑ったら、CTで確かめず疑った時点で送る。
- 生後1か月以内の眼脂・結膜充血は、年齢だけでレッドフラグ。淋菌性・クラミジア性・単純ヘルペス性結膜炎を除外するまで緊急扱い。
- 眼痛・視力低下・強い羞明・角膜混濁を伴う結膜炎は眼科紹介。充血と眼脂の有無だけで細菌性と決めつけない。
- 高熱が続き、口唇/舌の変化・皮疹・四肢末端の変化・頸部リンパ節腫脹を伴う両側性の充血(眼脂を伴わない)は川崎病を鑑別に入れる。
2鑑別のながれ
- 新生児(生後1か月以内)の眼脂・結膜充血→出生後2〜5日で発症、重度の眼瞼浮腫、圧迫で大量の膿性眼脂→淋菌性結膜炎(無治療では角膜潰瘍・失明。入院管理が原則)
- 新生児の眼脂・結膜充血→生後5〜14日で発症、軽微な粘液膿性〜重度の偽膜形成→クラミジア性結膜炎(新生児結膜炎で最多。肺炎合併5〜20%)
- 新生児の眼脂・結膜充血→母体の性器ヘルペス既往・分娩時の活動性病変→単純ヘルペス(HSV)性結膜炎(中枢神経系・全身への播種の恐れ)
- 結膜炎→眼痛・視力低下・強い羞明・角膜の混濁/白濁→角膜病変(角膜潰瘍・ヘルペス角膜炎等)。眼科紹介
- 結膜炎→眼瞼腫脹が強く眼球突出・眼球運動障害・複視・発熱→眼窩蜂窩織炎(2〜4歳に多い。数時間以内の対応が必要)
- 両側性の結膜充血(眼脂を伴わない)→高熱・口唇/舌の変化・皮疹・四肢末端の変化・頸部リンパ節腫脹→川崎病を鑑別に入れる
3病型の見立て
| 細菌性 | 膿性・粘膿性、片眼から始まり健側に波及、全身症状は乏しい | 抗菌点眼(充血・眼脂だけで反射的に処方しない) |
|---|---|---|
| ウイルス性(流行性角結膜炎) | 漿液性〜漿液膿性、強い充血・流涙・羞明、耳前リンパ節腫脹 | 対症療法。感染力が強く出席停止対象 |
| ウイルス性(咽頭結膜熱) | 漿液性、高熱39〜40℃・咽頭痛・頭痛が3〜7日持続、頸部リンパ節腫脹 | 対症療法。出席停止対象 |
| アレルギー性 | 水様性、両側性、強い掻痒感 | 抗ヒスタミン薬・メディエーター遊離抑制薬点眼 |
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4検査
- 生後1か月以内:眼脂の検体を採り、グラム染色が当直帯で判定できるか検査室に確認のうえ提出する。クラミジア核酸増幅検査も提出する。眼脂培養・淋菌培養は当直帯には検査室へ提出できない(検体は採って保管し翌朝提出する)。淋菌性は染色・培養の結果を待たず治療開始が原則
- 新生児淋菌性結膜炎:セフトリアキソン投与前に必ず黄疸の有無とカルシウム含有輸液の併用有無を確認する(高ビリルビン血症・低出生体重児には核黄疸リスクで禁忌、カルシウム含有輸液との同時投与は結晶析出による死亡例が報告され禁忌)。該当すれば施設プロトコルの代替薬(セフォタキシム等)を検討する。生理食塩水による眼洗浄は症状・分泌物が消失するまで数時間おきに継続する(院内方針院内。回数の規定はなし)
- 新生児クラミジア性結膜炎の全身投与薬(エリスロマイシン等)は生後6週未満でIHPS(乳児肥厚性幽門狭窄症)リスク上昇と関連。処方時に保護者へ噴水状嘔吐等の受診サインを説明する
- 母体の性器ヘルペス既往・分娩時の活動性病変や、水疱性病変・角膜混濁など非定型所見があればHSV PCRを追加する
- 流行性角結膜炎が疑われ診断確定が管理方針に影響する場合:アデノウイルス抗原迅速診断キット(発症1週間以内は検出率が高い)
- 眼窩蜂窩織炎が疑われる場合:血液検査、造影CT(眼科・耳鼻科・小児科の連携で緊急対応)。当院当直帯は造影CTが撮れない
- 川崎病パターンを疑う場合:手引きに準拠した多臓器所見の系統的評価と専門科への相談
- 典型的な軽症結膜炎(片眼の膿性眼脂のみ、全身状態良好)への眼脂培養のルーチン化はしない
5対応の注意
避けること・注意:充血・眼脂のみでルーチンに抗菌点眼を処方すること、原因未確定のウイルス性が疑われる結膜炎へのステロイド点眼の安易な使用(角膜ヘルペスを増悪させうる)、新生児の眼脂を全身評価なしに点眼薬のみで経過観察すること、ステロイド点眼を漫然と続けること(緑内障・白内障のリスク。2歳未満は特に慎重投与、症状改善後は速やかに中止)、高ビリルビン血症・低出生体重児の新生児にセフトリアキソンを投与すること(核黄疸リスクで禁忌)、カルシウム含有注射剤・輸液とセフトリアキソンを同時投与すること(結晶析出による死亡例が報告され禁忌)。
↑ このページの入口へ6帰宅・入院の目安
- 帰宅典型的な軽症結膜炎(片眼の膿性眼脂のみ、全身状態良好)、アレルギー性・軽症ウイルス性で全身状態良好、再受診サインを渡せる(視力低下・強い痛み・角膜混濁・眼瞼腫脹の急な増強・発熱・3〜4日改善なし)
- 搬送・紹介生後1か月以内の眼脂・結膜充血:症状の程度によらず原則即日で眼科・小児科紹介(淋菌性・クラミジア性・単純ヘルペス性の除外目的。淋菌性確定・疑いは入院管理が原則)、眼窩蜂窩織炎を疑う所見(眼球突出・眼球運動障害・複視・強い眼窩周囲腫脹+発熱):緊急眼科紹介、角膜混濁・視力低下・強い羞明を伴う結膜炎:眼科紹介、川崎病を疑う多臓器所見の併存:結膜炎の枠を超えて小児科内での精査を優先
7診療中の疑問と回答
- 抗菌点眼を数日使っても赤い。強い点眼へ変更する?
- 眼脂だけで細菌性と決めず、痛み・羞明・視力と角膜を再評価する。ウイルス性やアレルギー性なら抗菌薬の変更だけでは改善しない。強い眼痛、角膜混濁、視力低下は眼科へ急ぎ、ステロイド点眼を自己判断で追加しない。
根拠:RCH Acute red eye - 片眼だけの充血も普通の結膜炎としてよい?
- 異物・角膜障害、外傷、コンタクトレンズ使用を確認する。単眼で強い痛みや羞明があれば角膜疾患を疑い、眼科評価を行う。小児は視力低下を訴えにくいため、左右を別々に確認する。新生児では軽く見えても即日専門評価につなぐ。
根拠:RCH Acute red eye - 点眼で目やにが減ったら終了してよい?
- 処方期間と病型に応じて判断し、残薬の長期使用を勧めない。充血や眼脂が続く、再発、眼瞼腫脹や発熱が強まる場合は診断を見直す。眼球運動障害や突出を伴えば眼窩感染を疑い、当院でCTを待たず専門施設へ送る。
根拠:RCH Acute red eye
- 充血と目やにがあれば抗菌点眼を出していい?
- 出さない。眼脂の性状(膿性か漿液性か)と充血パターンで見立ててから決める。反射的な処方はキノロン系の過剰使用につながる。
- 新生児の目やには様子見でいい?
- 見ない。生後1か月以内は年齢だけでレッドフラグ。淋菌性・クラミジア性・HSV性を除外するまで緊急扱いとし、原則即日で眼科・小児科紹介する。
- ウイルス性が疑われる結膜炎にステロイド点眼は使える?
- 安易に使わない。角膜ヘルペス(樹枝状角膜炎)が隠れていると病態を増悪させる。
- 症状の強いアレルギー性結膜炎にステロイド点眼を上乗せしていい?
- 角膜の混濁・樹枝状のびらん(ヘルペス角膜炎)を除外できれば検討できる。短期間・低用量が原則で、2歳未満は特に慎重投与、症状改善とともに速やかに中止する(緑内障・白内障のリスク)。開始は上級医・眼科に相談し、当院で処方する製剤・用量は施設プロトコルに従う。
- 熱が続いて充血もあるが目やにが無いときは?
- 川崎病を鑑別に入れる。眼脂を伴わない両側性の充血に、口唇/舌の変化・皮疹・四肢末端の変化・頸部リンパ節腫脹が重なれば疑う。
- 眼窩蜂窩織炎はどう見分ける?
- 眼球突出・眼球運動障害・複視・強い眼窩周囲腫脹+発熱。当院は院内造影CTが撮れないため、確かめてから送るのではなく疑った時点で送る。
9家族への説明
目やに・目の充血の多くは自然に良くなります。生後1か月以内の赤ちゃんの症状、目を痛がる・まぶしがる・見えにくそう、黒目が白く濁って見える、まぶたの腫れが急に強くなる・目が前に出てきたように見える、高い熱が続いて発疹など目以外の症状もあるとき、また生まれたばかりの赤ちゃんが飲み薬の治療を始めたあと勢いよく噴水のように何度も吐くようになったときは、様子を見ずすぐに受診してください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。